VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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レイドボスさんの襲来




呉越同舟のボンディング

五条大橋とはスケールこそ小さな、和風テイストの幕末とマッチしたアーチ状の橋の天辺に立つ、総合ランキング一位の最強プレイヤーにして、レイドボスの異名を持つ『ユラ』の襲来。

 

其れは今此の場に立つ総合ランキング二位・新撰組ランキング一位、俺達の勇者こと『当千(とうせん)』と、ランキング圏外の血煙こと『ブラッドペッパー』。そして祭囃子(まつりばやし)こと『サンラク』を始めとし、隠れて様子や機を窺っていたプレイヤー達は武器を構える。

 

「おいおい、こりゃあ愉しくなってきたなぁ?」

 

にぃぃぃ………と、獰猛な笑みで当千が笑う。血煙の匂いに釣られたのか、何にせよ標的が向こうからやって来た事を喜ばしいと思ったのか。

 

「やぁ、当千。ブラッドペッパー」

「こんにちわ、ユラさん。あと………其処に居るでしょ、サンラク」

「何故バレたし!?」

「盛大に自爆したんだよなぁ………」

 

当てずっぽうで言ってみたが、やはり近くに隠れていた。お前絶対漁夫の利狙ってただろな、そんな位置からサンラクが出て来て。ブラッドペッパーは二人に対して、こんな提案をしてみたのだ。

 

「さて………当千さん、サンラク。ユラさん相手に『俺達で組まない』?」

「バカ言え。背負ったネギと一緒に鴨鍋にして、胡椒で味付けしてやるよ」

「言うじゃないのレアエネミー共、逃げるコマンド打つ前に叩き斬ってやるよ」

 

うん、知ってた。でも彼を前にしてそんな事言ってて良いのだろうか?

 

「やるの?やらないの?」

『天誅!!!』

 

幕末はコレだがらこそ『面白い』。此の混沌たる状況で自分の目標(タスク)は『サンラクと当千と共闘』して、レイドボス相手に押せ押せムードを作り出し、周りのプレイヤー達も巻き込んでの『レイドボス討伐戦』に自然な形で持ち込む事だ。

 

其の為には彼の……レイドボスさんとの攻防を二人にぶつけつつ、共闘戦線へ持っていく事が重要になる。其れも此の人という貌をした、正真正銘の『化物』を相手にしながらという、難易度の概念が一周回って螺切れてしまった状況で────である。

 

当千とサンラクが互いに効率重視の二刀流を仕掛けようとしたので、当千の振り上げに合わせてブラッドペッパーは刀を上空に投げつつ、全力ダッシュでユラに突撃。手持ち武器から二丁のリボルバーを取り出し、当千の首とユラが直線上に成るように銃撃。即座に反復横飛びで跳躍と横回転でサンラクと肘と、ユラが直線上で繋がる場所を陣取って発砲した。

 

当然ながらそんな見え透いた攻撃は三人に通用する事は無く、だが明確にブラッドペッパーが自分達に喧嘩を吹っ掛けてきた事で、どうやら効果は有ったらしい。

 

「天誅」

「うぉ!?」

「ッ!?」

「ひょえ!?」

 

投げた刀が落ちて、地面に刺さったと同時に。レイドボスたるユラが、標準装備の錆光(さびみつ)二刀流を切り替える。手にはブラッドペッパーがやった二丁のリボルバー、まるで『そんな回りくどい事するより、こうした方が最高率で殺せる』とレクチャーでもするかの様に、六発の発射で三人各々に掠り傷を着けて、ついでとばかりに逃げ遅れたプレイヤーを二人程キルしてみせた。

 

「ばぁん、ばんばん♪」

 

まるで『挑発』だ、三人全員で掛かっておいで?とでも言われているかに等しい、幕末最強からの御誘い。其れによって此の場に居た三人の、進むべき道は決まったようだ。

 

「共闘戦線、張ります?」

「上等だ、やってやろうじゃねぇか」

「OK、ブラザーズ。レイドボスさんをブッ倒そうぜ」

 

千人単位で漸く倒せる領域に居るレイドボス:ユラを相手に、勇者・血煙・祭囃子の異色な三人が幕末最強へ戦いを挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銃弾が飛び交い、鉄礫を斬り落とす音が鳴る。

 

「リロード」

「相変わらず、惚れ惚れするウインドウ操作だぜ………とぅりやぁ!」

「そうだ、そうこなくっちゃなぁ!」

 

自分は今、レイドボスことユラさんの絶技の一端を目の当たりにした。彼が射撃を行ってリボルバーを空に投げ、手持ち武器から弾が込められたリボルバーと錆光を展開してきた。

 

だが、驚くべきは()()()()()()────展開する為のウインドウ操作を有ろう事か『自身の小指』で、其れもサンラクと当千の二択を迫る斬撃を、完全解答(パーフェクトアンサー)によって凌ぎながらである。

 

だが、ユラが空に投げたリボルバーの『発射回数』をブラッドペッパーは聞き逃さなかった。あの二つにはまだ『二発ずつ弾を残している』事を…………!

