VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ポポンガ夜行便(ラビッツ発キャッツェリア行)

「よっし、着いた」

 

水晶巣崖(すいしょうそうがい)。シャンフロ旧大陸(・・・)屈指の見映えする地獄地帯(スポット)にして、とある開拓者(・・・)にとっての金策源として知られる此の地に今宵、一人の開拓者──────最大高度(スカイホルダー)の『ペッパー』が単身で訪問しに来ていた。

 

彼女()はエイドルトに本店を構えるシャンフロ三大NPC商会の一つ『エンハンス商会』にて、ポーション等の回復アイテムや日用雑貨を含めた買い物を行い、クターニッドの聖杯による性別反転をデスポーンによる解除の為、此処にやって来たのである。

 

(ダルニャータさんには御世話になっているし、感謝の気持ちも込めて『やってみたい事』も有るからね。残り時間は十分ちょっと…………なら『一分』でケリを付ける!!)

 

此れ迄に培い、習得してきた強化(バフ)スキル達を全解放し、両脚に纏うは撃鬼覇貫脚(グラシアス・ガウルト)。ミルキーウェイと共に水晶地帯の空中を猛ダッシュしつつ、見付け出すは鉱石や宝石が積み重なった『全高30mは有ろう柱状の採掘ポイント』。

 

(バフ全開、速度良し、やるなら迅速かつ、確実に行くべし!)

 

ダッシュスキルを開放し、漆黒の流星となったペッパーは破戒神の舞脚(カルナダーハ・シヴァ)巨人兵の大厳撃覇(ジャイアント・インパクト)、キック・バスターに加え、駄目押しとばかりに戦砕琥示(ウォールフェン)を使用。

 

ドロップキックの要領で爪先蹴りを『威力重視』で放ち、まるで突撃槍の如く柱状の採掘ポイントの根本へと突貫。激突と衝撃が水晶巣崖に木霊し、ボコン!といった音が鳴って。

 

柱状の採掘ポイントがパックリ(・・・・)と減し折れたと同時、付近に擬態潜伏状態に有った此の地域の住人達たる『水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)』が、同時に十数匹目覚めて(アクティブ)してペッパーに襲い掛かった。

 

「殺られる前にッ!速攻回収ッッッ!」

 

空中跳躍でブレーキを掛け、バーに弾かれ盤上をカッ飛ぶピンボールめいた挙動で採掘柱を掴み、左手首に在る格納鍵(かくのうけん)インベントリアへと籠脚共々回収した直後、ペッパーは突撃してきた綺羅美やかなる蠍達が織り成す、殺意の津波に呑み込まれて死んだのである。

 

そして彼は死の間際に考えた…………あれ、水晶群蠍や其の変異体の金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)に、採掘用アイテムのピッケルによる攻撃は効くのだろうか?──────と。

 

 

 

 

「あ、ペッパーはん。戻ったのさね」

『ワン!』

「ただいま、アイトゥイル。ノワ。後五分だからセーブして………よし、行こう!!」

 

蠍達に感謝をしつつ、男の姿へ戻った上で休憩所を飛び出し。謁見の間の襖の前に立ち「失礼致します」と述べて開けば、ヴァイスアッシュの姿は無かったが、ポポンガの姿が在る。彼の周囲には光の円が出来ており、どうやら此れがファストトラベルを行える【座標移動門(テレポートゲート)】のようだ。

 

「ホホホ、ペッパーにアイトゥイル、そしてノワよ。準備は出来たかの?」

「勿論です」

「ワイも準備万端なのさ」

『ワン!』

「うむ、どうやら備えは出来たみたいじゃの」

 

近う寄れと手招きするポポンガに従って、一人と一羽と一匹は円の中へと入る。

 

「其れじゃ行くぞい──────【座標移動門(テレポートゲート)】」

 

