VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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真実を知った者




インパクト・オブ・ザ・ワールド ~京極は幕末に、剣聖と魔王は語らう~

シャングリラ・フロンティアの双つの狼達による、クラン対抗戦の翌日の夜。

 

日本のほぼ中心に位置する京都の『龍宮院流剣術道場』に隣接する形で建つ、二階建ての家の一室では一人の少女が『とある短歌』の意味に瞑目していた。

 

「……「若き芽よ 西へ東へ 研ぎ()りて 枯葉踏み越え 咲かせ大輪」………かぁ」

 

少女の名は『龍宮院(りゅうぐういん) 京極(きょうごく)』。シャングリラ・フロンティアではクラン:旅狼(ヴォルフガング)に『京極(キョウアルティメット)』の名で所属する彼女は、つい最近クリア済のゲームに『本当のラスボス』が存在する事を知った。

 

そして彼女が口にした短歌は、旅狼のリーダーたるペッパーが彼女に伝えた自身の祖父であり、当世最強の剣聖とまで呼ばれた『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)』が、剣の道に生きる者全ての者達へ送った激励の言葉であった。

 

だが其れは『表面上』であり、そして其れは『自分に対して』は大事な想いを伝える短歌でも有ったのだ。

 

「……「富嶽スタイルは自分の動きから、自身のミスを減らす為の動き。其れ故に相手の人間性を見ていない」………ね」

 

電脳の世界……神ゲーとして名高い其の場所で出会った、祖父成らざれど祖父の剣と立ち回りを再現して見せた者達が、各々の戦いで自分に教えてくれた『本質』。あの日、祖父が『自分のようにはなるな』と言った理由は此の事だったと、京極は漸く気付くに至ったのである。

 

其れは自身が自力で気付くべき事であり、そして自身が祖父の剣を追い果てた先で、其の事実に気付けるかどうかだった『真実』で。そして今の彼女は、祖父が遺したゲームの『真ラスボス』として座する『祖父の写し身』に、今は(・・)未だ(・・)挑めないと結論付けた。

 

祖父が晩年に悟った其の絶望を、孫娘たる自分は『自身の道で身に付けた剣を以て超える事』。そうする事で初めて、今は亡き祖父への孝行になるのだと信じている。

 

「プレイヤーネームは………まぁ京(アルティメット)で良いかな。───御祖父様も褒めてくれたからね」

 

知り合いから高確率で「いやそうは読まないだろ」と言われる名前ではあるが、京極は最高に『ハイカラなネーミング』であると確信している。

 

亡き祖父との思い出に耽りながらもプレイアバターを作成し、表記だけなら本名のデータを作った京極は件のプレイヤー……サンラクから『そんなに切った張ったのPKがしたいなら、是非オススメしたいゲームがあるんですけどねぇえ?』と、()()()()()()()笑顔で勧めてきたゲーム……『辻斬・狂騒曲(カプリッチオ):オンライン』の世界へと向かう事にしたのだ。

 

「つまり此のゲームは幕府と維新、双方の陣営による対戦ゲームって感じなのかな?取り敢えず()()()()()()()()を前に、やれる事はやっておかなくちゃ」

 

ある程度調べた感想としては『PKが当たり前に出来るプレイヤー達が、和気藹々と御互いの対人技能を磨く為に作られたゲーム』、と言ったところか。

 

そう考えれば成程確かに、自分の様なプレイヤーには向いていると言って良い。神ゲーたるシャンフロと比べてしまっては操作性は劣るが、自分の剣を振るうに弊害が出る程では無いので問題無しと、京極は割り切りつつ新たな世界─────幕末へと向かう。

 

今は未だだが、何時か必ず超えると誓った祖父の写し身。そして数日後に控えている『ペッパーとの約束』に備えた修行の場として、上等な場所だと思いながら……………。

 

 

 

 

 

だが京極は知らなかった。

 

 

 

 

 

サンラクというプレイヤーが「クソゲーハンター」と揶揄される、悪食ゲーマーである事を。公式サイトも攻略サイトも、示し合わせて「プレイヤー達は和気藹々の仲良しです!」と言わんばかりの文章や、スクリーンショットを緻密に並べている事を。

