VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇者激突




狼双戦争(デュアルウルフウォー) 其の十七

「金色と純白の盾………?其れにエクスカリバーとデザインが似ている………」

聖盾(せいじゅん)イーディス、盾の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)………と言えば解りますかね?」

『な、なななな?!ペッパー選手、まさかまさかの勇者武器所持者だったァッ!?!』

『家内から聞いていたが、あれがイーディスか………見るのは初めてだね』

 

勇者武器・聖剣エクスカリバーを振るうサイガ-100の問い掛けに対してペッパーが答えれば、観客席がどよめき始める。最大高度(スカイホルダー)の持ち物の一つ、ほんの一つにしてもユニークの逸品を所持している事、其れが此の瞬間に白日の元にオープンとなったのだから。

 

「…………なら、手を抜く必要は無いな」

「寧ろ手を抜かれたら、此方が困ります」

『其れでは、最終大将戦ッ─────始めぇ!!!』

 

会場と観客のボルテージが大いに高まり続け、六度目のアーネスの叫び声をゴングとしてサイガ-100がいきなり『四本』の剣を展開、其れを『高速』で飛ばしながらに襲い掛かって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

剣士系最上位職:剣聖。数多の剣を縦横無尽に操り飛ばし、時に固有魔法である【従剣劇(ソーヴァント)】による、近・中・遠のあらゆる距離からの攻撃を可能とする其れは、就職条件の難易度から『対人戦に秀でたプレイヤーで無くては』就職出来ないとまで言われている。

 

そして各々の剣の特色や特性を十全に理解し、其れ等の力を余す事無く活かしきれる者が振るわば、唯の(なまくら)ですら業物と錯覚させる一撃に、そして何も出来ずに切り刻まれて死ぬ運命(さだめ)と変わる。

 

尤も其れは──────サイガ-100と対峙した者が、対人戦に秀でた者で無ければ(・・・・・・・・・)、かつ飛来する物体への対処法を知らなければ(・・・・・・・・・・)、の話になるが。

 

「左後ろの『超猫じゃらしLv.100』が本命、他三本はブラフ兼左後ろを当てる為の牽制用、一本はあからさまに触れたらアウトタイプ」

「!」

 

右後ろから来る赤色の剣を屈んで避け、掬い上げと脚を狙った黒と青の剣は自ら転がり、本命の『最大30連続ヒットの食い縛り絶対殺すソード』は、イーディスの縁で受け流して直撃を凌ぐ。

 

レトロタイプのロボットゲームで搭載されていた『オールレンジ兵装』の中には、有線を用いて突撃槍を飛ばしたり、本体が装備している装甲が分離する事でビームを照射する等、様々なタイプがある。

 

そして此の手の攻撃は対象となる存在を『中心に置き』、敵の『死角を突いて』攻撃を仕掛けてくるのが定石(・・)。何より其の戦いを経験として『記憶』し、あらゆる可能性を『考慮』し、剣による突撃や斬撃を『想定している』ペッパーは、武器へのダメージを最小限に留めるだけで無く、己の身も此の一連の中で守り抜いて見せたのだ。

 

「なら、こうだ!」

「猫じゃらしブラフ、赤い剣は毒の可能性。二本の剣を上から落とす。其れに対して俺はこうする」

 

『手札』の多さとは『選択肢』の多さと同時に、用いれる『ブラフ』の多さでもある。組み合わせる物が多ければ多い程、当然其の組み合わせに『バリエーション 』が産まれるが、代償として其れを『思考』する必要が出てくる。

 

組み合わせを思考すれば、当然少なからず『時間』が必要となり、其れが対人戦となれば僅かな時間が作り出す『隙』が産まれ、其の隙が『命取り』になる危険性を常にプレイヤーへ付き纏わせる事になる。

 

故にこそ────対人戦においてプレイヤーは、予め自分の『選択肢』を絞り込む。そして其の選択肢を経験の中から『予測』、更に其の予測から派生する可能性を『想定』して、猫じゃらしと毒剣のタイプを回避からの、二本の剣には盾武器スキル・盾士の憤撃(レイジングシールド)でダメージを盾から剣へと跳ね返して吹き飛ばす(ノックバック)

 

『ふ、防ぎました!ペッパー選手、サイガ-100選手の従剣劇を防いでいます!』

(とんでもないな………!気を抜いたら一瞬で刻まれて倒される!)

 

飛来する剣達の嵐の中で戦い、サイガ-100の視線と剣の動きを見ながら、経験と想定から己の答えをぶつける。耐久に秀でた勇者武器、其の中でも最高峰の耐久値を誇るイーディスに負担を掛けない挙動で、従剣の乱舞をペッパーは凌ぐ。

 

振り上げ挙動で迫る毒剣を盾の縁でパリィし、猫じゃらしを飛び込みで避け、二本の剣をギリギリで躱わす其の光景は、まるで『幽霊の如くゆらゆらと揺らめき』ながら、剣と盾が交わり音を鳴らす度に少しずつ、確実に洗練されていくのを見たサイガ-100は、其の表情に驚愕の色を纏い叫ぶ。

 

其の動き(・・・・)、一体何処で学んだ!?」

ゲームで覚えた(・・・・・・・)!以上ッ!!」

 

おそらく自分の予測が正しければ、サイガ-100・サイガ-0・京極(キョウアルティメット)は龍宮院 富嶽と『血縁関係』に在る。何よりヒット&アウェイ戦法は『ヴルム・ハーフニィル』─────の元となった人物が龍宮院 富嶽其の人(・・・)なのだから、解る人には解るのだろう。

