VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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兎御殿に帰還して




ヴァッシュとポポンガからの報せ

「おぉ、ペッパー。ようやっと帰って来たけぇ」

 

エイドルトにてプレイヤー最高峰のアクセサリー職人・ラピスにノワのアクセサリー制作を依頼し、ラビッツの兎御殿に帰還したペッパー・アイトゥイル・ノワは帰って早々、腕組をしながら仁王立ちしていたビィラックに出迎えられた。

 

「ビィ姉さん、どうしたのさね?」

「どうもこうもない。ペッパー、オヤジがワリャを呼んどる。其れも『ポポンガ』殿も同席しとるんじゃ」

 

此の時点でもうヤバい予感しかしなかった。コレは完全にアレな流れだろう、ノワ絡みのそういう流れだとペッパーは冷や汗を滲ませつつ袖で拭い、ヴァイスアッシュと出逢った謁見の間たる部屋へと赴く。

 

「おぅ、ペッパー。帰って来たかァ」

「ホホホ、久しいのぉ~ペッパーよ」

「先生、御晩です。そしてポポンガさん、御久し振りで御座います」

 

声だけでチビリそうな空間だ。致命兎(ヴォーパルバニー)達の大頭にして、七つの最強種の中でも別格の力を有しているだろう、不滅のヴァイスアッシュが年代物の煙管を蒸し。

 

夕焼け色の球体に腰掛けて杖を握りながら、魔法だろう力で酒坏と徳利を浮かし、其れを味わう様にして飲む老ゴブリンのポポンガという、誰が見てもヤバいと本能で察せるレベルの状況である。

 

『クゥン♪』

 

そしてこんな状況にも関わらず、影の擬態を解除してペッパーに身体を擦り当ててくるノワは、相変わらずのマイペースっぷりが羨ましい限りだ。

 

「時にペッパーよ」

 

そんな折、話の口火を切ったのはポポンガであり。

 

「『星々の声』によれば、タコ助(・・・)の根城にてクロ助(・・・)を従えたと聞いたが………いや正確には、クロ助の方からお前さんの所にやって来たらしいの?」

「え、あっはい。まぁ………」

 

さらっとクターニッドをタコ助、リュカオーンをクロ助と呼び、其の真相を軽口で述べたポポンガに、ペッパーの額から更に冷や汗が滲み出る。まさかとは思うが、ポポンガもヴァイスアッシュに並び得る存在なのだろうか?

 

そんな中でポポンガは酒の手を止めるや、真剣な顔付きと共に要件を伝えてきたのだ。

 

「………ペッパーよ。『牛上国家(ぎゅうじょうこっか)ゴブリスタン』を治めし、ゴブリン達の王たる者『騎王ロノ・ドア』。及び『猫妖精(ケット・シー)の国キャッツェリア』を治めし、猫妖精達の王『ニャイ十三世』からヴァッシュに『夜の帝王の分け身を従えし、天覇の力纏う蒼空を舞う勇者殿との謁見をしたい』との打診が来たのじゃよ」

「…………本当ですか?」

「あぁ。ニャイはアラミースから、ロノはポポンガを通じて知った。近い内に『多種族大同盟』全てにも伝わるだろう……ノワに会いたいってぇのも、理由の一つなんだろうがな」

 

ゴブリスタンやキャッツェリアなる国が、此のゲームの何処に在るかは知らない物の、其々の国の長たる者達からの謁見要請ともなれば、そう遠く無い未来に他種族からも同様の物が来るだろう。

 

しかしながら此処で浮上したのは、レディアント・ソルレイアの装備ステータスの変更であり、レベル120以上を要求している為に一番にレベルキャップ解放を行わなくては、装備する事が出来ない状況だ。更には其のレベルキャップ解放も新大陸側に専用施設が在るので、其処に向かわなくてはならないのだ。

 

「先生、ポポンガさん。実は御伝えしなくてはいけない事が有りまして」

「言ってみな」

「ありがとうございます。先ず始めに──────」

 

