VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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はっじまるよー




予測不能のリングinファイト

「おぅ、サバイバアル。奴等PVPしてるが大丈夫か?」

「何の問題も有りゃしねぇよ。其れに俺を含めた『ティーアスちゃんを着せ替え隊』にとっちゃ、街中のPVPなんざ日常茶飯事だ」

 

そんな日常茶飯事聞いた記憶ねぇよと、サンラクは心の内にてツッコミつつ、改めて記憶を洗い出して見れば、何時だかペンシルゴンが『最強の賞金稼ぎNPCを着せ替える事を目的とした元PKの変態集団がファステイアに居る』なる事を、話していたのを思い出した。

 

「お前、変態だったのか」

「あぁん?俺は『ロリコン』だが?つーか誰から変態って教わったサンラク」

「もっとアウトだわ……変態についてはペンシルゴンからだな」

 

取り敢えず自分に不都合な理不尽が起きたなら、大体『ペンシルゴンがやった』事にしておけば大体丸く収まる。奴はテンションがノリノリになると望んでもないのに魔王ムーブをし始めて、最終的には敵味方双方の陣営を巻き込んでのド派手な花火と共に自爆する愉快犯だと思いながら、斧使いと双剣士の戦いに視線を移す。

 

片や荒々しく振り下ろし一撃で防御ごと敵をブチ割る斧、片や流れて吹き抜ける風の如く手数で押し切る双剣士の戦いは、相対しているプレイヤー達のプレイスキルも相俟って、更に白熱し戦況が加速していく。

 

「連中上手いな。スキルやら使わず、単純な技量だけで勝負してら」

「そりゃあそうだ。寧ろ『勝敗が決まってから』が、俺等からすりゃ本番(・・)だしな」

 

サンラクやサバイバアル、他の着せ替え隊組が見守る中で、双剣士の連撃に曝されて全身からダメージエフェクトの赤いポリゴンを零しながらも、一瞬の隙を突いた斧使いが振り抜いた一撃が、双剣士の胴体を一閃。

 

腹部の防御が薄かった事とステータスに耐久をあまり振らなかった事が原因か、荒々しい斬撃によって腹をカッ割かれた双剣士は、誰の目からも判る明らかな致命的ダメージと共に、肩から崩れ落ちる様にして両膝を地面に付けた。

 

「ぐ、スク水の…………夢、が…………」

「俺はルティアさんかティーアスちゃんに、セーラー服は似合うと思うぜ」

「幼通い妻とか最高かよ………!もしスクショ撮れたら流してくれ…………!」

 

明らかに遺言としては頭が可笑しい台詞を遺して、双剣士を構成していたポリゴンが崩壊から、使っていた装備が地面にドロップし。同時に斧使いにはPKerの烙印たる『赤い髑髏』が、頭上のプレイヤーネームの横に押された。

 

そしてシャングリラ・フロンティアというゲームに搭載された『PKシステムとカルマ値システム』に従い、街中で人を殺すという罪に対する審判を下すべく『断罪者』は現れる。

 

「おっ!来たぞ!!一人抜きで現れた!!」

「頼む、どうかルティアさんかティーアスちゃんを!」

「トゥールはヤダ、グリッチもヤダ、御願いだから其れ以外………!」

 

天にいきなり祈り始めるサバイバアルや着せ替え隊の者達、トゥールやグリッチなる者が誰だか知らないが、言い方的に賞金狩りNPCにも当たり外れが有るらしい。果たして彼等の願いに応えてか、はたまたシステムが演出したのか、プレイヤーを殺めた斧使いの前に『其れ』は現れた。

 

トッ──────と、まるで暗殺者の如く降り立つ音は、あまりにも静かにして軽く。イスラム教で女性が素肌を晒す事を禁忌としている様に、フード付きの分厚いブラックロングコートを身に纏って目元まで深く被り、更には革靴を履いて両手は手袋の、口元は深紅のマフラーを巻いて隠している徹底っぷりである。

 

まるで今もペッパーが着ている、ユニークモンスター・冥響のオルケストラに関係有りな三部位一体の装備に、マフラーとフードを足したら同じ見た目に成りそうじゃねぇか?とサンラクは考え。そして着せ替え隊のメンバーにとって、此処に現れた人物(NPC)は歓喜と狂乱、そして興奮の色に染まる存在であったらしい。

 

「ルッ──────」

『『『『ルティア(さん)だあああああああああああ!!!!!!』』』』

「メイド服を用意しろォ!まだ間に合うぞ!!」

「スクショ部隊、準備は良いか!!?」

「馬鹿野郎、ルティアさんには裸エプロンじゃろがい!!」

「スマン、皆。やっぱ俺はルティアさんにセーラー服を着せたい!」

『貴様ァ!?!?』

 

ギャーギャーワイワイガヤガヤと、叫び荒振る着せ替え隊メンバー達を見ながら、サンラクは滅茶楽しそうだなと思いつつも、呼び出されたルティアなる賞金狩りNPC………正式名称を『賞金狩人(バウンティハンター)ルティア』を見る。

 

