副将戦へ
クラン:
第四戦にして三将戦たるオイカッツォとマッシブダイナマイトの戦いは、戦術機獣の一角・白虎とバタリングラム、そして其れ等を扱うパワードスーツの
其れによって事前に定めた星取り戦方式で、最終戦までは行うとは言えども、既に旅狼四勝の事実と黒狼の逆転勝利は不可能という事実を、プレイヤーやNPCに示す形となったのである。
『三将戦は旅狼所属のオイカッツォ選手の勝利で幕引きとなりました!しかしあの白虎と蛮武、吸引した空気を圧縮して解放してましたが、他の物質も出来るんでしょうかね?』
『家内もよく食らい付いたね………。もし仮にあの圧縮が他の物質でも可能ならば、鉄同士を押し潰し合わせて別の物体を作れそうな気がする。フフフ……是非とも実験してみたい所だよ』
『あの加速を実際に体験して、どんな物か確かめたいですよー』
実況と解説がやんややんやと喋り、バトルフィールドの整地に十五分の時間を要する事にし。整地観客席からも興奮の色が覚め止まぬ中、エーテルリアクターと白虎をインベントリアに収納しつつ、オイカッツォが旅狼陣営控え場所に戻ってきた。
「うぃーす、勝ってきたよー」
「御疲れ様、オイカッツォ。ナイスファイト」
「やぁやぁ、カッツォ君。君の活躍で旅狼の勝ち確、そして完全勝利へ更に近付いたよ」
「お疲れ様です!」
ハイタッチや拳を交わし合い、己の役割を果たしてみせたオイカッツォを称賛する旅狼所属のプレイヤー達。此れで四勝による旅狼の勝ちが不動な物となり、一応の山場は乗り切ったとペッパーは心の中で安堵する。
「此処まで四勝。モモちゃんは『大将戦』で、草餅君は『副将戦』で出っ張ってくるから、次は私が行ってくるよ」
黒狼陣営控え場所に居るサイガ-100を見据えながら、ペンシルゴンが言った言葉にサンラクは疑問を抱き。そして彼女に問い掛けた。
「……………ん?なぁ、ペンシルゴン。何で『次に出てくる相手が判るんだ』?」
「フッフッフ~……私とモモちゃんは『マブダチ』だからさ。今回の対抗戦は表向きこそ『敵対』だけども、裏では『繋がって』居るので、黒狼側の出場順を知っているんだよねぇ?」
成程、此処まで勝てた理由は黒狼のリーダーと、旅狼のサブリーダーが裏で『取引』をしていたとの事。おそらく彼方側もリベリオス派のプレイヤーが知らないだけで、サイガ-100派側のプレイヤーは知っていた上での協力だったのだろう。
「うわぁ………」
「酷いヤラセじゃん」
「戦いに卑怯もへったくれも無いのだよカッツォ君。勝てば官軍、負けたら賊軍。其れが此の世界に在る真理なのだよ」
流石魔王、言う事が違う。
「というか、ペンシルゴン。弓の
勇者とは不屈である。其れを体現するのが勇者武器の共通項目として備えられる、修復能力たる『アンブロークン』と確率による『食い縛り』の効果、そして各々の勇者武器が異なる能力を保有しているのだ。
「そうだねぇ…………じゃあペッパー君。君が仮に食い縛り持ちの敵を倒す場合、
ペンシルゴンの問いに、ペッパーは少し思考を行い。自分なりの答えを導き出した。
「俺なら連続で食い縛りが発動する相手を倒す場合…………。『即死技』で食い縛らせない、毒や火傷含めたスリップダメージで『体力を削り取る』、或いは一回毎に食い縛るなら『連続ダメージ』を与え続けて突破する………とかかな」
「うん、正解。流石あーくん、解ってるね」
指パッチンと共に邪悪にして悪辣なる笑みを浮かべ、嘗て
「さぁて、草餅君。ボコボコにしてあげよう……!」
『旅狼 対 黒狼のクラン対抗戦!トータル四勝を上げた事により、勝利が確定した旅狼!副将戦に登場するは旅狼のサブリーダーにして、元PKクラン阿修羅会のNo.2!
