VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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呪い採取へ




ポイズニング・ランペイジ

脱皮を行う生物というのは『時間経過』と共に、本来の強さを取り戻すとはよく言われている。そして其れはゴルドゥニーネ・レプティカ4も例外では無い。ツチノコの中から現れた白肌だった巨人は、全身に纏う皮膚や鱗が黒へと変色されていき、己の身体と臓器を守るという本来の役割を遂行出来る状態にまで到達していた。

 

そして厄介なのはゴルドゥニーネ・レプティカ4は『時間経過』で徐々に強くなっていっている。一分一秒が経つ度に蛇眼の光は怨唆と憎悪の色を濃くし、吐いた毒液は爆発を起こす様になる。最初は辿々しい言葉遣いだった口調は、ハッキリと解りやすく喋っている。

 

「サンラク、粗方あのゴルドゥニーネを叩いたり斬ったりした感想!」

「ダメージが通り難い!ただ、やっぱり毒液武器だけは戦闘開始前から『硬度が変わってねぇ』!」

 

おそらく今の(・・)ゴルドゥニーネの持つ毒液が、自分達が求めているゴルドゥニーネの『呪い』と見て良い。問題は其れを入手する為の道筋(チャート)が先程から壊しては作り直して、また壊すの繰り返しを続けているという事。

 

投げた毒の曲剣が着弾から爆発し、其の手から再び武器が再構築される様を見ながら、ペッパーは『無尽のゴルドゥニーネの一式装備』には、体力かMPを消費して『武器の精製か変形』を可能にしているのかと予想する。そして武器に爆発属性が加わった事で、まともに受ければ吹き飛ばされる状態になった事を、二人が察するに充分な要素となった。

 

「こりゃあ、アレを使うか……?」

 

サンラクが右手を覆う封雷の撃鉄(レビントリガー)を見ている。彼は確実に挙動と運動エネルギーを増幅させ、『何か』をやろうとしている。

 

「サンラク、呪いの回収は任せろ。思い切りブチ噛ませ」

 

左腕を覆う風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)の表面で風雷を鳴らし、ペッパーはゴルドゥニーネ・レプティカ4を見上げつつも、静かに体勢を整え直して注意を惹き付けんと動き出す。

 

「へっ………言われなくてもやってやろうじゃねーか!」

 

空中を駆け抜け跳躍し、腕を叩いて攻撃を往なしては、漆黒の蛇女巨人の注目(ヘイト)を彼は背負い。其の隙にサンラクは、ゴルドゥニーネ・レプティカ4自身の脚への注意が疎かになった所を狙い、体力を1になるまで金皇照(こんおうしょう)に捧げて、攻撃性能とクリティカル発生率を超強化。

 

背水の陣仕様(何時もの状態)に成りながらも、ゲージが後もう少しの状態になった冥帝輝(めいていき)を用いて、ゴルドゥニーネ・レプティカ4のアキレス腱を斬撃スキルを用いて滅多斬りに切り裂きまくる。同時に冥帝輝の『合体ゲージ』が漸くMAXとなり、金皇照共々『合体条件』を達成する。

 

『ギィィィィィィイイ! 爆ぜろっ、死ねぇぇぇぇえええアアアァアアァ!!!!』

「悪いな、ゴルドゥニーネ。死ねと言って死ぬ程、俺もサンラクも甘くは───無いッ!!」

 

爆発する剣を避けて顔面に蹴りを入れ込み、空中スピンで戦うペッパーが惹き付けた事で、ゴルドゥニーネのサンラクに対するヘイトが消える──────其の一瞬を彼は待っていた。

 

フォーミュラドリフトを起動、摺鉢状の地面を駆け抜けながらに金皇照と冥帝輝、二つの勇魚兎月をずらす様にして武器を『寄り添わせ』。其の刹那に冥帝輝がバチバチと迸り、成長するかの如く『水晶の剣刃を金皇照の剣刃を包み込みながら』、其の見た目を『握り手を二つ持つ一本の、金色の剣芯と黒蒼の刃を持つ両手剣』へ。

 

合体状態:閠永月(ぎょくようげつ)と姿を変える。

 

同時に彼は『ノールック』でインベントリアを操作、ペッパーがブチ込んだ有りっ丈の『成分結晶:ゴルドゥニーネ・レプティカ3』を閠永月に捧げ始めた(・・・・・)

 

