VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

455 / 1072


成すべき事を成す




探索済の再探索は一見つまらないが、探索済の場所にこそフラグが隠されている

「ただいま~………まぁ誰も居ないんだけど」

 

午後五時半過ぎ、大学の講義とコンビニバイトを終えて自身のアパートに戻ってきた梓は、手洗い嗽をした後に夕食作りを始めた。

 

冷凍庫から冷凍挽肉を、冷蔵庫の野菜室からは人参・ピーマン・玉葱・もやしを一パック、其れ以外の場所からは旨味ペーストチューブ・乾燥若布のパック・卵を取り出し、炊飯器から余った白米を皿に乗せ、野菜類は水洗いした後にもやし以外必要分だけカット。

 

フライパンと小鍋を取り出して、鍋に水を適量張って乾燥若布を投入して火に掛けている間、卵は割って溶き解し、フライパンに油を敷いて熱して旨味ペーストチューブの中身を鍋全体に巡らし、醤油を少々垂らして冷凍挽肉と野菜を投入から一気に炒めて白米を投入。

 

若布を入れた鍋の湯が沸騰し始めた所で火を弱め、水洗いしたもやしと中華スープの素を投入し、じっくりと火を通している間に、強火で炒めて火が通った白米と野菜に挽肉へ溶き卵を流し入れ、焦げ付かない様に意識しつつ底を掬い上げながら火を通して。

 

最後に塩胡椒で適量の味付けを行い、皿に盛り付けて。出来上がったスープを汁椀に注げば…………。

 

「よし、完成。梓流『簡単チャーハン&中華スープ』!」

 

牛乳をマグカップに注いで、テーブルへと運び。スマフォで写真を取った後、いただきますと合掌して食事を始めた。

 

旨味ペーストの香りと塩胡椒が程好く効いているお陰で、中華スープの素のみというシンプルな味付けに仕上げたスープと相性が良く、食の手は進み続けて十数分もしない内に梓はチャーハンとスープを完食。

 

食器を洗い、トイレを済ませ、シャワーを浴びて、ドライヤーで髪を乾かし。そして気付けば満腹感と一徹した反動が、眠気となってドッと襲い掛かって来た。

 

「ふぁあ………双皇甲虫に逢いたかったが、予定変更。神代の鐵遺跡の『彼処』を探索して、ラビッツに帰って寝よう……」

 

スマフォでタイマーをセットし、ソフトをシャンフロへ変更。梓はペッパーとなり、シャンフロの世界へ飛び込んでいく…………。

 

 

 

 

「あ、ペッパーはん。こんばんわなのさ」

『ワゥ♪』

「やぁ、アイトゥイルにノワ。早速だけど、神代の鐵遺跡に向かうよ」

 

兎御殿の休憩室にて覚醒(ログイン)して、アイトゥイルとノワを撫で撫でしつつ、魚の切り身を小さな分け身に与えつつ立ち上がったペッパーは、本日の目的を話した。

 

「前にビィ姉さんと一緒に、天覇の鎧を手にしたあの遺跡になのさ?」

「うん。神代の大いなる遺産を複数手に入れたから、何かイベントが起きるんじゃないなかなって思って」

「成程………なら行ってみる価値も有るのさ」

 

言うが早いか、アイトゥイルはサードレマへと続くゲートを繋げ、ノワが切り身を食べ終わったタイミングを見計らった後、アイトゥイルは名前隠しのコートの中へ、ノワはペッパーの影に擬態して扉を開き、裏路地へと出て。月光が仄かに照らす街中を走り、プレイヤー達の目を掻い潜りながら、神代の鐵遺跡へと繋がるゲートを目指して走る。

 

其の疾走は凄まじく、夜闇に染まる空の下で屋根を駆け走り、サードレマを走った果てにゲートを越えて、目的地まで十分と経たずに到着したのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神代の鐵遺跡。嘗て光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)を甦らせる為の三つの要素を探しに捜索、ペンシルゴン・サンラク・オイカッツォともレベリングの場、そしてギルフィードブレイカーの育成素材探しに訪れた、今は懐かしきSFチックな気配が漂う『研究施設』と思われている神代時代製の建造物跡。

 

去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)とも異なる、嘗ての神代の残照が残る場所だ。

 

「改めて見ると、やっぱりゴーレムやドローン系統は此方が愛呪(あいじゅ)を持ってようが襲い掛かって来てるな」

 

ギルフィードブレイカーでドローン達を砕き、ドロップした鉄片を砕いて耐久を回復しながら、一人と一羽と一匹は地下へ地下へと降りて進む。

 

そうして辿り着いたのは駆動鉱石(ギアメタル)の採掘トラップが在った地下三階、すっぽりと空いた大穴と天井には歯車タイプのドローンが埋め込まれ、ペッパー達はゆっくりと歩いて防衛機能が起動しない様に穴へと接近。

 

彼は其のまま暗闇の中へと身を落とし、ミルキーウェイで空を駆け抜け、数ヶ月振りにレディアントシリーズが封印されていた、遺跡内の小さな研究室前に辿り着く。

 

「懐かしいさね、前はビィ姉さんと一緒に来たさね」

「そうだな…………」

 

一度認証成功したからか、顔パスで内部に入る事が出来た。認証許可者以外は通さなかった辺り、相当なハイテクノロジーだろう。因みにノワとアイトゥイルは大丈夫だった、ノワに関してはこんな姿でもユニークモンスターだが、所謂ペット扱いか?

 

そう思いながらも研究室内を見渡せば、機構とコアが入っていたレディアントシリーズ一式装備を納めた箱は開きっぱなしで放置され、タブレット端末らしき物にはホログラフィックで構築された、光輝へと昇る金龍王装の全体像が撮されていたりと、ライブラリが見たなら非常に面倒な方向にハッスルするのが見える。

 

「こういうのって、特定のアクションを行う事でギミックが発動するパターンなんだが……。よし、ちょっとやってみるか」

 

インベントリから取り出すは、光輝へと昇る金龍王装を構成する一式装備と武器の籠脚(ガンドレッグ)。全てを纏い、起動の為の合言葉たる『目覚めよ(Wake up)』と言葉を放ち、彼の言葉によって神代の時代に世界へ示された『蒼空を舞う為の答え』が起動する。

 

同時に室内では『コンピューターが再起動(リブート)するのと同じ音』と共に、壁に掛けられたスピーカーから音声が鳴る。

 

 

 

 

 

『ザザザ………光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)復活(リボーン)及び再起動(リブート)を確認…………『ファルナ・コード』のプロテクトに従い、第二区画の解放申請─────システム承認完了。ロックを解除します』

 

 

 

 

其の音声と共にSFチック溢れる光のラインが研究室の真ん中へ注がれ、中心の円状のタイルが開かれ、エレベーターでも出てくるのかと思っていれば、現れたのは地下へと続く現代風の『螺旋階段』だった。

 

「な、何か在りそうさね………」

『ウルル………』

「此の先には何があるか……確かめてみよう」

 

一式装備を解除してインベントリへ、スイッチするように聖盾イーディスを装備し、螺旋階段に慎重に近付いた後、ペッパー達は暗闇に満ちる更なる地下へと降りていく。

 

其の先で彼等を、彼女等を待つ物は────果たして。

 

 

 

 

 

 






未知のエリアへ


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。