戦いを見守る者達
「やっぱ構えるよりゃ、ガンガン攻め立てんのが俺にゃ合ってるわ!」
「ぐ、おっ!?ッ、マジかい………!アンタまだ速くなるんか!」
「ギア十段階上げるっつたろうが!今更泣き喚こうが、置いてきぼりにしてやんよゴラァ!!」
「くっ……………上等や!!ブッ倒したるから覚悟しぃサンラク!!!」
先程までのカウンターに比重が置かれた戦法から一変、合金の黄金と蒼黒の紺碧で出来た二本の
ユニークモンスター・無尽のゴルドゥニーネの
元々の半裸の鳥面の時点で随分と『変態』じみて居たのだが、辛うじて残っていた人の姿を完全に放棄して、まるで本性を露にした『怪物』の状態と成り。戦士職最上位の戦王たるムラクモと激突し、激しい打ち合いの中で超速度で動き回り、高頻度でクリティカルを叩き出す。
今の絶対当たっていただろと疑う場面すらも、黒炎黒雷を激しく滾らせ迸り紙一重で回避する光景は、味方側の
「なぁオイカッツォ。確かサンラクはムラクモの事を、ラスボスやら何とか好き勝手言ってたよね?」
「なぁにがラスボスだよ。
「コレは戦争の後でライブラリ含めた、同盟クラン達から質問攻めが来そうだなぁ………」
「カカカ………!あぁまさしく『アレ』だ、アレがアイツだ………!」
「サンラクさん……凄い、です」
「わぁ………!」
人の事をラスボスやら呼んでた方が、もっとラスボスじみた事してるじゃんと宣う者達。
戦争後の説明会に、如何にしてあの鉄砲玉を席に着かせるかと画策する者。
形振り構わず敵をぶちのめす為にリソースを切る姿勢に、
人の形を捨てども、一歩間違えばやられてしまう状況でも揺らがない強さに惹かれ、彼の勝利を信じる者達。
「ペッパー君、ペッパー君。いやはや凄まじいね、さっきサンラク君が使っていたギルタ・ブリル?なる武器が気になってね。是非詳細を知りたいのと、
「御久し振りだねぇ、ペッパーくぅん。サードレマの正門以来かなぁ???」
「うぉ!?カローシスさん!?に、ディープスローターさん」
六人六色の想いを抱く中、何時の間にか旅狼陣営選手控え場所に押し寄せて来ていたプレイヤー達。此処本来選手以外に立入禁止じゃ無かったの?と頭をもたげて居れば、悲哀漂う金色の騎士装束のプレイヤー・カローシスUQの後ろから三人のプレイヤーが姿を見せる。
海賊衣裳にバンダナと、眼鏡を掛けたインテリヤクザな見た目をしている武器狂いのSOHO-ZONE、西洋ファンタジーなシャンフロ世界でも微妙に浮いた雰囲気を漂わせ、カウボーイハットを含めて『西部劇』を彷彿とさせた軽装の弓使い。そして黒と白に彩られたドレスと赤髪蒼眼を宿した、現在のシャンフロで数の少ない魔法使い職最上位の『賢者』に至ったプレイヤー・ディープスローターがテクテクと躍り出てきた。
「!お前『アトバード』か」
「おや、其の声は『バイバアル』かい?今は『サバイバアル』か。僕は『ヤシロバード』だけどね」
何やら知り合いらしいサバイバアルとヤシロバード。ディープスローターは旅狼陣営のメンバーに次々と挨拶する中、SOHO-ZONEは二人を見てこう言った。
「アトバードにバイバアル……嗚呼、
其の声を聞いた、サバイバアルとヤシロバードが反応。まるで『同郷の者』と出逢えた様な、そんな視線がSOHO-ZONEに向けられる。
「ハハッ……!『χのアサシン』はテメェだったか……!」
「成程、君が『あの』………」
「御久し振りです二人共。そして彼の動きを見て『確信』しました。成程成程………アレが『サイレントキル幼女』の名を轟かせた『μ-skY』だったんですね」
今SOHO-ZONEがとんでもない事を口にした気がする。サイレントキル幼女?サバイバアルはサンラクと『殺し合いをした仲』だと言ったが、まさか此の三人とも同様な関係に在るのだろうか?
