VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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一段落の後に




貴女を魅せる素敵な装い

「すいません。ノワに『衣服系のアクセサリー』を着せたいんですが、プレイヤーの中で最高の腕を持つアクセサリー職人を、SF-Zooは知っていますか?」

 

アイトゥイルを頭に、ノワを抱き抱えた状態でスクショをしているAnimalia達に対し、ペッパーは質問をしてきた。

 

「ノワちゃんに御洒落させるの!?」

「其れ賛成、絶対楽しい事になりそう!」

「あくまでもノワの身成………というよりは、戦闘とかでのダメージを抑えられる様にしたいので、軽装で有りつつも動きやすさに比重を置いた物が無いかなと」

「じゃあこんなのとかどうですか?ノワちゃん、見た目はシベリアンハスキーみたいなので、コレとかこういうデザインのドッグウェアが似合うと思いますよ」

 

ペッパーのオーダーを聞き、SF-Zoo組の五人のタンクの一人が写真を見せてくる。胴体と四肢を覆うタイプや上着タイプ、フード付きのレインコートタイプ等々、ペット用の衣装だけで多種多様な形状が存在すると、彼は初めて知ったのだ。

 

「スクショを撮っても良いですか?」

「はい、どうぞ」

「では」

 

気になった形状や動きやすさ、見た目が良い物を撮影していけば、此処でメンバーの一人にしてSF-Zooの副園長(サブリーダー)・ヴェットがAnimaliaに言った。

 

「園長、アクセサリーなら『彼女』が適任だったりしません?」

「………確かに。彼女なら此の手のアクセサリー作り、得意だった筈よね」

「彼女かぁ……確かに良い腕ですよね。色々『アレ』だけども……」

 

動物好きで変わり者のクランが『アレ』と言い切る、其のプレイヤー。果たして一体誰なのか?

 

「ペッパーさん。ノワちゃんのスクショに対する御礼と言っては何だけど、プレイヤー最高峰を自称していて実際に其の実力を証明した『アクセサリー職人のプレイヤー』。彼女の………『ラピス』が拠点としている場所を、報酬として教えるわ。補足しておくと彼女…………『宝石』に関しては、人一倍『飢えてる』のよ」

「…………詳しく教えていただけますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AnimaliaとSF-Zooから希少な情報を受け取り、スクショ大会は御開となって。一人と一羽と一匹がやって来たのは、サンラクがマブダチの家に通い詰める際の近所で、何時も御世話になっているエンハンス商会が本店を構え。そして考察クラン:ライブラリが本拠地として、腰を据えているシャンフロ第8の街・エイドルト。

 

水晶巣崖(すいしょうそうがい)』から漏れ出す水晶を定期的に採取する事によって、水晶加工業によって発展してきた此の街の一角に、とあるプレイヤーが賃貸している『建物』が在る。

 

「はぁ……………水晶巣崖、水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)、宝石達………はぁあ…………」

 

動き易さを重視しての盗賊姿をしている彼女は、幾度も溜息を付いては想いを馳せる者が居る。彼女は『ラピス』、シャングリラ・フロンティアの世界に置いての『アクセサリー製作』で、最高峰の腕を持つとされるアクセサリー職人の開拓者(プレイヤー)であり、同時に此の世界の開拓者の中で今現在『宝石匠(ジュエラー)』に最も近い女性である。

 

そして此の世界では珍しく、女性のアバターから女性の声を零す彼女の目下の悩みは、シャンフロ屈指の危険地帯・水晶巣崖で手に入る超高レアな宝石。其れが有れば自分は更に上のステージに到達出来ると確信しているからである。

 

だが彼女の前に立ち塞がった関門こそ、水晶の地雷原に潜む堅牢な水晶装甲に彩られ、僅かな振動を感知すれば矢継ぎ早に沸き出し顕れる蠍達。其の圧倒的な物量押し競饅頭に圧殺され続けた彼女は、其の後も様々な戦法を試せども水晶地帯と水晶群蠍によって阻まれ続け、未だに壁を越える事が出来ずにいたのだ。

 

今日はもうログアウトしようかな………そう思っていた彼女の耳に届いたのは、「ごめんくださーい」という力強さが含まれた女の声(・・・)。こんな時間に誰が来たのかと思いつつも、応対するべく「はーい」と返事をしながら扉の前まで行って、慎重に開けて顔を覗かせれば。

