当千乱入
別名『俺達の勇者』………レイドボス兼レイドプレイヤーたる幕末最強の『ユラ』を相手にする場合、彼と千人近いプレイヤーが居る事で
「サンラク…………は、居ないか」
相対していた筈のサンラクは、此方が目を離した隙に何処かへと退避したらしい。おそらく隠れ潜んで、最高のタイミングで自分と彼を天誅する腹積もりだろう。最もそんな事はさせないし、させるつもりも無いが。
「相変わらず逃げ足が早い」
「時に臆病者程、よく生き残るって言いますから」
「お前は単騎でレイドボスに二度も挑んで、数分生き残ったっつう話じゃねぇの」
無知なのか蛮勇なのか………当千はどうやらブラッドペッパーの実力が本物か否か、其れを確かめるべく乱入してきたらしい。
「………………」
「成程な、最初の段階を越えただけの事は有る───か!」
「ぅおぁ!?」
超速度の肉薄+流れる様に抜刀からの切り上げ、其れを相対時点で『想定していた』ブラッドペッパーが、何とか紙一重の所で回避、からのリボルバーで銃撃を三発展開。
「
チュイン!と三回、甲高い音と共に何かが『斬られた』。
「ハハハ……!マジか────!」
乾いた笑いがブラッドペッパーの口から漏れる。当千は
「弾丸斬り
「成程、幕末ランカーの
「そういう事だ、天誅!!!」
迫る当千、銃を捨てる血煙。乱れる様に襲い掛かり、然れども其の一撃一撃が、当千というプレイヤーの此処までの積み重ねで。
己が目指すべき究極の頂点たる、幕末最強を打倒するという一点に絞り込まれ、凝縮された凄まじき剣劇。だがブラッドペッパーも、はいそうですかと黙って天誅される程、生半可な精神はしていない。
「うぉ、ちょっ、であわぁ!?て、っあ、ぶぇ!?」
レイドボスたるユラを相手に三分生き残ってみせた男は、当千が繰り出す攻撃モーションを全力で『学び』、あらゆるシチュエーションより派生する最適な攻撃手段を『予測』し、幕末やレトロゲームで得てきた経験と共に攻撃を『回避』する。
まだまだ対応が追い付いていないからか、時折危うい場面も在る物の、ゆらりふわりとブラッドペッパーの挙動が変わり始め、煙の様に捉え処が無くなり始めていく。
(………奴がレイドボス相手に数分生き残れた
そうして当千は、血煙を相手に『思考する』時間を与えてはいけない。奴が此方の手を『読み切れる』様に成ったが最後、よっぽどの事が無い限りは『ターン』が永久に返ってこないと『確信』。
即ち血煙相手には『兎に角攻め潰す事こそが最適解』であると判断し、ペッパーを相手する時に置いての『完全解答』を導き出すに至って。
「天誅!!!」
「おわぁ!?」
当千の太刀筋の
「ちょ、わっ、うおおおぉ!?」
「どうした?さっきまでの動きで反撃してみろや血煙!」
「そんな攻撃の中で攻めるのは、明らかに『罠』だね……!だから攻めない、其れも全部『思考に組み入れて』やるッ!」
ブラッドペッパーの『読み』は当たっていた。速による攻めに飛び込んだ瞬間にカウンターを叩き込む、其れが当千の狙いであり。彼は『当千が此方に対するメタに気付いた可能性』を、自身の思考の片隅に『想定している』からこそ、守りと回避で比重を固めた動きで当千の速の太刀筋に食らい付く。
「天誅!」
「当たって堪るか!」
剣劇が飛び交い、大江戸の町にて勇者と血煙が走り行く。幕末のシステムは『プレイヤーやNPCを斬れば斬る程に恩恵が得られる』のが基本。当然ながらバトルフィールドを拡げれば、他のプレイヤーにも気付かれるのは必然で。
「げぇ!?ブラッドペッパーに当千じゃねーか!?」
「勇者と血煙が戦ってる!?」
「そういえば、血煙は祭囃子と戦う雰囲気だった所に当千が乱入したとかって…………」
「其れマジ?」
「ってか此方向かってきてるじゃん!?」
「ぎゃああああああああああ!?」
道行くプレイヤー達がブラッドペッパーと当千の戦いに巻き込まれ、大江戸の街並みに悲鳴が木霊している。モンスタートレイン等の行為は『幕末の世界』に限ってだが『巻き込む側』が悪では無く、『巻き込まれた側』が悪と決まっているそうで、敵を疲弊させる・自分の存在を隠す・不意討ちに持っていく等、有効な攻撃手段の
「幕末らしく!頭使ってジャイアントキリングと洒落込むぞ!」
「じゃあ、見せて貰おうかァ!」
片や俺等の勇者たる当千の動きを学び取り、ヒット&アウェイ戦法・バージョン:当千(仮)が出来上がったので、いよいよ以て反撃へと移らんとするブラッドペッパー。
片やレイドボス相手に単騎で数分持ち堪えてみせた血煙が、其の本領を発揮して襲い掛かるのを倒して、レイドボスへの手応えと試金石にしようとする当千。
そして此の二人が疲弊した所を強襲して、纏めて持ち物を押収してトンズラしてやるかと、密かにタイミングを見計らっているサンラク含めた、他のプレイヤー達が注目し。
「楽しそう」
『!?!!!?!?!!!?』
着物と袴を着付け、羽織を肩に流すように掛けた其のプレイヤー。其の頭上のプレイヤーネームには、幕末最強にして総合ランキングと同じ名たる『ユラ』を掲げ。
ほわほわともぽわぽわとも言える気配を纏い、しかし細目をゆっくりと。僅かながらに『開いた』彼はブラッドペッパーに当千を、そして二人の戦いの結末を見ようとしている者達へ……………
「僕も混ぜて?」
頬を吊り上げ、参戦の意を表明した。
降臨、騒ぎを聞き付け