VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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やって来たのは




天貫く泰山、居着くは三体の強者が一角

気宇蒼大(きうそうだい)天聖地(てんせいち)

 

シャンフロ第10の街・テンバートと第14の街・フォルティアンの間に存在する、現在開拓者(プレイヤー)が冒険している大陸では『最も高い場所』に存在するエリアであり、中央に位置する巨大な台地と其所に至るまでの傾斜に、様々なモンスターが存在するエリア。

 

上に行けば行く程に強力なモンスターが発生(スポーン)する特色を持つ此のエリアなのだが、頂上にはモンスターが発生しない事が特徴であり、其の頂上にこそ『七つの最強種(ユニークモンスター)・天覇のジークヴルム』の休息地として知られている。

 

そして今宵、此の地に一人の開拓者が。シャンフロプレイヤー内で最高高度に至った称号たる、最大高度(スカイホルダー)を手にした男・ペッパーが挑まんとしていた。

 

「セーブテントは買った、ツルハシに小鎚の耐久も大丈夫。問題はどうやって『無限掘削の女王』に謁見をするかだが、無難に行くなら『穴を探す』のが一番手っ取り早いんだよな」

 

反転都市ルルイアスに在った座礁船、其の船に遺されていた本から得られた情報によれば、此のエリアの地中に今は懐かしき『巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)』。其の()の成虫個体、そして無限掘削の女王と呼ばれる『泰山巌宝蛇蟲(イミュリティーション.ヴィルワーム)』が居るのだという。

 

FM's(フォッシル.マイナーズ)クリサリス・金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)泰山巌宝蛇蟲(イミュリティーション.ヴィルワーム)の三体が、新しい武器『弩弓剣(アーチブレイド)』に必要な存在かぁ。多分最後の一体も間違い無く『ハイスペックモンスター』、壮絶な死闘先ず不可避だろう………」

 

甲虫型モンスターの中でも最高峰の甲殻硬度・圧倒的な馬力・機動力を誇るヘラクレスオオカブトに、単体で超火力・再生能力・全距離対応攻撃を高次元に併せ持った完全無欠の黄金蠍と、ユニーククエストの対象モンスターを思い出せば、ヤバい奴等ばかりだった。

 

「女王陛下に謁見するなら………やっぱり『配下を探す』のが最適解かな?」

 

泰山巌宝蛇蟲は自身が産んだ巌喰らいの蚯蚓を育て、兵器として行使する特性を持っており、其れは千紫万紅の樹海窟で何度も戦って、甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)のバンテージ素材としている『エンパイアビー・クイーン』によく似ている。

 

周囲を警戒しつつ台地の縁側を歩いて行けば、良さげな鉱脈を発見。早速採掘を────というのは『三流のやり方』。ペッパーは此の如何にもな鉱脈を前に、自身のスキル『刻蓬封点認視界(エディア・キュリス・ウラタナ)』&『龍脈を映す視覚(ドラスティエル・ナルクト)』の視覚系補助コンボによって、其の鉱脈からは『絶対に存在しない電気信号と点穴』の二つを知覚したのだ。

 

「ビンゴ………!」

 

取り出すはギルフィードブレイカー、無限掘削の女王相手に打撃系スキルを温存する為、普通のスイングで叩けば鉱脈から鉱物が砕ける音とは違う、明らかに『鈍い』音が鳴る。直後にペッパーは回避を選択し、同時に鉱脈が揺れるや台地の壁を打ち破り、現れ出でるは彼にとっても懐かしく、ファステイア坑道にて己に此の世界で初めての『死』を与えたモンスター。

 

「はははっ、久し振りだな『ムカデミミズ』!」

 

ゴツゴツとした岩石と鉱物で武装した、巌喰らいの蚯蚓がペッパーを睨み付け、ガチガチと大口に生えた無数の牙を擦り鳴らしながら威嚇してくる。が、彼の右手に刻まれている『リュカオーンの愛呪(あいじゅ)』を目視した次の瞬間、まるで車が急速バック走行でもするかの様に、一目散に穴の中へと引っ込んでしまった。

