中堅戦の後に
バトルフィールドで戦王たるムラクモが崩れ落ち、ポリゴンが崩壊して消え去り。中堅戦の勝者となった魚面半裸の傭兵サンラクは、張り詰めた緊張の糸を解す様に息を吐く。
(封雷の撃鉄を用いた対人戦………マジで疲れた)
───────────!!!!!!
コロシアムの観客席からは大歓声が上がり、空気とフィールドが揺れる程の声量と興奮の熱波が襲う。其れは世界が『サンラク』というプレイヤーの誕生の瞬間を祝福するが如く、そして同時に『サンラク』という存在を証明した瞬間でも在ったのだ。
『凄まじい大歓声………!凄まじい戦い………!戦王ムラクモ選手を打ち破り、中堅戦を制したのは………!
『いやはや、まさか初期職業:傭兵だって言われた時は耳を疑いましたよぉ………素晴らしいジャイアントキリングでしたねぇ~』
『バトルフィールドもまた戦いの衝撃でボロボロだ、少し整地時間を設けようか』
あるぇ?何か俺口滑らせた?な顔をしているサンラクだが、事実として『やらかしている』ので此方からのリカバリーは難しい。
次の戦いまで十五分のインターバルを挟む事が決まり、サンラクは頭装備を魚面から鳥面に切り替えて、旅狼陣営の選手控え場所に戻って来たが、何時の間にか人数が十数人に増えていた事と『見知った連中』が居る事に更に遠い目をしながら、其れは其れとしてペンシルゴンとオイカッツォに歩み寄って言った。
「取り敢えずカッツォとペンシルゴン、負けたらキッチリ三年煽ってやるから覚悟しとけ」
「流石に彼処まで動かれちゃ、文句の一つも言い返せないなぁ………」
「黒雷纏った瞬間からサンラク君が倍速化してて、見てる側からしたら面白かったよねぇ~」
「アレ実際、滅茶苦茶繊細な操作が要求される代物だかんな?というか何だよ、其の『じゃあ再現してくれ』みたいな顔。あと疲れたからログアウトしたいんだが?」
周りの視線が面倒臭い物になったのを察知してか、とっとと逃げ仰せたい様子のサンラク。だが其れを彼等は、彼女等は許さない。
「サンラクくぅ~ん♪僕ぁ嬉しいんだぜぇ………、漸く此の世界が『サンラク君』を見付けてくれた事がねぇ♪フフフ………」
「炎雷を纏って形振り構わねぇスタイル、アレをまた拝めたってだけでも儲けモンだ」
「久し振りだね、サンラク。僕はヤシロバード、あの世界じゃアトバードって名乗ってたけどね」
「嘗てμ-skYと畏れられた実力者、噂に違わぬ事を知れて良かった」
ディープスローター・サバイバアル・ヤシロバード・SOHO-ZONEがサンラクの四方を囲み、包囲する形で逃走経路を塞ぎに来た。
「お、お前等………、というかヤシロバード………あぁ、御就任おめでとうございます。其れにSOHO-ZONE………アンタも『孤島出身者』だったのか」
「どうもどうも。色々話したいし『申請』送るね」
「えぇ、自分は『χ』の出身でね……積もる話は有るのだけれど、先ずは『フレンド登録』を」
「じゃあボクもヤっちゃおっかなぁ~?」
色々と気になる事を喋っている、SOHO-ZONEとサバイバアルにヤシロバード。孤島やμにχ、其の言葉の意味を後で調べようとペッパーは思い。サンラクはヤシロバードとSOHO-ZONEとフレンド登録を行い、ディープスローターからのフレンド申請は却下しまくるが、何度も何度も飛ばし続けて最終的にサンラクが折れる形でフレンド申請を受理した様である。
「さてサンラク君!先程使ったギルタブリルなる大型の籠手は一体何なのですか!?水晶弾を発射し、あまつさえ其れを成長させた機能は、一体何を持って行われたのか!?そしてあの戦いの決め手となった、金と蒼の対刃剣!!各々が別々の能力を宿す上に、合体か融合まで成し遂げた其の武器の詳細を!是非、是非、是非とも!!!私に教えて欲しいのです!!!!」
そしてやはりというか、武器狂いが爆発した。ギランギランに血走る目でギョロギョロと、サンラクに視線を注ぐ彼は一種のモンスターだろう。SOHO-ZONE────