彼女が両手に握ったのは棍武器の一種『トンファー』。しかし其の棍の部分に在るのは片刃の『剣』であり、仮称とするなら『トンファーブレード』もしくは『トンファーエッジ』となるだろうか。

 

(見た感じ、双剣かメイス………或いは小槌から派生と強化を経て、トンファーに成る感じか?後でビィラックに聞いてみよう)

 

ではルティアなるシャンフロ運営が用意した、PKer殺しのNPCの実力を拝ませて貰おうと思っていた矢先だった。ルティアが何故か『プレイヤーキルをした斧使い』では無く、フードに隠れた視線は『サンラク』を見つめ。片手のトンファーエッジの鋒で、半裸の鳥頭を真っ直ぐ指し示していたのだ。

 

まるで『今直ぐ構えろ』と言わんばかりの様子で。

 

「いや待て、ちょっと待て。俺は一度だって殺しはやってないぞ?誓って殺しはやってない」

「……………………」

 

サンラクの言葉に対し『お前の事情なんざ知らん、さっさと構えろ』とばかりに、ガン無視された挙句に無言を貫き通すルティア。そんな状況に置いて、着せ替え隊のメンバー達も少しずつ離れて、円という名のバトルフィールドを構築していく。

 

「…………………おぅ、サバイバアル。コイツをちょいと預かってくれ」

「まぁ良いが………何か『温かくねぇか』?」

「気にすんな」

 

取り敢えず四の五の言っている場合では無く、サバイバアルにマフラー擬態状態のエムルを預け、サンラクは一人舞台へと上がりながら、左手に傑剣への憧刃(デュクスラム)の右手に傑鉄への鐵鎚(タウスレッジ)を握り締め、ルティアと対峙しながら静かに構えた。

 

突発的に指名された半裸の鳥頭・サンラクと、着せ替え隊の当たり枠・賞金狩人のルティアという奇妙な一戦が、シャンフロ始まりの街・ファステイアで開幕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか。

 

相対したルティアを前に片手剣と片手鎚による斬打二刀流+役割模倣(ロールプレイ):龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)(かい)の構えを取りつつも、同じく二刀流のトンファーエッジにリラックスした構えを取ったルティアを前に、サンラクは視覚情報から得られた要素を基盤として、相手の戦闘スタイルを予測する。

 

(トンファーエッジだか、トンファーブレードだか知らねぇが、アレは回転する事で『攻撃属性』が変わる。実質ルティアは片手剣と小鎚を其々二本、簡単に言えば『四刀流』をしていると見て良いな)

 

他にも軽い足取りから軽戦士だと睨みながらも、敵のステータスは何を重視しているか等、思考を巡らせる中でルティアが動いた。

 

「──────!」

「おっと!」

 

スキルを使った気配が無い。なのに速い踏み込みからの流れるが如く右手側のトンファーエッジの斬撃が、サンラクの腹部を開かんと迫り。対して彼は傑剣への憧刃を逆手にスイッチしながら受け流すも、次に迫るは左手側のトンファーエッジの打撃面。

 

「ソイツは読んでた、ぜっ!」

 

ストリームアタック起動。スタミナ消費による攻撃速度上昇からタイミングを合わせて、傑鉄への鐵鎚でトンファーエッジの面をクリティカルで叩き付けによるパリィを掛ける。

 

だがトンファーパンチはサンラクが予想していた以上に『重く』、競り負けた自身の身体が後ろへと押し遣られた其処に、ルティアの次なる攻撃が襲い掛かる。

 

「ッ………!」

「うぉ、あぶっ!?正当防衛!のおぉぉん!?」

 

斬り上げから正拳突き、回転斬りに脛を狙ったローキックと、斬・打・脚撃を織り交ぜて攻め立てるルティア。斬り下ろしを鎚で叩き流し、刺突を首を傾けて回避、横薙ぎ一閃を彼女の筋力を利用して回転しながら流すも、其処に剣を下に打撃面を上にしたアッパーカット。

 

フローティング・レチュアで虚空を踏み締め、三歩全てを利用した空中立体バク転を駆使しつつ、金晶腰衣(エクザクロス.ベルト)で剣刃を受けて距離を取り。そしてサンラクは此の攻防を通じて、『ルティアは器用に比重を置いた軽戦士』だと仮定を付けた。

 

「OK、解った……御宅がガチなら、此方もガチでやってやるよゴラァ!」

 

両手の武器を変更、片手剣と片手鎚をインベントリに放り込み、拳と腕に纏うは『紅い拳帯(セスタス)』。ルルイアスの環境下でボコボコにしたギガリュウグウノツカイこと、『アルクトゥス・レガレクス』の素材から作られ、装備すると『ある条件』を達成しない限りは腕から外れない特性を持つ。

 

実際は人差し指一本分はウィンドウ操作が出来、装備解除ボタンを押せば普通に外せたりするが、世界観と設定を重視するならば妥協せずに行きたい所だろう。

 

 

紅蓮海の拳帯(レガレクス・セスタス)、第二ラウンドだ…………!」

 

 

 






突発的指名、そして戦闘開始


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