VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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大将戦が終わって




狼の戦は終わる、新たな波は畝りて荒れる

「ふぃ~…………」

 

ミルキーウェイで作った道をゆっくりと歩き、ペッパーは左手に握った金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)を収納、自身に施した超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)による白刻閃(はくこくせん)を合掌で、封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)による古熱を左手の指パッチンで解除しながら、身体に籠った熱をゆっくりと抜いていく様に地面に降り立つ。

 

(やっぱり思った以上に、封熱の撃鉄で産み出されたヘイト付与の陽炎がヤバいな………。取り敢えず、フィールドに残る陽炎の上限数を運営に打診してみよう)

 

流石に修正するべきと感じた、左手に付くアクセサリーを見ていれば、呪い相殺の亀裂は完全に塞がり、冥炎による蒼い炎の強化も切れて、黒い三部位一体の名前隠しのコートを纏った姿にペッパーは戻った。

 

バトルフィールドに残った勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖盾(せいじゅん)イーディス、元々の大きさに戻った象牙(ゾウゲ)兎月(トツキ)呑黒(どんこく)】を拾い上げてインベントリアに加え。

 

そして旅狼(ヴォルフガング)陣営選手控え場所に目を移せば、クランメンバー含め他のプレイヤー達、更には聖盾輝士団に守られながら居るイリステラの、『色々熱い視線』が今現在自分一人に対して注がれているのを感じ、気が滅入りそうになりながらも歩み寄っていく。

 

「あー………うん、取り敢えず全員落ち着いてくれ。答えられる事に関しては、ちゃんと答えるから」

 

日本人特有の『答えるよね?空気圧』が乗し掛かる中、始めに動いたのはサバイバアル・ヤシロバード・SOHO-ZONEを始めとしたプレイヤー達で。見るからにヤバい雰囲気を纏ってズンズンと、無言で迫り来る様子は昔のアニメ映画の『巨人兵達の行進』を思わせる物だった。

 

そして彼等彼女等はペッパーの前に立つや…………

 

 

 

 

すっ (無言で差し出される100万マーニ)

すっ (無言で差し出される500万マーニ)

すっ (無言で差し出される2000万マーニ)

すっ (無言で差し出される3000万マーニ)

すっ (無言で差し出される5000万マーニ)

すっ (無言で差し出される1億マーニ)

すっ (無言で差し出される3億マーニ)

すっ (無言で差し出される10億マーニ)

すっ (無言で差し出される15億マーニ)

すっ (無言で差し出される100億マーニ)

 

 

 

 

マーニの山をペッパーの前に出してきた。

 

「いやちょっと待ってッッッッッ!?!?!?」

 

ペッパーは困惑した。まさかとは思うが………いや十中八九『風雷皇の擊貫斧(サルダゲイル・イドゥン)を売ってくれ』とでも言うのだろう。というかサンラク、お前はお前で周りの流れに便乗して、競争相手の心をブルジョワパワーで減し折るとか鬼か。

 

「ペッパー君!ペッパー君!あの時使った斧槍(ハルバード)なのだが………もしかして『アレ』か?」

 

そんな中、15億マーニを出したSOHO-ZONEが話し掛けてきた。あの武器の設計図は自分と創助が中学時代に一緒に考えて描いた物で有り、答え方によっては『親権』を主張してくる可能性が極めて高い。

 

唯でさえ武器狂いとまで呼ばれる彼は、銃という武器に対して人一倍敏感であり、武具やら防具やらには色々と『面倒臭い事』を知っているペッパーは、戦闘後の疲弊した頭でも思考を止めず、数拍置いて武器を取り出せば周りの視線が一挙に武器へと向けられ。そして彼は武器の説明を行った。

 

「此の武器の名前は、甦機装(リ.レガシーウェポン):風雷皇の擊貫斧(サルダゲイル・イドゥン)。其の【超過機構(イクシードチャージ):轟弾撃(ディモート)】は、使用者のMPを10になるまで消費する事で、武器の持つ『属性エネルギーを撃ち出す事が可能』になる。そして本来一発しか撃てないんだが、以前SOHO-ZONEさんが依頼した『土錆びた拳銃の遺機装(レガシーウェポン)』を直せる者が修繕過程で、其の機能を学んで色々有って連射可能にしたんだ。あぁ、持ち方を変えた時の見てくれは『狙撃長銃(スナイパーライフル)』だけど、実際の武器種は『斧槍(ハルバード)』で銃の()()を被ってる様な物で。其れと超過機構は一回使うと再使用に一週間の時間を要するから、正直に言うけど『燃費は最悪』だよ」

 

SOHO-ZONEの親権主張を回避しつつ、誰が此の激ヤバな武器を造ったのかは、クランメンバーにしか解らない説明を行ったペッパー。流石に使用者のMPに依存する上に、再使用時間に一週間というコストパフォーマンスの悪さから、競り落としを降りるプレイヤーも出るだろう…………と。

 

だがペッパーはシャングリラ・フロンティアというゲームの、なんちゃっての銃や銃という武器種を『御預け』にされ続けていた者達が、其の胸の内に沈め続けた熱意や飢餓具合を思った以上に『甘く見過ぎていた』。

 

 

 

すっ (無言で差し出される3000万マーニ)

すっ (無言で差し出される5000万マーニ)

すっ (無言で差し出される1億マーニ)

