来る防衛戦
「御疲れ様でした~」
ビィラックの提案から数日が経った土曜日。雨が降る中でコンビニのバイトを終えて住まいたるアパートへの帰路に着きながら、いよいよ訪れた『此の日』を梓は緊張と共に歩いていた。
結論から言うと、ビィラックからの御使いはペッパー自身が其の日の内に、ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスを相手に戦えるクエストを受注。
以降はデュエガンでのデイリー修行で動きと反射神経の強化に、久方振りのベルセルク・オンラインパッションでのストーリーモード攻略で予期せぬ事態への対応力を鍛え、幕末での他プレイヤーとの斬り合いで間合い管理や読みを彼は磨き。
そしてシャンフロでは必要アイテムを買い揃え、エフュールが作ったアクセサリー達を受け取って、此の日に備えてきたのだ。
(いよいよ、だな………『無尽のゴルドゥニーネ』が分け身との戦い。兎の国・ラビッツの前線押し上げ作戦決行の日が)
シャングリラ・フロンティアにおける七つの最強種の一角にして、荒ぶる蛇神とも呼ばれる
(夜襲・墓守・天覇・深淵・冥響・無尽・不滅………此れがシャンフロの世界に存在する『七つの最強種』が冠する名前であり、世界の根幹を知る者達………かぁ)
ユニークモンスターを一体倒す毎に進む『ワールドストーリー』。墓守のウェザエモンを眠らせた事、深淵のクターニッドを満足させた事で進んだ、世界の変換を成す歯車。
残されたのは、天覇のジークヴルム・冥響のオルケストラ・夜襲のリュカオーン・無尽のゴルドゥニーネ。そして何れは彼と………『不滅のヴァイスアッシュ』とも戦わなくては成らぬ時が訪れるのだろうか。
「よし、今日はカツレツにしよう!」
昔から勝負事に関して『願掛け』の意味を込めて、勝利の旗を
防衛戦での勝利の為、梓はスーパーに進路を変更してカツ・カツレツ・豚カツ、もし無ければメンチカツでもオーケーな心意気で、御目当ての食品を買いに行くのだった………。
揚げ物にはシャキシャキのキャベツがベストマッチで合う。帰宅後に手洗い嗽をして、繊切りにしたキャベツと目当てのカツレツに、ネギと油揚げの味噌汁とパック海蘊酢、そして白米で夕食を作り食べ終えた梓。
トイレと水分補給にシャワーを浴びて寝間着に着替え、布団を敷いてVRヘッドギアのチェックを行った後、寝転がり薄い掛け布団で腹部と爪先を冷やさないようにし、シャングリラ・フロンティアへとログインする。
「ペッパーはん、いよいよ今日なのさね。ワイとノワはんは後方支援さね………」
『ワゥル………』
「アイトゥイル、ノワ、今晩わ。二人の想い、俺がゴルドゥニーネにぶつけるよ」
ラビッツ防衛戦押し上げは、地下に在る無尽のゴルドゥニーネが掘ったトンネルの中に建てた、其れなりの小屋でブリーフィングを行うらしく、ラビッツの国王であり陣頭指揮を執るエードワードから『午後九時までには集合して下さい』と、自分とサンラクは言われており。
まだ一時間は有れど三十分前集合を心掛けるつもりで、一人と一羽と一匹はビィラックの鍛冶場へと向かえば、眠気眼の彼女の姿が在った。
「ペッパー、アイトゥイルにノワかぁ………。防衛戦前に何とか間に合わせたぁ………」
そう言って彼女が取り出すのは、クターニッドとの戦いでサンラクに手渡し、彼が必殺技を使用した結果、破損していた
そしてもう一つはティラネードギラファの鋏を用いた翡翠色の刃、カイゼリオンコーカサスの角を加工した突槍、双皇甲虫の甲殻たる黄金と碧色の長柄、そして斧の刃に守られる様に『
「風雷皇の御手の修復、キッチリ完了した………。そしてワリャの渡した設計図と、あの
「ビィラックさん、御疲れ様です。今度何か美味しい物を奢ります」
「そげな事は乗り越えてから言ぃ………ふぁああ…………」
そう言ったビィラックは欠伸をした後、黒い毛玉となって寝息を立てて眠り出し。其れを見たペッパーは彼女を持ち上げ、鍛冶場の奥に在るベッドまで運び、下ろしてから毛布をそっと掛けて後にした。
そしてエードワードが定めた集合場所に向かう途中、サンラクのパートナーのヴォーパルバニー・エムルが、廊下や部屋を虱潰しに探す姿を発見。彼女も此方に気付いたのか駆け寄り、問い掛けてきた。
「あ、ペッパーさん!サンラクさんを見ませんでしたわ!?」
「いや、見てないけど………どうして?」
「アタシもサンラクさんのお役に立つんですわ!」
「エムル………アンタは留守番さね。エー兄さんもきっと同じ事を言うのさ」
普段は呑兵衛で酔っ払い気味なアイトゥイルの、姉としての真摯で真剣な言葉に、エムルの身が硬直する。彼女の言葉は確かに『正しい』が、同時に『間違い』でも有ったりする。
「アイトゥイル、気付いてる筈だ。エムルさんはリュカオーンの影とクターニッドさんを乗り越えて、強くなっているって事を。俺とサンラクで『後方支援』に加われないか、エードワードさんに交渉してみたい。戦力は一人でも多い方が、作戦や戦略の幅が出るからね」
彼女の魔法攻撃が加われば、近接戦のアイトゥイルやノワのサポートだけで無く、他のヴォーパルバニー達のアシストとしても十二分な活躍が期待出来る。ペッパーの発言にエムルの目が輝き、彼は彼女へ「あまり期待はしないでね?」と申し開きをした後、時間を確認しつつ休憩室で待ち。
数分後に休憩室にてサンラクが
いざ往かん