 

「多種多様な武器を使い分けて戦うのは、此方も得意ですからね………!」

 

イーディスを収納。取り出して両足に纏うは『突撃槍』を思わせる籠脚(ガンドレッグ)。其の爪先は『ドリル』が取り付けられ、如何にも殺意が滲み出たフォルムをしているのが、此の場に居る全ての者達には解る。

 

撃鬼覇貫脚(グラシアス・ガウルト)、此処からは『攻めさせて』貰います」

「ならば見せて貰おうか!」

 

此方のモードチェンジに対し、サイガ-100もまた武器を切り替える。四本の剣が収納から、新たに別の四本の剣が展開され。エクスカリバーは鞘に収まり、取り出された内の一本が彼女の手に握られる。

 

「ハアッ!!!」

「オオオッ!ラァッ!!!」

 

飛ぶ剣を便秘の世界で形にした『脚パリィ』で弾き、ヴォーパルコロッセオで何度も練習を重ねた『ブレイクダンス』の要領を用いて、敵の剣の刃達を跳ね返して近付けさせない。そして蹴りによって、籠脚と剣が打ち合うを行う度に、撃鬼覇貫脚は『己が受けた痛みを吸収』していく。

 

クレーゼーレ・ヴィンディッシュ、バタリング・ナイツクラブ、FM's(フォッシルマイナーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"の素材を用いて強化された甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)こと、撃鬼覇貫脚には『脚パリィや脚による攻撃』によって武器がダメージを受ける度に、武器本体が耐久の減少とは別に其のダメージを『蓄積』する能力を持っている。

 

そして蓄積したダメージが一定値を越える事により、撃鬼覇貫脚は『通常モード』から『覚醒モード』に()()()()()()()を行える。

 

「痛いか、撃鬼覇貫脚。だったら起きて、仕事を果たすぞ!!」

 

ペッパーの意思に答えるように籠脚が昂り、赤い蒸気を───まるで血を含んだ様な赤を含んだ闘気を、装甲の隙間から噴き出し。そしてペッパーはサイガ-100との距離を積めるべく、一気に前へと走り込む。

 

撃鬼覇貫脚は通常モード時は防御力に重きを置いた、所謂『ディフェンスモード』の状態であり、其の状態では脚撃や脚によるパリィで発生する『ダメージの蓄積』を行い。覚醒モードに移行した場合は、一定時間装備したプレイヤーの()を用いたアクションによる『スタミナ』の軽減と速度と補正を、大幅に高める能力を宿している。

 

「させん!」

「遅いッ!」

 

三本の従剣を進路上に敷かんと振るうが、シャイニングアサルトを起動したペッパーの速度は其れ以上に速く。赤い蒸気を残照として、至近距離(インファイト)の領域に持ち込む。

 

『加速して超々至近距離に持ち込んだ!余りの速度に、従剣達が追い付けてませんッッッッッッ!』

「なっ!?………だが、至近距離ならば!」

「残念だけど、振らせない」

 

インベントリアを操作、左手に装着するは金と翡翠で彩られし巨大なる片手の籠手にして、双皇甲虫の素材で作った甦機装(リ.レガシーウェポン)風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)。胴を切り裂かんとした其の一閃を、横面に取り付けられたブレードで受け止めながら、左で握った拳を手刀に変更。

 

サイガ-100はペッパーが新たに装備した籠手、其の拳が手刀となった瞬間に『巨大な剣になった』様な姿と、まるで今の状況が『居合の体勢に入られた』と直感。自ら後ろへと飛びつつも、ペッパーの後ろに三本の剣を飛ばして回避行動を取った。

 

回れ(・・)、そして凪払う!」

 

爪先に仕込まれたドリルが回転し、ペッパーの身体が回転。同時にもう片方の足と左腕の籠手を振るい、迫った剣達を赤い蒸気を壁にして足止めし。眼力適応(ディチューン・アイ)の補正を乗せた動体視力で弾き飛ばして、自身もまたサイガ-100へと肉薄しながら再度接近戦へ持ち込まんとする。

 

撃鬼覇貫脚は覚醒モードの稼働エネルギーを全消費する事により、爪先のドリルを稼働させた多段攻撃及び武器と装甲破壊能力を宿す『蹴り』を叩き込めるが、地面に片足を突き刺し周囲を回転すれば、蒸気による壁を作り出しての足止めが出来、包囲攻撃にも対処可能になる。

 

「フッ────!」

「其れは『想定済み』だ」

 

局極到六感(スート・イミュテーション)起動。前方の剣を手の甲で流し、背面から迫る剣の鋒を幕末で得てきた『直感システム』を応用しての爪先パリィで往なし、腹部目掛けて握りし拳を構える。

 

「此の程度!?」

「─────読んでいたよ(・・・・・・)、其れを」

 

ペッパーの挙動がいきなり高速化(・・・・・・・)するや、サイガ-100の胴体が掴み取られ。巨大な拳が掌に変わって握られた事で、彼が何をするかに彼女は気付き、咄嗟に首と後頭部を守らんとして体勢を取り。

 

「ペッパー流───────大時化(おおしけ)ッッッッッッ!!!!!」

 

高速化した景色と共に、後頭部と背中に強い衝撃が襲い掛かったと思えば、自身の体が地面に叩き付けられたボールの感覚をサイガ-100は味わったのだった。

 

 

 

 






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