写し身の強さ
「此れにゃばらぶ!?」
竹刀が巻き上げられて胴体を一閃で打ち据えられた結果、
「─────参った………攻略法が全く見えてこない………」
『
シャンフロの
世界最強の格闘ゲーマーたるリアル・ミーティアスこと『シルヴィア・ゴールドバーグ』の如く『人力TAS』とも形容するべき、極まり過ぎた『最適解の動き』を平然と。プロゲーマーなら出来て当然と言わんばかりの挙動を叩き付けて。
総じて地莉・ペッパーの中で、裏ボスたる龍宮院 富嶽という人物は『ウェザエモンとシルヴィとユラを掛け算して、3で割り算をしなかったハイブリッドミックスの、バグレベルのハイパーモンスター』という評価が下されたのだ。
「此のまま挑んでも返り討ちに合うだけ………さてどうしようか」
短歌を書き込む事で、再挑戦の権利自体は得られる。極論もっと技術や反射神経、動体視力を鍛えてから挑むのも有りでは在るが、来る
地莉・ペッパーには確信が有る………彼を越えられたなら、自分はもっと強くなれる。ユラさんやシルヴィを相手にもっと長い時間、真正面から立ち回れるだろうという────そんな確信が。
「…………あ、そうだ。こういう時こそ、別のゲームで負けっぱなしの『流れ』を払拭しよう」
善は急げとの御利益の言葉に従い、剣道教室から地莉・ペッパーはログアウト。水分補給とトイレに十八分の仮眠休憩を取った後、ダウンロードした『幕末』を起動する。斬って斬られてが応酬する修羅の國、江戸時代末期の血を血で洗う謀略と裏切りの連鎖反応たる蟲毒の世界へ、ブラッドペッパー…………通称『
「「「「ログイン天ッッッッッ誅!」」」」
「「「「ログボ天!誅ッッッッ!!」」」」
「すいません、其の手の類いは何度も体験しましたので!」
襲い掛かるプレイヤー達、其れも初心者やログイン勢を狙った浪人や幕府側の連中に笑顔で、かつ其の殺り口を知っているブラッドペッパーは、ユラリフワリと身のこなしで攻撃を往なしながら、警戒を弛めずに次々と敵を討ち取り倒し、散らばった武器や金を獲得していく。
「ちょ、ぎゃあああああ!?」
「ぶ、ブラッドペッパーだああああああ!?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?血煙!!?!」
彼の恐ろしさを知らないまま襲い掛かったプレイヤーは、断末魔を上げては返り討ちにされて。彼の恐ろしさを知るプレイヤーは逆に、慌てふためき逃げ去って行くのを見て。当の本人は彼等彼女等の動揺っぷりに、唯々「えぇ……」と言葉を溢した。
「うーん………有名に成り過ぎたって奴か?」
キョロキョロと辺りを見渡せば、隠れているプレイヤーが一人居て。取り敢えず襲撃者を天誅して得た刀を槍投げの要領で投擲、其のプレイヤーの脇腹にブッ刺さるより速くリボルバーを手に取り、刺さった瞬間にはダッシュと共に引き金を引く。
其の弾丸はプレイヤーの左肩を直撃して、体力を残り二割まで削り取るや、疾走の中でブラッドペッパーは再度引き金を引いて、プレイヤーの頭をぶち抜いた結果、見事にキルへと持っていった。
「さて………何処かに隠れてないか────!」
殺気として首筋に伝わる電気信号、襲い掛かる気配は────長屋の
『余韻天誅だゴルァ!!』
「うぉっと!!!」
長屋から天誅を仕掛けた敵を回避しつつ、左手に短刀を逆手持ち・右手にリボルバーを装備して、周囲に警戒網を張り巡らしながら、襲撃者に相対する。
砂埃の中から現れたのは『般若の面』を頭に乗せて、着物を『着流し』の袴を着けた『男性プレイヤー』。両手には刀の二刀流で、スラリ───と。剣筋が淀み無く振るわれる様は、幕末の経験がまだまだ浅いブラッドペッパーの目にも、一目で『歴戦のプレイヤー』だと確信するに至り。
「ん………?」
そんな彼が此方を見て、目をパチクリとさせており。疑問を抱いたブラッドペッパーが、襲撃者の頭上に在るプレイヤーネームを見れば、其処には『サンラク』の表記が。
「えっ、サンラク!?」
「ブラッドペッパー!?マジで!?」
御互い、幕末の町のド真ん中にて声を上げたのだった………。
「幕末のランカー並に有名なんだな、ブラッドペッパーよ」
「ん~……経験から予測して常にあらゆる事態を想定すれば、ある程度は何とか対処出来るよ。実際ログインログボ天誅も、リスキルタイプのFPSレトロゲームで経験していたのが大きかったし」
幕末の町の大通り、其の一角に在る茶屋にてブラッドペッパーとサンラクは現在、抹茶の御供に団子でティータイムをしていた。
周囲警戒及びサンラクの動きに対し、何時でも動ける様にしていると、何処からか「あ、サンラクだ………」とか「
「祭囃子…………俺にも二つ名が付いた、か」
「祭、祭………幕末にもイベント在るの?」
「あぁ。俺の場合は大体『幕末のイベント』に、ヒョッコリ顔を出して暴れるから其れが理由かねぇ……」
「俺なんて血煙だぞ。カッコ良いから良しとするけども、もうちょい捻った名前で『血乃雨』みたいなのが欲しかった………」
「血煙でも充分だろ」
「其れもそうか」
みたらし団子を口に運び、ふと団子串を見ながらブラッドペッパーは、サンラクに問い掛ける。
「なぁ、サンラクよ。団子串で人って殺せる?」
「出来るぞ、というか幕末ランキング四位の『針千本』は息をするように、団子串で刀に勝つからな」
「物理法則も有ったもんじゃない……」
サンラクを、ブラッドペッパーを。互いに横目にしつつも御互いに別の方角へと団子串を投擲し、隠れて気を窺っていたプレイヤーに命中させ。片やリボルバーの、片や火縄銃で遠距離攻撃して、各々のプレイヤーを倒してみせた。
「殺るか」
「あぁ、殺ろう」
そういう事になった。ブラッドペッパーは逆手刀と銃のサンラクは刀の二刀流と、御互いに形は違えど各々の力を発揮しやすい戦闘スタイルを取り、静かに構える。
さぁ、さぁ、さぁ。いざ尋j「血煙だな?やっと見付けたぜ」
幕末の町に風が吹く。背中に掲げるは『誠』の一文字、しかし其の字に掲げられた意味は、厳格にして絶大。幕末の京や江戸にて起きた『尊皇攘夷』の不穏分子を叩く役目を与えられた、幕府の武力警備隊『新撰組』。
彼は其の新撰組ランキング『一位』にして、幕末ランキング『二位』の実力者。そして対レイドボスたる『ユラ』との戦いに置いては、彼が居るか居ないかで虐殺展開が早いか遅いかが変わる程の『大戦力』。
「貴方は…………『
「ほぉ?俺の名を知ってるか、血煙」
当千、別名『俺達の勇者』。其のプレイヤーがサンラクとブラッドペッパーの戦いに、突如として乱入して来たのである………。
二位が来まして