VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ムラクモというプレイヤー




狼双戦争(デュアルウルフウォー) 其の八

戦王(せんおう)』──────其れは一定数以上の武器の習熟度を規定値以上にし、更に其れ等の武器によるスキルを各々一定数以上習得する事を条件として、戦士の上位職『蛮族(ばんぞく)』から転職を可能にする、戦士系最上位職。

 

其の能力は様々な武器への適性強化、そして装備している武器に対応したスキルの性能を向上させる『武威解放(ウェポンドライブ)』を用いての、手数と火力の両立からなる前衛職の中でも『取分強力な部類として』認知されている。

 

だが、其れ等のスキルは一芸特化プレイヤーの持つ技能には遠く及ばず、更にライバルとしてド派手な戦い方をしている『剣聖(けんせい)』が居る為に、戦王に至ったプレイヤーは『ムラクモ』や『サバイバアル』を始め、シャングリラ・フロンティア内には『数えられる程度』しか存在していない。

 

だがムラクモは其れを選んだ(・・・)。理由としては『色んな武器を使いたかった』からであり、元々『狩りゲー』が好きなムラクモは、神ゲーとして名高いシャングリラ・フロンティアで多種多様な武器を用いて巨大なモンスターを狩り、得てきた武器スキルを用いてNPCが催す大会でプレイヤーを相手に試す事が()()()()()()()

 

そしてムラクモにとっての『スキル』とは、自身が此の世界で生きてきた『証』であると同時に、圧倒的な強者を越える為の『手段』として捉えている。久方振りに出逢えた、自分の『本気』をぶつけられるプレイヤーに、ムラクモは積み重ねた己の力を『余さず』ぶつけにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武威解放(ウェポンドライブ)、二刀流形式:『倒竜烈刃(とうりゅうれつじん)』ッッッッ!!!」

 

ムラクモの逆手で握る傑剣への憧刃(デュクスラム)を青色のオーラが纏わり付く。其のオーラは始めこそ揺らいで居たが、軈ては鋭利な剣筋をより長い別の剣で合体させた様な見た目へ変わる。

 

「さぁ、行くでェ!!」

 

五天無双(ごてんむそう)を含めた強化スキルの点火と共に肉薄し、左手の傑剣への憧刃を振るって袈裟斬りせんと迫った其れを、煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)の右側で弾く。

 

「そんくらい読めてるわァ!」

「甘いのはアンタや!」

 

左手の傑剣への憧刃が纏うオーラが、若干ながら『大きくなる』。流れ続く形で右手の傑剣への憧刃が、サンラクの首筋を斬っ裂かんと飛んで来るも、持ち前の動体視力によって回避された。

 

「ハハッ!闇雲に振り回してるだけじゃ、俺は捉えられねぇぜ!ムラクモ氏!」

「そんなんは、初めから承知しとるわ。此方の狙いは『其れや無い』!」

 

右手の傑剣への憧刃の纏うオーラが、左手の傑剣への憧刃と同じく少し大きくなって。先程より『速くなった』左側の斬撃が、サンラクへと襲い掛かった。

 

スキル:倒竜烈刃(とうりゅうれつじん)。二刀流スキルの一つ・スピンスラッシュから始まり、ラッシュスラッシュと無尽連斬(むじんれんざん)を経て、獣鏖無尽(じゅうおうむじん)の選択派生先に設定された『進化スキル』である。

 

此のスキルの最大の特徴は、相手に攻撃を仕掛けて『其れがパリィされる』、もしくは『其れを回避される』事をトリガーとし、次の攻撃時には『攻撃速度と威力の強化』。及び『攻撃時のスタミナ減少抑制』が、矢継ぎ早に与えられていく。

 

そして此のスキルが終わり………即ち再使用時間(リキャストタイム)に突入する為の条件は『其の刃が敵の身体を切り裂く』か『左右どちらの手から武器が離れる』以外に、止まる事は無い。

 

初撃で喰らえば『其処まで脅威』では無いのだが、此のスキルは『高頻度で回避行動をしたり、高倍率のパリィを行うモンスターやNPC』、プレイヤーであれば『避けタンクや重装甲の防具で固めた者』に対しては、ガンメタレベル(・・・・・・・)でブッ刺さるスキルである。

 

「チェアアアア!!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉ!?!」

 

避けて、弾いて、また避けて。其の度に斬撃の速度が、徐々に徐々に上がっていく。まるで車のギアを跳ね上げるが如く、一撃躱わしたと思えば別の攻撃が迫る、其れを弾けども次の攻撃がやって来る。

 

(其れがどうした!!)

