謁見しよう
「あからさまに避けられてますねコレ………」
「まぁ、無理も無いな。何せ御主は『墓守の御人と深淵の盟主を超え、かの夜の帝王より寵愛を賜りし、蒼空を舞う勇者』じゃからのぉ………ホホホ」
「其れに風の噂で聞く所によれば、
アラミースが言う『開拓者同士の大戦』とは、先ず間違い無くクラン:
顔を出しては引っ込める猫の住民達、其れでも一部の猫達に関しては此方に視線を向けていたり、離れた場所から観察でもするかの様に付いて来ている。
「…………アラミースさん。何やら気配を感じますが?」
「我等の同胞の中でも恐れ知らずというか、好奇心が旺盛な者達である故。まぁ夜の帝王の寵愛を受けた者に、何の考えも無しに手を出せばどうなるか…………。其れくらいは理解していると思いますから」
『好奇心は猫を殺す』との諺が在るので、程々にして自分を労わって欲しいと願いながらに、一向は街を進んでいく。そして歩いて数十分、夜十一時に差し掛かる頃に辿り着いたのは、門からも見えていたキャッツェリアの城。
おそらく此処に『キャッツェリア現国王・ニャイ十三世』が待っているのだろう。そして近くで城を見た事と、キャッツェリアの住居の特性を見た事で、ペッパーは此の城の『本当の姿』を確信する。
「成程………此の城は『峡谷を掘って』、内部に機能の大半が入った『天然の要塞』みたいな物なのか」
「…………素晴らしいな、ペッパー殿。一目で我等の国の城の真なる姿、其れを看破してみせるとは」
「別の
建国する場所は常に地形や環境、敵からの襲撃等を加味して創るのが鉄則だ。峡谷に建てた国は外敵等の侵入を逸早く察知出来るし、何より攻め込まれても穴を掘っておけば、天然の迷路にする事だって可能。
尤もそんな天然要塞でさえも、ゲリラ豪雨→土砂崩れ→国崩壊という自然界のコンボ攻撃には滅法弱い為、こういうタイプは雨が其処まで降らない『乾燥地帯』でやるのがオススメである。
「
ピシッとした言葉遣いでアラミースが叫べば、門番の兵士達も構えて左右に分かれ、同時に城門も開かれる。門の前に在る階段を登り門を潜れば、城の中には松明による明るさが満ち、アラミースからメイド服を着た猫妖精達が引き継ぎ案内にて、一同は客室の一つへと招かれた。
部屋には中世木製チックなテーブルやソファー、戸棚等の家具が御出迎えし、他の猫妖精のメイドが人数分のカップと犬用の容器を運んで来て、其の中にはドリンクが入っており。ペッパーが軽く会釈をすれば、メイド達はサササッと退出したが、外からヒョコっと耳を出したりして中の様子を覗っている。
ノワも影から出て来て、器に満たされているドリンクをペロペロと舐めて味わい、ペッパー達もゆっくりと飲んで喉の渇きを癒しながら、待つ事およそ十分。アラミースが戻って来て『国王陛下との謁見の準備が整いました』と告げたのである。
「アイトゥイル、ノワ。今から俺達が謁見するのは、此の国の一番偉い御方になる。呉れ呉れも粗相をしない様にして欲しい」
「はいさ」
『ワンッ』
アイトゥイルを肩へ、ノワを自身の影へ擬態させ、ポポンガはシャボン玉らしき魔力の玉に乗りながら、アラミースの案内で城内を進み、一際大きな鉄扉の前………王の部屋だろう一室に辿り着く。
彼はアラミースが扉をノックするタイミングで、
「極星大賢者のポポンガ殿、蒼空を舞う勇者のペッパー殿、ヴァイスアッシュ殿の御息女アイトゥイル殿、そして夜の帝王の分け身たるノワ殿の入室になりますッ!!」
鉄扉が開かれ、ペッパーが「失礼致します」と一礼した後、アラミースに続く形で部屋の中へ………王の間たる部屋と足を踏み入れた。
其処には『招き猫の石像』が等間隔で羅列し、其の間には松明の灯りが灯りながら室内の暗闇を照らす、ある意味『エジプト王朝の王の間に等しい場所』で。床は大理石で造っただろう、しっとりとした黒の艶やかなる石畳で舗装され、厳格にして絶対なる権力を象徴する王座もまた、同様に美しく。
其の大理石の玉座には招き猫の様な横幅を持つ、頭に黄金に輝く小判型の王冠を戴きし、中世時代の王国の長が身に着ける衣装を纏った、白毛の猫妖精が背筋を伸ばして座り、王とは如何なる者と体現するかの様に在り。
隣にはアラミースと同じデザインで色違いの衣服と長靴に帽子を被りながら、金色の身体から放たれる威圧感はアラミースの完全上位互換と言うに相応しい三毛の猫妖精。そして離れた場所の柱に寄り掛かる『赤毛のポンパドールの暴走族の頭を張る衣服を纏う、黒い体毛のヴォーパルバニー』が一羽、此方をジッ………と見つめていた。
(あの白毛の猫妖精がニャイ十三世で、三毛の猫妖精は多分『此の国で一番強い人』、おそらく『長靴騎士団団長』なんだろう………。で、あのヴォーパルバニーは先生の御子息なのか?)
自身が置かれている立場とノワの存在を含めて、ペッパーは気を引き締め直しつつ、ポポンガの移動に合わせてアイトゥイルを肩から下ろし、一歩一歩静かに歩いて帽子を外す。アイトゥイルも唐傘を外し、ポポンガもまた同じ様に魔力の玉より降り、杖を利き手とは逆の位置に置く。
そして王族に謁見する騎士の如く、頭を垂れて自己紹介をといった所で「ペッパー殿、待ってくれ」と三毛猫妖精が声を掛けてきたのだ。
「ペッパー殿。我々から先に自己紹介をさせていただきたい、其れが我々の礼儀で有るが故」
「は、はい……」
コホンと一拍置いて、三毛猫妖精はキリッとした視線にシャキッとした姿勢の下、己と己が仕える者の紹介を行う。
「今宵はポポンガ殿と共にラビッツより御足労いただき、感謝を申し上げる。吾輩は『トレーヴィル』、キャッツェリア長靴騎士団の団長にして『
「初めましてニャ、ペッパー殿。我はキャッツェリア現国王『ニャイ十三世』ニャ、よろしくニャ」
キャッツェリアの騎士団長、そして国王陛下の自己紹介。ペッパーもまた、彼等に対し己の名を述べる。
「御初に御目に掛かります。トレーヴィルさん、そしてニャイ十三世国王陛下。私はペッパー…………」
七つの最強種が一角・墓守のウェザエモンより襲名せし、其の名を述べれば。頭上に掲げたプレイヤーネームが、今此の瞬間を以て『書き換わった』。
其れは彼自身の『覚悟』であり、猫妖精の国の国王へと示す己の『誠意』でもあったのだから。
受け継いだ其の名を