担当者からの有難いオハナシ
「
「マジすか………」
「まじ」
硝子玉の瞳で見上げるビキニアーマーを纏った幼女、ティーアスちゃんを着せ替え隊がメインターゲットにしている、
と、パチパチパチ……と軽い拍手をしながら現れたのは、仇討人ギルドの女頭領。其の後ろには先程連れ去られようとしていた女性に、其の女性を連れ去らんとしてサンラクに蹴られて頬に痣が出来た大男の姿が。
「あ、さっきの………」
「えぇ、先振りねサンラク。此れはティーアスが言ったように『適性』を見極める為のモノ。人か、獣か……仇討人にも適性が有る。そして人は『瞬間的な二択』に置かれる事で、
彼女曰く、先程の場面は『モンスターに襲われる幼子の家族を取るか。路地裏に引き込まれる女性を取るか。目の前の女性を見逃せないと、意識から幼女の願いを外すのか。人同士の下らないイザコザと断じ、未だ見知らぬモンスターを見つめているのか』──────其処にこそ、仇討人の
「貴方は中々珍しい結果を見せてくれたわ……一方を選びながら、もう一方も視線を外していなかった。視野が広いのね?」
「知り合いが『其の手』を得意としてるんで。…………って事は、そちらの御二方も『関係者』って事で?」
「えぇ、ウチの『調査員』よ。殴られ役、よく出来ていたでしょう……?」
女頭領の言葉を噛み砕き、解り易くするならば『システムがプレイヤーの思考を読み取り、何方の事案を優先にしたのかを判定した』という事だろうか?蹴りに関しては其の気でやったが、結局彼女等の掌で踊らされてた………という事だ。
「割と会心の一撃だったけど、大丈夫か……?」
「本職の暗殺者相手に、死んだフリを成功させる『名役者』ですもの。心配はいらないわ。現にピンピンしているでしょう?」
暗殺者相手に死んだフリを成功させるという、字面に直すと凄い事をしている大男のNPCが、サンラクに見られた事に対して『サムズアップ』で反応する。生存特化の秘密とやらは気になるが、今は職業クエスト中である。此の後も何か有るとすれば、未だに気は抜けない。
「まぁいいや………本題に戻ろう。俺の適性とやらは、どんな結果になったんで?」
「……仇討人は大きく分けて『対人』か『対モンスター』、片方を専門として貰うのだけれど。貴方の視野や動きからすれば、どちらでも活躍してくれそうね?貴方の判断に任せるわ」
「ふむ………なら、俺は『モンスター』で行く」
対人戦に関しては他のゲームでも出来、そしてモンスターの方が実入りも良かったりする。其れがサンラクが対モンスターを選んだ理由でもある。
「……
「え? あっ、ういっす!」
対モンスターという報せを受け、ティーアスの案内で蛇の林檎に舞い戻り。魔法陣が在った部屋にて転移し、個室から店内へ、店内から外に出れば何故か『エイドルトの街に来ていた』。
アレ?サラッとやったけど、やってる事結構エグくない?と心の内にて呟いていれば、ティーアスに手を引かれて『
そして『幼女に手を引かれる男』という、あからさまに事案に成りかねない状況だったので、サンラクは青の聖杯で性別を女に変更し、服も着つつ彼女の案内で道を征く。
「
「倒して……ねぇ」
ビキニアーマーの幼女に引っ張られて街中を突っ切るという、下手したら通報させられる恐怖と戦い、サンラクとティーアスは去栄の残骸遺道の一角に来ていた。
そして彼女が指差す先には『さくらんぼの如く綺麗な球形状をした二体のゴーレム』であり、其の頭部には『アンテナと電気コードを融合させた様な物で繋ぎ』、更には『其々が足生やした見た目全振り』の存在と対峙する。
「
「あっち?」
彼女の指差す先を見れば、此方に向かって『何か』が猛烈な速度で走って来ている。其れは勢い其のままに目の前に居たゴーレムを、モンスタートラックに吹き飛ばされながらに宙を舞う一般車を思わせ。
そうして現れた『本命』らしきモンスター………と言うよりは、『全身から人間の腕を生やすイソギンチャク』と例えるべき、あまりにも醜悪な見た目をした存在だった。
「……
「せめて解説御願い出来ません………?」
アクションやRPGでも良く有る『バグやら仕様でスキップ不可能なムービー』が挟まる、RTA勢の天敵を相手した時の其れと同じく。ティーアスは大きな、其れはもう大きな溜息を付きつつも、簡潔に説明する。
「……
「一応聞くけど手助けとかは……」
「………
「
就職の為にもブッ飛ばす!