 

そして何よりも『幕末』という単語は、幕府が末期状態(・・・・)と揶揄されている、まさに『修羅と蟲毒の坩堝の中の殺戮世界』である事実を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、先ずはチュートリアルから始め『ウェルカム天誅ァーッ!!』ぇあ?」

 

ログインからステータス画面を開いた直後、背後から刀がスパン!と京極の肩から腰にまで届く袈裟斬りが炸裂。

 

ゲームを始めたばかりの初期装備にして、何処の陣営も属さない野良たる浪人の京極は、称号獲得の為にリスポン狩りを行う中級者の一撃を耐える事は出来ない。

 

「許せ新入り、だがこれが幕末なの『余韻天誅っ!』だょべら!?」

 

己を殺したプレイヤーが、背後から忍び寄った別のプレイヤーが繰り出した一撃によって、首が宙を舞ったのを見ながら視界は暗転し。

 

「くっ……!リスポン狩りとかやってくれるじゃな『若干経験値足りないから埋め合わせ天誅!』ちょっ!?」

 

デスポーン直後にシュッ、と。逆手持ちの短刀に、喉笛を流れる風の如く斬り裂かれ、彼女は再び死亡し。

 

「よしレベルアップ、ばいばーい」

「どうする? アイツ天誅()る?」

「囲んでボコれば行ける!取り敢えず数集めろ!」

「よし時間を稼ぐ……肉盾式は無しでな!!?よし行くぞ!天ッ!誅ッッッッッ!!!」

 

御先に失礼と告げて去らんとしたプレイヤーに、囲んで襲い掛かったプレイヤー達を眺めながら視界が途切れ。

 

「ああそういうゲームなわけね! くっ、上等じゃな『逃げろォ!?『針千本』が暴れて………ぎゃぁああああ!?!?』えっ」

 

トトトスッと。何故からか飛んできた『団子串』が額・喉・胸に突き刺さり、貫通して風穴が空いた事で死亡し。何故団子串が?と、そんな疑問に支配される京極の視線の先で、恐慌状態に陥ったプレイヤー達が悲鳴を上げ。そしてまたしても叫んだ。

 

「ちょっ、ギャバア!?」

「おいいいい!?何で此処で『勇者』が来るぼぇあ!?」

「地獄絵図だあああああああああ!?」

「逃げろォ!いや、勇者と針千本の動きに便乗しろ!そうすりゃ色々手に入るぞ!」

「兎に角数集めろ!他の所にも連絡飛ばせ!!!早く!!!」

 

先程まで袋叩きする側と袋叩きにされる側であったはずのプレイヤー達が結託し、其の場所へと向かっていくのを見ながら、京極は再びリスポーンし。

 

「サ、サ…………!」

 

顔を引き吊らせながら、此等全てを知っていた上で知らばっくれたのだろう其の男に、怒りと些細な喜びが混ざった絶叫を、大江戸の町に木霊させた。

 

「サンラクぅアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

「うるせぇ!ルーキーは黙って死んでおけ!其れが此の世界で初心者が通る作法(・・)って奴だぁ!!」

 

背後から火縄銃で頭と胸を撃ち抜かれ、撃ったプレイヤーが薙刀で唐竹割りにされるのを見た京極は、意識が暗転する中で自ら考えて結論を出した。

 

取り敢えず、あの野郎(サンラク)は絶対に首打ちに処してやる──────と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、シャンフロ第15の街にして第二の旅立ちの街となったフィフティシア、其の一角に建つNPCカフェ『蛇の林檎・フィフティシア支店』。其の店内の個室にて二人のプレイヤーが相対し、巨大なバースデーケーキを食べていた。

 

「………やはり雑に甘いな、コレは」

「そうだねぇ~」

 

砂糖で塗り潰した様なケーキを口に含み、やっぱりあーくんが私の為に用意してくれた、あのバースデーフルーツケーキの方が良かったなと思い出を振り返りつつも、クラン:旅狼(ヴォルフガング)のサブリーダーたる『アーサー・ペンシルゴン』と、クラン:黒剣(シュバルツシルト)のリーダーたる『サイガー100』は紅茶を飲んで、静かに視線を合わせる。

