VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクが征く




半裸の鳥頭、始まりの街に往く

「んじゃ、行ってくるわー」

「行ってらっしゃいですわー」

 

ペッパーがビィラックの手によって修繕された拳銃にして、遺機装(レガシーウェポン)ミル・ト・コルンを受け取って一度ログアウトしていた其の頃、サンラクはパートナーのヴォーパルバニー・エムルが開いたゲートを潜り抜け、シャンフロ第8の街・エイドルトの見慣れた裏路地に姿を現した。

 

彼の目的地は唯一つ、自身の金策地兼アクセサリーや新武器等の実験場、水晶巣崖(すいしょうそうがい)に在る高品質の鉱石達。英傑武器(グレイトフル)アラドヴァル修繕計画に必要な、今までよりも更に高温な熱にも耐えられる『炉』を作る為にやって来たのである。

 

「よっし、やるとするか………!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

走る、ヘイト残し、隠れる、掘る。

 

走る、ヘイト残し、隠れる、掘る。

 

走る、ヘイト残し、隠れる、掘る、飛び越える。

 

走る、ヘイト残し、隠れる、掘る。

 

走る、ヘイト残し、隠れる、掘る。

 

見付かり、そして死ぬ──────

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「おぅ、ビィラック。こんだけありゃ足りるか?」

 

水晶群蠍にフルボッコのバレーボールにされて、兎御殿にてデスポーンしたサンラクは待機していたエムルと合流。再びビィラックの鍛冶場に赴くや、インベントリアにブチ込んでいた鉱石達を此れでもかと積み重ね、渾身のドヤ顔を決める。

 

「……………エムルよ。わちが希望した素材ちゅうんは、こんな『パパパッ』と採れる様な(ブツ)じゃったけぇ………?」

「ビィおねーちゃん、かの言葉『黄金の鱗は時の波に揺るがず』ですわ。サンラクさんなら此れくらい朝飯前ですわ」

 

フンスフンスと鼻息を鳴らし、耳をパタパタと揺らしながらエムルが言った。因みに彼女が言ったシャンフロ世界の諺らしき物は、其の意味に『どれだけの年月を経ても風化しないジークヴルムの鱗が風化する事を心配する者は愚かである』という意味なのだとか。

 

取り敢えずエムルを酷使する事は確定としつつも、此れにて炉を新造する準備が整った為、早速ビィラックは仕事に取り掛かり。一方のサンラクは『ある目的』を達成するべく、エムルを連れて『セカンディル』の裏路地へと移動し。そして彼女をマフラーで擬態させ、其の脚で今は懐かしき『跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)(もり)』へと全力疾走していくのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャングリラ・フロンティアは夜になるとモンスターの()が変わる。セカンディルで戦ったモンスターが軒並み強くなったり、レッドキャップゴブリンの様な、調整ミスと叫びたくなったモンスターが出現したりした。

 

そして其れは跳梁跋扈の森も同様に、ゴブリンはレッドキャップゴブリン・アルミラージは狂暴化・オークはアームドオークに変化したり等々、時間帯によって其の生態系も変化が起きる。

 

「なぁ、エムル。あの忌々しいレッドキャップ達が鼻水垂らして泣き叫んで逃げて行くの、結構レアじゃねーか?」

「リュカオーンに襲われるモンスターって、大体そんなもんですわ」

 

時刻は午後七時、初心者では油断してればヴォーパルバニーに首を斬り裂かれたり、喉笛を貫かれたりして一瞬で死ぬ事になるのだが、サンラクの身体に引っ付いたリュカオーンの刻傷(こくしょう)から放たれる『威圧感』が、彼の周りに黒いオーラを撒き散らし続け、其れを直視したモンスター達は悲鳴を上げながら逃げ去るという光景を目の当たりにしていた。

 

「エムル。またプレイヤーに遭遇しないとも限らんから、一応静かにな」

「は、はいなっ」

 

夜の時間帯にレベリングをする奴も居るし、何なら自分も同様な事をしていたので、用心するに越した事は無い。既に十回(・・)レアモンスターと誤認されたので、とっとと抜け切るに限る。

 

「わっ!?モンスター!?」

「レアエネミーか!やっちまおうぜ!!」

「プレイヤーなんだよなぁ………」

 

初期装備の弓使い・軽装の剣士・中量級装備のタンクにモンスターと間違われながらも、サンラクとエムルは前へ前へと進んで行く。彼がファステイアを目指す理由──────其れは『聖女ちゃん』ことユニークNPC『慈愛の聖女イリステラ』からの直々の依頼、クエスト【聖女の刃剣(ソード·オブ·セイント)】に関係大アリだからだ。

