VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勝利を此の手に




狼双戦争(デュアルウルフウォー) 其の十一

黄金の刃(金皇照)蒼黒水晶(冥帝輝)が交じり合い重なり、サンラクの持つ双つの剣刃(つるぎ)が一つの両手剣へと変貌を遂げた。其の光景は今此の瞬間に、戦いを目撃している全てのプレイヤーやNPC達へ、絶大極まる衝撃を与えていた。

 

『何と、何と何と何とォ!?サンラク選手が持つ剣が融合か合体して、両手剣に変化しました!?というかあんな能力を私は見た事無いし知らないです!!?』

『ハハハハ!本当に凄まじいな、サンラク君は!後で色々と話を聞きたい所だ!』

『凄いですねぇ~………合体機能はロマンが有りますよぉ~』

 

旅狼(ヴォルフガング)陣営や解説席、観客席から『ヤバい気配と視線』が全身を突き刺してくるが、黒炎黒雷を纏うサンラクは完全無視を決め込んだ。戦いが終わったら適当ブッこいて、さっさと此処から逃げてやると。

 

「先に宣言しとくぜ、ムラクモ氏。今の俺は『掠り傷』を受けただけでも死ぬ、超々々々背水仕様だ。だから───『一撃当ててみせろ』、死ぬ気でな」

「なら此方も言わせて貰うけど、此方も後一発でもクリティカルを食らったら『倒される』んやわ。だから渾身の一発を、全力で叩き付けな」

 

互いに距離は充分。ジリジリと円を描くかのように足を動かし、敵との位置を見計らう。そして────サンラクの後ろにムラクモが投擲した雑種剣(バスタードソード)と、ムラクモの進路上にサンラクが打ち込んだ水晶弾が重なった、まさに其の瞬間。

 

「チョイサァアアアアアア!!!」

武威解放(ウェポンドライブ)!槍撃形式:戦妃の覇槍(デューオ・オブ・ブリティッシュ)!!!」

 

サンラクが奇声と共に叫び声を上げながら、其の手に握っていた閠永月(ぎょくようげつ)を、有ろう事か上空へと放り投げたと同時、ノールックでインベントリを操作して、ムラクモとの攻防戦で用いた煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)を取り出して再装着。

 

対してムラクモは職業:戦王の固有スキルを解放、真っ直ぐに突撃しながらも其所に他のスキルを重ね掛ける。戦闘開始から十分が経過した事で使用可能となった『オーバーヒート』、直線を光の如く走り抜ける『シャイニングアサルト』、槍を用いた突進時に背面以外のダメージを減少させる『ヴローズン・チャージ』の三つのレベルMAXスキル。

 

そして武威解放によって強化された事で、敵に攻撃が当たるまで『自身のスタミナ減少が超大幅抑制される』効果へと至った『戦妃の覇槍(デューオ・オブ・ブリティッシュ)』の大槍装備時のコンボで超速突貫する。しかし其の突貫の最中、サンラクは左側の水晶柱が組み込まれた籠手を振るい其の口から「【成長せよ(Growing-up)】」と一言唱えたのが、集中していたムラクモの耳に届き。

 

直後に突き刺さっていた『水晶弾』が、サンラクとムラクモの間を阻む様に『成長して』、巨大な水晶壁となって立ち塞がった。

 

「構うかぁ!!!!!!」

 

スピードを乗せて、一直線に。最速最短で『あの場所』に到達する。其の過程でサンラクを貫けたなら結構。そうじゃないならば、別のプランでブッ飛ばす。大槍の穂先が水晶に突き刺さり、衝撃が壁全体に皹を迸らせ、僅か一秒足らずで頑丈な水晶壁を貫き砕く。だが壁の向こうの其の先に、サンラクは『居ない』。

 

ムラクモは振り向かない、当初の予定通りに別のプランでサンラクを倒す事を決めた故に。真っ直ぐに駆け、大槍をインベントリに収納。雑種剣を掴んだ瞬間から振り向き様、此処まで温存していた『瞬刻視界(モーメントサイト)』を使用。視界内の動きをスローモーションにする程に、認識速度を高めながら振り返ったムラクモが見た景色は。

 

投げていた両手剣を何時の間にか携えながら、既に『居合の構えで』持ちながらカーブを描いて急速接近する、サンラクの姿を見たのだ。

 

あの局面…………水晶弾を煌蠍の籠手で成長させ、ムラクモの視界を一時的に切ったサンラクは、水晶の成長と同タイミングで、封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)がもたらす過剰伝達(オーバーフロー)効果で跳躍し、再使用時間(リキャストタイム)を終えたフローティング・レチュアの一歩目で速度を調整して閠永月をキャッチ、二歩目で地上に向けてダイビング+ルーパス・アサイラムでルートを絞り込み、身体を捻った上でフリットフロートによる急ブレーキ。

 

三歩目で地上に足を着けられる様に意識し、空中歩行効果が切れて片足が地面と接地した瞬間に、フォーミュラ・ドリフト+ボルテックスムーヴのダブルコンボで加速しながら、ムラクモへと迫ったのである。

 

(──────掛かったな、サンラクはん!)

