VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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終結へ至れ




狼談締結、其れはある種の予定調和

「納得いかない!納得出来る訳が無い!アイツ等は黒狼(ヴォルフシュバルツ)をナメてる……!!」

「落ち着けリベリオス」

「だっておかしいでしょう!!?サイガ-0はシャンフロ最高クラスのプレイヤー!其れをただ金を払うだけで自由にするって………!!」

 

オンラインゲームやMMORPGをやっていれば解るが、ギルドやクラン等でメンバーに無言のまま脱退や引退をしていく………何て事はザラに有る。寧ろ報告・連絡・相談をしているだけ温情だと思いたいが、当のリベリオスからすればサンラクの煽りに加えて、掲示された同盟条件にブチギレているのだろう。

 

ペッパーはオイカッツォの肩に指先でトントンと二度叩く。最終打ち合わせ段階で自分が指先で肩を二度叩いたら、黒狼に対して『バトルして決着を付けよう』と、リベリオスと彼のフォロワー達に提案する事。此処まで派手に立ち回った事でオイカッツォ以外の面々は全員敵意MAX状態、故にこそ比較的ヘイトが集まっていない者からの『魅力的な選択肢』を提示して、自然な流れに落ち着かせる─────というのがペンシルゴンの『狙い』だ。

 

「ソ、ソユコトナラ、おっほん!そーゆー事なら『代表戦』で決着付けない?」

「言い直した、41点」

「片言だったのでダメ、35点」

「えぇー僕は良いと思うよ、54点」

「何で提案に対して採点してるんですかねぇ……」

 

オイカッツォの拳が震えており、後々三人に何かしら制裁が飛んで来そうな予感がするし、何なら巻き込まれる危険すら存在している。だが此の場面では流石に露骨な提案だ、此れで裏が有るとリベリオス派が気付けるなら未だしも。

 

『代表戦?』

 

リベリオス含めた強硬派が、揃いも揃って芋吊る式に釣られて食い付いたのを見て、此れは本格的に救い様が無いと、ペッパーは頭をもたげる。もし仮にリベリオス派の面々がクターニッド攻略に挑んだ場合、イキりにイキった彼等は妄想態に突撃を噛まし、ユニークシナリオ強制終了からの内輪揉めでメンバー離散という未来すら有り得そうだ。

 

オイカッツォが代表戦について説明している最中、此方に歩いて来たのはクラン:午後十字軍のリーダー・カローシスUQと、クラン:ウェポニアのリーダー・武器狂いことSOHO-ZONEだった。

 

「初めまして、ペッパー君。クラン:午後十字軍のカローシスUQです。SOHO-ZONE君から君の事は色々聞いていてね、一度会って話がしたいと思っていたんだ」

「あ、初めまして。クラン:旅狼(ヴォルフガング)のリーダーをしています、ペッパーです。SOHO-ZONEさんが言っていた無限インベントリの件でしょうか?」

 

以前の話からすれば『格納鍵(かくのうけん)インベントリア』の事だろうかと考えていれば、武器狂いから放たれたのは『其れとは別の事』だった。

 

「ペッパー君。今回カローシスさんが聞きたいのは無限インベントリの事じゃなくて、シャンフロの『ワールドストーリー』についてなんだ」

「ワールドストーリーの?」

「うん。うちのクランは今後『ワールドストーリーをメインに活動していく事』に決めてね。次のユニークモンスターに挑む時に、一度連絡を入れて欲しいんだ。主に環境や商品のラインナップに変化が起きた場合、調整が厳しくなってしまうのを避けたい所が有る」

「成程……」

 

午後十字軍が参加したのは、所謂ストーリーモード攻略であり、やり込み要素は後々に埋めていく為だろう。とはいえ二体のユニークモンスターを討伐し、世界を二度も動かした事実は変わらず、シャンフロでスローライフを送っているプレイヤーからすれば、無断でセーブデータを進められたに等しい為、一応連絡を入れて欲しいという意味だろう。

 

新クラン連盟となる間柄ともなれば、連絡手段は必要不可欠。ペッパーはカローシスUQにフレンド申請を送り、午後十字軍とのコミュニケーションが出来るようにしていると、ジョゼットを中心として四人の聖盾輝士団団員が護衛しながら、イリステラがサンラクの元へと歩み寄って来る。

 

「サンラク様」

「んぉ!?あぁ、えっと………コホン。初めまして、私がサンラク。木っ端の開拓者で御座いますが」

 

ユニークNPCを前にロールプレイ必須の気配を感じたサンラクは、即興で対応している。何故かジョゼットの視線は、サンラクに対して突き刺さりまくっているが、まさか『女体化』していないからでは無かろうか?

 

「初めまして、私はイリステラ。最強種を討ち破り、其の力を示した貴方に一度、御会いしたいと思っていました」

「はぁ………」

 

イリステラにも名が知られているとは、サンラクも随分と出世したなと思っていると、彼女はこんな事を言ってきた。

 

「此の度貴方と御会いしたいと思い立ったのは、私自身の『我儘』と……此の談合において『貴方が参加する』という『未来』を見ました。そして確たる強さを噂される貴方に、一つ『御願い』が有るのです」

「御願い………ですか」

「はい。詳しく話をしたいので、空いている日を教えていただけませんか?」

 

聖女直々の依頼だ、此処で無下にしては聖盾輝士団の。延いてはイリステラ自身の好感度にも、確実に悪影響を与えかねないだろう。

 

「…………解りました。翌日ならば夜九時に」

 

スケジュールを精査し唯一言、そう答えた事でイリステラはコクリと頷いて。ジョゼットもまた「感謝する」と述べた。そしてジョゼット達と入れ替わる形で、ライブラリのクランリーダー・キョージュがサンラクに小声でアドバイスをしに来た。

 

「サンラク君。クラン:ライブラリの調査隊のメンバーが一度『慈愛の聖女 イリステラからの依頼』を受けた事が有るが、其のクエストの合否によって『彼女の好感度』に影響する。おそらく『他の職業に就く場合』でも、有利不利になるそうだ」

「…………マジで?」

 

「うむ」とキョージュは頷き。現在職業:傭兵だが無所属のサンラクは鳥面の嘴部分に手を当てつつ、聖女からの依頼が如何なる物になるかと考えていれば、オイカッツォが『旅狼と黒狼のバトル内容』を決めたらしい。

 

要約すると対戦内容は『クラン:旅狼』と『クラン:黒狼』のメンバーで行う『七対七の団体戦』。ルールは『星取り戦形式』で、勝ち星が半数以上を取れたとしても最終戦まで行う。

 

開催日は『一週間後の日曜日の夜』、そして場所はフィフティシアでライブラリが主導で作る『特設会場』で行う。旅狼が勝てば、此方の提示した同盟条件を黒狼は無条件で承諾・同盟への加入が確定。逆に黒狼が勝てば、旅狼が持っているユニークモンスターの情報全開示及びペッパーとリュカオーンの分け身の身柄引き渡しが確定する。

 

こうして『狼双戦争(デュアルウルフウォー)』の前哨戦となる二つの狼達による談合は、ペンシルゴンの策謀が見事にハマった形で、クラン:旅狼が殆ど勝利を手にする形で閉幕したのだった………。

 

 

 

 






戦争が始まる


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