呪い採取へ
脱皮を行う生物というのは『時間経過』と共に、本来の強さを取り戻すとはよく言われている。そして其れはゴルドゥニーネ・レプティカ4も例外では無い。ツチノコの中から現れた白肌だった巨人は、全身に纏う皮膚や鱗が黒へと変色されていき、己の身体と臓器を守るという本来の役割を遂行出来る状態にまで到達していた。
そして厄介なのはゴルドゥニーネ・レプティカ4は『時間経過』で徐々に強くなっていっている。一分一秒が経つ度に蛇眼の光は怨唆と憎悪の色を濃くし、吐いた毒液は爆発を起こす様になる。最初は辿々しい言葉遣いだった口調は、ハッキリと解りやすく喋っている。
「サンラク、粗方あのゴルドゥニーネを叩いたり斬ったりした感想!」
「ダメージが通り難い!ただ、やっぱり毒液武器だけは戦闘開始前から『硬度が変わってねぇ』!」
おそらく
投げた毒の曲剣が着弾から爆発し、其の手から再び武器が再構築される様を見ながら、ペッパーは『無尽のゴルドゥニーネの一式装備』には、体力かMPを消費して『武器の精製か変形』を可能にしているのかと予想する。そして武器に爆発属性が加わった事で、まともに受ければ吹き飛ばされる状態になった事を、二人が察するに充分な要素となった。
「こりゃあ、アレを使うか……?」
サンラクが右手を覆う
「サンラク、呪いの回収は任せろ。思い切りブチ噛ませ」
左腕を覆う
「へっ………言われなくてもやってやろうじゃねーか!」
空中を駆け抜け跳躍し、腕を叩いて攻撃を往なしては、漆黒の蛇女巨人の
『ギィィィィィィイイ! 爆ぜろっ、死ねぇぇぇぇえええアアアァアアァ!!!!』
「悪いな、ゴルドゥニーネ。死ねと言って死ぬ程、俺もサンラクも甘くは───無いッ!!」
爆発する剣を避けて顔面に蹴りを入れ込み、空中スピンで戦うペッパーが惹き付けた事で、ゴルドゥニーネのサンラクに対するヘイトが消える──────其の一瞬を彼は待っていた。
フォーミュラドリフトを起動、摺鉢状の地面を駆け抜けながらに金皇照と冥帝輝、二つの勇魚兎月をずらす様にして武器を『寄り添わせ』。其の刹那に冥帝輝がバチバチと迸り、成長するかの如く『水晶の剣刃を金皇照の剣刃を包み込みながら』、其の見た目を『握り手を二つ持つ一本の、金色の剣芯と黒蒼の刃を持つ両手剣』へ。
合体状態:
同時に彼は『ノールック』でインベントリアを操作、ペッパーがブチ込んだ有りっ丈の『成分結晶:ゴルドゥニーネ・レプティカ3』を閠永月に
「覚悟しろよ、ゴルドゥニーネ。一撃だ」
一つ目は鉱石系・水晶系・結晶系アイテムを
二つ目は合体状態時及び合体状態時解除の攻撃によってクリティカルに成功すれば、敵の『防御と肉質を無視した貫通ダメージ』を与えられる『
だが其の能力以上に、サンラクが注目したのは三つ目の能力にして、此の合体状態でのみ繰り出せる『専用スキル』。其れは合体状態を
まるで合体前の形態で消費した耐久値を結晶系アイテムで回復させつつ攻撃力を上げて、最近習得した『あの技能』をブチ噛ませと、ヴァイスアッシュが『そう仕向けた様にしか思えない』、最高クラスのベストマッチコンボ。本当ならば冥帝輝も十全に扱えれば良かったが、其れはゴルドゥニーネの呪いを手にしてからでも良いだろう。
封雷の撃鉄を起動。全身をバチバチと黒雷が包み込み、其の音にペッパーが気付く。そして小さく頷いた後、ゴルドゥニーネの視線を自分に向けながら、毒の剣とゴルドゥニーネの首筋が『一直線』になる位置に移動させた。
「全く、有り難いねぇ!」
過剰伝達によって強化された挙動と共に、背中で揺れる
同時に彼は
「
夜空を其の背に黒雷を纏い、閠なる月光を疾走と乗せて、風を断ち切る絶技へ至る始まりの一刀が、過烈窮まる速度とクリティカル確定成功の太刀筋を以て描いた三日月の閃光は、閠永月を金皇照と冥帝輝に別ち。そしてほぼ同時に、ゴルドゥニーネ・レプティカ4の持つ毒の剣を根本から断ち切り、其の首筋へと深い傷を刻み付ける。
「サンラクッぶびびびびびび!??!」
