戦いが始まる
『ユニークシナリオ【
「以前説明した通り、我々が侵攻するゴルドゥニーネの眷属達を食い止め、最前線を押し上げます。其の間にペッパー殿とサンラク殿の二人には、其の奥に居る分け身を成るべく『迅速』に倒して頂きたい」
とはいえと、エードワードは一度区切った上で話を続ける。
「奴が送り付ける眷属達は『物量で押し潰す』という、単純かつ強力な一手を持ちます。其故に我々が、御二人の援護をするのは厳しいでしょう」
「まぁ古来から『敵を倒すなら三倍』の、城攻めは『敵戦力の十倍は必要』って、よく言われてるからねぇ」
ペンシルゴンが言わんとしているのは『攻撃三倍の法則』だろう。物量戦の厄介な点は資源・人員・兵站の三つのリソースが、高水準の状態で有る時に有効とされる戦法であると同時に、戦争を即終結させる為の方法でもある。
「成程。敵が物量で攻めるなら、此方は敵の頭を取って仕舞おう…………って訳だな?エードワード」
「えぇ。其の通りです、サンラク殿」
対物量戦の回答策として、少数精鋭部隊による『暗殺』が挙げられる事が多い。特に群れや軍隊を作る生物は、トップが討たれた結果として総崩れが様式美となっている。
「だから
「そうです。ペッパー殿とサンラク殿の身体には、夜の帝王………外に居る『分け身』と同じ『リュカオーン』の傷と寵愛を受けた身、ゴルドゥニーネの放つ毒に対抗出来ますからね」
リュカオーンの刻傷とリュカオーンの愛呪には『あらゆる呪い』を弾く特性を持っている。成程確かに手当たり次第、敵に
「作戦を伝えます。先ずは最前線に到着次第、魔法部隊の全火力で敵を一掃します。其の際にレーザーカジキ殿と
「は、はい!頑張ります!」
「ゴルドゥなんとかさんが何なのか、よく解りませんけど粉骨砕身で頑張ります!」
秋津茜からスポ根魂に通ずるオーラを感じつつも、初心者だったレーザーカジキが、エードワードの耳にも届く程の武勇に成っている事を、ペッパーは染々と思う。
「先制攻撃の後、我々はゴルドゥニーネの眷属が殺到する前に戦線を押し上げ、横穴を封鎖します。我々が横穴を封じる間に、ペッパー殿とサンラク殿は分け身が居る奥へ。ペンシルゴン殿とサイガ-0殿には、遊撃隊として横穴から奇襲を仕掛ける眷属への対処、及び補充されるであろう眷属を食い止める役割を担って貰います」
「御任せあれ、宰相閣下」
「了解、です」
ニッコリ微笑むペンシルゴンと、鎧で表情が見えないサイガ-0を見つつ、此処でサンラクが作戦における『懸念点』を挙げる。
「エードワード。一応聞くんだが、此れ仮に分け身の所まで辿り着いたとしても、ペッパーと俺って眷属に囲まれて死なねェか?あと、レーザーカジキの門魔法は詠唱中に『驚いたりすると失敗する』、かなりデリケートな部分が有るんだが」
「成程………ならば『号令』は、レーザーカジキ殿が秘技を発動し終えてからですね………」
「号令?」
「嗚呼御気になさらず、此方の事ですから。其れにペッパー殿とサンラク殿には、ゴルドゥニーネの分け身を
気合入れな物だろうか?そんな事を考えていると、エードワードは背中に背負っている物を指差し、そして説明する。
「此れは父の得物が一つ、天を覇する黄金の龍王の角を用いて作ったという、
エードワードの説明に、ジークヴルムと関わりが深い秋津茜の瞳が輝く。そしてペッパーは、初めてジークヴルムに遭遇した時の彼の
「俺の持つ
「まぁ……そうですね。籠められた
ペンシルゴンの視線がペッパーに注がれるのを感じ、後々『オハナシ』になりそうな気配を感じていれば、エードワードと此の場に居るヴォーパルバニー達が、ペッパーとサンラクを見つめてくる。
