VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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バグだらけの格闘ゲームに、いざ出陣




其れは誰が仕組みし運命か

「くあぁ~…。んんっ………眠い」

 

シャンフロにて、ユニークモンスター・墓守のウェザエモンに挑戦する為の段取りを踏み、ペンシルゴンとのオハナシをした翌日。

 

大学の屋上に寝転がり、大きな欠伸で青空を見上げる梓は、昨日の出来事があってからというもの、心の中が雨が降る前の曇天のような、スッキリしない気分に見舞われていた。

 

(何なんだ、此の変な感じ……)

 

ペンシルゴン……トワが清歯のネックレスを受け取った時に見せたあの笑顔は、確かに綺麗だった。外道でも無ければ、カリスマモデルとしてでもない、一人の女性の普通の笑顔で。

だからこそ自分の感情が、自分でも解らない。あの瞬間の笑顔が、頭に引っ付いて離れない。

 

と、自分のジーンズのポケットに入れたスマフォが、バイブレーションを鳴らし始める。何事かと画面をチェックすると、其処には『父』と一文字に着信電話が表示されている。

 

またアレかな…と、若干憂鬱気味になりながらも、梓は電話に応答した。

 

「もしもーし?」

『おぉ、梓。大学生活楽しんでるか~?』

「まぁね。アパートの生活も慣れてきたし、自炊も其れなりに出来てるよ。母さんは元気してる?」

『おうとも、元気過ぎて心配になるレベルでな!』

 

ガハハハハ!と電話越しで聴こえる父親の声に、相変わらずだなと梓は思う。高校卒業と大学進学を期に、彼は親元を離れて、小さなアパートで暮らしながら大学に通っている。

 

大学卒業までの間の学費は全て、親が負担する代わりとして、一浪せずに卒業する事と、其の間の生活費は全て自分で稼ぐ事の2つの約束をして、梓は大学に通っている。

 

『でだな、梓。そろそろ父さんと母さん、孫の顔が見たいんだが……お見合いする気にはならんのか?』

 

そんな良い雰囲気をぶち壊す爆弾発言が、父親の口から電話越しに聴こえる。

 

「あのさぁ……俺まだ19だぞ?一般的に成人年齢越えてるけど、大学生活始まったばかりなんですがねぇ……?」

『いやいや…父さん母さんも、何時死ぬか解らん。せめて梓が良い嫁さん貰うか、何処かに嫁いで孫の顔を見せてくれんと、死ぬに死ねないわ』

「……20手前で俺産んで、今も兎みたいに毎晩御盛んなのに孫求めるとか、どんだけ強欲かっての」

『そりゃそうさ。人間、次の未来に子供を残すのも使命だ。あと父さんと母さんは、自分の墓は遺すつもりはないからな、お前達に負担を掛けたくは無い』

 

今の日本は少子高齢化が前以上に拍車が掛かり、バイトの年齢が中学生レベルにまで引き下げられる程に低迷。

 

一部はロボットが補っては居るものの、専門家によるともう数十年しない内に、日本は高齢者を支える若者に限界が来ると警鐘を鳴らし、政府も其の対策の為の法律制定に動いているとのニュースを見た。

 

「墓は遺さない…か」

 

梓が思い出すのは、墓守のウェザエモン。幾星霜の年月を愛した人の墓を守る事に捧げた、ユニークモンスター。今尚、シャンフロのプレイヤーの誰もが倒せていない最強種。

 

其の最強を、ペンシルゴンは倒そうとしている。そして自分は其の結末を、最後まで見届けると決めたのだ。

 

『梓?どうかしたか?』

「……ううん、何でもない。そろそろ次の講義有るから、電話切るね。母さんによろしく伝えて」

『おぅ、頑張れよ!』

 

電話を切り、思いっ切り背伸びをして梓は講義を受けるべく、校内へと戻っていった。両親との約束をキッチリと果たす為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学の講義とコンビニでのバイトを終え、アパートの自室に帰った梓は、手洗いと嗽を行って、夕食の準備に勤しむ。

 

本日の献立はちょっとだけ豪華に、冷凍炒飯2袋の大盛りと市販のパック入りワカメスープ、リンゴ1個の柵切りで完成。いただきますと合掌して、炒飯を頬張り、スープとリンゴで舌を洗って、また食し。米粒一つもワカメ一枚たりとて残さず平らげ、ごちそうさまでしたと合掌する。

 

食器を洗い、水を一杯飲んで一休みし、シャワーを浴びて寝間着に着替えて布団を敷く。そしてVR機材に入れたソフトを『シャングリラ・フロンティア』から『ベルセルク・オンライン・パッション』――――『便秘』にチェンジし、何時ものように指差し確認。

 

