VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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対決は続く




戦の匂いに吼えるは拳

紅蓮海の拳帯(レガレクス・セスタス)。第二ラウンドだ、ギア上げて顔面凹ましてやるよオラァ!」

 

ルティアが振るうトンファーエッジの斬撃を、拳と腕に巻き付き残りが風に靡く拳帯の裏拳でパリィし、再び近距離下での攻防が再開される。斬撃・斬撃・打撃、打撃・斬撃・ローキック、ストレートパンチに拳帯を合わせてルティアの攻撃をサンラクは凌ぐ。

 

(大分解ってきたぞ、此の賞金狩人………!コイツ『器用重視』の軽戦士だ!)

 

トンファーエッジの扱い方もそうだが、何より持ち手をくるりと回転させる時の動作が、彼女は圧倒的に『速い』。まるでセルフ過剰伝達(オーバーフロー)でもやっているかの様に、斬打の攻撃属性変更が行われているのだ。

 

シャンフロに置ける器用と技量は似ているかに思われて、実際は全く異なるステータスでもある。器用はインベントリやインベントリアの操作に武器の習熟にも影響を与え、魔法職ならば魔法を行使した際に消費するMPの量が変化。技量は高ければ高い程に、攻撃スキルの習得率に大きく影響を及ぼす。

 

「っぐ、うぉあッ!嘗めんな!!」

 

トンファーエッジの攻撃を凌ぎ、機動力系の強化スキルを点火。フォーミュラ・ドリフトで回り込み、速度上昇と機動力系スキルの重ね掛けによって、兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)(スペリオル)もサンラクのスピード上昇を感知してか起動可能になり、彼は其れを使用。

 

嘗てルルイアスで封将が一体『バーシュド=メルナクル』を相手に用いた高速円形一周を用いつつ、あわや転倒のギリギリのラインに踏み込みながらも、龍宮院 富嶽を相手に用いた『膝カックン』によって、対処せんとしたルティアの死角から打ち込んだ事で彼女はバランスを崩し──────『ていない』。

 

「うっそだろ!!?」

 

死角を突いての膝カックン、兇嵐帝痕のブーストを受けたサンラクの脚撃は、確かにルティアに届いていた。だがルティアは膝裏に衝撃が入った瞬間、無事なもう片方の足で自ら跳躍し。

 

膝カックンにより崩れた体勢を無理矢理振り上げ、オーバーヘッドキックの如くトンファーエッジを剣モードにしながら、サンラクの鳩尾に刃を突き立てようとしてきたのだ。

 

「ぬぉおおお!死んで堪るかぁあ!?!」

 

フリットフロートで虚空を蹴って、背泳ぎの要領でカッ跳びつつ、身体を半回転捻った上で拳で地面を叩き。衝撃で下半身を起こしながらに、空中錐揉回転で着地すれば、ルティアの握るトンファーエッジの打撃部分が迫り来る。

 

「冤罪反対ッ!!」

「………………ッ!」

 

ガァン!と一際大きな音が鳴り、拳帯と面がぶつかって互いにノックバック。同時に此処まで殴り、叩き付けてきた紅蓮の拳帯の持つ『ゲージ』が溜まった事が、サンラクに(しら)されたのだ。

 

紅蓮海の拳帯には『三つの能力』が備わっている。

 

一つ目は『攻撃時に装備者の()に命中した攻撃で発生する、自身が受けるダメージ軽減する』能力。即ち此の拳帯を装備した状態で、敵やモンスターが持つ剣の刃を殴りつけたとしてしても、其のダメージに対する『軽減処理』が発生する事。

 

二つ目は『自身と攻撃対象双方にダメージが発生した』場合、拳帯本体が持つ『ゲージを蓄積させる』能力。此れは武器と拳の激突や、拳がモンスターを含めた物体への接触によるダメージでも蓄積可能だ。

 

「其のトンファーエッジだか、トンファーブレードだか知らねぇが、質の良い武器みてぇだ………なっと!」

 

