VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラク、出陣




狼双戦争(デュアルウルフウォー) 其の六

『クラン:旅狼(ヴォルフガング)対クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)の星取り形式での大一番!現在旅狼陣営が四機存在するという、ロボットの内の二機をレーザーカジキ選手と京極(キョウアルティメット)選手が用いて、各々†武閃陰蝕(スラッシュシャドウ)†選手とリベリオス選手を撃破!2-0という形で戦況をリードしています!しかぁし、戦いは残り四戦!黒狼陣営もまだまだ逆転のチャンスは残っています!』

 

アーネスの実況の中、黒狼はムラクモを。旅狼はサンラクを投入する事を決めたと同時に、御互いの陣営では出場プレイヤーとして前へ出た者に、対戦相手の情報を渡していた。

 

「ムラクモ。正直に言うが我々はサンラクというプレイヤーが『半裸で凝視の鳥面を装備し、リュカオーンの呪い(マーキング)を二ヶ所に刻まれ、戦況を覆し得る大火力を保持している』という以外に、情報を持っていないのだ」

「まぁ、そうやろうなぁ………。ただまぁリュカオーン相手取れたちゅう事は、少なくとも『機動力』には重きを置いてんのは間違いないやろ。あと可能性としては『総身勇姿の護符(ヒロイック・フルボディ)』で固めてるか………やな」

 

ムラクモの予測、其れは半分(・・)は当たっている。リュカオーンの挙動は掲示板を通じ、幾つか入手したが『アレ』はかなり速い。其れを影狼(・・)ではあったが討伐せしめた実力だ、油断して挑みに行った場合には漏れ無く、強硬派連中と同じ轍を踏む事になる。そんな事は愚の骨頂以外の何物でも無い。

 

故にムラクモは、サンラクという人間を『警戒』する。そして得られた情報と、彼方に立っている半裸の鳥頭の情報を精査しつつも、彼は此れから戦う相手に『全力で挑むべし』と結論を下して、戦場へと向かう準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムラクモはシャンフロプレイヤーの中で、知る人ぞ知る『最大回数のレベルダウンビルド』を経験したプレイヤーでね。しかも一つの武器に付き『最低五つ』は、関係するスキルを所持しているの」

「更に言うと、小鎚や籠脚(ガンドレッグ)がシャンフロに追加されてるから、打撃や脚撃スキルを保有してても何らおかしくない」

「何だよ、其のラスボスじみたプレイヤー」

「更に、付け加え……ますと………其の、姉とはコロシアムの舞台で一時期、PVPしてまして………えっと……確か12戦5勝5敗2引き分け、の戦績……持ちです」

「やっぱラスボスじゃねーか、其のムラクモってプレイヤー」

 

ペンシルゴンとペッパーの説明を、そしてサイガ-0の説明を聞きながら、サンラクは準備運動の中でムラクモというプレイヤーに対し、ヤバい奴という認識を持った。だが同時にサンラクは、ペッパーの采配とフィールドの状況(シチュエーション)、そして自身が『全力を引き出せる状態』に有る事を感謝していた。

 

コロシアムの構造、飲んできたエナドリ、レベルダウン済みの格上プレイヤー。今自分のテンションが跳ね上げる為の全てが、此処には『揃っている』のだから。

 

「よっし、じゃあ行ってくるわ」

「負けたら此れネタにして、向こう三年は弄ってやるから覚悟しとけよサンラクゥ~」

「証拠としてスクショも撮ったげるね~」

「よしお前等負けたら、さっき言ったのと同じ事してやるから覚えとけ」

 

半目でそう宣言しつつ、拳をパキパキと鳴らしたサンラクは肩をぐるんぐるんと回し、戦場へ向かわんとし。

 

「あの、サンラク………さん!が、頑張って───下さいっ」

 

振り向いたサンラクの視界に、純白の鎧に包まれた『サイガ-0』の姿が映る。そして甲冑に包まれながらも彼の目には、確かに『斎賀 玲』の姿が重なって見えていた。

 

