VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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炎を採ろう




開拓者は死を過程とする。赤は己の意義を以て執行す

×字の入った赤と白のマグマ浮遊球体。仮称として『✕◯君』…………先ずは此の存在が何を以て動くのかを、確かめなくてはいけない。

 

『Fululululululululu…………』

「取り敢えず近付いて………熱ッ!?」

 

およそ25m時点からスリップダメージが発生。多分だが此のダメージは『熱』による物であり、鎧を装備していても内部を『蒸し焼き』にして殺しに来ている。コレはアレだ、ウェザエモンやクターニッド、ジークヴルムにアトランティクス・レプノルカの鎧を着ても意味が無い。此のタイプはリジェネ持ちアクセサリーじゃないと、中心地まで近付けないタイプだ。

 

そう確信したペッパーは、フィールドにスリップダメージを起こす封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を、エフュールのドールフロントで購入したリジェネ持ちアクセサリーに交換して、回復が機能し始めたのを確認した所でポーションを飲み干して再び接近開始。

 

『Fululululululululu…………』

 

✕◯君まで15m、リジェネとスリップダメージは五分五分。ゆっくりと慎重に近付きつつ、此の眠っている存在が『どのような状況で目を覚ますのか』に着目する。先ずは王道としてインベントリから秀刀(しゅうとう)白金(しろがね)】を『qiqiqiqiqiqiqiqiqi……』

 

「ッッッッ!?」

 

明らかに『警戒音』と思われる声が✕◯君から聴こえ、球体が一瞬『大きく膨れた』様に見えたペッパーは、慌てて距離を取りつつも冷静に武器をインベントリに再収納すれば、其れを良しとしたのか✕◯君からは再び『Fululululululululu…………』と、笑い寝息が深層空間に響く。

 

(先ず武器展開もしくは敵意を以ての接近は、✕◯君からすると『アウト』の可能性が有る。じゃあ武器を見せる様にするのは大丈夫かな?)

 

取り出すは雑種剣(バスタードソード)海喰の雑剣(バスタード・ブルー)。ポジティブに捉えるなら、片手で使える両手剣であり、片手剣と両手剣の『ハイブリッド』武器。ネガティブに捉えるなら、片手剣と両手剣の特性が入り雑じった事で、性能が『中途半端』に成った武器。どう?此の武器、ビィラックさんが作ったんだよ?と、そんな風に自慢しながら見せたが、✕◯君からは笑い寝息。

 

ならばと鋒を向けて見た所、再び彼方から警戒音が響いたので、殴ろうとする此方の『意識』に反応しているのでは?と、ペッパーは『仮説』を立て。同じ様に何度か繰り返し試した事で、✕◯君は此方が放つ『攻撃の意志に反応する存在』と確定付ける。

 

「………さて、此処からが『本番』だ。(やっこ)さんにアスカロンを敵意無しで向けたら、一体どんな反応をするのかな?」

『Fululululululululu…………』

 

笑い鼾を続ける✕◯君、取り敢えず実物を出さないと話に成らんと思いつつ、インベントリから朽ち果てたアスカロンを取り出した─────まさに其の時。

 

『Vivivivivivivivivivi…………』

「!」

 

鼾ではない、明らかな変化。そして球体ながらも、あの存在が此方に視線(・・)を向けた気配を感じ取る。同時に放たれる熱の温度が上がり始め、まだ20m離れた地点にも関わらず、襲い掛かるスリップダメージがリジェネを上回った(・・・・)のだ。

 

体力が削られて数十秒後には、四肢の末端が焼かれて黒焦げ処か焼却させられる確信を抱き。しかし開拓者(プレイヤー)であるが故に、彼は其の『死』を自らの『過程』として天秤に乗せる。

 

「✕◯君よ、取り敢えずアスカロンに炎────入れてくれない?」

『Voooooooooooooouuuuuuuu……………』

 

其の言葉を汲み取ってか、浮遊球体が『大きく』───否。まるで『蕾が花を開く』が如く、ぶわり……!とマグマで彩られたクシャクシャの()を広げたのだ。

 

其の翅から鱗粉でも撒き散らすかの様に、だがマグマであるが故に放たれた超高熱の大熱波が、深層空間のあらゆる物を一片残す事無く、文字通り『蒸発』させる。

 

「あ───────」

 

ジュワッ!と骨身が一瞬で蒸発する最後を辿る中、ペッパーが見た✕◯君はマグマの翅を広げし、巨体な『蝶』の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れ(・・)は、いつか来るだろう『来るべき時』の為に、火山の底で眠り続ける事は『苦痛』ですらない。

 

其れ(・・)は、自身が『意思』を持つからこそ成立する感情にして、虫やコンピュータに近い『思考』をするが故に、天蓋の亀裂から落ちてきた侵入者に対して、如何なる『感情』も抱かない。

 

結果からすれば────其れ(・・)にとっては『本当にどうでも良い存在』であった。

 

対応とて、そう望んだからではない。そもそも其れには、生物的な自主性(キャラクター)は存在していない。

 

其れは『A』という干渉に対して、簡単に『B』という答えを返す。そんな単純な行動パターンを束ね、臨機応変に見せ掛けただけの。反応と対応の『システム』にして、今も地底でただひたすらに。己の力を蓄え続ける赤色の■■■■。

 

とある『もう一つの赤』とカテゴリー(・・・・・)を同じくするも、其の原理と出自が明確に異なる存在(モノ)

 

 

 

(にら)がる大赤翅(だいせきし)』と名付けられたモンスターにして、其れは己の存在意義(・・・・・・)に従ったに過ぎないのだから。

 

 

 

其れ即ち『己が持つ力で欠損を補填する』という使命を果たす。例え其れが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()超絶火力の炎を叩きつけた結果、真っ黒な木っ端の生物が一匹消し飛んだとしても。

 

『焠がる大赤翅』は己の炎を必要としていた『鋼』に、確かに自身の力が込められた事に対し、特に何か感慨を抱くようなことも無く…………再び元の状態へと戻った。

 

 

 

地殻の檻の中で、唯々ひたすらに来るべき時に供えて、己の()を高める其の蝶が、地上の光を浴びる日はそう遠く無いのだから。

 

 

 

 

 

 






其れは羽化を待つモノ


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