VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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目覚めて




開拓者の真実と遠き友が遺した物

「いや、マジかよ!?」

 

ヴァイスアッシュが使った魔法かスキルか解らない『安楽(アンラク)』なる技によって死に、兎御殿にて再覚醒(リスポーン)したペッパーは開口一番叫び声を上げた。

 

ずっと考えてきていた『二号計画(セカンドプラン)』の真の意味(・・・・)。ウェザエモン・天津気(アマツキ)天津気(あまつき) 刹那(せつな)、クターニッドが唱えた言葉の真なる形(・・・・)。其れがヴァイスアッシュの言葉によって、全てが繋がったのだ。

 

「目を覚ませば何もかも治っている………。ゲームなら『当たり前』の事だ、何せプレイヤーはセーブした場所から『リスポーン』しているんだから─────!」

 

シャングリラ・フロンティアというゲームを始めた時、ペッパーはオープニングをスキップせずに読んでいた。其の文章の中には『貴方は開拓者。東よりの風と共に現れ、幾度となく膝をつき、されど進み続け……そして風と共に消えるかもしれない者』とある。

 

そしてシャングリラ・フロンティアのwikiには、NPCの発言に『神代の加護を受けた『開拓者』は、他の人類種と比べて『急激な実力向上』が起こりやすく、死んだとしても最後に休息した場所に『転移』して、何事もないように『動き回る』事が出来る。更に個体差は有るが『数週間眠り続ける者』も居れば、『短い仮眠以外休息を取らない者』も居て、不死に思えるがある時にフッと『消えてしまう』事もある………そう書かれていた。

 

此れを解り易く言い直すならば、上から順にレベルアップ・デス&リスポーン・ログインログアウト・引退と捉える事が可能になる。

 

「二号計画………其れは『種族:プレイヤーを産み出す為の計画』って事か………!」

 

最終的に其れを以て、何時か訪れる『始源の脅威へと立ち向かう事』が、自分達に託された使命(・・)なのだろう。そしてペッパーが気に掛かったのは『二つ』有る。

 

一つ目が『開拓者は東から生まれる』という一文。基本的にプレイヤーが出身以外で、ゲーム開始時に共通でスポーンするのは『シャンフロ第1の街・ファステイア』だ、ならば其のファステイアに一体『何が』存在しているのか?

 

そして二つ目がユニークモンスター・無尽のゴルドゥニーネが去り際に言った『黒き鳥の骸、尾羽の先端、最果ての社地(シャシ)』という単語(ワード)。おそらく………いや十中八九だが、アレは『ゴルドゥニーネを模倣、もしくは由来する神代の大いなる遺産』の位置を示した言葉だ。

 

クターニッドが放った言葉を伝えた事で、イベントに変化が起きた可能性が『極めて高い』。まさかとは思うが、ウェザエモンやクターニッドの時と同様、何らかの『特殊ルート』に突入した感じだろうか?

 

「ペッパーはん!」

『ワゥルア!!』

「うぉっと、アイトゥイルにノワ。無事で良かった………他の皆は?」

 

そんな思考をしていると、休憩室にノワとアイトゥイルが飛び込んで、胸元へとダイビングし。一羽と一匹の頭を撫でていれば、アイトゥイルの切実な視線と共に問い掛ける。

 

「サンラクはんは御頭の鍜冶場に歩いて行って、サイガ-0はんとレーザーカジキはんは寝てるのさ。ペンシルゴンはんと秋津茜はんは、何か用事が有るみたいさね。其れよりペッパーはん、ゴルドゥニーネは………!」

「………残念だけど、今の俺では奴の従える龍蛇(ナーガ)にしか傷を残せなかった。だからもっと強くなるよ。アイトゥイルとノワと一緒に強くなって、必ずゴルドゥニーネに刃を届かせる」

「……当然なのさ!ワイにとっても、打倒ゴルドゥニーネは『生きる目標』の一つさ!」

『ワンッ!!』

 

復讐一辺倒なキャラはそこそこ居るが、其れを達成した後に何処へ向かうか解らず、彷徨うなんて事は多々有る。其れを主人公や仲間達が、新しい道を探す手伝いをする………というパターンが多い。

 

何時かゴルドゥニーネを倒した後に、アイトゥイルが生きる理由を見失ったなら、其れを探す手伝いをしようと思いつつ、彼は立ち上がりヴァイスアッシュが待つ鍜冶場へと向かうのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぅ、来たかぁ……。ペッパー」

「よっ、ペッパー。遅かったじゃねーか」

「ペッパーさんですわ!」

 

アイトゥイルとノワを連れ、ヴァイスアッシュの鍜冶場へと到着すると、サンラクにエムルとヴァイスアッシュが待っていた。

 

「遅れてしまい、申し訳有りません」

「良いってこった。其れで『件の物』は採れたかい?」

「えぇ。途中にゴルドゥニーネの本体が出張ってきやしたが………眷属を放っていた奴の『呪い』、確かに此所に」

 

二人がインベントリアから取り出したのは、紫色の液体を内包したアメジストの如き水晶体。勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)金皇照(こんおうしょう)】によって結晶化に成功した、ゴルドゥニーネ・レプティカ4の毒こと『成分結晶:ゴルドゥニーネ・カースドポイズン』である。

