VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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大一番、開幕




人よ兎よ、災渦の蛇を越えて往け

ラビッツの地下防衛戦に置ける内訳は、大きく分類すると『三つの役職』が在る。

 

ゴルドゥニーネの分け身が放つ眷属達の物量を押し留め、侵攻を食い止める為の『タンク』。其のタンクが塞き止めた眷属達を叩き、戦線を少しでも前に押し返す『アタッカー』。タンクとアタッカーが押し進めた区画に在る穴を、迅速に封鎖して安全を確保する『大工(カーペンター)』の以上の三つを主軸とし、其れを補強する形で衛生兵や伝令役が居たりしている。

 

今回ペッパーとサンラクはゴルドゥニーネの分け身を叩き、エードワード・シークルゥは最前線でのタンクを担当。ペンシルゴン・サイガ-0はアタッカーと大工組の状況に応じて、援護やアタッカーを兼任する遊撃を、秋津茜(アキツアカネ)・レーザーカジキは魔砲撃隊なる遠距離攻撃部隊と共に、敵へ先制パンチを行った後に遊撃へと加わる事になっているのだ。

 

ゴルドゥニーネの分け身から呪い()を受けたヴォーパルバニー達の身体より漏れる黒煙が、唯でさえ暗いトンネル内をより暗くしているという事実を鑑みても、灯りの一つは無いと中々厳しい所が有る。

 

「大将が前に出て大丈夫なのかよ?」

「『誰よりも前に立つ事こそがヴォーパル魂である』………そう父さんに教わりましたから。…………では、レーザーカジキ殿。準備を」

「はいっ!」

 

錫杖の柄尻を地面に付け、深呼吸と共に青の魔術師は己の口で言の葉を綴り出す。其れはユニークモンスター・深淵のクターニッド:第五段階たる想像態を、秋津茜の龍威吹(リュウイブキ)と組み合わせた事によって、圧倒的な大火力を発揮・討ち果たしてみせた彼の切札たる『門魔法』。

 

「四の道は無数への可能性、四の光は夢幻への道筋を示すもの…………。水は渇きを癒し、火は温もりを与え、土は芽吹きをもたらし、風は揺蕩い命を運ぶ」

 

青・赤・茶・緑の四色の球体達が現れ、球体からオーラが溢れて、レーザーカジキの周りで渦巻き始める。

 

「巡り満たす水よ。暗闇を照らす炎よ。生命を育む土よ。音色を奏でる風よ。四の素と輪廻は廻り、歯車は噛み合い、大いなる力の奔流は出で顕る………」

 

渦巻く力の本流が彼の握る致命の錫杖の鋒にて集い、まるで糸を結うが如くに乗算し合い、ルーン文字か古代エジプト文字か、そんな不思議な文字が浮かんでは輝いていく。

 

「水と火は弾きて、土と風もまた弾き。水と土は交わり、火と風もまた交わり。水と風は融けて、火と土もまた融ける。四にして偉大なる素、其の理は我と共に在らん…………!」

 

オーラが編まれ、文字が刻まれ。魔法陣が形成を構築し、レーザーカジキに。シャングリラ・フロンティアの世界に刻まれた、魔法の概念────其の究極が顕現する。

 

「万里を越え、円環の門は開かれる……!潜り抜けし水よ激流へ…!潜り抜けし炎よ爆轟へ…!潜り抜けし土よ鳴動へ…!潜り抜けし風よ暴嵐へ…!雄々しき波動となりて困難を砕く導と成らん━━━━━!【増乗幅響門(パワーゲート)】!!!」

 

ヴォーパルバニー達と開拓者(プレイヤー)達の視線を一身に受けながら、レーザーカジキが完全詠唱を完遂。彼の魔力の全てを食らい、錫杖の鋒からは巨大な魔法陣が形成されて顕れる。同時に魔力切れで襲い掛かる倦怠感に晒されながらも、レーザーカジキはサムズアップで役割完遂を表現し。

 

「レーザーカジキ、よく頑張った!」

 

ペッパーとサンラクが、倒れそうになる彼の身体を支えてマナポーションを飲ませる中、エードワードがインテリヤクザが『本気』を出す際に有りがちな、眼鏡を外すシチュエーションを行ったかと思えば。

 

「少々失礼。スゥゥゥ…………べらんめぇぇっ!!」

『!?』

「ぶぶふ!?げほ、ごほっ!?」

「レーザーカジキ、大丈夫か?!」

 

突如其の口から飛び出したのは、チャキチャキの()()()()の其れであり。あまりの変貌っぷりに、マナポーションを飲んでいたレーザーカジキは気管に液体が入って咳き込み、サンラクが背中を擦り出す。

 

「おうおうおうおう!シケたツラァ晒してねぇで、しゃんとしやがれテメェ等ァ!あんのクソ蛇共に『カチコミ』掛けんぞォ!!今回は食い止めるなんてぇナマっちょれぇこたぁ言わねえッッッ!!!テメェらの此迄受けた鬱憤を、奴等に全部熨斗(ノシ)付けて!ブチ込んで押し込むぞォ!!!!」