 

 

 

『黒装束にウェスタンハット被り、月光に照らされた男装麗人のイケメン女性NPC』が立っていたのだ。

 

 

 

「あ、えっと………どちら様、で?」

「実は此の付近にラピスさんの宿所が在ると、Animaliaさん達から聞きまして。あぁ、自分は『ペッパー』です」

「……………はい?いや、でもペッパーってあの『ペッパー』?……だけど男性(・・)じゃ?」

「まぁ色々有って女性の状態でして。其れと……コレが答えですかね」

 

そう言って頭上を指し示せば、確かにプレイヤーネームには『ペッパー』と有り。駄目押しに彼女(・・)が左手を胸部まで上げながら見せたのは、ラピス自身忘れもしない『ペッパーが使っている緋色の炎を纏う、親指にローエンアンヴァ琥珀晶が埋め込まれた革手袋』である。

 

「…………と、取り敢えず中へどうぞ」

「では、御邪魔させていただきます」

 

宿舎に招き入れ、テーブルと椅子が用意された個室に移動し、魔力水晶の光が灯った部屋にて二人は相対する。

 

「えっと、ペッパーさん。こんな夜遅くに、アクセサリー職人の私に何か……?」

「………………前置き無しの単刀直入に言います、ラピスさん。シャングリラ・フロンティア内で最高峰の腕を持つ貴女に、此の娘の──────『リュカオーンの分け身であるノワに、アクセサリーを作ってあげて欲しい』んです」

『ワン!!』

 

そう言ったペッパーの影が蠢き、彼の膝に乗っかりテーブルにひょっこりと姿を見せたのは、七つの最強種と呼ばれしユニークモンスターが一角・夜襲のリュカオーン………の仔犬の様な状態で。其れを見たラピスは、あまりの情報量に脳のキャパシティ処理が追い付かず、暫く唖然とした状態でフリーズする事となり。

 

「えっと………えっと、つまり?此のリュカオーン………えっと、ノワちゃんのアクセサリー?を作れば良いの、かしら………??」

「はい。其れにAnimaliaさん達によると、ラピスさんは『レア度の高い宝石を求めている』………とか」

 

そうしてペッパーは虚空から『とある物』を取り出し、ラピスの前に差し出して。其れを見た彼女はもう一度見返し、更にもう一度見返して自分で自分の頬を思いっ切り抓った。

 

「は?ラピステリア星晶体……?しかも凄く大きい……?」

「えぇ。此方は『一等星』で、依頼の『前金』として差し上げます。其れから──────」

 

そう言いつつ、ペッパーが次々と其れ等を取り出していけば、ラピスの目は飛び出さんばかりに見開かれ、顎が外れた様に開いた口が塞がらない。

 

「アムルシディアン・クォーツにクリスタブル乱砂。ローエンアンヴァ琥珀晶に加えて、アロンカレス瑠璃硬晶含めて鉱石や宝石等々………。貴女のアクセサリー職人としての腕に期待して、材料を御渡し致します。どうかノワに、一番良いアクセサリーを仕立てて下さい」

 

そうしてペッパーは深々と、ラピスに対して頭を下げる。

 

「…………顔を上げて、ペッパーさん。貴方の想い、必ず形にしてみせるわ………!」

 

ドンッと胸を張り、フレンド申請をしてきたので承認し。彼女は採寸用のメジャーを取り出しながら、ペッパーが御座りをさせたノワの首周りを始め、四肢に尻尾の長さに太さを調べてはメモに記載していく。

 

「フムフム………ノワちゃんの背丈や腕回りは『健康的』ね。ペッパーさん、御世話がちゃんと出来てるわ」

「光栄です」

『グルル♪』

 

ペッパーの足首に己の尻尾を巻き付け、フンスと鼻を鳴らしながらニッコリ笑っているノワ。まるで『私の見込んだ人は凄いでしょ?』と言わんばかりの、渾身のドヤ顔をしているかの様にアイトゥイルには見えたのだった。

 

そして採寸を一通り終え、ラピスは「三日以内に作り出すから待っていて頂戴」と言い残し、早速作業に取り掛かり。ペッパーはアイトゥイルをコートの中へ、ノワは影に擬態させつつ、一同はラビッツの兎御殿に帰還したのだった………。

 

 

 

 






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