「覚悟しろよ、ゴルドゥニーネ。一撃だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)金皇照(こんおうしょう)】と勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)冥帝輝(めいていき)】。此の二つは合体ゲージをMAXにして寄り添わせる事により、合体状態:閠永月へと合体。そして此の状態での閠永月には『三つ』の能力が宿っている。

 

一つ目は鉱石系・水晶系・結晶系アイテムを剣刃(つるぎ)に捧げる事により、其の希少度合に応じて金皇照と冥帝輝、双つの勇魚兎月の耐久値の『超回復』と武器攻撃力を『超上昇させる』という『輝皇閠月(エタニティブリーズ)』。

 

二つ目は合体状態時及び合体状態時解除の攻撃によってクリティカルに成功すれば、敵の『防御と肉質を無視した貫通ダメージ』を与えられる『深帝覇獰(アビスプラッシュ)』。

 

だが其の能力以上に、サンラクが注目したのは三つ目の能力にして、此の合体状態でのみ繰り出せる『専用スキル』。其れは合体状態を強制解除(・・・・)するという条件を容認する代わりに、此の武器で繰り出す『攻撃速度の超速化』&『クリティカル確定成功』を可能にする『致命の閠月(イモータリス・ヴォーパル)』だ。

 

まるで合体前の形態で消費した耐久値を結晶系アイテムで回復させつつ攻撃力を上げて、最近習得した『あの技能』をブチ噛ませと、ヴァイスアッシュが『そう仕向けた様にしか思えない』、最高クラスのベストマッチコンボ。本当ならば冥帝輝も十全に扱えれば良かったが、其れはゴルドゥニーネの呪いを手にしてからでも良いだろう。

 

封雷の撃鉄を起動。全身をバチバチと黒雷が包み込み、其の音にペッパーが気付く。そして小さく頷いた後、ゴルドゥニーネの視線を自分に向けながら、毒の剣とゴルドゥニーネの首筋が『一直線』になる位置に移動させた。

 

「全く、有り難いねぇ!」

 

過剰伝達によって強化された挙動と共に、背中で揺れる瑠璃天(ラピステラ)星外套(せいがいとう)に記憶した【瞬間転移(アポート)】で最終位置調整。

 

同時に彼は技能(スキル)を─────無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)の地の底の研究室にて習得した、()()()()()()()()()を使う。

 

晴天流(せいてんりゅう)(いち)太刀(たち)───────疾風(はやかぜ)ッ!!!」

 

夜空を其の背に黒雷を纏い、閠なる月光を疾走と乗せて、風を断ち切る絶技へ至る始まりの一刀が、過烈窮まる速度とクリティカル確定成功の太刀筋を以て描いた三日月の閃光は、閠永月を金皇照と冥帝輝に別ち。そしてほぼ同時に、ゴルドゥニーネ・レプティカ4の持つ毒の剣を根本から断ち切り、其の首筋へと深い傷を刻み付ける。

 

「サンラクッぶびびびびびび!??!」

「あ、ごめーん!!?」

『ギィィィィィアアアアアアアアァァァァアアアア!!?』

 

着地を補助しようとしたペッパーが封熱の撃鉄を解除して、サンラクを受け止めた矢先に、黒雷によって感電してダメージを食らい、サンラクが慌てて封雷の撃鉄を解除した其の瞬間。

 

根本から斬れた毒剣は完全な結晶と化して砕け、同時に首筋から紫のダメージエフェクトを血飛沫の如く撒き散らした、ゴルドゥニーネ・レプティカ4の悲鳴という絶叫が、トンネル内部を震撼させた。

 

「クッソ………威力が保証されてる分、スタミナの全消費は厄介だろうが………。ほれ、ペッパー回収回収」

「だ、だだ、大丈夫……ちょっと痺れただけ……直ぐ動く………」

 

晴天流:疾風は発動時、使用者のスタミナを全て消費・其の消費数値に比例した、抜刀居合の威力を上昇させる能力を持っている。指は動かせども動けないサンラクは、インベントリに勇魚兎月を収納・交代で煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)に装備変更。

 

痺れを何とかポーションで誤魔化し、ペッパーは悶え苦しみ回るゴルドゥニーネに潰されない様、結晶化して地面に落ちた毒を回収すれば、アイテム名には『成分結晶:ゴルドゥニーネ・カースドポイズン』と表示されて。迅速にインベントリアへ収納、残りも茶々っと回収し切ったペッパーは、サンラクの隣まで舞い戻る。

 

「毒回収完了!」

「よし、後は野郎を倒して仕舞いだ!!」

 