 

墓守のウェザエモンと深淵のクターニッド、二体のユニークモンスターを倒した事によって、ワールドストーリーが第三段階に進行。今現在フィフティシアではエインヴルス王国の協力を受けながら、三隻のシャンフロ内宗教『三神教に伝えられる三体の神獣の名を持つ』なる、新大陸調査船を七月末に完成を目指して急ピッチで造船しているらしい。

 

そして其の三船に乗れるのは、ギルド等の『組合に所属して其処で実力を保証された者に限る』事であり。即ちサンラクの様に傭兵で有りながら、無所属(・・・)の状態では身分証明が出来ず、乗船する事すら叶わないのである。一応『密航』という手段は有るが、唯でさえ有名人な上に見付かれば見付かるで余計面倒な事にしかならないのは明白。

 

故に彼は見付かっての質問責めやらを避ける為に、サードレマ等の大型の街に在るギルドを利用せず、人の目が少ない上にシャンフロ開始時の初心者に偽装可能な、半裸で鳥頭姿(デフェルトモード)でファステイアに在る傭兵ギルドに登録しようと考えたのだ。

 

「さて、もうそろそろだとは…………お」

「見えてきましたわ!」

 

森を抜ければ人が歩いて踏み固めた道が現れ、其れを辿った先にサンラクとエムルは、シャンフロ第1の街・ファステイアを発見する。門を潜り抜けて近くの建物の影に隠れ、街の様子を静かに覗えば、多くの広場にサードレマ級の広さを持つ敷地に、開拓者達のごった返し対応出来る露店タイプの店が建ち並び、田舎臭さと夜でありながらも人の気が多い。

 

「首斬兎怖っ」

「あの蛇許さん……」

「まじで毒ウザい……」

 

ヴォーパルバニーによる洗礼に、エリアボスの毒攻撃にやられただろうプレイヤー達の話し声が聞こえる中、ギルドは一体何処だと見渡し探しては見るが見付からず。取り敢えずギルドが建物内に在ると仮定し、サンラクがファステイア捜索を開始しようとした──────其の時だった。

 

「カカカ、また会ったなサンラク」

 

最近聞いた心臓を鷲掴みにする力強い男の声。振り返れば鼻から左頬に傷が走った、茶髪ポニーテールの女グラップラー。其の頭上には『サバイバアル』と掲げられている。

 

「………って、サバイバアルじゃねーか。何で此処に?」

「そりゃオメェ、此処が俺等の拠点(・・)みたいなもんだからだよ」

「…………はい?」

 

PKerが他のプレイヤーにキルされると、装備全没収に加えて積み重ねたカルマ値に応じての賠償金の支払いが発生する。オマケに払い終えるまでは回復薬でさえ、まともに購入出来ないともなればキツイ以外の何物でもない。故にこそ、何故サバイバアルが此処に居るのかが、サンラクには疑問だった。

 

サバイバル・ガンマン、通称『鯖癌』。其のギリシャ文字サーバーの一つで、徒手格闘(ステゴロ)による生存生活(サバイバル)をしていた『φ』の地で最も暴れ狂った男なら、シャンフロでも格闘戦でモンスターを殴殺して借金もチャラに出来る筈。やろうとしないのか、或いはやる必要が無いのか、其れはサバイバアルにしか解らない。

 

と、其の時。ファステイアのプレイヤー達がざわめき、一箇所に移動して行くのを、サンラクとサバイバアルは目視で確認した。

 

「何だ何だ?」

「お、アイツ等始める気か。サンラク、ちょいと付いてきな」

 

シャンフロ的にも有名人なサンラクは見付かれば、色々厄介な事になると予測したサバイバアルの案内で、人混みから少し離れた場所に移動。そしてサンラクが人混みの先で目撃したのは、初心者装備の斧使いと双剣使いの対峙であり。

 

握る武器に纏う防具の其のどれもがシャンフロを始めた物で有るにも関わらず、其の構え方や姿勢からは明確に『慣れ』を感じさせる、ある種の矛盾に似た出で立ちを持っていた。

 

「勝った負けたは二の次で!」

「セーラー服は持ったな?」

「おうとも、そっちはスク水か」

「あぁ。其れじゃあ…………」

 

 

『いざ尋常に──────勝負ッッッ!!』

 

 

 

「いや、何してんのアイツ等」

 

 

 






戦う者


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