すっ (無言で差し出される2億マーニ)

すっ (無言で差し出される3億マーニ)

すっ (無言で差し出される10億マーニ)

すっ (無言で差し出される20億マーニ)

すっ (無言で差し出される30億マーニ)

すっ (無言で差し出される300億マーニ)

 

 

 

うーん、デジャブ。

 

「いや何でッッッッッ!?というかサンラク何で三倍にしてるんだよ!?周りの皆がドン引きしてるじゃん!?!?」

「えっ?だって競りって高い金額で叩き付けて、マウント取ったヤツが勝ちだろ?俺からしたら100億や300億払うのは何の問題でもねーし」

「資本主義の権化か!?!?」

「せ、せめてスクショを撮らせて!」

「はいはいはい!私さっきの弓に変形した剣が気になりますっ!」

「ペッパーさんサイン下さい!」

「光って燃えた秘密教えてー!!」

「魔法反射の盾の原材料は!?!」

「小さなリュカオーンは今居るんですか!?」

 

此方の言い方が悪かったのか、此れ見よがしに質問の連続で収拾が付かなくなっている。あぁ此れは徹夜確定か………そう遠い目をしていると、ペンシルゴンがペッパーに近付いて来て。

 

彼女はペッパーの左腕を掴んで『恋人繋ぎ』をしながら、此の場に浮遊している別天津(ことあまつ)隕鉄鏡(いんてつきょう)全てに向け、堂々とした言葉と態度を以て『宣言』したのである。

 

「あーあー。今此処に居るプレイヤーの皆さんや、観ている観戦者さん達ー。もし私の(・・)あーくんや、あーくんのクラン:旅狼(ヴォルフガング)のメンバーへの質問や情報を知りたい場合は、サブリーダーのアーサー・ペンシルゴンに御連絡よろしくね~?あぁ、其れと────」

 

 

 

 

あーくんは私の恋人(もの)だから

 

他の誰にもアゲナイから

 

 

 

 

 

ペンシルゴンの宣言にペッパーは絶句、旅狼メンバーの外道組はニヤニヤニマニマと笑い、他のプレイヤー達はどよめき始め、三者三様十人十色の感情の渦が巻き起こる。

 

「あ、あの………ペンシルゴン、さん。ペッパーさん、えっと………あの、サイガ-100と黒狼(ヴォルフシュバルツ)、から………話が有る、そうです」

 

そんな中でサイガ-0が声を掛ければ、爆殺された割には何処か清々しい表情をするサイガ-100を先頭に、黒狼側の出場メンバーとクランメンバー達がぞろぞろとやって来る。

 

其の中に居る黒狼側強硬派メンバー…………正確には『リベリオスと彼のフォロワー面々』は、ペッパー達を相手に物言いしまくったがクラン全体で一勝も挙げられず、最終的には完敗という事実によって、最早黙り込む以外に選択肢は既に存在せず。

 

あまつさえ『チート使ったんだろ』とペッパーに対して当たって来たプレイヤーは、彼の圧倒的な実力とサイガ-100に勝利したという現実を見せ付けられた事で、既に顔すら合わせられなくなっていた。

 

「────サイガ-100さん。聖剣エクスカリバーに選ばれるのみならず、数多の剣達を従えて操る無類にして不撓不屈の剣聖勇者。俺は貴女の本気と戦えた事を、きっと此の先も誇りに思います。戦って下さり────本当にありがとうございました」

 

深々と頭を下げて御辞儀し、サイガ-100に対する感謝の意を示せば、彼女は目を丸くした。

 

「ペンシルゴン………ペッパー君は何時もこうなのか?」

「そうだねー。実はモンスターに対しても同じ事やってて、変な所で律儀なんだよ彼は」

「成程…………先ずは敗北者として、君達の勝利を讃えさせて欲しい。そして………とても充実した戦いだった。最大高度(スカイホルダー)に至り、リュカオーンを打倒した其の実力。そして君が選んだ仲間達の実力に、嘘や偽りは無かったと確信出来た」

「えっと……はい、此方こそ」

 

差し出された左手に対し、ペッパーもまた左手を出して握手を交わす。

 

「さて……此処から話す私の言葉は、クラン:黒狼としての言葉と受け取ってくれて構わない」

 

そうして一拍置いて、サイガ-100は此の戦いの先に在る、二つのクランが対抗戦前に結んだ条件への回答を、ペッパーに示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────我々クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)は。今回の戦いを機とし、クランを『黒狼と黒剣(シュバルツシルト)に分離する事』を此処に宣言する。ついてはリベリオス達を中心とした黒狼、私を中心とした黒剣へメンバーを再構築。そしてクラン:黒剣はクラン:旅狼(ヴォルフガング)の提示した連盟への参加を希望する」

 

 

 

 

 

 

 

 

其のクランのエンブレムは『リュカオーンが噛み持つ剣』を刻んだ物だった。だが其のエンブレムは『リュカオーン』と『剣』に別れたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、ペッパーやサンラクを含めたクラン:旅狼に対する様々な質問は此の後も続き、そして『あるイベント』によってペンシルゴン含む一部以外が仰天し。そうして旅狼陣営参加組全員が解放されたのは、日を跨いだ午前二時過ぎだった事を記載しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






分かたれた黒の狼と剣

















???『匂いが戻った、ヨシ。あとオマエのモノじゃないから、ワタシのモノだからな?』



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