レベリングの時間
ラビッツカフェでの一時を終えて現地解散とし、エルク達がスペシャルラビッツパフェ等を兎御殿へと持ち帰り。現在ペッパー・アイトゥイル・ノワは、レベリングの為に
「やぁあああ!!」
『ガルァ!!』
『ブフォオオオ!?』
ハードラッグ・ライノの突撃を回避しつつ肉薄し、死角から片目を
理由は至ってシンプル………現状アイトゥイルがレベル97であり、後少しで三桁の領域へと上れる所まで来ている事。そしてリュカオーンの小さな分け身であるノワのレベルとステータスが、もしかしたらと翳した深淵のクターニッドの報酬が一つ、『深海の雫』を翳しても全く判らなかったので、今後を見据えての戦闘経験を積ませておきたいのだ。
そして今回のレベリングにペッパーは基本『参加』せず、迫ってくるモンスターの『厳選』を主な役割として担う。
彼の
つまり自動的に格上のモンスターのみが残る事になり、弱者故に強者に挑む事を心情とするヴォーパルバニー的にも、リュカオーンの分け身として何れは本体との決戦をする事になるだろうノワにとっても、如何にして戦うかを思考と策を巡らしながら、此の場に在る全てを利用して勝つ様な健かさを身に付けて欲しいと、彼はそう思っているのだから。
「今ッ!【
潰した片目に産まれた死角を縫い、アイトゥイルがハードラッグ・ライノの胴体をスライディングで滑り抜け、ノワが噛み千切った首筋へ渾身の風属性斬撃魔法を飛ばし、致命的と成っていた傷口に駄目押しを叩き着けた事で、爆走突撃犀の巨体は倒れ伏した事でポリゴンが崩壊。
何度か倒した事で確定ドロップだと判明した『ハードラッグ・ライノの表皮』、おそらく何かしらの用途に成るだろう『ハードラッグ・ライノの肉』が其の場に残る。
「アイトゥイル、ノワ、御疲れ様。少し休憩しよう、連戦だったろ?」
「………そうさね、休む事も立派な戦いなのさ」
『ガウル』
夜風が程好く吹き抜けて空にはポツポツと星が瞬く中、ペッパーはアイトゥイルにマナポーションを手渡し、ノワには若干の深皿に注いで差し出して。自身は周りにアンテナを張り巡らしつつ、Eメールアプリで時刻を確認すると午後九時半を回っていた。
(時間的にも、そろそろ午後十時軍が動き出しそうだな。良い所で切り上げつつ、今後はアイトゥイルの武器や防具、スキルに魔法の強化を行って。あぁ、ノワの身体に着ける衣服とかも手に入れるべきか………?)
サンラクが解き明かしたリュカオーンの分身、影狼が魔力で闇を固めて身体を構築している様に、ノワも周りの闇を集めて自身の部位を巨大化させる能力を獲得している。
仮に自身の身体を巨大化させる場合、纏っていた衣服が破れて弾け飛んでしまう可能性が非常に高く、作るとしたら伸縮性に富んだ物が好ましいだろう。
と、そんな中でノワとアイトゥイルの耳がピクリと反応し、ペッパーも首筋にピリッとした感触が伝わって。ペッパーが聖盾イーディスを、アイトゥイルが嵐薙刀・虎吼を取り、ノワがグルル………と喉を鳴らしながら、視線を瓦礫の山に向ければ。
「きゃわわ………!」
『『『『可愛い…………!!!!』』』』
だらしない笑顔で涎を垂らして、キラキラな瞳を向ける7クラン連盟所属のクラン:SF-Zooの園長と仲間達の姿有り。何故か『グラップラーな雰囲気を醸し出す』Animaliaと、四人の魔術師か呪術師、五人のタンクに五人のグラップラーから成る、合計十五人の大規模パーティーが此方を見ていたのだった。
「ペッパーさ、えっと………ペッパーちゃん?で良いのかしら?其の子がリュカオーンの分け身なのね?」
「まぁ、はい。あとスクショするなら、自分が許可してからで御願いしますね?」
