VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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討伐しよう、ジャイアント




白光と緋色を纏い、勇者は戦場で踊る

シャンフロ第10の街・テンバート。大型アップデートを直前に控えた現在、開拓者(プレイヤー)が訪れられる最も標高が高い場所に在る街であり、最強の縄武器を作れる為に職業:考古学者派生を持つ者や、新職業:ライダーが縄武器に対応している事も有ってか、人が定期的に訪れる。

 

「ん?何だアレは………?」

 

一人のNPCが『其れ』に気付き、一人……一人……また一人と其の視線の先を見る。彼等が、彼女等が視線の先に在るのは『気宇蒼大(きうそうだい)天聖地(てんせいち)』。数ヵ月前、此処に七つの最強種(ユニークモンスター)・天覇のジークヴルムが休息地としている事が判明して以来、時折金色の龍王に挑まんとする無謀か蛮勇な挑戦者(プレイヤー)が後を絶たない。

 

ウェディングケーキ形状の段々と続き、天へと続く台地の一区画──────夜であり月の光が美しく、星達が瞬き輝く此の地に、まるで『緋色の太陽』が昇ったかの様な煌々と光る一粒の『朱白星』が見えたのだから。

 

そして人間という生き物は、其所に未知が在るなら興味を惹かれる。其所が危険だと解っていながら、火に羽虫が集るように一体何だと近付いていく…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッパーの身体から緋色の炎が舞い踊り、暖かい白光の輝きが暗闇を照らしている。まるで太陽が昇ったかの様な光により、気宇蒼大の天聖地の一区域が『昼間に等しい明るさ』に満ちていた。

 

「覚悟しろよ巨大連中、全員纏めてボコボコにしてやる」

 

両脚に籠脚、左手に黒い小盾(バックラー)を持ちながら、そう宣言した刹那に緋色の白星は走り出し。真っ先に狙ったのは、巨大シオマネキことバタリング・ナイツクラブへ肉薄しに行く。疾走系スキルを点火によって一瞬で双方の距離は10m間まで狭まる、其の領域は封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)の効果範囲であり、同時にバタリング・ナイツクラブの決殺距離(キリングレンジ)

 

左鋏を襲う圧倒的な熱波により甲殻の一部が焼ける(・・・)感覚を覚えながらも、此の程度ならば問題無しと断じて『目の前に居る小さな緋色の白星』目掛けて、巨大シオマネキは右鋏を叩き付ける様にして振るう。だが右鋏に伝わったのは『奴を仕留めきれていない』感触であり。

 

『!?』

 

其の直後に全身を襲う熱波の連鎖に驚愕し、周囲を見渡せば。『無数の分身をしながら巨大オケラと巨大ヤスデ、そして乱入してきたヘラクレスの周辺を駆け抜ける緋色の白星の姿』が其所には在ったのだ。

 

封熱の撃鉄によって付与された極放熱(ウルティマヒート)効果で出来た、ヘイトを含む陽炎達が無数に散らばり、端から見ても何れが本物なのかが解らなくなった事で、『全部撃ち抜けば解決する』とばかりに泰山巌宝蛇蟲(イミュリティーション.ヴィルワーム)"昂華堅巒(ブリリアント)"は、全身に纏う甲殻よりビームを拡散照射。

 

其のビームは当然の権利の如く『ホーミング能力』を搭載しており、ペッパーが振り撒いた陽炎と他の地中生物達目掛けて降り注ぎ、まるでミラーボールめいた光の雨が次々に着弾する。

 

「おおおおおおお!」

 

局極到六感(スート・イミュテーション)を点火。左手に力を込めて握った事で冥王の鏡盾(ディス・パテル)花を開いて(・・・・・)ペッパーと光を遮る様に面を見せ。真正面で受けた其の光を跳ね返す(・・・・)や、其の行先をFM's(フォッシルマイナーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"へと捻曲げて、飛行能力を支える後翅に直撃・一部を損傷させたのだ。

 