痛みに絶え、首筋から手を離したゴルドゥニーネ・レプティカ4が、ペッパーとサンラクを睨み付けてくる。其の目は憎悪から此方に対する純粋な『怒り』の感情を抱き、其の炎は己諸とも此方を焼き付くさんとする程の、恐ろしさを内封しているのが解る。

 

『貴様等、(コロ)す………!』

「ヘッ、そりゃ此方の台詞だ……!」

 

目的の一つは達成出来た。後は此のゴルドゥニーネ・レプティカ4を倒し切るだけ。場合によっては、自分の鬼札たる星皇剣(せいおうけん)グランシャリオを使うつもりで、気合と集中を入れ直す。

 

再び訪れるあまりにも静かな静寂と共に、蛇女巨人と二人の開拓者が睨み合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『不愉快……嗚呼、本当に不愉快。()()()()()()()()()()()()。本当に不愉快……ネ』

 

だからこそ、ペッパーとサンラクは其れ(・・)に気付けた。ゴルドゥニーネ・レプティカ4を倒すという目標に集中したからこそ、其の刹那に響いた不気味とノイズなる声に。全てを焼き払うような憎悪と、背筋に氷柱を刺されたような悪寒と、痺れるような濃密な気配に二人は気付けたのだ。

 

ペッパーは再使用時間を終えたサキガケルミゴコロで、自分が『大質量の巨大蛇により、ゴルドゥニーネ・レプティカ4にサンラク共々押し潰されて死ぬ未来』を予知。サンラクは星外套に記録した【瞬間転移】を反射的に使った事が、自身の命運を文字通り『分ける』事に成った。

 

「レーアドライヴ・アクセラレート!!?」

「瞬間転移ッ!!?」

死ネ(・・)

 

二人が退避を選択した数瞬後、其の予知通り大質量の黒い何かが。サキガケルミゴコロが正しければ『巨大な蛇』が、ゴルドゥニーネ・レプティカ4を押し潰してトンネルの壁面に叩き付けた。安全圏………というには心許ない距離を離した二人が見たのは、反転都市ルルイアスにて遭遇・戦闘した『アルクトゥス・レガレクス』に匹敵し得る巨体と、独特の光沢に彩られた『鱗』を纏う、爬虫類特有の瞳孔を宿した『四体の蛇』。

 

ファンタジー的なカテゴリー分けをするならば、其れは大蛇というにはあまりにも『巨大な蛇』。モンスターの分類で言う所の『龍蛇(ナーガ)』に等しい姿をしていた。

 

だがそんな事よりも。其れ以上に『危険な存在』が此の場には居る。

 

『生きてる? 嗚呼、不愉快は続くのネ』

 

巨大な龍蛇達がまるで、近衛騎士の如く()の道を作るように左右へと分かれる。そして其の中央より歩き現れたのは、ゴルドゥニーネ・レプティカ4よりも。ましてや自分達よりも、二回り程小さな。身長は女子中学生程度しかない、華奢な身体をした『少女』が居たのだ。

 

纏う衣服は『ワンピース』の形状で、しかし様々な地域の民族衣装を全部引き裂き、バラバラのグチャグチャに繋ぎ合わせた様な、あまりにも『奇妙な服』を着ている。

 

 

 

だが、だが。

 

 

 

 

其の表情に浮かぶ侮蔑はゴルドゥニーネ・レプティカ4の憎悪や憤怒すら、軽く凌駕してしまう程の眼光を。直視するだけで身体を石に変える、ギリシャ神話の怪物『ゴルゴーン』が現代へ顕現したかの様な、ルビー色の蛇の目を此の場に居る全てに向けながら、純白(アルビノ)の少女は言ってきた。

 

『私は私を生んだ()を憎む、私を脅かす()を憎む、私を阻む()を憎む……!嗚呼、嗚呼………!世界は今日も、不愉快だワ………………!』

 

 

 

だから!全て(・・)死んで頂戴?

 

 

 

 

そして其の言葉がトリガーとなり、ペッパーとサンラクの各々の目の前には、一つの『ウインドウ画面』が表示された。

 

 

 

 

『ユニークモンスター』

 

『無尽のゴルドゥニーネに遭遇しました』

 

 

 

 

 

考察クラン・ライブラリが辿り着いた『荒ぶる蛇神』。世界に居着く蛇型モンスター達の『始祖(はじまり)』。そして『七つの最強種(ユニークモンスター)』の一角が、此の場に襲来したのである。

 

 

 

 






彼女、荒ぶる蛇神につき


















???『此の気配………ヤツだ。─────させない、絶対に』


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