 

全身の毛を逆立たせ、色々な意味でパワフルなエードワードの咆哮が、ゴルドゥニーネの呪いに苛まれ、蝕まれているヴォーパルバニー達の耳を一羽の例外も無くピンッ!と立たせた。

 

彼等と彼女等が持つ剣が、包丁が、斧が、手鎌が、槌が。小鎚が、手甲が、戦爪が、鋏が、鋸が。おそらく其の全てが殺意にコーティングされただろう、歴戦の致命武器(ヴォーパルウェポン)達が次々と掲げられていき、此の戦場に集った者達の戦意がドミノの如く高揚していく。

 

「カジキが開いた此の門ッ!無駄にはしねぇぞォ!()()()隊!並べぇァ!」

「私も御手伝いします!ペッパーさんとサンラクさん、御気を付けて!」

「あーくん、サンラク君!もしゴルドゥニーネに会えたら『スクショ』撮っておいて!色々使えそうだから!」

「サンラク、さん………頑張って、下さい……ッ!」

 

仲間達にエールを貰い、ペッパーとサンラクが準備を整え。秋津茜とエムルが魔法攻撃を行う部隊に加わり、ペンシルゴン・サイガ-0・アイトゥイル・ノワが遊撃部隊に、エードワードが背中に背負った鍛龍(タンリュウ)を手に持ち、シークルゥが近くに付く。

 

「いくぞテメェ等ァ!!全員覚悟を決めやがれぃ!!来るぞォ!!!」

 

しゅらり───と抜かれた鍛龍。数秒の沈黙と輝く門魔法の輝きの中、トンネル全体に響き渡るはドドドドド!!!という、所謂『ヌーの大移動』じみた大量の生物が此方に来る様な音だ。サンラクは黒雷を、ペッパーは朱焔の撃鉄を引き、其の身に漆黒の雷と緋色の炎を纏い、スタートダッシュの準備は完了している。

 

そんな中で二人が見たのは、此方へ………鍛龍に引き寄せられて殺到する『蛇達の大軍勢』。其れも片手間で数えられる量では無く、総数たるや『五百』は下らない、ある意味では『流しそうめん』と形容出来る蛇達の殺意が、雪崩と化して兎達を飲み込まんと襲い掛かる。

 

「ぶちかませェ!!」

「頑張って下さああああああああああああ!!!!!」

 

炎魔法が天覇の龍威吹が放たれ、門魔法に吸収されて増乗された爆炎と圧倒的な、超大火力の極太コロニーレーザーが殺到する眷属達に炸裂し、其の悉くを塵も遺さず焼き払う。

 

白い殺意の津波に生まれた巨大な穴、サンラクは黒雷によって過剰伝達(オーバーフロー)で増幅された挙動で駆け抜け、ペッパーはミルキーウェイのマナ粒子の道を走りて作り出した陽炎を暗闇に残し、ゴルドゥニーネの分け身が待つ奥を目指し。

 

彼等彼女等の視線、命運を背負った二人が、最奥へと走って行った……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大だったり、か細かったり、無数の頭を持ったり、物凄く小さかったり。多種多様な蛇達が鍛龍に引き寄せられて進み、此方が産み出した陽炎に気を取られ、足が止まった奴は潰されるのを横目にしながら、ペッパーとサンラクは奥に進み続ける。

 

ベルトコンベアじみた動きをする蛇達の胴体を走り、再使用時間(リキャストタイム)を超過した事で使用可能になったグラビティゼロで壁を駆け走りながら、多少の横穴が残る真っ直ぐ伸びたトンネルを走り。目的地に在るトンネルの奥、穿たれただろう摺鉢状の大きな穴を発見した。

 

着地し撃鉄を解除しながら、彼等が覗く其の大穴からは『ウジュウジュ』と音が鳴り…………筆舌し難い混沌を纏う穴の中心地に『一匹の蛇』が居る。全身が漆黒の鱗に覆われて、世間一般的な蛇とは掛け離れた『腹部が異様に太った姿』をしている其の蛇を、ペッパーとサンラクは同時に答える。

 

『ツチノコじゃねーか!?』

 

ゴルドゥニーネの分け身…………改めて『黒ツチノコ』たる其の蛇は、此方に気付いてかシュルシュルと枝分かれした細い舌と、蛇特有の瞳孔を向けながら睨み付けてきた。

 

「サンラク、ビビるなよ?」

「ハッ、お前もな!ペッパー!」

 

各々が武器を、ヴァイスアッシュが行った真化が成された致命武器達を握り締め、ペッパーとサンラクはバトルフィールドへと飛び込む。

 

此処に二人の、ゴルドゥニーネの分け身討伐タイムアタックが開始された。

 

 

 

 

 






倒せ、分け身たる蛇を


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