VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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狼の戦争




狼双戦争(デュアルウルフウォー) 其の一

20XX年 7/3 日曜日。

 

日本全国で梅雨明けが発表された其の日の夜………大型アップデートによって様々な仕様変更に心踊らせる者や、漸く実装された新大陸に先駆けとして船に乗っていった者達を羨ましがったり、ワールドストーリーがアップデート前に進んだ事で更に三隻の船が作り始められたりと、シャングリラ・フロンティアは盛り上がりを見せていた。

 

そして何よりも今宵、シャンフロ第15の街にして終わりの街、現在は第二の旅立ちの街となった『フィフティシア』からほんの少し離れながらも、ある意味では隣接した場所に建つ『巨大なコロッセオ』に、開拓者やNPCが集っていたのである。

 

此の巨大コロッセオを建てたのは、考察クラン:ライブラリに属する職業:大工(カーペンター)持ちのプレイヤー達を始めとし、フリーの大工職プレイヤーにフィフティシアの裏通りで職を失い、荒れていたNPC達。ライブラリが主導となり、報酬もたんまりと提示された事で彼等は大きな仕事が回ってきたと精を出し、規定日時に造り上げる事が出来たのだ。

 

そして今日、此の場所で。双つの狼による一大決戦が幕を明けようとしている…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というかさ、ペンシルゴン。聖盾輝士団に護衛依頼するって、相当な事してるよな?」

「ンフフフ………何せ『此の戦いは私も興味が有ります』なんて、聖女ちゃんも観戦に来る事がジョゼットちゃんを通じて『確定』してるからね。出場者が移動中に敵チームの襲撃に逢う…………なんて物騒過ぎるでしょ?」

 

現在旅狼(ヴォルフガング)の出場者メンバーたるペッパー・ペンシルゴン・サンラク・オイカッツォ・京極(キョウアルティメット)・レーザーカジキの六人は、ペンシルゴンの要請で蛇の林檎・フィフティシア支店に集合し、其処で待っていたクラン:聖盾輝士団の団員に護衛されながら、会場となるコロッセオへ向かっている。

 

余談だがアイトゥイル・エムル・エストマ・ゼッタの四羽は、ノワ共々ラビッツにて留守番させており、人質にされるのを防ぐ為に手を打ったし、サンラクとペッパーは集合時間ギリギリになりながらヴァイスアッシュが直したり、作った武器を受け取って性能を確認したりしていた。

 

「流石に彼方も同じ条件で、護衛が付いてるみたいだけどね」

「そりゃそうだろ…………というか、そうじゃなかったら何してたんだよペンシルゴン………」

「敵チーム全員謀殺してた」

「「「「鬼かよ」」」」

「あわわわ…………あ!皆さん、アレじゃないですか!!?」

 

絶対やりかねないだろと内心思っていれば、レーザーカジキが指を指す。全員が視線を向けた其の先には、ライブラリが造ったという『特設会場』─────見た目が『巨大コロッセオ』が見えてきた。

 

「アレがクラン:ライブラリが主導で造ったって言ってた『特設会場』とはねぇ………しかも他のプレイヤーにNPCが集まって来てるし」

「イリステラ様のネームバリューは凄まじいな………」

 

戦を前に六人は語らいながら、護衛を付けて歩を進める。其の様子は、他のプレイヤー達の注目を集めるのに充分な要素であり。

 

「アレって旅狼じゃない?」

「確か今日、黒狼(ヴォルフシュバルツ)と対抗戦をするっていう……」

「彼処のコロシアムでやるんだってさ、観に行こうぜ!」

 

興味を持ったのか、ひそひそ話をしていたプレイヤー達が一人、また一人とコロシアムに向かっていく中、此方に近付いてくる『鼻から頬に掛けて傷を刻んだ、ギザッ歯の女グラップラー』の姿をペッパー・ペンシルゴン・サンラク・京極は目撃。

 

聖盾輝士団が警戒するが、ペッパーが「知り合いです」と言い、前へと出る。

 

「おぅ久し振りだなぁ、ペッパーとサンラク。其れに何時以来だ、ペンシルゴンと京極はよぉ」

「御久し振りです、サバイバアルさん」

「おいっすー、サバイバアル」

「やぁやぁ、サバちゃん。相変わらずワイルドな格好してるねぇ」

「久し振り~サバイバアル」

 

各々四人が挨拶を交わし、ペッパーがオイカッツォとレーザーカジキにサバイバアルを紹介する。

 

「オイカッツォ、レーザーカジキ。此の人はサバイバアルさん、今日の対抗戦で万が一に備えて雇ったプレイヤーです」

「因みに強いの?」

「全盛期の阿修羅会、其の『No.3』って言ったら解りやすいかな?」

「OK、実力者って事ね」

「よ、よろしく御願いします……!」

 

全盛期の阿修羅会を知るペンシルゴン、其の中でもルール無用の徒手空拳に関しては、おそらく『オイカッツォ』にも匹敵し得る存在だ。今も現役でPKerとしてファステイアに在住し、最強の賞金稼ぎNPCを呼び出して戦っているのだから、其の実力は健在と言って良い。