バトルフィールドに金色の槍と金色の弓を持った、二人の戦士が対峙する。
「いやぁ……最初にロボットが出た時点で、此方はボコボコにされるかもって思ってたけど、此処までやられたらもう乾いた笑いしか出ないというか…………」
「ンフフフ~……草餅君も其の犠牲者になるのだよん♪」
「まぁ此方も唯々黙って負けるつもりは無いし、此処で勝ってパーフェクト負けを阻止させて貰うよ」
「そう………出来れば良いねぇ?」
金色の弓を構え、矢を片手に取る草餅。片や金色の槍の穂先を向け、静かに敵を見据えるペンシルゴン。だがペンシルゴンはロボットを呼び出さず、パワードスーツを其の身に纏わない。果たして此れに、如何なる理由が有るのか。
『其れでは副将戦!始めッ!!』
実況のアーネスの声をゴングとし、同時に草餅が距離を離して金色の弦を引き絞り、ペンシルゴンはバフスキルを全開にしながらに、真っ直ぐ突貫していく。
聖弓フェイルノートに込められた能力は、勇者特有の食い縛り・武器の破損をMPを捧げての修復の共通効果に加えて、通常弓と魔法弓の二種の弓を使い分けるだけで終わらず、二種の能力を組み合わせる事ですら可能としている。
魔法耐性に優れているなら物理の矢を、物理耐性に優れているなら魔法の矢を、切り替え・打ち込み・射抜いて倒す。そして草餅自身がアシストを得意とし、自分と敵との間合いを『完全』に理解した、そんな立ち回りを完璧に近い形で行えるプレイヤーである為、黒狼の中でもラストアタッカーやMVPになる事が多いのだ。
其のせいで他の団員からは、ラストアタックを彼が持っていくと『草餅め………』と、ぼやかれる事がよくあるのだとか。
(射程距離は10mよりちょっと外側、先ずは機動力を担う脚を魔法弓で射抜く────!)
ペンシルゴンと自身のスピードを加味して、引き絞った弦から黄金の魔力に彩られた金の矢が放たれ、其の瞬間にペンシルゴンは更に加速し、左手で『赤い杯を取り出して使った』其の瞬間、彼女の踏み込んだ左脚に魔力の矢がぶつかる。
だが其の矢はペンシルゴンの脚に風穴を空ける事は無く、魔力の矢は観衆の目の前にて『無効化』されたのだ。
『魔法の矢が直撃!!脚を射抜………ッてない!!?』
「はい!?!?ちょっ!?」
「ふっふっふ~。今の私に、其の矢は効かないよー?」
矢が無効化された事で草餅の対応が遅れる。其れは同時に弓の得意領域たる中~遠距離から、槍の決殺領域たる至近距離へと手番が明け渡された事を意味しており。
「まぁ、私的には『軽く触れれば』
トス、と。あまりにも軽く、僅かな力で放った刺突が草餅の肉体に突き刺さる。ダメージは軽く、体力を僅かばかりしか減らしていない。だが、だが、だが─────草餅の身体は刺された場所から、全身に襲う『痺れ』によって動けなくなる。
「ま、麻痺毒………!?」
「御明察」
脚払いで転ばせられ、草餅が地面に倒される。其処から横っ腹を蹴飛ばされて、仰向けにされた彼が見たのは『青い龍を模したパワードスーツ』を纏い、ドラゴン型の『青いロボット』、そして動力源を取り出したペンシルゴンが装填する姿であり。
「
そうして取り出したのは『規格外武装:鋼線型【キープアウト】』であり。
「じゃあ……………死のうか、弓の勇者サマ?」
草餅に対し、魔王は判決を下したのだった。
勇者打倒の秘策