 

「あぁ………コレかぁ」

 

右手に刻まれた赤い印を見つつ、巌喰らいの蚯蚓が戻って行った穴を覗く。夜に加え、何処まで掘り進んだか解らない程に奥まで続くトンネルを見ながら、ペッパーはエンハンス商会で購入した『カンテラ』を取り出して右手に持ち、左手には聖盾(せいじゅん)イーディスを構えて、直径50メートルクラスのトンネルの中へと足を踏み入れる。

 

「横穴からの突発的な奇襲にも注意しつつ、何処に女王が居るかを探らなきゃならない。そうなるとセーブテント設置は『悪手』かなぁ………、壊されたら『最終リスポーン地点』に再更新されるっぽいし」

 

ウムム……と周りを常に見渡しながら歩くも、やはりカンテラでは照らせる範囲に『限界』が有る。が、のんびり歩いて居れば少なからず『包囲』される可能性も在る。

 

「っし、覚悟決めるか!」

 

左手に装着している封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を指パッチンで起動。緋色の灼熱と炎を一身に収め、太陽と化したペッパーは、トンネルの中を走り出す。緋色と輝きが闇を塗り潰し、走る度に背中から陽炎で出来た残像(デコイ)を残して、畝り畝るトンネルを己の心が指し示すがまま、台地の中心点を目指して突き進む。

 

「蛇や蟻タイプのモンスターが『群れで巣を作るパターン』は、大抵ダンジョンの最上階or最下層、もしくは最奥に『群れのボスかコロニーの支配者が居る』のが、ある意味御決まりだが────!!」

 

前方両サイドから地響き、同時に飛び出すは二体の巌喰らいの蚯蚓。改めて観察して見ると、自分がファステイア坑道で出逢い、死闘を演じたアイツよりも三周り程デカイ。此のトンネルは彼等彼女等か幾度も幾度も掘ったのか、はたまた母たる泰山巌宝蛇蟲が掘ったのかは、ペッパーには解らない。

 

「女王陛下に謁見したいんだが、君達は其所に向かうルートを知ってる?いや聴いても言葉が通じないんじゃ意味無いし、愛呪のせいでエンカウントしても逃げられるじゃん」

 

リュカオーンの愛呪に反応し、巌喰らいの蚯蚓が逃走を選択した其の時、左サイドに居た同胞の死角から伸びた『巨大鋏』が、頭と胴体の一区画を一刀両断で断ち切り。右サイドに居た同胞が異変に気付いた其の矢先、自身の最後尾を押し出す様な、強烈窮まる『ノックバック』によって押し出され、トンネルに流入した。

 

「うぉあ!?」

 

唐突な異変にペッパーが驚き、緋色の灯りで其れを起こした犯人を見れば、其所には驚くべきモンスターが居た。

 

片や全長30mの巨体と其の巨体に匹敵し得る、左側が『巨大化した大剣の如き前鋏』に、右側が『分厚い大盾の如き前鋏』を翳す、瑠璃色の甲殻を纏った所謂『シオマネキ』に近しき、大剣と大盾を掲げし騎士を彷彿させる『巨大な蟹』こと『バタリング・ナイツクラブ』。

 

片や全長20mながら、土竜と同形状の『シャベル状の前肢』を振るい、頭部は『ハンマーヘッドシャーク』に似た横平らな物で、顎は『カミキリムシ』の様に鋭く。後ろ足は飛蝗特有の『長く』そして『異様』に発達し、キリギリスの様な羽根を持った『巨大螻蛄(ケラ)』こと『クレーゼーレ・ヴィンディッシュ』。

 

女王謁見を前にペッパーの行く手を阻む、二体の巨大モンスター達が立ち塞がって来たのである………。

 

 

 






カニとケラが現れる


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