ブッ飛ばせ
サイガ-100からの要求………其れは
「───────一応聞こうか。何故?」
「私達って別に
此処まで殆ど動じる事が無かったサイガ-100が、あからさまに嫌悪感に満ちた顰めっ面でペンシルゴンに問い掛ければ、至極当然な反応が返ってくるだけだ。
「色々便宜を図っただろうが!」
「サイガ-0さんを援護に送っただろ!」
「コイツを相手に口を出すのは出来るだけしないでくれ」とサイガ-100の表情が訴えているのに、黒狼の強硬派プレイヤーは気付いていない。下手な論戦を挑もうなら、ペンシルゴンは其れを見逃さずに正論で突っ付きまくる事を、強硬派の面々は知らない。
「まぁレイちゃんを援軍に寄越してくれたのは、感謝するけどさぁ。でも『其れは其れなんだよ』………クターニッドに関して、レイちゃんは『自らの意志』で私達に付いてきた。其の意志を君達は踏みにじるのかい?あと便宜とか言ってるけど、ライブラリやウェポニアみたいな情報アドバンテージが有るなら兎も角、黒狼みたいに金だけあるクランならシャンフロには沢山有るの。其処ん所、君達わかってりゅん?りゅりゅりゅ?」
「あ、僕のパクられた」
「ウザさに関しちゃ、京ティメットの完全上位互換だけどな」
「ありゃ後で殴られたとしても、絶対文句言えないでしょ………」
全体的な進行役をペンシルゴンが担う以上、彼女の掌の上で生かさず殺さず、そして転がされるなんて『当たり前』に行われる。一番の対処法は『沈黙』以外有りはしないのだから。
「ライブラリは考察以外にも情報屋ギルド的な側面も有るし、其の点を踏まえればユニークを渡してでも仲良くなる価値が有る。ウェポニアやSF-Zooはちょ~~~とモラルに欠けてる部分は有るけど、片や武器・防具の耐久計算方程式を編み出して、片や動物型モンスターに対する知識は一線を画しているからねぇ………」
片や武器や防具に対する追求が激しいだけで、鍛冶師プレイヤー向けの武器や防具の製作工程のレクチャーをしたり、必要な素材をキッチリ取り揃えるウェポニア。
片やラビッツ再訪問達成の為、苦渋の決断の果てに此方からの要求を飲んで、約束通りに騒動を起こす事無く兎食の大蛇を全て倒しきったSF-Zooと、目的達成の為に彼等彼女等は全力を尽くしていた。
「私達は別に、ユニークモンスターの情報渡さないって訳じゃないよ? 現にライブラリは此方が提供した『墓守のウェザエモン』に関する情報は
「後、ペッパーと俺ってアンタ等にリュカオーンの行動パターンとか割と提供したし、ペッパーは別のユニークの情報も渡したって言うじゃねーか」
黒狼からすれば言い返したい事が山程有るが、下手な発言をしよう物ならペンシルゴンに掻っ攫われて、正当性の針でチクチクと嫌と言おうが刺されまくる。当然其れを理解しているサイガ-100や穏健派は、彼女の言い分に対して『沈黙』を決め込む。
だが其れが理解出来ていない強硬派は、正義は我に在りとばかりに『頭』を出したがる。そして此の談合に置ける『オンリーターゲット』は、自ら
「リーダー、此処は僕に任せて貰えませんか?」
((((き、キタ────(゚∀゚ 三 ゚∀゚)────!))))
(成程、彼が強硬派のリーダーか………)
薄っぺらな笑顔と細目、其れなりなレアモンスターを狩って作っただろう装備を纏う、其の男性プレイヤーに対して外道四人衆は同じ想いを此の瞬間に共有し、クランリーダーたるペッパーは漸く御出座しかと視線を向けた。
「あぁ、一応自己紹介を。僕は『リベリオス』、クラン:黒狼のサブリーダーです」
「ペッパーです、御初に御目に掛かります」
表面は努めて普通に振る舞いながら、ペッパーは席を立って一礼。ふと四人を見れば魚面を着けたサンラクと、普段からポーカーフェイスに馴れているペンシルゴンの肩が小刻みに震え、オイカッツォはテレビじゃ見せられない顔をしており、
そしてサイガ-100に至っては、此の状況で出張ってきたリベリオスを見て溜息を一つと、彼に対して小言で何かを呟いて。其れが『此の場を任された』と自己判断を下してか、リベリオスは益々ドヤ顔を深めていく。
(さぁて、主役が自ら出て来たんだ………頼んだぞサンラク)
此処からはサンラクの働きによって、リベリオスから『地雷ワード』を言わせる事が必要になる。何より今回の談合は、強硬派を─────否。
スケープゴートと呼ばれる行動が、草食動物の群れにはシステムとして組み込まれている。例を挙げると十五頭のシマウマの群れが居て、其の群れがライオンに襲われたとすれば、其の群れの中に居る年老いた一頭が子供や若い個体を守る為に、自らの意志で犠牲に成る事を指す。
