激突加速
「いや今の躱わすのかよツチノコさん………」
「スキル使った?アレ普通避けられ無いでしょ?」
「素の動体視力が凄いんだと思う、あと単純にVRゲームの適性が有ると思う」
観客席のプレイヤー達がざわついている。数瞬前のサンラクとムラクモによる最初の激突、僅か数手のやり取りの中で示された御互いの動きと技術の断片を目撃。まるで豹が互いを睨み合う様に、一定の距離をジリジリと歩いて様子を伺う二人を見ながら、どよめいてざわめいている。
「ッ!!」
此処で動いたのはムラクモ。真っ直ぐに駆け走りながら
(雑種剣にエフェクト無し、盾は何かオーラ憑いてる、ダメージ反射の可能性有り。短剣は『
「蹴る脚は止める。剣は受け流し。盾持ちは腕を下からぶん殴る」
「!」
投擲された雑種剣を胴体視力で回避、前に踏み込みつつ左足の甲を踏み付けて蹴りを封じ、右手の逆手斬りを左手の
握った円盾が衝撃で左手がカチ上げにより痺れ。握られていた盾は其の手から離れて離れて宙を舞い、サンラクがバク転で距離を離しながらに、もう片方の傑剣への憧刃の鋒を彼の首元を刺す様に構え。ムラクモもまた、距離を離しつつも落ちてきた円盾をキャッチして、静かにサンラクを睨む。
「マジかいな………!」
「ハッハー!お前の動き、手に取るように解るぜぇ!」
此れはサンラクの『
だが其れでも相手にそう『思わせる』事で、判断に隙間を作り出す。そして其の隙間が積み重なる事で、決定的な『隙』が産まれるとサンラクは考えている。
『何という読み合い!何という差し込み!両者一歩も譲らないッ!』
「雑種剣に短剣、其れに盾………色々な武器を使うんだな、ムラクモ氏」
「せやで、まだまだこんなもんや無い」
「なら此方もモードチェンジだ」
アーネスの実況の中、互いに武器が取り替わる。ムラクモは湖沼の短剣と円盾を仕舞い、取り出したのは『巨竜の頭蓋を模した大鎚』。対するサンラクは手に馴染んだ『黄金と水晶の巨大籠手』。
「ドラッディ・ハンマー改十五………!」
「
『両雄、此処で武器を切り替えました!ムラクモ選手はドラッディ・ハンマー!サンラク選手は………機械チックな大型の籠手です!』
互いに選ぶは打撃系統武器、違うのは一撃の重さと手数の多さ、そして共に歩み積み重ねた物と神代の技術で甦りし物。
「さっきまでは『守り』だったからな。こっからは『攻め』させて貰おうか………!」
「上等や、受けて立つ!『サンドクエイク』!!!」
ムラクモが頭上で頭蓋大鎚をブン回すと同時に、インパクト部分に業火の如くエフェクトが纏う。そして徐に大地に叩き付ければ、地面に皹が迸って『刺状の隆起が一直線に』サンラク目掛けて襲い掛かった。
大鎚系攻撃スキル・サンドクエイクは、地面を叩く事によって衝撃波が発生。初期微動で敵を僅かにスタンさせた後、本命の刺状隆起で敵を貫くという『打撃武器ながら遠距離』と、『土&刺突の複合属性攻撃を可能』としているという能力を持ち合わせている。
「ソイツは『スタンからの本命』だろっ!」
フローティング・レチュア起動。一歩目で空中を踏んで初期微動によるスタン回避。二歩目の踏み込みと同時に
「掛かったな、たわけ!」
「おっとぉ!?」
打ち付けた大鎚の柄を爪先で蹴り飛ばし、片腕に目一杯の力を籠めて、回転と共に隆起していた刺状の大地を殴り付け、岩石を礫に変えて打ち放つ。言わば『天然のショットガン』、此の一撃は避けられない──────
「────
背中に揺れる
「【