 

サンラクは知っている。此の連撃程度等、墓守のウェザエモンの断風(たちかぜ)の速度や、龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)の重さに比べたなら『まだまだヌルい』と。

 

「なら此の状態(・・・・)の『必殺コンボ』で駄目押しや。『拡大改尺(マグニフィセント)』ッッッッ!!!」

 

ムラクモがスキルの名を唱えた其の刹那、傑剣への憧刃の攻撃範囲が一瞬の内に、特大剣(ビックスケールブレイド)級にまで拡大(・・)。サンラクへと襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不世出の奥義(エクゾーディナリー.スキル)拡大改尺(マグニフィセント)

 

其れは無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)・古城の内部に出現する、固定エンカウント型のモンスターたる『輪郭の騎士(コントゥアル・ナイト)』の不世出個体(ふせいしゅつこたい)にして、通常種の『約四倍の巨体』を持つ上に、線が薄い『隠し腕』による四刀流での『初見殺し要素』を兼ね備えているモンスター。

 

通常種同様の魔法無効に加えて、刺突系の攻撃を実質無効化するという、中々な難易度を誇った強敵であり、セーブテントを用い『三回目』のリスポーンの末に討伐したムラクモの感想としては、此のモンスターは『サイズの割に攻撃が当たらない、向こうの攻撃は広範囲にヒットする理不尽強要の面倒な敵』という物。

 

だが其の戦いで獲られた不世出の奥義は、ムラクモの二刀流時に置ける『戦闘スタイル』を、必殺級のレベルにまで昇華させる凄まじい(パーツ)であったのだ。

 

拡大改尺の能力は非常にシンプルで、武器の『ヒット判定の上昇』…………単なるナイフですら大剣レベルの範囲にまで拡大する様は、まさに巨人の線画騎士を彷彿とさせし『圧倒的な攻撃範囲』を誇る。

 

そして其れは、クリティカルで耐久が減らない片手剣の『傑剣への憧刃』。相手に攻撃が届かない限りは威力や速度が上がり続けるスキル『倒竜烈刃』。そして攻撃範囲を超拡大させる『拡大改尺』。此の三つによって、恐るべき『コンボ』として成立した其の連斬が、サンラクを仕留めんと怒濤の荒波が如く押し寄せた。

 

「っお、ぐっ、ぬぇえええい!?」

(─────ッ!マジ、かいな………!)

 

躱わした事、パリィした事。其れによって倒竜烈刃の速度と威力は上がっている、更には拡大改尺で攻撃範囲は拡大している。

 

だと言うのに。

 

今、確かに目の前に居るサンラクは此の連撃に当たる事無く、其の全てを彼は『躱わしているのだ』。『相手に攻撃を繰り出させ、得てきた情報を元に』自身の動きを修正し、そして『相手を見ながら、己の攻撃が当たる位置を見抜いている』かのような動きを。

 

「次は『左の斬り上げ』、其れを打ち抜き───止める!!!」

 

アガートラム及びハリケーン・ハルーケン。傑剣への憧刃のハンドガードの位置を知るが故の、ピンポイントのインパクトプッシュ。金色の籠手がムラクモの左手に握りし、片手剣を叩き落として彼は直ぐに距離を取る。

 

そして息を付かぬ攻防戦に、呼吸を忘れたかの様に静まっていた会場は、此の瞬間に大歓声で沸き立った。

 

『な、何という戦い………ッ!!私達は、私達はとんでもない一戦を!此の瞬間に!刮目しています!!』

『いやはや、本当に凄まじいな……。此程の力とはね………!』

『あの連撃をノーダメで凌ぎ切るって、やってる事が相当ですよね~…………』

 

実況のアーネスに、解説のキョージュとミレィも驚愕の感情を浮かべながら、二人の戦いを見守って。そしてサンラク自身も先程繰り出した『必殺コンボ』が、ムラクモの持つ武器の種類分有ると仮定しつつも、長期戦は愚策だと考えた果て─────此方も『切札』を切る事に決めた。

 