そうしてペッパーはレディアント・ソルレイアがクラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)との戦の後に、装備要求ステータスに変化が起きた事。そして再び装備するには、レベルキャップ解放をやらなくてはならなくなった事を、ヴァイスアッシュとポポンガに伝えた。

 

「……………遂に、か。時が迫っている、という事じゃなヴァッシュよ」

「そうだなァ、いよいよぉ……()が動く時が来たァ。『黒き鳥の骸の地』をぉ……戦禍に巻き込みて、英傑を見んとする為に………」

 

ヴァイスアッシュが語る奴というワード、ワールドストーリーの第三段階、そしてユニークシナリオEX【打ち立てし誓い、交せし約束を果たす時】なるタイトルから察するに、次に開拓者(プレイヤー)達と相対する七つの最強種(ユニークモンスター)は、『天覇のジークヴルム』であると遠回しに説明された事を意味していたのだ。

 

「…………ともなれば、多種族大同盟にも伝えるべきかの?」

「参加するか否かは、其々の種族の判断に任せるとしようや。あの地には『開拓者達』が疎らにバラけている様だしなぁ」

 

そしてヴァイスアッシュは、閉じた右目を開きながらペッパーを見る。まるで『何かを調べる視線』で彼を見て、静かに立ち上がりながらに言う。

 

「ペッパー、お前さんが今の自分の()を破って、さらなる高みに到達したならァ。『クターニッドの雫』と『ゴルドゥニーネの毒の片手剣』、そして『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』をオイラんとこに持って来な」

「は、はい。解りました」

 

コレはフラグと見て良い。今でこそ聖剣みたいな見た目をしながらも、ユニークモンスターの絶技を再現可能にしているグランシャリオは、己の持つ武具達の中でも頭一つ抜けてヤバい存在だが、元を辿れば『致命の包丁(ヴォーパル·チョッパー)』から始まっている。

 

考えて見れば、兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】が象牙(ゾウゲ)兎月(トツキ)呑黒(どんこく)】に真化したのに、グランシャリオには無かったのは気掛かりでも在ったのだ。

 

もしかするとシステム的に強化制限(ロック)が掛かっていたのだろうか?と考えていれば、ポポンガは夕焼け色の球体に乗りながら、ヴァイスアッシュに言ったのだ。

 

「フム………ならば儂も少し、力添えをしてやらねばの。ヴァッシュよ、ペッパーとアイトゥイルにノワを『ゴブリスタンとキャッツェリア』に責任を以て送り届け、ラビッツまで帰すが良いか?」

「おぅ、任せるぜぇ。ポポンガ」

「うむ、解ったわい。ではちょっくら……──────」

 

そう言いつつ、ポポンガは兎御殿の天井を見上げながらに、まるで電話(・・)をするかの様に呟き始め。数分程話をした後、また天井を見上げて話していき。

 

「──────よし、ペッパー。アイトゥイル。ノワ。三十分後に儂が【座標移動門(テレポートゲート)】で、ゴブリスタンとキャッツェリアに送ってあげよう」

 

さらっとまた、とんでもない事を言い切ったのだ。

 

「あ、あの………ポポンガさん。因みにですけど、ゴブリスタンとキャッツェリアって『何処』に在るんでしょうか…………?あと、座標移動門って………?」

新大陸(・・・)じゃが?あと、座標移動門は開拓者に理解り易く言うなれば………『儂が一度でも行った場所に何処からでも飛べる様に成る魔法』じゃな」

「……………ファストトラベルじゃないですかヤダー」

 

やっぱり此の老ゴブリン、見方を変えたらユニークモンスターなのでは?と、そう思わざるを得なくなってしまったペッパーは、取り敢えずポポンガの用意した夜行便に乗り込む準備をするべく、三十分以内で事を終わらせる為に先ずはキュルアの店に行き、有用な使い捨て魔法媒体(マジックスクロール)を複数購入し。

 

そして休憩室に移動後、アイトゥイルにエイドルトへのゲート開いて貰いつつ、ノワと共に御留守番させて行動を開始したのであった………。

 

 

 

 

 






新大陸行の夜行便

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