VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

509 / 1075


いざ決着へ




セツナノナカデ カガヤイテ

「──────」

「こなくそぁ!負けて堪るかゴラァ!」

 

冥王の鏡盾(ディス・パテル)で滑らせ流し受け、深帝の覇角槍(アドヴァンスド・ディープ)でカウンターの突きで攻め返す。

 

ルティアの持つトンファーエッジの攻撃速度と手数が上がる中、サンラクもまた役割模倣(ロールプレイ):龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)(かい)を用いて食らい付くが、其れをフル活用して尚もサンラクは彼女を相手に『押されていた』。

 

「っうか、俺、何か悪い事したかぁ!?」

「………………………」

「文字通り沈黙ってかクソが!何も知らんまま死ぬんは御免だぜ!!!」

 

受け手に回ってはいけない、此の手のタイプは水晶群蠍(マブダチ)達と同じく、弱みを見せた所から切り崩しに来るタイプ。そして相手は文字通りAI、其れもシャンフロの運営がPKer絶許の意志で作った、対プレイヤー用の戦闘人工知能。生半可で御粗末な出来栄え等では断じて無い事が、一回一回の激突とやり取りの中でサンラクは犇々と感じるには充分だった。

 

観客達も食らい付くサンラクを見ながら、しかし押し込まれていく様子に、段々と諦めのムードが漂う中で。当人は心の中で『別の感情』が沸々と湧き上がるのを感じていたのだ。

 

サバイバアルや他の新規勢が観ている中で負けよう物なら、間違い無く掲示板で晒された挙句に外道組から煽られる未来が見える。同時にサンラクのゲーマーとしての炉心に、『コイツに負けたくない』という可燃性物質(激的感情)がブチ込まれ、ニトロの如く爆炎を上げて燃え上がる。

 

「うぉおおお!一人ファランクスゥ!アンド!ハンドガードは偉大ィィイイ!!!」

「…………………!」

 

鏡盾の持ち手を強く握った事で、鏡盾の内蔵ギミックによる外縁のスライドが、ルティアの中段蹴りを止め。襲い掛かるトンファーエッジの剣による斬撃を盾の中心部、続く打撃攻撃をランスのハンドガードで受けつつ、ルティアの怒濤の攻めより持ち直しながら、己の『切札』を使う事に決めた。

 

「意地でも『五秒』!テメェの時間を貰ってやらぁ!先に喧嘩吹っ掛けたソッチがブッ殺されようが、俺にキルペナ付けんじゃねーぞゴラァ!」

 

右手でランスを器用に持ちつつ、親指を心臓に叩き付けて封雷の撃鉄(レビントリガー)を起動。黒雷を全身に迸らせながら、ルティアが繰り出した最速最適解の攻撃をも避け、ランスの鋒による突きを放ってフードの一部を裂き破った事で、彼女は今宵初めて動揺したかの様に身体を振るわせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンフロのAIは時折『理不尽』になったりする。

 

何故自分が賞金狩人と戦わなくてはならないのか。

 

何故PKを行った斧使いを無視して自分を狙ったのか。

 

今の自分は猛烈に、当人へ問い質したい所でもある。だが相手は無言を貫き、あまつさえ奴は此方をキルしようとしている此の状況を、理不尽と呼ばずして一体何と呼べば良い?

 

全力全開(フルスロットル)だ!ブッ殺────!!?」

 

過剰伝達(オーバーフロー)状態の己を御す為、真界観測眼(クォンタムゲイズ)と不意の事故による死を避けるべく、致命秘奥(ヴォーパルひおう)【サキガケルミゴコロ】を使用したサンラクだったが、此の局面で彼が見たのは──────

 

 

 

『突如としてルティアが超加速したかと思えば、自分の身体に三度の斬撃が走って、身体が六等分に斬り刻まれて死ぬ』

 

 

 

──────という、思考加速と可視化された攻撃の波によって発現し。彼は僅かに残された時間で両手の武器をインベントリアへ仕舞い、傑剣への憧刃(デュクスラム)を抜刀と同時に『あるスキル』を使った其の瞬間、サンラクは初めてルティアと視線が交わった。

 

フードとマフラーの隙間の暗闇に潜んで居たのは、サファイアを思わせる『蒼い目』。其れはまるで自ら輝く恒星の如く光を宿し、瞬間を刻む世界の刹那を捉えて逃さない、幾千の修羅場を越えてきた強者の眼差し。