「任せろ。どんなに手数が多かろうが、使われる前に潰せば無いに等しいからな」

 

戦闘に置ける心理の一つを述べながら、サンラクは舞台へと上がる。彼の金色に輝く腰のベルトには、水晶の布糸で作られた一個の『水晶群蠍の人形』がぶら下がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『御待たせ致しました!此れよりクラン対抗戦、折り返しの中堅戦を開始します!両陣営のプレイヤー、戦場へ入場です!!!』

 

黒狼からはムラクモ、旅狼からはサンラクが戦場へと歩み、衆人環視の前に姿を見せる。

 

『黒狼の中堅はムラクモ選手!プレイヤーの中でも最大回数のレベルダウンビルドを持つ者!持ち得る技能の数は『百種類』とも考えられる事から、別名『百修戦札(ハンドレット.カース)』の異名を持つプレイヤー!一方のサンラク選手は、リュカオーンの呪い(マーキング)を胴体と脚の二ヶ所に受けながらも、二体のユニークモンスターを討伐した実力者!其の神出鬼没さと奇想天外な姿から、掲示板では『ツチノコさん』の別名で呼ばれています!』

 

アーネスなる人物の発言には色々と思う所が有るし、リュカオーンの呪いは現時点で刻傷(こくしょう)に変化したから装備は着れないし、大体の原因は奴が作ったから責任転嫁として『おのれリュカオーン』と叫んでおこう。

 

おのれリュカオーン。デイリーミッション無事達成。よし切り替えて行こう。だが長らく自分を苦しめ続けていた『装備が着れない』という問題は、一時的(・・・)という条件付きで漸く解決したので良しとする。

 

取り敢えず『あのクソガキ』と『リュカオーンの本体』に対しては、何時か盛大にカチコミを掛けて(わか)らせるのは確定とし。其の前にムラクモなるプレイヤーを、新武器や防具に新戦術(・・・)でバージョンアップした『(ニュー)サンラク』の御披露目、そして実験台(サンドバッグ)として使い潰してやる事をサンラクは決意した。

 

「初めましてやな、サンラクはん。しっかし掲示板のスクショに違わぬ『ド変態な格好』をしてんのに、ユニークモンスターをブッ倒すとは……ホンマ凄まじいの」

 

男アバターから聞こえる『はんなりでドスが効いた女声』から、今目の前に立つ『全身を水晶に煌めく鎧を纏う』ムラクモなる人物は、リアルだと『女性』なのでは?とサンラクは考えながら、毒舌には毒舌を持って返す。

 

「ド変態は余計な御世話だよ。ペンシルゴンやペッパーから聞いたぜ………どうもアンタ、スキルを百種類は習得してるんだってな?其れ頭が風船なってパンクしね?大丈夫か?」

「………ぷっ、はははは!おもろいなぁ、サンラクはんは。………まぁでも、戦う以上は『手加減』は失礼やから────」

 

 

 

 

 

本気(マジ)で倒すよ、アンタを

 

 

 

 

 

 

そう宣言して左手に『鉱石で作った円盾(バックラー)』を、右手に『獣や翼竜の牙や骨で作った雑種剣(バスタードソード)』を握り、中腰姿勢で構える。

 

「フッ………面白ェじゃねーか、ムラクモ氏。実は此方も試したい事(・・・・・)が有るんだよな」

 

彼の視線や立ち振舞い、言葉から虚勢では無く本物だと悟ったサンラクは、両手に傑剣への憧刃(デュクスラム)を握りつつ、流れる様に『構え』を取る。

 

サンラク自身、此の『構え』に名前が在るのかは()()()()。何より『見てくれを真似ただけ』にしか過ぎず、其れの真髄も解らない。其れでも彼は欲しいと願った、此の構えから続く『動きによる結果』を求めて。そして何とか決戦を前にして、彼は『其の動きの形を物にする事』が出来た。

 

「ええっと、確か───『心の火を鎮め、己の河川を御する』……だったかな?」

「………へぇ、此れは『面白い事』になりそうや」

 

互いに火花が散り、そして──────

 