「よし!前提条件『巨大不世出ヤスデのビームが魔力(・・)で出来ている』をクリア!此れならイケる(・・・)ッ!」

 

冥王の鏡盾──────ビィラックが作り上げた甦機装(リ.レガシーウェポン)の一つにして、此の武器に搭載された能力には『レーザーや魔法を反射する』という、純粋な魔法職プレイヤーやビーム攻撃を主力とするモンスターを、此の武器だけで(・・・)『完封勝利』を可能にする真面目に『ヤバい』能力が備わっている。

 

しかも此の反射、武器の耐久値が0にならない限りは理論上だが回復も呪術も含めて、あらゆる魔法と光を跳ね返せる。加えて『盾の中心部分』で攻撃を跳ね返せば、耐久減少を若干だが抑え込めるように出来ているらしく、真正面かつジャストタイミングでのパリィが出来たなら、とてつもない強さを誇る『人権武器』と成るだろう。

 

尤も、此の武器には他の遺機装(レガシーウェポン)甦機装(リ.レガシーウェポン)の類に漏れず、必殺技として【超過機構(イクシードチャージ)】を搭載しているが、非常に残念ながら『今の状態』では其れを使う事が出来ない。おまけに破損すれば深海に居るアトランティクス・レプノルカを狩らなくてはならないので、大事に使う事に関しては変わらない。

 

元より此の武器で成すべき課題(タスク)は唯一つ。FM'sクリサリス"戦災孤児"の後翅を、泰山巌宝蛇蟲"昂華堅巒"のビームを冥王の鏡盾で反射・破壊して、此の戦場に置ける『制空権』を我が物とする事。其の過程で他のモンスター達にダメージを与えつつ、弱点や攻撃が徹せる部位を露出させられれば、其の時点で『充分な成果』だ。

 

(重装甲騎士シオマネキと弾丸跳躍オケラ、巨大装甲列車ヤスデにサイボーグじゃじゃ馬ヘラクレス。全員異なる種族な上に、行動パターンもバラバラで狙ったアクションは期待出来ない………)

 

だからこそ(・・・・・)其の思考を逆転させる。

 

(此の戦場で『最も脅威になる存在を現出』させれば良い!其の為に『奴』には暴れて貰う必要が有る!)

 

泰山巌宝蛇蟲の周りを走り回り、封熱の撃鉄によって残された無数の陽炎(ヘイト)を消滅させる為の、拡散ホーミングビーム攻撃を誘発を促し。いざビームが放たれたならばシオマネキとオケラにも押し付けつつ、サイボーグヘラクレスに鏡盾で反射したビームで後翅を攻撃。

 

着実かつ確実に敵の飛行能力を削り取り、効果が切れた超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を再起動させては、アトロフォスの白蒼翼(はくそうよく)のスタミナ減少軽減を受けて走り。

 

そして超星時煌宝珠でもたらされる特殊状態:白刻閃(はくこくせん)による、特定スキルの再使用時間(リキャストタイム)短縮が織り成す、凄まじい機動力+ヘイト拡散戦法で泰山巌宝蛇蟲"昂華堅巒"の攻撃を利用し、此の戦場を支配し。

 

そして遂に──────

 

「こっ、こ、だああああああああああああああ!!!」

 

二十回目に届くだろうビーム反射。冥王の鏡盾を中心で受けて跳ね返しているとはいえ耐久も削られる中、最高のタイミングと渾身の弾い(パリィし)た感触と共に、反射されたビームが戦災孤児の後翅にクリティカルヒット。風穴を穿って、遂に地面へと叩き落とした。

 

「悪いな、サイボーグじゃじゃ馬ヘラクレス。此処からの制空権は俺の物だ」

 

ミルキーウェイで駆け抜けながら、勇者は冥王の鏡盾をインベントリアへ収納し、取り出したのはヴァンラッシュブレイカー。炎と水の相対する属性を一つに合わせた小鎚と共に、勇者は四体の猛者を討ち果たすべく追い込みを掛ける。

 

戦いは─────更に加速する。

 

 

 






ギアを上げて敵を討て


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