「あ、ごめーん!!?」
『ギィィィィィアアアアアアアアァァァァアアアア!!?』
着地を補助しようとしたペッパーが封熱の撃鉄を解除して、サンラクを受け止めた矢先に、黒雷によって感電してダメージを食らい、サンラクが慌てて封雷の撃鉄を解除した其の瞬間。
根本から斬れた毒剣は完全な結晶と化して砕け、同時に首筋から紫のダメージエフェクトを血飛沫の如く撒き散らした、ゴルドゥニーネ・レプティカ4の悲鳴という絶叫が、トンネル内部を震撼させた。
「クッソ………威力が保証されてる分、スタミナの全消費は厄介だろうが………。ほれ、ペッパー回収回収」
「だ、だだ、大丈夫……ちょっと痺れただけ……直ぐ動く………」
晴天流:疾風は発動時、使用者のスタミナを全て消費・其の消費数値に比例した、抜刀居合の威力を上昇させる能力を持っている。指は動かせども動けないサンラクは、インベントリに勇魚兎月を収納・交代で
痺れを何とかポーションで誤魔化し、ペッパーは悶え苦しみ回るゴルドゥニーネに潰されない様、結晶化して地面に落ちた毒を回収すれば、アイテム名には『成分結晶:ゴルドゥニーネ・カースドポイズン』と表示されて。迅速にインベントリアへ収納、残りも茶々っと回収し切ったペッパーは、サンラクの隣まで舞い戻る。
「毒回収完了!」
「よし、後は野郎を倒して仕舞いだ!!」
痛みに絶え、首筋から手を離したゴルドゥニーネ・レプティカ4が、ペッパーとサンラクを睨み付けてくる。其の目は憎悪から此方に対する純粋な『怒り』の感情を抱き、其の炎は己諸とも此方を焼き付くさんとする程の、恐ろしさを内封しているのが解る。
『貴様等、
「ヘッ、そりゃ此方の台詞だ……!」
目的の一つは達成出来た。後は此のゴルドゥニーネ・レプティカ4を倒し切るだけ。場合によっては、自分の鬼札たる
再び訪れるあまりにも静かな静寂と共に、蛇女巨人と二人の開拓者が睨み合う。
『不愉快……嗚呼、本当に不愉快。
だからこそ、ペッパーとサンラクは
ペッパーは再使用時間を終えたサキガケルミゴコロで、自分が『大質量の巨大蛇により、ゴルドゥニーネ・レプティカ4にサンラク共々押し潰されて死ぬ未来』を予知。サンラクは星外套に記録した【瞬間転移】を反射的に使った事が、自身の命運を文字通り『分ける』事に成った。
「レーアドライヴ・アクセラレート!!?」
「瞬間転移ッ!!?」
『
二人が退避を選択した数瞬後、其の予知通り大質量の黒い何かが。サキガケルミゴコロが正しければ『巨大な蛇』が、ゴルドゥニーネ・レプティカ4を押し潰してトンネルの壁面に叩き付けた。安全圏………というには心許ない距離を離した二人が見たのは、反転都市ルルイアスにて遭遇・戦闘した『アルクトゥス・レガレクス』に匹敵し得る巨体と、独特の光沢に彩られた『鱗』を纏う、爬虫類特有の瞳孔を宿した『四体の蛇』。
ファンタジー的なカテゴリー分けをするならば、其れは大蛇というにはあまりにも『巨大な蛇』。モンスターの分類で言う所の『
だがそんな事よりも。其れ以上に『危険な存在』が此の場には居る。
『生きてる? 嗚呼、不愉快は続くのネ』
巨大な龍蛇達がまるで、近衛騎士の如く
纏う衣服は『ワンピース』の形状で、しかし様々な地域の民族衣装を全部引き裂き、バラバラのグチャグチャに繋ぎ合わせた様な、あまりにも『奇妙な服』を着ている。
だが、だが。
其の表情に浮かぶ侮蔑はゴルドゥニーネ・レプティカ4の憎悪や憤怒すら、軽く凌駕してしまう程の眼光を。直視するだけで身体を石に変える、ギリシャ神話の怪物『ゴルゴーン』が現代へ顕現したかの様な、ルビー色の蛇の目を此の場に居る全てに向けながら、
『私は私を生んだ
そして其の言葉がトリガーとなり、ペッパーとサンラクの各々の目の前には、一つの『ウインドウ画面』が表示された。
考察クラン・ライブラリが辿り着いた『荒ぶる蛇神』。世界に居着く蛇型モンスター達の『
彼女、荒ぶる蛇神につき
???『此の気配………ヤツだ。─────させない、絶対に』