「…………まさかとは思うがコレ、旅狼(ヴォルフガング)が隠してる『ユニークを引っ張り出させる為』に、わざわざ大掛かりなコロシアム建てたんじゃねーのかなぁ………」

「ん?ユニークやと?」

「そうだな……。時にムラクモ氏、俺の身体に刻まれた此の傷跡。コイツが『リュカオーンの呪い(マーキング)』とは別物(・・)である事は知ってるかい?」

「…………そりゃホンマかいな?」

 

にわかに信じられないといった表情のムラクモ。サンラクの言葉に視線が一気に鋭くなるは、クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)団長(リーダー)・サイガ-100。そして其の事実を知らないプレイヤー達は、ざわめきどよめいて彼に注目する。

 

「俺の身体に引っ付いてるのは『リュカオーンの刻傷(こくしょう)』。あのクソ狼をブン殴って張り倒した後、奴に「呪いを何とかしろ!」って言ったら、よりにもよってアップデート(・・・・・・)しやがった。以前と違って服は着れるが、三分経つと漏れ無く爆散しやがるクソ仕様だよ」

 

他にも色々なデメリットも備わってるけどな………と小言を呟きつつも、彼は煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)をインベントリへ。代わりにインベントリアをノールックで操作し、其の中から『刃部分を取り除いた柄の部分だけの短剣』という、一見変わった武器を取り出す。

 

其の短剣の本来刃が在る場所には、奇妙な事に『紫水晶が埋め込まれて』おり、アレは一体何なのだとプレイヤー達が疑問に思う中、サンラクは此の武器の『正体』を明かした。

 

「実は此方のユニークを進めてたら、此の呪いを『相殺』する手段が有るって事を知ってな。そして何やかんや有って、よぉぉぉぉぉ………やく手に入れたのが、此の『灼骨砕身(シャッコツサイシン)』。コイツには」

 

 

 

 

 

ユニークモンスター・無尽のゴルドゥニーネの呪い()が組み込まれてる

 

 

 

 

其の言葉によって、此の会場に居た一部のプレイヤー達を除く、全ての者が驚愕した。何せサンラクの発言によって、彼は四体目のユニークモンスターと接触を果たした事を意味していたのだから。

 

「そしてコイツを────こう使う(・・)!!」

 

柄を力強く握れば、刃の存在しない短剣に『非物質の刃が構築』される。其の刃は軽くに振るうだけでも、対象に『軽度の呪いを付与する』能力を宿した、取扱厳重注意足り得る()()()()()()()()()()()()()

 

そして彼は刃の向ける先を裏返し────己の胸に刃を突き立てた。

 

「な────!?」

「もう一丁、オマケぇ!!」

 

胸から抜き出して其のまま左足を刺して、右足にも同様に非物質の刃を刺す。

 

同時にビシリ………!と。明らかに人体から聞こえる『硝子に皹が入る様な音達』。灼骨砕身が刺さって出来た傷口を起点とし、サンラクの顔と腰に届く直前で留まった崩壊の亀裂。同時に走った裂目からは黒炎が漏れ始める(・・・・・・・・)

 

頭装備をリッチマン・キング・サーモンの頭面(かしらめん)に切り替え、呪い相殺という役割を果たしてみせた灼骨砕身を収納。そして其の両手には格上を倒す牙たる、勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)金皇照(こんおうしょう)】並びに【冥帝輝(めいていき)】を装備。

 

そして右手を心臓に叩き付けて、封雷の撃鉄(レビントリガー)をも起動し、全身に黒雷を迸らせながら黒炎を撒き散らす、最早『モンスターとしか形容出来ない姿』に変貌したのである。

 

 

「此れで準備は整った、構えなムラクモ氏。此処から俺はギアを『十段階跳ね上げる』から、負けても文句無しで頼むぜ………!」

「ハハハ…………!コレはマジで『バケモン』かいな───!!!」

「まぁやっぱり俺的には、川を舗装するよりも心を燃やす戦い方の方が好みだ!さぁ、どっちが先に燃え尽きるかチキンレースと洒落込もうぜぇっ!!!」

「いや燃えとるのソッチやんけッ!?!?」

 

ムラクモの渾身のツッコミが響く中、サンラクはムラクモの残りの手札を使わせる前に叩き潰すべく、此処まで明かしてこなかった『己の全身全霊』を開帳。

 

戦王たるムラクモに、黒雷と黒炎を纏うサンラクが襲い掛かった。

 

 

 

 






其れは蛇の祝福(どく)


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