VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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当千乱入




勇者荒ぶる、血煙荒ぶる。そして────

辻斬(つじぎり)狂想曲(カプリッチオ):オンライン────通称『幕末』の総合ランキング二位、そして此の世界の新撰組ランキング一位という、堂々たる記録を保持しているプレイヤー『当千(とうせん)』。

 

別名『俺達の勇者』………レイドボス兼レイドプレイヤーたる幕末最強の『ユラ』を相手にする場合、彼と千人近いプレイヤーが居る事で()()()()()()()()()()()()()()()()………とまで言われている強者にして猛者。

 

「サンラク…………は、居ないか」

 

相対していた筈のサンラクは、此方が目を離した隙に何処かへと退避したらしい。おそらく隠れ潜んで、最高のタイミングで自分と彼を天誅する腹積もりだろう。最もそんな事はさせないし、させるつもりも無いが。

 

「相変わらず逃げ足が早い」

「時に臆病者程、よく生き残るって言いますから」

「お前は単騎でレイドボスに二度も挑んで、数分生き残ったっつう話じゃねぇの」

 

無知なのか蛮勇なのか………当千はどうやらブラッドペッパーの実力が本物か否か、其れを確かめるべく乱入してきたらしい。

 

「………………」

「成程な、最初の段階を越えただけの事は有る───か!」

「ぅおぁ!?」

 

超速度の肉薄+流れる様に抜刀からの切り上げ、其れを相対時点で『想定していた』ブラッドペッパーが、何とか紙一重の所で回避、からのリボルバーで銃撃を三発展開。

 

(あめ)ェ!」

 

チュイン!と三回、甲高い音と共に何かが『斬られた』。

 

「ハハハ……!マジか────!」

 

乾いた笑いがブラッドペッパーの口から漏れる。当千は斬ったのだ(・・・・・)────ブラッドペッパーが引き金を引いて放ったリボルバーの弾丸を、弾丸の軌道を読み切った上で真正面から斬り飛ばしたのだから。

 

「弾丸斬りなんざ(・・・)、ランカーやってりゃ『当たり前』に出来る」

「成程、幕末ランカーの必修科目(・・・・)って事か……!」

「そういう事だ、天誅!!!」

 

迫る当千、銃を捨てる血煙。乱れる様に襲い掛かり、然れども其の一撃一撃が、当千というプレイヤーの此処までの積み重ねで。

 

己が目指すべき究極の頂点たる、幕末最強を打倒するという一点に絞り込まれ、凝縮された凄まじき剣劇。だがブラッドペッパーも、はいそうですかと黙って天誅される程、生半可な精神はしていない。

 

「うぉ、ちょっ、であわぁ!?て、っあ、ぶぇ!?」

 

レイドボスたるユラを相手に三分生き残ってみせた男は、当千が繰り出す攻撃モーションを全力で『学び』、あらゆるシチュエーションより派生する最適な攻撃手段を『予測』し、幕末やレトロゲームで得てきた経験と共に攻撃を『回避』する。

 

まだまだ対応が追い付いていないからか、時折危うい場面も在る物の、ゆらりふわりとブラッドペッパーの挙動が変わり始め、煙の様に捉え処が無くなり始めていく。

 

(………奴がレイドボス相手に数分生き残れた理由(ワケ)。其れは奴自身の持つ経験則と戦闘中においても敵の動きに目を離さず、自らの動きを常に改良し続けているからか)

 

そうして当千は、血煙を相手に『思考する』時間を与えてはいけない。奴が此方の手を『読み切れる』様に成ったが最後、よっぽどの事が無い限りは『ターン』が永久に返ってこないと『確信』。

 

即ち血煙相手には『兎に角攻め潰す事こそが最適解』であると判断し、ペッパーを相手する時に置いての『完全解答』を導き出すに至って。

 

「天誅!!!」

「おわぁ!?」

 

当千の太刀筋の()が変わる。先程までの『剛』に重きを置いた其れとは違い、今度は血煙が思考と対応するのを許さない『速』に重きを置いた太刀筋。反撃に移りたくとも移れない、移させない攻撃こそが今の当千が行っている事なのだ。

 

「ちょ、わっ、うおおおぉ!?」

「どうした?さっきまでの動きで反撃してみろや血煙!」

「そんな攻撃の中で攻めるのは、明らかに『罠』だね……!だから攻めない、其れも全部『思考に組み入れて』やるッ!」

 

ブラッドペッパーの『読み』は当たっていた。速による攻めに飛び込んだ瞬間にカウンターを叩き込む、其れが当千の狙いであり。彼は『当千が此方に対するメタに気付いた可能性』を、自身の思考の片隅に『想定している』からこそ、守りと回避で比重を固めた動きで当千の速の太刀筋に食らい付く。

 

「天誅!」

「当たって堪るか!」

 

剣劇が飛び交い、大江戸の町にて勇者と血煙が走り行く。幕末のシステムは『プレイヤーやNPCを斬れば斬る程に恩恵が得られる』のが基本。当然ながらバトルフィールドを拡げれば、他のプレイヤーにも気付かれるのは必然で。

 

「げぇ!?ブラッドペッパーに当千じゃねーか!?」

「勇者と血煙が戦ってる!?」

「そういえば、血煙は祭囃子と戦う雰囲気だった所に当千が乱入したとかって…………」

「其れマジ?」

「ってか此方向かってきてるじゃん!?」

「ぎゃああああああああああ!?」

 

道行くプレイヤー達がブラッドペッパーと当千の戦いに巻き込まれ、大江戸の街並みに悲鳴が木霊している。モンスタートレイン等の行為は『幕末の世界』に限ってだが『巻き込む側』が悪では無く、『巻き込まれた側』が悪と決まっているそうで、敵を疲弊させる・自分の存在を隠す・不意討ちに持っていく等、有効な攻撃手段の()()に過ぎない。

 

「幕末らしく!頭使ってジャイアントキリングと洒落込むぞ!」

「じゃあ、見せて貰おうかァ!」

 

片や俺等の勇者たる当千の動きを学び取り、ヒット&アウェイ戦法・バージョン:当千(仮)が出来上がったので、いよいよ以て反撃へと移らんとするブラッドペッパー。

 

片やレイドボス相手に単騎で数分持ち堪えてみせた血煙が、其の本領を発揮して襲い掛かるのを倒して、レイドボスへの手応えと試金石にしようとする当千。

 

そして此の二人が疲弊した所を強襲して、纏めて持ち物を押収してトンズラしてやるかと、密かにタイミングを見計らっているサンラク含めた、他のプレイヤー達が注目し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しそう」

『!?!!!?!?!!!?』

 

赤子の様な顔立ち(ベイビーフェイス)の『男の娘』と思われる声が声を発した其の瞬間、此の場にいた全プレイヤーの毛という毛がゾゾゾゾゾッッッッ!!!と一瞬で逆立ち、其の方角を凝視する。

 

着物と袴を着付け、羽織を肩に流すように掛けた其のプレイヤー。其の頭上のプレイヤーネームには、幕末最強にして総合ランキングと同じ名たる『ユラ』を掲げ。

 

ほわほわともぽわぽわとも言える気配を纏い、しかし細目をゆっくりと。僅かながらに『開いた』彼はブラッドペッパーに当千を、そして二人の戦いの結末を見ようとしている者達へ……………

 

 

「僕も混ぜて?」

 

 

頬を吊り上げ、参戦の意を表明した。

 

 

 

 






降臨、騒ぎを聞き付け


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