其の頃のサンラクは
此れはペッパーが
フィフティシアに在る聖盾輝士団の拠点にして、ユニークNPC・慈愛の聖女イリステラが居る此の場所に、サンラクは単身でやって来ていた。理由としてはエムルと一緒に居ればSF-Zooやライブラリ含め、面倒な事になりかねないからである。
「んで、此処か………」
昨日の
「む………サンラク殿」
「やぁ、昨日振り。コホン……聖女イリステラはいらっしゃる?」
「はい、裏口からどうぞ」
正面からでは不味いので裏手から入ってくれとの事らしく、やはり其の点には抜かりが無いようだ。裏口を警備する団員に話を通し、衣服を装着。リュカオーンの
「サンラク殿、よく来られた」
「イリステラ直々の依頼なので、聞き逃す訳にはいかないかと」
「うむ……聖女様と謁見を前に、貴殿には少し協力していただきたい事が有ってな」
「──────というと?」
「サンラク殿もクターニッドを倒し、報酬として聖杯を得たのだろう?聖女様は気高き御方だ、一応男性の姿では無く『女性の姿』で彼女と謁見して貰えれば、此方としても非常に有り難いのだが………」
何故か『あからさま』に罠の気配を感じつつも、取り敢えず三分が迫っていたので服を着替え、クターニッドの報酬たる青の聖杯を使用。背は縮み、胸は大きくなり、女体化したサンラクがジョゼットを見ると、彼女の視線は『舐め回す様な』物へと変わった。
「ペッパーさんのも見たけど、此れってアバターの女体化だけじゃなくて、女性として出力からの
まるで何かを納得するかの様に頷き、じっくりと観察しているジョゼットに対し、もしかしてコイツ『其の気』が有るのでは?と予測するサンラク。
「あ、因みに頭装備外した方が良い感じ?女体で鳥頭ってのは、不審者度合いもヤバイだろうし………」
「うぽっびょ」
そう言いつつ己のトレードマークにして、頭装備たる凝視の鳥面を取り外したサンラクだったが、其の顔を見たジョゼットの口から明らかに『人』が出してはいけない声が飛び出た。
「クリクリオメメのコケティッシュ美少女トランジスタグラマー………?は?最強か?エロスの塊?TS系も捨てたもんじゃないわね…………。おまけに服を着ているから、余計に着てない時の姿が想像を掻き立てる二段構えって…………えっ、マジで凄くない?」
小声かつ早口で色々とボヤいていたジョゼットだったが、サンラクに狂気を孕んだグルグル目視線を向けるや、こう言ってきた。
「もうずっと其の姿のままで居るつもりは無い?」
「いや死んだら解除されるんだけどコレ」
「任せなさい、此の世の全てから守ってあげるから安心して?」
「其れ聖女様に対して言うべきじゃね?あとロールプレイ大丈夫かよ………」
三分が経ちそうになったので再び着替え、ジョゼットの案内で辿り着いたのは、協会内の最奥に在る慈愛の聖女 イリステラの部屋であり、ジョゼットが数回ノックを行った後にフランクな雰囲気から、我こそは聖女を護りし盾であると言わんばかりの気迫を纏う。
「イリステラ様、サンラク殿が御越しになられました」
「───入ってください」
ドアが開かれて、失礼しますとサンラクが入れば、イリステラが座っていて。一度男性の姿のサンラクと出会っていた彼女にしてみれば、女性の姿になった事に疑問を抱く。
「木っ端の開拓者サンラク、此処に馳せ参じました。聖女イリステラ」
「サンラク………会談の時には男性の姿、でしたが?」
「我等の
ヴァイスアッシュを相手にやっているロールプレイを、貴族相手に対する物へとチューニングし直して、イリステラと向き合うサンラク。其れを見ていたイリステラはこう言ってきた。
「サンラク様。此度貴方を御呼びしたのは、私の我が儘でも有りますが……。貴方に一つ『御願い』が有るのです。七つの最強種を打ち倒し、確たる強さを証明してみせた貴方に」
そうしてサンラクの目の前に、一つの画面が表示されたのである。
『クエスト【
呼吸を調え、其の画面のYESボタンをタッチすると、慈愛の聖女 イリステラはサンラクへと語り始めた。
「今現在、世界は動き。未だ見ぬ新大陸では───『世界を蝕むドラゴン』と『天覇の龍王』が
「…………ん?」
イリステラの台詞にサンラクは一瞬違和感を感じ。そして其の違和感の正体は、彼女の次の言葉で明らかになる。
「そして、そう遠くない内に此の国では『クーデター』が
「………んんん?」
まるで『未来を予知している』かの様に語る聖女。其れに対してサンラクは問い掛けんとして。
「イリステラ………何故『此れから先に起きる事』を、そう自信に満ちるように言い切れ────」
其の直後、三分が経過した事でリュカオーンの
「………………」
「………………」
「──────御気になさらず、
「……私は、人よりも『多く』を
サササッとインベントリアを操作し、服を取り出して着込む。ジョゼットが吹き出し不可避の中でも、一切の『ブレ』を見せなかったイリステラに、サンラクはイリステラがシャンフロ世界に置ける『メインキャラ』にして、ヴァイスアッシュと同格に比肩する存在だと此の一連の流れの中で『確信』するに至り。
同時にイリステラの言葉が仮に全て『真実』であるならば、ジョゼット達のクラン:聖盾輝士団は『シャンフロのスケジュールという凄まじい情報アドバンテージを所持している事』に気付いた。
「クーデターですが、此れは成功
「─────ふむ?其の先王と御子息が船内で『不運にも』死んでしまう可能性は?」
「
詰まる所、今の統治者たる国王と其の子供が第一王子に命を狙われている。七月の終わりに新大陸行きの船に乗り、移動中の船内で殺られる可能性は低いが、新大陸では新王側が確実に仕掛けてくる。
其れを何とか阻止して、特定の場所まで連れて行く所謂『護衛系ミッション』だと、サンラクは思考した。
「成る程……王国との繋がりが薄い開拓者って事で御座いますか」
「えぇ。其れに……
かの国という単語が出た事で、サンラクの脳内では『ロールプレイを継続せよ』とのオーダーが算出され、彼はイリステラに問い掛ける。
「おや、ウチの
「以前に御会いした事が有りまして」
「成程………承りました、其の依頼御受けしましょう」
「ありがとうございます、サンラク様。三柱の神々に誓って此の御礼は必ず……」
とんでもない事になったと頭をもたげて、サンラクは此の先の事を思考する。シャンフロのスケジュールを知る聖女と、様々な思惑と世界の変化が自分達の見えない所で動き始めている事を、
国を揺るがすクーデター