 

「あぁ、其れともう一つ(・・・・)。ゴルドゥニーネの従えた龍蛇の一体に突き刺さっていた物、戦いの最中に引っこ抜いたんでさぁ……」

 

そう言ってサンラクが取り出したのは、刀身や持ち手含めて全体が『錆び果てた一本の大剣』であり。ペッパーはサンラクが龍蛇の上で引っこ抜いたのは、其の武器だったのかと納得する。

 

だが妙な事に其の『大剣』は、見た目が『槍』の其れに近しい形状をしている。まるで『柄の部分を適度に折って取り除き、程良い長さで調えた』………そんな感じがする。

 

「えぇと、コイツの名は『朽ち果てたアラドヴァル』。しかも英傑武器(グレイトフル)……っておぉ!?」

 

がしっ、と。ノーモーションで瞬間転移(アポート)を使ったかの様な初速、そして縮地に等しい音の無い移動で、ヴァイスアッシュがサンラクの腕と其の大剣を掴み。

 

そして普段の余裕な表情は一転して、一気に老け込んだ様に剣をジッ………と。まるで『探していた』物を見付けたかの様に呟いた。

 

「おぉ……其処に居たのかよぅ(・・・・・・・・・)…………『ドルダナ』………」

「「「「ドルダナ…………?」」」」

『ウルゥ?』

 

英傑武器…………其の昔に英雄が命を預けていた武器達を指し、各々に元々の『持ち主』が居る。アスカロンの元々の持ち主が魚人族(マーマーン)の英雄・ゲネテレであり、そして今サンラクが持っているアラドヴァルの元々の持ち主が、其のドルダナなのだろう。

 

「……もしかしてコイツぁ、兄貴に何か『(えん)の在る物』っすかね?」

「………………いんやぁ、今となってはタダの(ナマクラ)よぅ………」

 

自分にとって『何でも無い』なら、何故ヴァイスアッシュはそんな『全力で言葉を飲み込んだ顔』をするのだろう?

 

ギャルゲーや恋愛ゲーでは『特定モーションや表情』が、ルートフラグに直結している事が多い上、一世紀前のレトロタイプともなれば解像度が異様に低く、プレイヤーは『文章からフラグを探し出さなくてはいけなかった』なる、セルフ高難易度だったらしい。ちょっとやってみたいと思ったのは内緒だ。

 

「どうせ大剣ですし、何なら兄貴に納めても構いやせんが」

 

サンラクがロールプレイを展開する。おそらくヴァイスアッシュに関係するので、何か情報を得る為だろう。

 

「おうおう、一丁前にぃ気遣ってぇくれるじゃねぇかぁよう……。だが、良い(・・)。何処も知れずに消えたぁ(モン)が、今此所に在るってぇこたぁよう……そりゃあ『縁』ってぇヤツよ。つまりコイツぁ、おめぇさんが使うべきなのさ」

「はぁ……」

 

そしてロールプレイに成功し、朽ち果てたアラドヴァルを所持する事になったサンラク。そしてヴァイスアッシュはアラドヴァルを見て、昔を『懐かしむ様』に語り始める。

 

「こいつぁ、むかぁしむかし……。ずぅっと昔の俺等ぁの『ダチ』が使ってたモンでなぁ……。正確には大剣じゃあねぇ(・・・・・)。こいつぁ……()()()()()()()()よぉ。何処ぞの馬鹿が圧し折って、()()として使ってたがなぁ……」

 

抱いていた違和感が、ヴァイスアッシュの言葉で繋がる。ドルダナなる巨人は彼の話からするに、随分とアグレッシブな人物だったらしい。全長五メートルは下らない其れを『直剣にする瞬間』をビィラックが目の当たりにしたなら、ブチギレ不可避だろう。

 

そんな中、ヴァイスアッシュはアラドヴァルを見ながらこう言ったのだ。

 

「神代のモンたる『遺機装(レガシーウェポン)』でもなけりゃあ、()()()()()()モンたる『勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)』でもねぇ。遠い昔に、誰かが確かに握って携え、そして振るった物………其れを鍜冶師(オイラ)達は『英傑武器(グレイトフル)』ってェ呼んでいるのさ」

「グレイトフル………ですか」

「あぁ。アラドヴァルは『炎』だぁ………オイラ直々に直しても良いが。ん………そうだな」

 

ニヤリ………と、ヴァイスアッシュが笑う。そして彼女が起きていたら、更に泡を吹くだろう言葉を呟いたのである。

 

「ビィラックの奴にィ直させてみるか」────と。

 

英傑武器を二本直す事となった彼女の未来を案じつつ、ペッパーとサンラクはゴルドゥニーネとの戦いで耐久値が減った武器達と、ゴルドゥニーネの呪いの成分結晶を預け。去り際にペッパーとサンラクは、ヴァイスアッシュからこう言われた。

 

「明日の夕方までに全部終わらせとく。おめぇさん等、何やら『大一番』らしいじゃあねぇか」

 

まるで『人工衛星』でも搭載しているかの様な言い方に、二人は冷や汗を額に滲ませながら休憩室に戻って、セーブ&ログアウトで此の日のシャンフロを終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日──────狼達による『決戦の日』はやって来た。

 

 

 

 

 






時は満ちる


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