VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いを終えて




ビリーブ・ザ・ソードマスター

「………………名案だと思ったんだがなぁ」

 

幕末からログアウトし、夕食に作った回鍋肉定食を食べる梓はそう小言を溢していた。

 

当千・サンラクと共同戦線を張って戦ったあの最終局面、レイドボスたるユラを弾丸パイルバンカーで脳天を撃ち抜き、倒すといった算段だったのだが、彼は其れを更に躱わし、此方を格闘によって一方的にボコボコ、そして天誅せしめる凄まじい攻撃で圧倒するといった、まさに『最強』に相応しき力を見せ付けたのだ。

 

「まぁでも………最後に片耳をブチ抜いて、欠損させたから良いか。サンラクと当千の援護が有ったとはいえ、今までで一番のダメージを負わせたのは事実だからね」

 

単騎では僅かな斬傷止まりだったが、三人で弾丸一発の被弾まで持っていけたのは、大きな一歩そして前進である。と、自身のスマフォにEメールが着信。送り主はサンラクからであり、内容はこうなっている。

 

 

 

 

 

件名:お前のヒット&アウェイ戦法について

from:サンラク

to:ペッパー

 

よう、ペッパー。幕末で第三者視点からお前の動きを見てたんだけどよ、お前リアルでも剣道の習い事やってるのかって動きしてたよな?誰かの戦いからインスピレーション受けた感じ?

 

 

 

 

 

剣道の習い事はやっていないが、VRの剣道道場ならやっている。ならば何故そんな質問をしたのか?梓はサンラクへとメールを用いてやり取りを開始、二人の話の内容が以下の様になっている。

 

 

 

 

件名:Reお前のヒット&アウェイ戦法について

from:ペッパー

to:サンラク

 

ヒット&アウェイ戦法はあるレトロゲームのラスボスの動きを参考にして、自分なりに改良した物なんだよね。其の人、いや人って言って良いのかな?………まぁ、其の動き方に感銘を受けたってのは事実かもね。

 

サンラクはギャラクシー・ブレイダーズってゲームは知ってる?ずっと昔に発売されたレトロ剣劇アクションゲームだけど

 

 

 

 

 

件名:ReReお前のヒット&アウェイ戦法について

from:サンラク

to:ペッパー

 

俺がそんなレトロゲームを知ってる訳ねーだろ。まぁ一応調べてきた。情報サイトじゃ全レトロゲームの中でも五指に入る、とんでも難易度のラスボスらしいな

 

 

 

 

 

件名:そう、其の通り

from:ペッパー

to:サンラク

 

そっちだけ動きに三倍近い補正入ってない!?なレベルの挙動。完璧に取ったってタイミングでも紙一重で回避かパリィ。おまけに下手に受けて体勢を崩されたら、最速最短挙動で一気呵成に攻め立てられて体力全損なんて当たり前にしてくる。

 

しかも攻撃パターンは俺の知る限り10通り、此方の攻撃パターンに合わせて自在に変えてくるし、一撃一撃が兎に角重過ぎるんだ。多分VRリメイクされたら難易度馬鹿じゃない!?って叫ぶ自信が有るね。アレはキリングレンジに飛び込んで、常に死地圏内で戦わなきゃいけない奴だった。

 

名前がヴルム・ハーフニィル、ヒット&アウェイ戦法は彼の動きを元にしている。流石に攻撃力は真似出来る自信は無いけどな…………

 

 

 

 

件名:Reそう、其の通り

from:サンラク

to:ペッパー

 

マジか………いや寧ろリメイク来て欲しいわ。ペッパーが其処まで言うラスボスって奴が、俄然気になってきたわ

 

 

 

 

 

件名:ReReそう、其の通り

from:ペッパー

to:サンラク

 

因みに其のラスボスだけでも滅茶苦茶強いのに、特定の条件を達成する事で初めて対峙出来るヴルム・ハーフニィルの全盛期再現体、通称:真ラスボスは其のラスボスの動きや思考が桁違いレベルの物に変わる。

 

おまけにゲームのトロコンする場合、其の真ラスボスを倒すのは絶対必須で、攻略迄に約三週間の時間を有しましたわ……

 

 

 

 

 

件名:ReReReそう、其の通り

from:サンラク

to:ペッパー

 

更にクソ難易度の奴居るんか…………

 

 

 

 

 

 

 

「クソゲーマーたる者、やっぱり気になっちゃうか……」

 

メールを終えて、回鍋肉を完食し。食器を洗いながらに思い出すは、ギャラクシー・ブレイダーズで其のラスボスとなったヴルム・ハーフニィルと、真ラスボスの全盛期再現体との戦いの記憶達。

 

「アレは本当にヤバかった………ゲームのやり過ぎ!って御袋に怒られたっけ」

 