特に『銃』に関しては人一倍どころか十倍は有る様な節が有り、例えばアーケードゲーム等に置かれている『プレイ用の銃型のコントローラー』を食い入る様に見ていたり手に取ったり、其れを何十にも写真を撮影してから厚紙やダンボールで事細かに再現した程の、モチベーションと熱と狂気を宿している。
「ん〜…………煌蠍の籠手に関しちゃ、俺よりもペッパーの方が詳しいぞ?」
サンラクの言葉で、此方にヘイトが向けられた。流れるような他者売却だ、素晴らしいね。取り敢えずサンラク、貴様は絶対に逃がさない。
「ペンシルゴン」
「はい皆さん捕まえて!!!」
「あっ、ペッパーてめ!っうか、どちらさグワー!?」
右手で指パッチン。同時にカローシスUQを初めとして、此の場に居たプレイヤーがサンラクを取り押さる。
「人様を売り払う以上、自分も売り払われる『覚悟』は有るんだよね?其れにほら、ペンシルゴン達もサンラクに対して『オハナシ』が在るらしくてさ。あぁ、一応大将戦が終わるまでは我慢して貰える様に、皆さんには御願いしておいたから」
尤も、其の大将戦───もとい自分の手番が巡ってきた場合には、自分に対する『オハナシ』が飛んで来るのは目に見えているのだが。
「ぐっ………解った、解ったよ。逃げないから、流石に離してくれ」
「約束を反故して逃げたら、クランリーダー権限を行使して、サンラクには皆様の前で説明会をして貰うので覚えておいてね」
「絶対面倒な事に成るだろ…………」
サンラクの意見は正しい、訂正するなら
「まぁ、交渉云々は私が担当するので安心してね?サンラク君」
やれやれ顔をしながら、ペンシルゴンは胸を張って言った。彼女一人に任せるのも負担が大きいので、所々でアシストして負担を軽減出来ないだろうか?
取り敢えずサンラク逃走防止兼見張りとして、サイガ-0とレーザーカジキが付き、見張りに立候補してきたディープスローター・ヤシロバード・SOHO-ZONEは、カローシスUQに御願いして、事が済むまでは観客席で待機を御願いした。
「さて、今の今までスルーしてたんだがよぉ…………其処で刀チャキチャキ鳴らしながら、俺を見てる京ティメットさんよぉ。言い分を聞こうか?」
「ん~…………結構ドロドロな感情を内側に押し込めた結果、とりあえず君とペッパーとは対人戦をやりたいなーってね?」
「ハハハハハハハ、戦術機獣とパワードスーツに頼らないで、リベ
何故か
「取り敢えず京極とサンラクは落ち着いて。そしてペンシルゴンにオイカッツォ、サバイバアルさん。あと残り三戦で
ペッパーの声に皆が視線を向ける。此処まで六戦中三勝、彼としても一敗や二敗で終わるよりは完全勝利する事で、旅狼としても黒狼としても少なからず『納得』出来る終わりになるだろうか。
「確かにレーザーカジキと京極に、そしてサンラクのお陰で三勝してるから、残りも勝ってスッキリ終わりたいねぇ………」
「そうなった場合、草餅君とサイガ-100ちゃんの勇者組をどう攻略するかだけど………。私、草餅君を倒す『策』が有るって言ったらどうする?」
「解った。…………サバイバアルさん」
「皆まで言うな、ペッパー。『此処まで来たなら旅狼の面子だけで勝ちたい』──────そう言いたいんだろ?だったらソイツを貫きな」
ペッパーの胸にサバイバアルは右拳を当て、ギザッ歯を見せながら笑い。ペッパーもサバイバアルの気遣いに感謝し、力強く頷いた。
そしてレーザーカジキとサイガ-0が黒狼陣営を見ていれば、サイガ-100と草餅がマッシブダイナマイトを見つめ、
「ペッパー、さん。マッシブダイナマイトさんが………来ます」
「ありがとうございます。オイカッツォ、戦術機獣を使ってマッシブダイナマイトさんを倒して来てくれ。あの人は『他の能力を機能する最低ラインにし、残りを筋力に極振り』している。サイガ-100さんは─────俺が倒す」
「ヨッシャ、任せろ」
残すは三戦、双つの狼の戦は佳境へと差し掛かる……。
三将戦