 

「させない!」

「!」

 

弾切れのリボルバー二つを投擲して、ユラが投げたリボルバーに当てて選択肢を潰しつつも、各々が別の武器を取り出して肉薄する。

 

「やっぱり俺にはコイツが馴染む(・・・)!」

 

其れは、前回の幕末プレイでログアウト前に手にした物。其れは、此の世界にも存在する刀鍛冶の者が使う道具の一つ。其れは、熱した鉄を叩いて刀へと精錬する為に使う『小槌』。

 

「第二ラウンドだ、やってやるぞユラさん………!」

 

腕を交差しながらガードするも蹴り飛ばされる祭囃子と、リボルバーの射撃で太腿に掠り傷を負った当千の、二人が復帰するまでの僅かな時間稼ぎを血煙が買って出る。

 

「本命?」

「一番手に馴染んだ武器ですかね。言い換えるなら『バージョン2』って奴でしょうか?」

「良いね」

 

右手に錆光はクリティカルさえ出せれば、人体を一刀両断に出来る。だがレイドボスたるユラは化物である以前に『人間』だ、永久にクリティカルを出し続けられる訳じゃない。

 

「錆光の特性は『クリティカルで確殺可能』だが、逆に言えば『クリティカルが出せなければ』、錆び付いたナイフに過ぎないッ!」

 

前回と前々回の戦闘で得てきたデータを総動員、銃弾の攻撃は急所以外を必要経費として割り切る。斬撃を横から弾いて砕き、追加で取り出される錆光と彼の視線を見、無作為に振るわれる錆光の太刀筋の中で動き、左手のリボルバーから放たれた弾丸で右手首が吹き飛ぶが、右蹴りでリボルバーを下から弾き飛ばす。

 

「天誅」

「インターセプトォ!?」

「おら、さっさと下がれや!!」

 

振るわれる錆光をサンラクがブラッドペッパーの襟後ろを掴んで地面に倒して回避させ、其の隙を当千が錆光を横から弾いて前衛を受け持つ。やっているのは至ってシンプルな『トライアングルフォーメーション』、当千をメインとしてブラッドペッパー・サンラクが隙を突き。当千がノックバックされたなら、ペッパーかサンラクで繋いで戦線を維持する。

 

幕末という修羅の世界で産まれた、呉越同舟から成る『絆』。事前の打ち合わせすらない、即興(アドリブ)による『進行の連鎖(ラッシュ)』。其れでも確かに三人の動きは、其の時其の時の自身に出せる『最善手(ベスト)』を選択し、たった三人でありながらもレイドボス相手に食らい付いていた。

 

そして其れは幕末最強の。

 

 

 

 

 

 

ユラの『本気』を引き出させる()()()と成った。

 

 

 

 

 

 

「良いね。良い。だから─────ちょっと本気出す」

 

彼が最も得意とする錆光を捨てて。其の手で虚空より取り出すは、二天一流の剣豪・宮本(みやもと) 武蔵(むさし)と巌流島の決闘にて用いた、佐々木(ささき) 小次郎(こじろう)の愛刀として知られる『物干し竿』と思われる大太刀(・・・)

 

其れを見た当千は目を見開き、獰猛な笑みを浮かべ。

 

其れを見たサンラクは引き吊った顔で、己の命運が決まった事を察し、ランカー報酬を持ってこなかった事をナイスだと思い。

 

其れを初めて見たブラッドペッパーは一体何だアレはと、疑問の中で小槌を握り直す。

 

「おぅ、血煙に祭囃子。ありゃあ滅多に拝めねぇ、レイドボスの『ガチ武器』だぜ………!」

「………後学の為に名を聞いても?」

「名を『斬星竿(きりぼしさお)』、正月に行われた巌流島イベントの『ランキング一位報酬』。能力は非常にシンプル、刀を振るう時の『空気抵抗の軽減』だ」

「「………あの長さで(・・・・・)?」」

 

ブラッドペッパーとサンラクが、ユラの握った刀を見ながら同時に呟いた。斬星竿という大太刀、其の長さたるや持ち手含め、『全長五メートル』という大得物。一説によると、馬に乗った敵将を纏めて叩き斬る為の『斬馬刀』とも称され、先ず受けたら確実に『死ぬ』のは決定的だ。

 

「ふふ………少人数で、初めて出したかな?」

 

そして此方の心情なんぞ露知らず、レイドボスたるユラは三人を。月光を背にして細目から僅かに覗いた瞳孔と共に、純心無垢な微笑みを向けながらに言ったのだった………。

 

 

 

 

 






ギアが上がる


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