『其れでは中堅戦!始めェ!!!!』

 

アーネスの叫びと同時、ムラクモはフォーミュラ・ドリフトを点火し、サンラクへと斬り掛かり。

 

「甘ェよ」

 

居合斬りスキルで斬らんとした其の一撃を、予め加速と共に仕掛けてくると想定していた(・・・・・・)サンラクは、進路上へ傑剣への憧刃の剣身をジャストタイミングで置き、クリティカルを発生させながら阻んで見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見様見真似(なんちゃって)』…………其れはサンラクがディープスローター………『とある世界(ゲーム)』では『ナッツクラッカー』と名乗っていた『ラスボス』から盗んだ(パクった)技術であり、其れを発展させて『真似た奴の動きを自身の身体に反映』し、其の者として『戦闘や行動を実行する事』を目的とした『役割模倣(ロールプレイ)』の使い手。

 

ディープスローターの其れは自分の比では無く、千変万化の声質変化(ボイスチェンジ)を始めとし、彼女の目の前で十分でも戦えば『見様見真似で動きを読み取られ』、十日も戦えば『役割模倣で思考さえ読み取られる』程の、一言で言えば『天才の領域』に立つ人物。

 

ペッパーという人物はディープスローターに『近しいタイプ』であると同時に、其の戦闘スタイルには『今現在役割模倣をしている人物が色濃く反映されている』プレイヤーでもあると、サンラクは結論を付けている。

 

彼が真似ている人物の名は『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)』、其の動きとスタイルにペッパーが使っている『ヒット&アウェイ戦法』を加え、役割模倣(ロールプレイ)したのが今のサンラクの戦闘(バトル)スタイルだ。

 

「チェイアァ!!」

「左足の下段蹴り、盾での殴り付け、其処から………多分頭突き」

 

ムラクモの身体の構造と腰や肩の動きから、其の動きに予測を立てつつ、右足で膝を押さえて、円盾は右手の剣で弾き(パリィ)、頭突きは左手の剣で刺突の構えを取る。

 

「構うか!」

「何ッ!?」

 

だがムラクモは刺突として向けられた、サンラクの剣の鋒を恐れる事無く額を突き出し。まるで()()()()()()()()()かの様な音と共に、左手から傑剣への憧刃を弾き飛ばした。

 

石頭(いしあたま)ァ!?」

鉄頭(てつあたま)だよっ!」

 

振るわれる骨と牙の雑種剣、攻撃モーションを加速させる『ストリームアタック』も使用済み。胴体を───「一撃で斬り飛ばすってか?」

 

刹那にサンラクが『ブリッジ姿勢』で斬撃を回避しており、直後に左膝裏の比較的装甲が薄い部分を蹴られ、体勢を崩される。円盾を地に刺して何とか踏ん張るが、無防備になった右脇腹に『ヤクザキック』が直撃、衝撃と共に後退(ノックバック)させられた。

 

「中々やるじゃん………」

「アンタもな」

 

そうして武器を拾い直したサンラクと、武器を構え直したムラクモは、ほぼ同時に同じ感情を抱く。

 

 

((コイツ─────出来る!))

 

 

 

 






強者の戦い




メダリオンヘッド

強化(バフ)系スキルの一つであり、メダリオンシリーズに属する『特定の部位の耐久値を大幅上昇させる能力』を持つスキル。耐久に一定以上のポイントが振られてたプレイヤーが使えば、防具込みで業物の武器を弾き飛ばせる程。

………なのだが、防御や装甲貫通系武器やスキルを弾こうとすると、脳天に直撃してダイナミック自殺不可避なスキル。また魔法に対しても無力であり、頭から炎や雷に突っ込んだ場合は、やはり自殺になってしまう不遇なスキル。

しかしながら職業:闘士(グラップラー)志望のプレイヤーからは『超至近距離(インファイト)の組み合いで、此のスキルの有無が勝敗を分けた』と言われる程に、隠れた人気を誇っている。


鋼から鐵へと変わる時、其の硬度は神域へと至る標と成らん


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