「鍛龍を抜く以上は、御二人には是が非でも……其れも成るべく迅速に、分け身を倒して貰わなくてはならない。此れが『最後の確認』です─────貴殿方に出来ますか?」
彼等が彼女等が、再び家族や恋人に会える様にする為に。ペッパーはサンラクは再び、ヴァイスアッシュによって真化を遂げた武器を手に取り、ロールプレイを展開する。
「任せろ。ウェザエモンも、リュカオーンも、クターニッドも。真正面から乗り越えて今の俺がある。俺を信じろ、トラストミーってヤツだ」
「俺とサンラクで、ゴルドゥニーネの分け身を必ず討ち果たします。此処に居る全てのヴォーパルバニー達の、仲間達皆の命運を預かる所存で、此の一戦に挑ませて頂きます」
サンラクは親指を立ててサムズアップ、ペッパーは力強く微笑み右拳を胸に叩き付けて言い切った。両者共に其の身に夜の帝王から傷と寵愛を刻まれ、ユニークモンスター二体の撃破という確かな実力を持つが故に、二人の言葉には『信用』が生まれる。
此方のロールプレイを見届けたエードワードは、二人に対してこう言った。
「解りました。我々の命、貴殿方二人に預けましょう」
──────と。
「そう言えばペンシルゴン達って、実戦的訓練は終わってるのか?」
ブリーフィング終了後、エードワードの案内で最前線のスタートラインにシークルゥ・アイトゥイル・エムル、リュカオーンの小さな分け身のノワと共に移動する中、近況が気になったサンラクが四人に質問をしてみた。
「私は漸く『四体目』が終わって、レイちゃんは『六体目』が終わった所。茜ちゃんとカジキ君は『五体目』に挑戦中かな」
「つまりアレか、防衛戦シナリオは『招待』を受注さえしていれば『発生するイベント』みたいなモノで、多分『ツアー』は対象外って感じだな」
「後はトンネルの『制圧率』も関係してたりするのかな?ツアー参加者も状況によっては、戦いに参加する『緊急クエスト』が発生みたいな」
「多分、そうだと………思います」
そうなると緊急クエストで大立回りを繰り広げた結果、其の武勇がヴァイスアッシュに伝わり、結果として彼との謁見の機会を得た!なるプレイヤーが現れなくもないだろうか。
秋津茜がアスリートがやる足上げで準備運動をしていたり、ノワが暗闇の中で耳を立てては臭いを嗅ぎ、レーザーカジキはプリショット・ルーティーンの一環なのか
ペッパーが横を見ると、今にも左腕が砕けそうになりながら、鍬を磨ぐヴォーパルバニーが此方に気付いて会釈をしたので、此方もペコリと小さく御辞儀をする。
其の奥にもヴォーパルバニー達が居り、粘土らしき物を運んでは積み重ねていく姿を見る。そして其の回りには水玉模様といって差し支えない、無数に空いていたであろう………今は塞がれた無数の穴々を見ながら、彼等彼女等が穴を塞ぐ役割を持つのだと確信した。
「エードワードさん、あの……彼処で穴を塞いでいるヴォーパルバニーさん達は?」
「
レーザーカジキの質問にエードワードが答える。彼曰く『素材を消費して持ち運び不可の拠点作成を可能にする役職』らしく、経験を積めば『築城』も夢では無いのだとか。
「もうすぐ『最前線』です。到着次第、皆さんは準備を。眷属の奇襲も時折有りますので、安全を保証出来ませんから『厳重警戒』で御願いします」
いよいよゴルドゥニーネの分け身を叩き、其の毒を採取する戦いの時が来た。ペッパー達一向は各々の武器を握り、戦いの舞台へと上がっていくのだった……。
時は来たれり