ファステイアを飛び出して
「あー………くっそ。こりゃファステイアでの就職は当分の間無理だな…………」
「サンラクさん、今日は色々有り過ぎましたわ。ラビッツで休むのですわ」
ファステイアで着せ替え隊が呼び出し、突発的に発生した
(其れにしても何が理由だ?ユニークシナリオにしちゃあ、突然だったし『フラグ』も無かった。………いや、ちょっと待てよ?)
戦闘終了と同時にエムルを再びマフラー擬態させながら、サンラクは思考を続け、一つの仮説を立てる。
着せ替え隊やサバイバアルは対人戦に秀でたプレイヤー達であるが、其れ以前に彼等は揃いも揃って『PKer』だ。対して自分はPKとは程遠いプレイをしており、あの場にいた全ての初心者プレイヤーも似た様な状態だった筈。
そして自分と他初心者と違う点には『レベルが99 Extend』である事、其れがあの戦闘イベントに『何かしら関係』が有るとしたならば。
(あの賞金狩人との戦闘は『PKをしていない』かつ『一定以上の強さ』を持っている事で発生し、其の戦闘で『一定時間生存する事』で何かのカードが貰える的な感じか?)
サンラクは、インベントリアに入れていた報酬の一つで『プレイヤーの隠しステータスを確認可能にする』、おおよそシャンフロ世界でもトップクラスであろう、激ヤバなアイテム──────『深淵の雫』を手に持った状態で己のステータス画面を開けば、其処には此の様な画面が広がっていた。
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PN:サンラク
レベル99 Extend
カルマ値 5 信頼値 10
ヴォーパル魂 792 歴戦値 9893
野生値 600 英雄値 100
極限適正 625 高潔度 280
侵蝕律 0
感覚値
視覚:326 聴覚:57 嗅覚:43 触覚:291 味覚:720
習熟値
短剣:130 剣:81 大剣:40 双剣:78 対刃剣:119
弩弓剣:0 蛇腹剣:37 両手剣:53 雑種剣:0
小太刀:0 刀:0 大太刀:0
ショートメイス:0 メイス:0 鞭:0 鉄鞭:0
槌:0 小鎚:148 鎚:69 大鎚:0
弓:0 剛弓:0 クロスボウ:0 バリスタ:0
槍:30 大槍:0 斧:0 斧槍:0 盾:49
杖:0 拳銃:0 銃:0 狙撃銃:0 大砲:0
縄:0 鎖鎌:0 大鎌:0 徒手格闘:116
籠手:99 籠脚:0 棍:0 双節棍:70
トンファー:0 トンファーエッジ:0
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やっぱヤベーわ此のアイテム。
シャンフロのユニークやらに関わってる隠しステータスどころか、武器の習熟度合を確認出来るってオマエ、端から見ても反則じゃん。
其れが深淵の雫を通じ、自分の隠しステータスを確認したサンラクの感想だった。
(てか何だよ『鎖鎌』って。まさかシャンフロの『隠し武器』か何かか?となりゃあ、やっぱ忍者関係の装備?あと『銃』にも在るんか習熟度………。で、小鎚が高い理由は間違い無く、マブダチん所に通い詰めてるのが原因だな)
客観的に自身の武器習熟割合を導き出しつつ、インベントリアに深淵の雫を入れたサンラクは、シャンフロ第二の街・セカンディルの門を潜り抜け、街の裏路地へと入った後にエムルが開いたゲートを越えて、ラビッツの兎御殿へと帰還した。
「エムル、サードレマにゲートを繋いでくれ。そしたらラビッツで待機だ」
「了解ですわー」
そして流れる様にサードレマへと繋ぐゲートをエムルが開き、サンラクは単身で裏路地を駆けてルティアから受け取ったカードと、示されたNPCカフェ・蛇の林檎に赴く。
NPCが運営している、カフェ・蛇の林檎。
『裏通りのならず者達を受け入れており、PKerも店内で粗相を働かない限りは御咎め無し』という設定を持ち、ファステイア等の一部の街以外に存在し、店主が全員同じ顔という奇妙な店である。
シャングリラ・フロンティアは基本、称号【美食舌】を獲得しない限りは味が薄くなる様に設定されているが、蛇の林檎で注文可能な料理や飲み物は味を感じられる。
尤もペッパーやペンシルゴン曰く、『美食舌を取る前の甘味の場合は一部のオーダーを除いて、ケーキは砂糖の塊と同じ大雑把な味。酒やワインに至っては、御大層な名前を掲げているノンアルコール炭酸や、苦味と渋味を程良く加えた葡萄ジュース』なのだとか。
夜の時間帯に加え、裏路地には強面なNPCが出現する事も有り、プレイヤーは基本的に近付かないカフェにやって来たサンラクは、男性用の衣服を其の身に纏いながら店内に入ればNPCの視線が向くものの、衣服の下から放たれる『
「……いらっしゃい、御注文は?」
白髮でダンディーフェイスの店主が、硝子のコップを拭きながらに問い掛けて来る。サンラクはファステイアにて戦い、
故にこそ、彼は此処でイベントを起こすべく『ロールプレイ』を絡めた会話を仕掛ける。
「
ルティアから言われた合言葉を唱えた所、コップを拭いていた店主の手が止まる。そしてコップを静かに置き、彼はサンラクに問い掛けた。
「……ウチの
「
シャンフロ運営が作り上げた、『PK絶対殺すNPC』の強さや恐ろしさを骨身に染み込まされた戦いを思い出しつつ、サンラクはルティアから渡されたアイテム………『
「…………成程、確かに。其れではお客様。アップルパイが焼き上がるまで、あちらの個室でお待ちを」
「あいよ」
ほんの数秒の沈黙、しかし何事もなかったかのように紹介状を懐に仕舞い込んだ店主が、其の手で彼に個室の方向を示す。其れに従いつつも、脳刻傷によって衣服が弾け飛んで破壊される三分を、脳内タイマーで計測しながらに個室の扉の前に立つ。
「前に此処を使ったのは、
開いて一歩を踏み込めば、無意識のうちにバナナの皮を踏んで滑るコントじみた感覚。其れは直前まで維持していたバランスがリセットされた様な浮遊感。しかし幸いな事に足元には床があったので、彼は何とか踏ん張って転倒の阻止に成功した。
其れは普段から利用している、パートナーのヴォーパルバニー・エムルが使う、転移魔法と同じ物ながら随分と大雑把な物で。
「フフフ………いらっしゃい?」
少女と思うには低く、老婆と断ずるには張りのある女性の声。サンラクが顔を上げると、其処に居たのは貴族的な物とは違う、そこそこ良いドレスを纏ったキャバクラ系の店を仕切る、ボス感が漂う四十代くらいの女性が一人、テーブルを挟んで椅子に腰掛けている。
「…………夜分に済まんな。で、アップルパイは何時届くんだ?」
「……ウフフ、中々度胸が有るのね。良いワ、彼女───ルティアの招待に値する人物みたいね」
ニマァ………と、其れは其れは
「ようこそ、カフェ『彷徨う剣』へ………。貴方に『
同時にサンラクの前には、一つの画面が表示された。
『隠し
そして其の指先は、迷う事も無く【Yes】をタッチする。
いざ就職活動
習熟値と器用と技量
此のユニバースに置ける武器の習熟度合は、プレイヤーの職業以外に器用と技量も関係している。器用と技量のステータスが高い程、一戦一戦で長く武器を使う程に、武器の習熟値は比例して上昇していく。
三桁スキル『