老ゴブリンにして数多の叡智を修めた極星大賢者(スターラウズ)のポポンガが放つファストトラベルが、開拓者と致命兎に夜の帝王の分け身達を包み込み──────兎御殿の謁見の間より一人と一羽と二匹の姿を、光と共に跡形も無く消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫妖精(ケット・シー)の国・キャッツェリア。其の国の国王『ニャイ十三世』からの謁見要請を受け、ポポンガの座標移動門を用いてラビッツからキャッツェリアへとやって来た、ペッパー達一同の目に最初に飛び込んできたのは。

 

赤々と燃える巨大な火山をバックする峡谷に、表面の石を切り出して整地した道路や階段から成る街並みが広がり、木材等で住居を補強した様な、ある意味『マテーラの洞窟住居』に近しい形状だった。

 

加えて街の至る所に石を切り出し、加工して造っただろう『巨大な猫の石像』が峡谷に刻まれる様にして置かれたり、街のシンボルとして鎮座し、そして其の奥にはヨーロピアンな大きな城が一つ在る。

 

そして現在ペッパー・アイトゥイル・ポポンガ・ノワは、キャッツェリアの巨大な正門と思われる物の前に転移したのだが──────

 

「まぁ…………うん、そうなるよね」

 

門番として警備していたケット・シーの兵士達が、小さな夜の帝王たる夜襲のリュカオーンと、其の帝王の強い気配を纏うペッパーに対し、ビビり散らして慌てふためき、カンカンカンカン!!と備え付けられた警鐘を鳴らした事により、国中が大混乱になる。

 

そしてポポンガが状況説明の為に浮遊魔法を使って、彼等彼女等含む王族達に事情を説明する光景を、ペッパーは非常に遠い目をしながら、尻尾を足首に巻き付けて身体を擦り付けるノワを見つつ、身を屈めて彼女に説く様に言ったのだ。

 

「ノワ、君は影に擬態して大人しくして欲しい。もし国王様や国民に手を出したら、先生は大激怒するだろうし、俺も物凄く怒る事になる………だから良い子に出来るかな?」

『ワゥル!』

 

ノワの手綱を確りと握らなくては、ラビッツから追い出されてしまうのは目に見えている所か、最悪の場合はヴァイスアッシュの手で『ケジメ』を付けられて、キャラロスト(・・・・・・)の未来。更に考えたくは無いのだが、シャンフロ的に見ても『プレイヤー全員との敵対』等という、正直一番成りたくないルートに突入し得る可能性すらも在るだろう。

 

「ペッパーよ、戻ったぞい」

「ペッパー殿!ペッパー殿!!『見張りの者達が夜の帝王と其の気配を纏う黒の者が、ポポンガ様と共に現れた!』と伝令を受けて飛んで来たが、やはり貴方だったか!そして黒き乙女の妹君もまた、御変わり無い様で何よりだ!」

 

と、そんな状況でポポンガと共にやって来たのは長靴騎士団副団長にして、吹き荒ぶ旋風(ワイルドウィンド)の異名を掲げし猫妖精のアラミースだった。

 

「アラミースさん、御久し振りです」

「久し振りなのさ、アラミースはん」

「すまんな、アラミースよ。突如の訪問をしての」

「………ポポンガ殿は国王陛下に直接謁見(・・・・)出来る、数少ない御方です故………。長靴騎士団団長の『トレーヴィル』殿も控えておりますが、蒼空を舞う勇者のペッパー殿と直接会うのは国王様含めて、私以外『初めて』なのです」

 

アラミースが指をパチンと高らかに鳴らせば、門は開かれて。彼の案内の元、ペッパー・影にノワが擬態・アイトゥイル・ポポンガは門を潜り抜け、キャッツェリアへと足を踏み入れる。

 

案内の途中で周りを見れば、やはりノワの気配やリュカオーンの愛呪の放つ威圧に当てられて、皆住居の中へと引っ込んでしまった。

 

「まぁ、うん……そうなるよね」

「皆、良い者達なので大目に見て頂ければ幸いです。城まで御案内致します」

 

アラミースが案内し、一向はキャッツェリアの国王が住まう王城へ向かって進むのだった………。

 

 

 

 






やって来ました、猫の王国


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