「何やと!?」
光に消えるサンラク、通過する岩の礫。そしてムラクモは悪寒を抱いて武器を収納、即座に円盾を片手に握って背後を向けば、フローティング・レチュアの三歩目を踏み金色の籠手を構えたサンラクが迫っており。
「オルァ!!!」
「ぐぬぉ!?!ッ負けるか!」
「ぬうっ!?」
あまりの威力に押されながらも、ムラクモは衝撃で盾を壊させない為に『自ら地面に背を付ける様』に倒れ込み。籠手+強化スキル+拳撃スキルの威力を往なす事により、サンラク渾身の格闘攻撃による大ダメージを阻止したのである。
『流石ムラクモ選手、ダメージコントロールが上手い!装備の損傷も押さえつつ、渾身の一撃を凌いだァ!』
だが─────ムラクモや観客達を含めて、旅狼陣営の面々でも
「よっと、そして【
フリットフロートで空中に踏み留まり、左腕に装備した水晶柱が付いた籠手から
対してムラクモは横に転がる事で回避するが、虚空から跳躍してサンラクが肉薄し、
「────はッ?ウワッ!?ちょっ!!?」
「オラオラオラオラオラオラァァ!!!」
『えっ、エエエッ!?水晶弾!?水晶弾が飛び出した!?サンラク選手の左腕の籠手から水晶弾が飛びました!?』
『なんと!我々が今まで見た事の無いギミックを搭載した、とんでもない能力を持った籠手かッ!』
『不意打ちの遠距離攻撃、コレは有効な一手ですよ~………!』
未知のギミックによる揺さぶり、普段なら余裕で捌ける筈の近接戦闘時のラッシュが躱わせず、受けるしかないムラクモ。煌蠍の籠手に使われているのは、サンラク自身が(一方的に)マブダチと呼ぶ資金源兼武器アクセサリーの実験台こと『
唯でさえ頑丈な其れと、只の円盾では耐久値には天と地程の差が存在していた。水晶と金色の連打で盾の耐久が徐々に減らされ、流石に不味いと悟ったムラクモは『回転挙動によるパリィ&独楽の挙動が出来る』というスキル『ブランシュスピン』を起動。
サンラクのラッシュを回転パリィ、及び回転挙動で距離を取りつつも、発射されて地面に刺さった水晶には近付かないように位置取りを意識する。
「こんだけ攻めてあんまダメージを与えられないとはな………」
「其の台詞、そっくり其のままアンタに返すわ。かなり自信有ったコンボ攻撃なんやけどな」
「俺まだ本気の『ほ』の字や、全力の『ぜ』の字も出してないんだけどな?」
口八丁で答えつつ、サンラクがムラクモに対して抱いたのは、スキルの使い方や攻撃追撃が『ペッパー』にかなり似ている事。水晶弾の特色を予測し、近付いてはいけないと考えた彼はフィールドの状況を瞬時に判断しながら、更なる追撃時に自身の『最も攻めやすい位置』を陣取った。更に其の武器で考えられる挙動とは『別のスタイル』を組み込み、其の時其の時で繰り出せる『最高』を追求していると。
対してムラクモはサンラクなる存在が、かなりの『対人馴れをしているプレイヤー』で有ると
そしてムラクモは円盾とハンマーを仕舞って決断する。此の手合には『長期戦』へ持ち込んだ場合に、積み重ねたブラフが毒となって一気に蝕んでくると。故にこそ此方が狙うは、敵を如何に早く倒すか────即ち『短期決戦』が正解であると。
「しゃーない、こっから『五段くらい』ギアを上げよか」
ムラクモが取り出したのは湖沼の短剣………では無く、二本の『傑剣への憧刃』。プレイヤー最高峰の鍛冶師・イムロンの手により真化が施された其れを、両方共に逆手持ちにして戦士は高らかに宣言する。
「戦士職最上位の『
ぶつかり合う魂