首狙いの斬撃に、次ぐ構えから胸を狙った一撃を『想定』したサンラクは、ルティアの踏み込んだ膝を片足で止める事で攻撃のテンポを僅かに遅らせる。そして『便秘』の地にて、対バグ技の極意『イアイフィスト流』を起こしたサンラクにとっては、1フレームの隙間さえ在れば差し込みが『間に合う』。

 

そして三つ目の能力、其れはゲージをMAXまで蓄積する事でキツく巻き付いた拳帯が『一定時間解放される』のだが、其の状態は一回り大きくなり中途半端に膨らんだグローブの様な状態、一見すれば虚仮威しの様にも見えなく無い。

 

「必殺、八つ当たりパンチ!」

 

アガートラム・ストリームアタック起動、紅蓮に膨らんだ右拳から銀のエフェクトが、木漏れ日の如く輝きながら加速してルティアを狙い。其の一撃に剣の鋒で拳と腕を貫かんとした、左手のトンファーエッジが衝突し──────『吹き飛ばされた』。

 

「…………?!」

「ハッハァー!!っぶぇ!?油断も隙もねぇな、チクショー!」

 

右側のトンファーエッジが顔面を狙ったのを回避すれば、ルティアがフォーミュラ・ドリフトを使い、吹っ飛ばされたトンファーエッジの片割れを拾い上げる。本来ならば先の一撃、サンラクは右拳どころか右腕を開きにされていてもおかしくは無かった。

 

だが、そうはならなかった(・・・・・・・・・)。そして其れこそが、紅蓮海の拳帯の持つ三つ目の能力。装備者の拳と腕を経由する、ありとあらゆるダメージの『完全無効化』。拳帯が巻き付いた拳の先から肘の範囲内であれば、一定時間は毒やマグマにモンスターの攻撃だろうとも、帯が巻き付いた拳と腕は刻まれる事も、砕かれる事も無い擬似的な『無敵状態』と言って良い。

 

「そっちがそうなら、此方も別武器で勝負してやらァ!」

 

解放状態はまだ維持出来るが、此の手の相手には同じ手は通じない可能性が高い。故にこそサンラクは紅蓮海の拳帯を解除してインベントリアに入れ、代わりに冥王の鏡盾(ディス・パテル)を左手・深帝の覇角槍(アドヴァンスド・ディープ)を右手に握りて、彼は『新バージョン』でルティアと向き合うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげぇ……ルティアの武器殴り飛ばす奴初めて見たよ」

「あの人が予想以上に立ち回ってくれてる御蔭で、ルティアさんのスクショが大量だ………!」

「てか、アイツ初心者じゃ無いのか?偽装してたのか?」

「いや、ちょっと待って………もしかしてあの人『ツチノコさん』じゃない?」

「……うわ、マジやん!!モノホンやん!!」

「サバさん!あの人、ツチノコさんで合ってますよね!?」

「まぁ、そうだな」

 

ルティアが突如指名し、バトルフィールドに上がった半裸の鳥頭が押されながらも、何とか食らい付く様に三者三様十人十色の反応が起きる中、着せ替え隊のメンバーの一人が半裸の鳥頭がサンラクである事に気付いた事で、他のメンバーもざわめき始めて。トドメにマフラーに擬態したエムルを抱えた、サバイバアルの発言で更に大きくざわついた。

 

「でも、まだルティアさんは『アレ』を使って無いですよね?」

「た、確かに!」

「あぁ『アレ』か………大丈夫だろうか?」

 

ルティアと相対し、キルされた経験を持つメンバーは彼女が持つ『切札』を知っているからこそ、初めて経験するサンラクが其れに対処出来るか否か、固唾を呑んで見守って。

 

(お前ならやれるたぁ思うが………。凌げよ、サンラク)

 

着せ替え隊が見つめる中、サンラクとルティアの戦闘はいよいよ、クライマックスへと突入する──────。

 

 

 






佳境へ往く


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