 

「で、新クラン立ち上げ──────もとい膿の根源たるリベリ()ス君を黒狼(ヴォルフシュバルツ)に置き去りにして、主戦力及び経営陣を漏れ無く全員安全圏へ退避させた、其の感想は如何かな?100(モモ)ちゃん」

「人聞きの悪い事を言うな。私はあくまで(・・・・)クランリーダーとして自身の責任を取り、奴をリーダーとして幹部も奴のフォロワー達で固めたまでの事。奴等がてんやわんやして居る隙に、私達は本懐を遂げる為に動く………其れだけなのだから」

「カッコいい事宣ったけど、やってる事エグい(・・・)って言われない?」

「お前が対抗戦でやった事に比べれば、未だマシ(・・)だろうに」

「はて、何の事かな?」

 

ジト目で睨むサイガ-100に対し、あっけらかんと笑うペンシルゴン。拗れた選民思想を持ち、トップクランで居続けたいと見栄を張り、本来の目標や目的を見失って増長したリベリオス一派から、サイガ-100は『全敗責任を取ってクランを退く』という形で、リベリオス派の『息が掛かっていない者や経営幹部陣』を、彼女は黒狼から引き抜いて黒剣所属としたのだ。

 

元々戦う事しか頭に無い上、クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)が自分の物になったと『勘違い』した結果、益々ドヤ顔をしたリベリオスと彼のフォロワー達は、遠からず自分達の失態に気付く時が来るだろう。

 

漸く肩の荷が降りたサイガ-100は、ケーキにトッピングされた苺らしき果物を囓りつつ、ペンシルゴンとはリアルでも冗談混じりにやる、軽めのコミユニケーションを経て。

 

そして──────ペンシルゴンは口を開いた。

 

「──────さて、100ちゃん。()()()()()()()()()()…………どうなってる?」

 

其れは双つの狼による戦の裏に仕込まれていた、ペンシルゴンとサイガ-100の密約………勇者武器所持者同士による話だった。

 

「…………駄目だな。其々別の勇者武器と雌雄を決しても、私の方に『変化』は無い」

「多分今回の100ちゃんとの激突で、私の(・・)あーくんも同じフェーズに入ったと思う。私も草餅君との戦ったけど、変化は無かったからね」

 

ユニークシナリオ【勇ましの試練】。幾つかの段階の内の一つ『勇者武器所持者同士の相対』が在り、ペンシルゴンと草餅にサイガ-100とペッパーの、其々の相対が成された事によって目的其の物が達成したのである。

 

「次段階のフレーバーテキストはこうだった…………『勇ましき者よ、己が相棒振るいて黄金の手が守りし地殻の扉を開け。その先に万象に打ち克つ鎧有り』──────か」

「まぁ、勇者の武器(・・・・・)は在るのに()()()()()が無いってのは、どうにも変だったからね。命名するなら………『聖鎧(せいがい)』って所かな?」

 

勇者武器の次なる物語。

 

其れは今は未だ刻に非ず。

 

其れは龍と竜、そして数多の命の戦いの先に在る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ところで『トワ』よ」

「ん?」

 

そんな折にペンシルゴンが見たのは、随分と真剣な視線を向けるサイガ-100であり。

 

「お前、随分と大胆に言い切ったな………」

「ンフフフ………♪どうだったかなモモちゃん、()()あーくんの実力は?」

「まざまざと見せ付けられた上に、彼の動きから『富嶽御爺様』の影が重なったよ。正直に言えば『十全な対策をしない限り、戦いたくは無い』な………彼は本当に『人間』なのか?」

「本人は『普通だ〜』とか言ってるけど、端から見れば『化物』だからねぇ。例えば──────」

 

惚れ気を含みながら、ペンシルゴンは恋人(ペッパー)の事を語り出し。そして其の話を聞いたサイガ-100は、ペッパーの強さを知る度にドン引きし。そして同時に己の内にて『不思議な感情』が積り始めていくのだった……………。

 

 

 

 






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