あの頃は昼夜問わず真ラスボスを攻略する為、勉強やら食事が疎かになってしまった事があり、母親に凝っ酷く叱られたのを思い出した梓は、一人苦笑いを浮かべていた。

 

「まぁ実際学べる事も多かったし、あの剣劇には惚れ惚れさせられたのは事実だからなぁ………」

 

剣を振り切る速度、一刀流であらゆる状況から攻防へと繋ぎ、剛剣の飛ぶ斬撃で銀河さえ断ち切ってみせた彼は、本当に凄まじい剣豪だった。もし叶うなら墓守のウェザエモンと戦って、どちらが強いか見比べてみたい程に。

 

「………………ん?」

 

ヴルム・ハーフニィルのモーションを思い出していた最中、彼の脳内にてパチリ……!と電流(スパーク)が走った。

 

「………んんん?確か龍宮院 富嶽は二刀流で、でも師匠のヴルム・ハーフニィルは一刀流だが──────ッッッッッッッッ!?!?!」

 

モーション・踏み込み・動かし方。記憶に刻まれ残り、今現在の己を支え続けるヒット&アウェイ戦法の元となったヴルム・ハーフニィルの動きと、記憶に刻んだ龍宮院 富嶽の動きを浮かべた刹那、彼の脳内にビッグバンが起きた。

 

「いや、いやいやいやいや………!?まさか、そんな事有るのか!?」

 

もし其れが正しいならば、今すぐに確かめなくてはいけない。きっと此処を逃せば、二度と思い出せないような気がする。梓は食器を洗ってトイレで用を足し、急ぎ『龍宮院 富嶽全面協力! VR剣道教室・極』を起動。タイトル画面に在る、書道の筆に墨汁と書初め用の紙に『合言葉』を書き込み、龍宮院 富嶽のトレースAIに対峙する。

 

龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)………ヴルム・ハーフニィル………」

 

初手の踏み込み、攻め方、攻撃時の二刀流モーション。最強の剣聖が一気呵成に、雪崩の如く攻め込んでくる。

 

「ッおぁ!?」

 

剛剣の一打をギリギリで防げど、次の攻撃が襲い掛かる。距離を離せば、縮地か何かと見間違うレベルの移動。紙一重の回避と最適解が極まった連撃に、地莉(チリ)・ペッパーは押し込まれながらも龍宮院 富嶽の写し身と相対し、其の攻撃パターンと身体の動かし方を己の思考へと組み込み、蓄積されているヴルム・ハーフニィルのモーションと照らし合わせていく。

 

「っ、ぁう……こな、くそっ!?此のまま、やブ!?」

 

胴体一閃に叩かれ、吹っ飛ばされて倒れた地莉・ペッパー。其の息は絶え絶えで、受けた衝撃で暫く立ち上がれそうに無い。

 

「………………ふ、ははは…………!ははははは!」

 

地莉・ペッパーは笑っていた。彼は自分が『おかしい』から笑ったのでは無い。こんな『偶然』が在ったのかと、運命の不思議な廻り合わせに『感謝』していたからだ。

 

腹部の痛みが残るが、漸く起き上がれる様になり。彼は電脳空間に顕現した、今は亡き剣聖の写し身を見ながら言ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴルム・ハーフニィル!俺の師匠(・・・・)の元に成ったのは、貴方(・・)だったんだな!────龍宮院 富嶽ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 






答えに辿り着く






ヴルム・ハーフニィル

ギャラクシー・ブレイダーズの主人公の剣の師匠であり、宇宙に生きる生命体のおよそ八割が死滅した『第一次銀河終極戦争』を唯一人で終結に導いた英雄。流派『宇宙(そら)()り一刀流』の開祖、其の剣術道場の師範を勤める老人であり、そして同ゲームの『ラスボス』。

若き日は万全な肉体によって、戦場を単独で引っくり返した『ワンマンアーミー』だったが、加齢による老いと全身に転移した病に蝕まれ、手術によって全身に延命装置を取り付けた、サイバネティックヒューマンとなっていた。彼は物語序盤、ローブを纏った何者かによって主人公の目の前で殺害されてしまった。

此のローブを纏った者は主人公以外の道場門下生全員と、其の関係者を一人残さず殺害。主人公の片目を切り裂いて、胸には×字の斬撃痕を刻み付け、行方を眩ませた。そして様々な伏線が張り巡らされる中、遂にゲーム中盤のボス戦にて対峙し、其の戦いの果てに隠された『正体』が明かされる事となる………。



ペッパーが指摘した通り、モチーフは龍宮院 富嶽(ゲーム製作陣は開発前に彼へ事情説明等を行って、モーション等の使用許可を貰っている)。






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