 

真界観測眼の前段階スキル、瞬刻視界(モーメントサイト)の効果を受けたルティアの口が、思考と世界の加速の中でゆっくりと動き、一瞬を残して彼女は呟く。

 

 

 

超速(マッハ)

 

 

 

『黒い電光石火』と『音速の衝撃波』の交錯、まるでシナプスが焼き切れるが如く、サンラクの脳内で火花が散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……!?!!っはぁ!?!」

 

トンでいた(・・・・・)意識が呼吸によって巻き戻され、サンラクは十秒のタイムリミットが迫る中、右手で胸を軽く叩きつつ封雷の撃鉄の効果を切るも、代わりに緊張の糸が切れた事でヘナヘナと地面に座り込んでしまう。

 

そして重い身体に鞭打ちながら、振り向いた先で彼が見たのは。

 

 

 

『必殺を振り抜いた姿勢で止まるルティアと、予知通りに六等分で断ち裂かれた己の残像が在ったのだ』

 

 

 

「あっ、ぶねぇ……………」

 

あの局面でサンラクが選択したのは『責任転嫁』、其れを実行する為の『致命秘奥(ヴォーパルひおう)【ウツロウミカガミ】』。タイムリミットギリッギリの0.1秒の刹那的な交錯の最中、賞金狩人(バウンティーハンター)相手に寸分狂わず実行しきった技量を褒めたい所である。

 

「つ、かれた………。今直ぐ、には動けねぇな………」

 

対人戦或いは対蠍戦に置いて、動けなくなる事は死を意味する。取り敢えず何とかして、此の状況を切り抜けなくてはならない。何せダブルトンファーの死神が、大絶賛此方に歩み寄って来ているのだから。

 

というより、さっきの超スピードを繰り出したのに此のルティアなる賞金狩人は、未だピンピンしているが………まさかあの時静止していたのは、『超速』のデメリット効果だったりするのだろうか?

 

「…………」

「……あー、何だ。金払えば許してくれるのか?」

 

座り込むサンラクを、ルティアはジッ………と。まるで品定めするかの様に、フードとマフラーで隠した蒼色の瞳で見つめていて。

 

「げぶ!?」

「うぉ」

 

其の刹那に指先から飛んだ投げナイフが此処まで戦いを人混みの中から観ていた斧使いのPKerを、ピンポイントでダーツの如く飛来して突き刺さり。体力回復を怠ったが故に其の身体(アバター)はポリゴンを崩壊させて、持っていたであろうアイテムや装備達が其の場に散乱する。

 

「………チッ

 

明らかに「時化たアイテムしかねぇじゃん」とでも言いたげな、そんなルティアの舌打ちを耳にしたサンラクだったが、彼女はロングコートの中から『鍬形紋(スタッグエンブレム)が刻まれたカード』を取り、座り込んでいるサンラクに投げ渡し。其の脚で近付くや──────

 

「……『カフェ・蛇の林檎』、合言葉は『林檎の花に誘われて』」

「あ、はい。えっと其処、結構な常連だわ……」

 

ペンシルゴンやディープスローターと似た、背筋と耳と脳に電流を走らせる、そんな囁きを耳元で残したルティアはコートを翻しながら歩き。彼女の道を譲る様に着せ替え隊のメンバー達は両脇に分かれ。

 

ルティアはキルした事で地面に転がった、斧使いのアイテム達を指パッチン一つで全て回収すると、夜風に揺られて瞬き一つ付く間にファステイアから姿を消したのである。

 

「…………………」

「…………………」

「…………………」

 

沈黙がファステイアに訪れる。サンラクはフィールドを確認、近づいて来る着せ替え隊組の中でサバイバアルが持っている、マフラー擬態のエムルとファステイアの出入り口を確認。対PKerNPCとの戦いで疲労した脳をフル稼働させつつ、ルートを割り出し。

 

スッ………と片手を挙げて興奮する彼等を宥めた、其の刹那。

 

『あっ!ペッパー!!!』

 

明後日の方角を指し示して封雷の撃鉄を起動。全員の視線が其の方向に向いた死角を突き、最短最速の挙動でサバイバアルの手中に収まっていたエムルを掻っ攫い、一目散にファステイアを脱出したのでだった………。

 

 

 

 






一難去って


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。