 

サバイバアルを加えた事で規定人数の七人となった旅狼の一団は、聖盾輝士団の護衛を受けて決戦のコロシアムに足を踏み入れたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース&ジェントルマン!今宵!此のコロシアムで!一大決戦が始まらんとしている!!皆よ、我々は新たなる伝説を此の日、目撃する事となるぅ!!!』

「早く始めろぉ!!」

「待ちきれないよ!!!」

 

午後九時。月明かりが照らすサッカースタジアムクラスのフィールドを誇る、煉瓦造りのコロシアムに備えられた大量の松明が灯り、音量増幅魔法か何かを使っているだろうプレイヤーが、解説席から高らかに開幕のパフォーマンスを行っていた。

 

『司会進行は私、クラン:ライブラリに所属しております『アーネス』!解説は我等がライブラリのクランリーダー『キョージュ』さん、及び解説補佐で『ミレィ』さんで御送りします!』

『よろしく、諸君』

『よろしくですよー』

 

解説席として用意されたテーブルに座り、手を振るのはインテリジェンスネカマとして知られる、キャルンキャルンな魔法少女から繰り出される激渋ボイスなキョージュ。其の隣には穏やかそうな細目の女性プレイヤーの姿が在る。

 

『さぁ、長い前置きは無し!早速選手の入場です!赤の門よ、開けェ!!!彼等の、彼女等の勇姿を見よ!シャングリラ・フロンティアの最前線を掛ける、トップクランが一つ!クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)!!!!!』

 

ゴゴゴゴゴ…………と音を鳴らして、鉄の扉が開かれる。同時に光魔法だろう球体が浮遊し、スポットライトの如くコロシアムへと入場してきた、黒狼側のプレイヤー達を照らし出す。

 

「修正前剣聖だ!」

「最大火力も居る………」

「マッシブダイナマイトさぁぁぁぁぁん!!!」

「ムラクモまで居やがる………!」

「聖弓の草餅(くさもち)も居ますねぇ………」

 

修正前剣聖として、勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)の一つたる『聖剣エクスカリバー』の持ち主としても知られる、シャンフロトッププレイヤーの一人『サイガ-100』。

 

黒狼の結成当初から所属し、所属メンバーの中では最古参の一人にして『聖弓(せいきゅう)フェイルノート』の所持者『草餅』。サイガ-100とはリアルの関係者であり、シャンフロにおける『瞬間最高火力』を誇りし、ゲーム内レコードの【最大火力(アタックホルダー)】たる『サイガ-0』。

 

筋力極振りと其の見た目から多大なフォロワーを持つ、最大火力に最も近いとされる『マッシブダイナマイト』。シャンフロプレイヤーで最大回数のレベルダウンビルドを経験し、嘗ては聖槍(せいそう)カレドヴルッフ争奪戦に参戦した『ムラクモ』。

 

そしてサブリーダーの『リベリオス』に、彼のフォロワーの一人『†武閃陰蝕(スラッシュシャドウ)†』の二人で、合計七名のプレイヤーが入場してきた。

 

『続きましては、青の門!開けッ!そして来たれッ!此のシャングリラ・フロンティアにおける『七つの最強種』を二つ落とした其の実力が、今宵ヴェールを脱ぐ!!クラン:旅狼(ヴォルフガング)!!!』

 

青で彩られた鉄門は開き、彼等彼女等は入場してくる。

 

シャンフロプレイヤーで最高高所に至った者にして、一部界隈では『胡椒さん』の異名を持つ【最大高度(スカイホルダー)】のペッパー。『ツチノコさん』で知られ、凝視の鳥面をトレードマークとする、リュカオーンによって半裸を強制させられたプレイヤー『サンラク』。

 

今は亡きPKクラン:阿修羅会のサブリーダーで聖槍カレドヴルッフの所持者、そして『廃人狩り(ジャイアントキリング)』で恐れられる『アーサー・ペンシルゴン』。元阿修羅会のNo.4、プレイヤーの間で『人斬り』の通り名を持つ『京極(キョウアルティメット)』に、同じく元阿修羅会のNo.3でシャンフロプレイヤーでも徒手空拳に関しては、最高峰の実力者『サバイバアル』。

 

そして金髪ツインテールを揺らす、ガワ(・・)だけ見れば女拳闘士の『オイカッツォ』に、青色の魔術師衣裳で全身を包んだ『レーザーカジキ』の七名。

 

ユニークNPC・慈愛の聖女 イリステラが見守り、シャンフロで生配信を可能にするアイテム『別天律(ことあまつ)隕鉄鏡(いんてつきょう)』が、観客席の彼方此方で浮遊する中。

 

 

 

 

 

後に『狼双戦争(デュアルウルフウォー)』と呼ばれる、シャングリラ・フロンティアの歴史に刻まれし『クラン対抗戦』の幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 






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