 

だがムラクモは此処まで、意味も無くサンラクの攻撃に晒されていた訳では無い。(彼女)はサンラクとの超至近距離(インファイト)下の戦闘の中、黒雷を纏ったサンラク自身の挙動速度を『割り出し』ていたのだ。

 

(瞬間転移を使おうが、此方は出てくるタイミングも計算済みや!さぁ…………ブチ噛まされる覚悟を決めや!)

 

構えるムラクモに、迫るサンラクが居合の如く両手剣を握る手の甲が強張り。其れを読んでいたとばかりに、ムラクモは『自身の体力が10%以下である時のみ使用可能で、攻撃モーションを高速化(・・・)させる』自身の切札たる『窮致魁動(エンプ・ガドス)』を使用。振るわれる両手剣よりも尚早く、其処に組み合わせての『一振両断(いっしんりょうだん)』────此れこそがムラクモが描いた『フィニッシュムーヴ』。

 

速度は僅かにムラクモが上、此のまま脳天を魚面ごと叩っ斬って終わらせんとした、決死の斬撃は。

 

 

 

 

 

雑種剣の鋒がサンラクの頭と胴体を、無情にもスルリ(・・・)と抜けたのだ(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

「───────は?」

「湖面の月に目が眩んだってか、ムラクモ氏?」

 

直後にムラクモの脇腹を襲うは、此迄のシャングリラ・フロンティアのプレイ史上一番の斬撃による痛み。そして身体の半分がバックリと持って逝かれた様な、圧倒的なダメージと体力が全損した感覚だった。

 

サンラクはフローティング・レチュアの三歩目から地面に片足が着地する前に、胸に封雷の撃鉄を軽く叩き付けて、其の効力を『敢えて』解除したのである。

 

ムラクモがペッパーと同じタイプであるならば、此方の過剰伝達の速度を踏まえた上でカウンターを仕掛けると読み。フォーミュラ・ドリフトとボルテックスムーヴを連続点火したのは、封雷の撃鉄を解除した事を『偽装』する為と『もう一つ』のスキルを使えるようにする為。

 

スキルの名は『ライオットアクセル』、体力を消費して筋力と敏捷を上げる自傷効果を内封する強化(バフ)スキルであるが、サンラクのサブ職業には愚者が在る上に効力により『回復が確率』となっている。

 

だが、サンラクの腰ベルトにはアクセサリーとして『(アナザー)水晶蠍人形(クリスタル.スコーピオンドール)』、腰装備には『金晶腰衣(エクザクロス.ベルト)』が装備されていた。そしてアクセサリーには『MPのリジェネ(大)+体力の別枠回復効果(大)』、腰装備には『月光に当たっている間、体力とMPにリジェネ効果付与』を持つ。

 

封雷の撃鉄によって減らされて『1』になった体力は、別枠で用意された回復を用いた『愚者のデメリット回避』と共に、此処まで蓄積された回復を用いてライオットアクセルを使用可能にし。再び体力を1に至るまで減らしてからの、ヘイト置き去りのウツロウミカガミと共に発動。

 

ムラクモの速度アップ攻撃を更に上回る速度で抜き去り、一定以上の速度で駆けたという条件を充たした事で動いた『兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)(スペリオル)』の起動で180度回頭による『方向転換』。

 

合体状態:閠永月の専用スキル『致命の閠月(イモータリス・ヴォーパル)』+『晴天流(せいてんりゅう)疾風(はやかぜ)』+『致命剣術(ヴォーパルけんじゅつ)半月断(はんげつだ)ち】』の抜刀居合斬撃と、閠永月の解除で貫通ダメージを叩き付ける『深帝覇獰(アビスプラッシュ)』のコンボを繰り出したのだ。

 

「ムラクモ氏、アンタは強かった」

「…………今回は負けや。何時かリベンジさせてな、サンラクはん」

 

そうして戦王ムラクモのアバターを構成するポリゴンが崩壊し、魚面を着けた皹割れと黒炎を纏った半裸の傭兵、サンラクのみが残された。

 

 

 

 






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