「アイトゥイルちゃんと握手しても良いですか!?」
「一旦、肉を焼き終えてノワに食べさせるまで、少し待ってて下さいな」
AnimaliaやSF-Zooの質問に対応しながら、レベリングの過程で手に入れたハードラッグ・ライノの肉を
次に
木皿に盛り付けた事で、彼は『ハードラッグ・ライノのステーキ(レベル5)』完成させた。
「料理にもレベルの概念有るのね…………」
インベントリアに仕舞っていた魚の切身達を取り出し、投げナイフで刺身の厚さに切り分けながら、ペッパーは考えていた。リュカオーンの小さな分け身たるノワは、動物の肉を加熱しても食べられるか?自身が加熱調理した肉は、アバターに何か影響を与えるのか?という素朴な疑問を。
消費アイテムの投げナイフを二本取り、魚と肉用で使い分けつつも、其々の食材を適切な大きさに切り分けて、肉と魚の一切れずつは自分に、残りはノワとアイトゥイルへと渡した。
「いただきます」と一言、ナイフで口を切らないように慎重に口へ運んで喰らえば、ジューシーな味わいと共に程々に叩いた筋繊維が解けて、肉汁が口の中に広がり出す。
「まぁ、うん。良くも悪くも、ちょっと美味しい焼肉って感じかな?ノワ、御味は如何?」
咀嚼し飲み込み、ノワを見ればハードラッグ・ライノのステーキをガツガツと食しては、尻尾をブンブンと振りまくる姿が其処には在って。AnimaliaやSF-Zooの面々は人前では見せられない様な表情で、スクショ許可が下りる其の瞬間を今か今かと待ち侘びていた。
「…………………取り敢えず、フラッシュと音を切って静かに撮影してくださいな。あとノワは食事中なので、御静かに御願い致します」
ペッパーの言葉を受けた事で、SF-Zooの面々は一斉にスクショ機能を調整し直し。待ち侘び望み続けたリュカオーンの小さな分け身・ノワの撮影会を開幕させ、撮ったスクショで歓喜狂喜で乱舞する事となったのである。
尤も当のノワは、そんな彼等彼女等の事は気にも留めず。ペッパーが焼いてくれたハードラッグ・ライノのステーキを食べ終えて、口の周りに付いた肉汁を舌で器用に舐めて綺麗にし、飲料水と束子でフライパンと木皿を洗う
其の様子を見ていたアイトゥイルもまた、洗浄の様子を見ながら瓢箪水筒に入れた酒をぐびりと飲みつつ、彼の隣に凭れ掛かりながら夜空に浮かぶ月を眺めて。フライパンを洗い終え、インベントリに収納した後にノワやアイトゥイルの状態に気付いたペッパーは、慈愛の籠った眼と共に一匹と一羽を優しく頭を撫で始めたのだった。
生み出された光景たるやクターニッドの報酬の一つ、青の聖杯が齎した性別反転によって、女性の姿となったペッパーの容姿と装備により、正しく『月下美人』の言葉が似合う物と成り。AnimaliaとSF-Zooの面々も、其の光景に対して誰が指示した訳でも無く、自然とスクショの構えを取って撮影していたのだった。
そして此のスクショが切っ掛けとなって、旅狼に『新たな商機』がやって来る事になるのだが、其れはまた別の話になる。
黒は時として何物にも勝る
シャンフロに置ける料理の出来栄え
シャンフロではモンスターの肉や海鮮水棲のモンスター、食用野菜に調味料を用いて適切な調理を行う事で、完成時レベルが変動する。鍵になるのは技量と器用のステータス。
良い食材を使えば当然美味しくなる………という訳では無く、其の食材に応じた適切な下拵え・熟成度合・火加減や湯加減・調味料の量・調理環境等の様々な要因で、美味くも不味くもなる。
そして調理経験を重ねる事で、職業:料理人への転職が可能になる職業イベントが発生、一定以上の評価を出す事で就職出来、他の職に着く際にはプラス評価を獲得可能。