「─────其れよりもペッパー君!先程サンラクが使ったギルタ・ブリルという武器は一体何なのですか!?黄金と水晶の異なる材質を用いた籠手!水晶弾を発射する未知なる機能!そして他にも朱雀や玄武なる、未知なるアニマルロボット・パワードスーツ・武装達!!私は!私達は其れが知りたいッ!!!いや知らなくてはいけないんですよッッッッ!!!」
猛烈なまでにハッスルしながら、SOHO-ZONEを先頭に詰め寄ってくるプレイヤー達。血走ってギランギランな視線の数々に、ペッパーは非常に遠い目をしながらも、此の状況を何とかせんと思考を巡らせる。
「……………………………」
そして此の場で唯一人。
「な、んで………?…………なんで」
先程迄見せていたサンラクの動き。其の動きはおそらく、ペッパーが墓守のウェザエモンとの戦いで披露した戦法と同じ物。だが明確に異なるのは、其の動きの節々に『
まるで
「あ、の………京極ちゃ────わっ」
「教えて!!知ってるんだろう!?
「お、落ち着いて……落ち着いて、京極、ちゃん……ッ!」
「………っ、ぁ…………っ!ごめん………」
墓守のウェザエモンの時と同じ、感情のオーバーフローによる激昂と、シャンフロのシステムが京極の感情を読み取った事で、アバターの両目から涙が溢れ出して零れ落ちるのを見た事で、ペッパーを初めとして周りの者達も何だ何だと注目する。
サイガ-0が止めたものの、未だに感情の昂りが収まる様子が無い中、最大火力を賜った純白の重装騎士は剣豪たる彼女へ、己の確信を以て答えた。
「其の………取り敢えず、彼は。………龍宮院と一切関係は………有りません」
「は?」
殺意の感情が発露する。まるで
「彼は武術とかは、やっていません」
「そんな訳……っ!」
「本当です」
此処で彼女に気圧されてしまえば、きっと自分は少なからず『後悔』してしまう。想い人を思うが故の、そしてあの日好きになった彼の表情を脳裏に浮かべ、絶対の自信を以てサイガ-0は京極に答えてみせた。
「ならさっきの『アレ』をどう説明するんだ!?足取りは雑!剣の取り回しも滅茶苦茶!『あんなのは』素人同然の剣だ!なのに………!あれは
アレをあんなのと言った京極に、ディープスローターの目からハイライトが消え去った冷たい視線が注がれ。其の手に杖を取り出し、掴んだ事により何か仕出かさんとしたのを見たペッパーが、何とか割って入り落ち着かせ。サイガ-0は京極に言った。
「多分アレは………『富嶽御爺様が監修したゲーム』で、覚えたんだと………思います。」
「……………………は?」
京極は解らなかった。目の前に居る
祖父の遺品整理をしていた祖母から、「貴女への誕生日プレゼントとして用意されていた」と渡されたソフト。『ラスボスAI範士』を剣道としても邪道な方法で倒し、一通りクリアしてから『失望』の色が濃い結果となったのは、今も記憶に残っている。
だからこそ解らないのだ。あのゲームのラスボスは倒せども、龍宮院 富嶽の動き方を物にした事に『繋がらない』からだ。そしてペッパーは気付いた──────あのゲームで『裏ボス』に挑む為に必要不可欠な『合い言葉』は、サイガ-0を睨み付けている『京極に向けて送られた言葉』だった事に。
「…………………『若き芽よ 西へ東へ 研ぎ
「えっ………」
「あーくん?」
「ペッパー、さん」
「あのゲームの掛け軸に示された文字を繋いだら、此の短歌に変わった。きっと此れは、富嶽さんが君に届けたかった『大切な心構え』なんじゃないかな?」
サイガ-0は気付く。ペッパーもサンラクと同様に、既に龍宮院 富嶽の写し身たる『トレースAI』へと挑んでいた事に。そして京極は────絶句と更新から、魂が抜け落ちてしまったかの様に崩れ落ちた。
「京極!?」
「だ、大丈夫………?」
「────しらない。しらない、よ。………わたし、しらない………」
此の世にはもう居ない、今世最強と謳われた剣聖が届いて欲しいと願った言葉は、蒼空を舞う勇者を通じて彼女に届けられた。
そして彼等彼女等を他所に、戦王ムラクモと傭兵サンラクの戦いは佳境へと差し掛かっていたのである……。
真実を知る