ブッ飛ばした(次いでに服も弾けた)。
「ぜぇ……!ぜぇ………!」
取り込んだ手の全部に掴み判定が有るの、お前マジで何なんだよとサンラクは思いたくなったが、毛玉みたいな腕と手の中に見えた『脚』の脛部分を集中的に叩いたり、斬り裂きまくっていればアイガイオなる人喰い毛玉は、漸く沈黙に至った。
「き、記録は………?」
「
良判定(まぁまぁ)、色々言いたい事は有るが多分其れをやったら、逆に『一分切り』させてドヤ顔されそうなので黙っておく。そしてアイガイオを構築するポリゴンが崩壊したのをトリガーとして、ティーアスはサンラクに仇討人の事を語り始めた。
「
要するに仇討人の仕事は原則として失敗は許されないし、何時呼び出されても良い様に準備は万全にしろ、というのだろう。
「
「……大事な事、ですか」
「そう」
彼女曰く『原則として仇討人には、頭領という元締めは居ても上下関係は存在しないので、身分としては皆同等で公平ある』らしい。だが人間や生き物には少なからず『上下関係』が無いと、其れは其れで不安になるという特徴がある。
詰る所──────ふんすと、ドヤ顔で踏ん反り返ったティーアスは、初めて自分に出来た後輩に対して『先輩風』を吹かせたいのだとか。
「
「付いていきます、
大兎は兄貴、幼女は先生と慕う。ゲームと言うのはフィクションから成る大義名分の元、制作陣側の色々な性癖が詰め込まれたキャラ達と交流を交わす。
ゲーマーという生物は、肌の色や性別に人種が隔絶していようとも、キャラパワーやスキルやらが優秀ならばパーティに歓迎する。其れが例えば宇宙人だろうがミジンコだろうが、関係無い些細な問題に過ぎないのだから。
一切の見縊りや侮りも無いサンラク渾身の五体投地を、ティーアスは御満悦な様子に成っていた事からも、随分と御気に召したらしい。ムフーと鼻息高らかに、彼女は裏カフェ『彷徨う剣』へ案内し、自身の一番好きな『特製りんごパフェ』を奢ってくれたのだ。
称号【美食舌】の影響も有ってか、林檎の甘酸っぱい香りやクリームの甘さ諸々も踏まえても、コレは中々に美味い。尤も、ルルイアスの魚介で刺身の盛り合わせを作ったティークの腕程では無い物の、此の手の類の料理は作れないか気になったので、サンラクはパフェをもう一杯頼んでスクショを撮ってから、ティーアスに感謝の意と共に渡した。
次いでにサバイバアル達にマウントを取る為、『ドヤ顔ティーアス先生』や『別の衣服を着たティーアス先生』等々のスクショも撮影していれば、
『隠し
『ジョブチェンジ!メイン
『
無事に就職出来た事を確認した後、サンラクはパフェを平らげて仇討人ギルドを後にし。其の脚で
聞く所によればペッパーが、何時も世話になっている兎御殿のヴォーパルバニー達に奢りたかったらしく、ビィラックやエルク達を初めとして数羽のヴォーパルバニーと共に、下町のラビッツカフェで『ラビッツパイやラビッツスペシャルパフェ等』を、御持ち帰りしたのだとか。
彼奴も彼奴で律儀なもんだと思いつつ、蛇の林檎で包んで貰ったアップルパイをサンラクは食し。途中でエムルが食べ比べしたいと言ったので、1ピース分残して彼女へと渡して食べ終えた後、セーブを行ってログアウトしたのだった。
余談だがサンラクが食べたアップルパイは、バターの香りと焼きリンゴの甘酸っぱさが絶妙にマッチした、今まで食べたアップルパイでは上位に入った事を記載しておく。
此処から始まる仇討生活