トイレを済ませて、スマフォのwikiで基本的なバグ技を把握し、梓は機材を頭に被り、布団へと寝転がる。

 

(さぁてと…ブシカッツォは、既にログインしてるだろうか?まぁ、先に入って対戦してるとメールで言っといたし、大丈夫だとは思うけど……)

 

ログイン画面のOKボタンをクリックし、アバター設定画面が開く。便秘のアバターは男女共に分けられており、初期段階では某世紀末格闘漫画のモブモヒカン達の様な格好の衣裳しか無いが、ストーリーを攻略していけば徐々に種類が解放され、キャラメイクの幅が充実していく様だ。

 

「名前はブラックペッパーで、ベースは自分を元に、髪は黒に白毛メッシュ入りの青年。性別は男の背丈が180cmくらいにするか。で、タイプが有ってアタック・スピード・ディフェンス・バランス・テクニックの5種類から選べると。

 

此処はそうだな……足パリィの訓練をするから、テクニックで行くとしよう」

 

キャラメイクが完了し、梓は便秘の世界に飛び込む。オープニングが流れ、彼は此の世界の闘士『ブラックペッパー』として新生するのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

核による人類史の崩壊で荒廃した大地と、人が確かに住んでいたであろう痕跡が遺る、混沌とした世界。信じられるは、己の拳と脚1つのみ。

 

さぁ戦え。此の世界を、お前の色に染め上げてみせろ――――!!

 

「…………って言うのが、便秘の世界観らしいが……。某世紀末格闘漫画そっくりだな、本当に」

 

今現在が夜というのもあり、空は真っ黒で星が瞬いて、周りには焚き火が灯る。何よりもブラックペッパーが驚いたのは、此の時間帯であるにも関わらず、人の気配が1つたりともしない事だった。

 

「過疎ってるとはwikiには載ってたが、此処まで成ると笑えないわ……」

 

過疎ゲーかつクソゲー。其れで有りながらも、物好きなゲーマーを惹き付ける魅力が、此の便秘にはある。足パリィを習得する中で、其れに気付けたならばきっと、ゲーマーとして良い経験になるだろう。

 

「ブシカッツォが来るまでストーリーモードでも進めて、実際にバグ技を試し……ん?」

 

ストーリーモードを進めるべく、ブラックペッパーが移動していると、視界の先に1人のプレイヤーを見付けた。

 

顔立ちは整った中々のイケメンで、髪は後ろに上げている様。衣裳も黒で統一され、肩だしジャケットに半ズボンと黒ブーツ、肩と拳に手首を包帯に似たバンデージを巻き付けた男性プレイヤーが居る。

 

「あ、あの!其処のプレイヤーさん!」

「ん?」

 

声を掛けると、彼が足を止めて此方に振り返ってくる。プレイヤー名は『サンラク』とあり、見たところ上位プレイヤーの様だ。

 

だが俺は彼の顔を見た時、既視感を抱いてた。此のプレイヤーの顔を、何処かで見た覚えが在る……と。

 

「えっと、何すか?」

「あ、その…実は俺、今さっきログインしたばかりで…今日始めたばかりの新参なんですよ」

「えっ」

「なので、先達の方々に教えを乞いたいと思っています。よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げるブラックペッパー。逆にサンラクはと言うと、過疎ゲーに新規プレイヤーがやって来た事に驚愕の表情を浮かべていた。

 

「マジすか、新規ですか」

「はい、なのでよろしく……ん?」

 

声のトーン、笑った顔、目の輪郭………既視感にパズルのピースが埋まるように、ブラックペッパーは其の『答え』に辿り着く。

 

そうか、此のプレイヤーは――――――!

 

「もしかして………『楽朗』君、か?」

 

其の一言に、サンラクは思いっ切り吹いて。そして自分の正体に気付いたようで、答えを提示してくる。

 

「え!?もしかして………コンビニのお兄さん!?」

「あ、はい。コンビニのバイト店員のお兄さんダヨー」

 

毎度コンビニでエナジードリンクを購入し、特にライオットブラッドがお気に入りの、何時しか顔見知りになった少年。

 

種類(ジャンル)を問わず、数多のレトロゲームを攻略と、アーケードゲームの最高記録を塗り替え、更新して来たレトロゲーマーの五条(ごじょう) (あずさ)

 

数々のクソゲーを踏破して、其のクソゲーをプレイしたゲーマーから様々な異名で呼ばれ、恐れられたり尊敬されたり憧れられたりしている、クソゲーマーの陽務(ひづとめ) 楽朗(らくろう)

 

後にシャングリラ・フロンティアにて、幾多のユニークの発見と世界を突き動かす事になる、2人のプレイヤーが便秘の地にて邂逅した瞬間であった。

 

 

 






主人公と主人公が交錯(クロス)する

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