クターニッド攻略中にペンシルゴンが電話で伝えてくれたが、今回の談合は『戦争に向けての下拵え』であると同時に、強硬派のリーダーたるリベリオスを『此の場に引き摺り出す事』に有る。後々『クランから放逐』する為にも、此処で精神的にダメージを与えておきたい…………其れがサイガ-100がペンシルゴンを通じて伝えた『依頼内容』だった。
「単刀直入に言わせて貰いますが、構成員十人程度の『弱小クラン』には、ユニークモンスターは荷が重過ぎると思うのですよ」
開幕一声で此の場に集った旅狼メンバーは全員、リベリオスに対して『お前馬鹿なの?』という同一の感情を抱いた。ユニークモンスターを二体+αを倒し、クランリーダーが色々と説明をしたのを、コイツは一切聞いて無かったのかと疑問視する。
更に言えば勝率八割の日本最強プロゲーマーに、其のプロ相手に三割を取れるクソゲーマー、そしてレトロゲーム限定だが、プロゲーマーに五割強の勝ち越しを決めているレトロゲーマー。元阿修羅会のNo.2とNo.4に、リアルラック完スト忍者少女と魚介類大好きな魔術師、そしてネフホロランキング一位コンビと、此れの何処が弱小クランなのか言って貰いたい所だ。
「だが我々なら違う。強力な装備に潤沢なアイテム、重要なNPCとの繋がりも持っている。貴方々のような弱小───おっと失礼。コホン、実力の足りないクランに任せるには、ねぇ……?」
高慢な台詞を恥ずかし気も無く、唯々喋り続けているリベリオスに対して、サイガ-100は聞く耳を持たずに此方をジッと見詰めていた。だが、サンラクは…………旅狼は動じず、動かない。リベリオスが『地雷ワード』以外の『ある言葉』を言った瞬間こそが、サンラクが動く時であり。
「しかしながら我々とて鬼では無い………。我等黒狼に対して、情報を差し出してくれるのであれば。貴方々『旅狼を合併する』事も考えていますよ」
惜し気も無く彼は『合併』というワードを口にし、同時に待ってましたとばかりにサンラクが、魚面の内に在る口を開いた。
「んー…………リベ
「リベ
「黒狼ってクランが大規模クランなのは、よぉ~く解ったわ。じゃあ尚更解んねぇんだよなぁ………御宅等、
「……今まで何を、とは?」
「其れだけの実力が有んのに、なぁんで『ユニークモンスターの一体も倒せてないんだって』、そう聞いてんだよバーカ」
「……あ"?」
ピシリ………と空気が軋み、リベリオスの口調から余裕が消えた。細目+笑顔のキャラ=強キャラという方程式は在れど、口から出るは三流キャラの其れでは本末転倒だろう。おまけに煽り耐性は皆無、此れは所謂『噛ませキャラ』なのでは?とペッパーは思う。
「たぁしかお前等って、三回くらいリュカオーンに挑んで三回とも全滅したんだっけ? 俺等は全員生存ノーコンクリアしたけど?」
「……そんな事は『紛れ』に過ぎません。此のゲームは甘くない」
「おーおー、そりゃあ面白いジョークだなぁ。リュカオーンにウェザエモン、クターニッドもノーコン討伐出来たなら最早リアルラックこそが、此の世界で『最強の武器』になるなァ……………」
「で?」と……サンラクは立ち上がるや否や、鮭頭をカクカクと揺らしつつ、あからさまに殴りたくなるような声音と共にリベリオスに歩み寄り、彼と彼に付き従うプレイヤー全員へと問い掛けた。
「偉っっっっそ~にしてる黒狼さぁ~ん?貴方々は此迄『何体ユニークモンスターを倒した』んでちゅかぁ~???」
「うわキモッ…………ちょっと待ってサンラク君、冗談だから。そんな死んだ魚の目で凝視されると、私笑っちゃうから」
サンラクの役割は此方がリベリオスを舞台に引き摺り出した後、彼が『合併』の話を持ち込んだ所で煽りを叩き込み、冷静な判断力を奪う&特定のワードを口にさせる事である。
「ねぇねぇ教えてくださいよぉ?『ユニークシナリオEX』の存在すらも、つい最近まで知らなかったトップクラン様がぁ?今の今まで何をしてたのかぁ?是非とも聞きたいんだけどなぁ~???」
「………っ!」
濁った魚の目を向けながら、薄っぺらな仮面を剥がされた事により真顔となったリベリオスの頬を、ペチペチと軽く叩きつつもサンラクは煽りを止めない。
「ねーねー教えてくれよぉ~、リベ
サンラク今世紀最大とも言える其の煽り、其の言動は確かに『ブチリ!』と。リベリオスの堪忍袋の緒を、確実にブチ切って。
「生意気な事を……!言ってんじゃねーぞ、雑魚風情がぁ!」
「ふはは、お前の化けの皮薄過ぎね?」
「お前達程度………!
強硬派の破滅を決定着ける、
地雷を踏み抜いた者