VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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真名を述べて




猫と勇者の交わり

「御初に御目に掛かります。トレーヴィルさん、そしてニャイ十三世国王陛下。私はペッパー…………ペッパー・天津気(アマツキ)です」

 

旅狼(ヴォルフガング)所属のクランメンバー、そしてヴァイスアッシュ以外には誰にも明かしていない、己が襲名せし『天津気』の名を含んでの自己紹介。

 

まるで真名(・・)を述べる様に行い、深々と頭を下げたペッパーに対して、アラミースにトレーヴィル、そしてニャイ十三世は目を丸くし、寄り掛かりながら様子を見ているヴォーパルバニーが、耳をピクリと動かす。

 

「………ペッパー殿、すまぬが『天津気』というのは如何なる物なのか、教えてはいただけニャいか?」

「解りました」

 

ニャイ十三世の問い掛けに対し、ペッパーは真摯に答えていく。自身が天津気を襲名するに至った経緯を一つ一つ、雁字搦めに絡まった糸の玉を解し、真っ直ぐに調え直す様に。

 

「私が天津気の名を戴くに至ったのは、慈愛の聖女 イリステラ様との出会いが切っ掛けでした。彼女は私が『嘗て人が蒼空を舞う答えを世界に示した逸品』を持っている事を予知し、此の大陸とは海を挟んだ先に在る大陸の王都・ニーネスヒルにて待っていました。

彼女に蒼空を舞う答えにして、天覇のジークヴルムさんを模倣した一式装備・光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)を纏い、見せた事によって右手に付いたリュカオーンの呪い(マーキング)を解除出来る機会をいただきましたが、私はリュカオーンとの誓いを果たす為に其の申し出を断ったのです」

 

己が歩んできた道程を振り返る様に、彼はニャイ十三世達に語っていく。

 

「イリステラ様は私の答えを聞いた後、サードレマと呼ばれる街を治める大公様の下へ向かう様にと、私に言伝を御与え下さりました。

そして其の言葉の通りに向かい、大公様にも一式装備を装着して其の力を示した事により、歴代大公が代々継承し続けてきた物………墓守のウェザエモンが嘗て纏い用いた伝説の戦鎧・悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)を託されました」

 

証拠としてインベントリアを操作し、実物を取り出して其の身に纏い、自らが経験・体験した事を包み隠す事無く伝えるペッパーは、墓守のウェザエモンとの決戦をニャイ十三世とトレーヴィル、そしてアラミースに話す。

 

「墓守のウェザエモンさんとの戦いは、私を含めて五人の仲間達と共に挑みました。皆、ウェザエモンさんの恐るべき御業の数々に幾度も死を経験し、されど互いに再誕の涙珠を用いて再起し、あらゆる手立てを行使して最強の武人に食らい付き。

発動された最後の晴天大征と最終奥義たる天晴を、私は破天光を以て其の絶撃たる刃を押さえ、仲間達と共に跳ね返したのです」

 

此処がクライマックスだ、此の流れのまま一気に決めきる。

 

「墓守の御人たる、墓守のウェザエモン…………ウェザエモン・天津気さんから、私達は『晴天転じて我が窮極の一撃、天晴。言葉は移りて祝へ転ずる………天晴である』と御誉めの言葉を賜り。

そして私は彼の魂たる刀と共に、彼の名たる天津気を襲名致しました。そして彼の魂たる刀は私の先生………ヴァイスアッシュさんが致命の包丁を真化させ、私の為の剣たる『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』へと姿を変えたのであります。──────長時間の御清聴、誠にありがとうございました」

 

ペッパーが証拠として、星皇剣グランシャリオを取り出し見せた後に、深々と頭を下げて一式装備をインベントリアに収納すれば、ニャイ十三世とトレーヴィルにアラミースは唖然としていて。暫しの間を置いた事により、落ち着きを取り戻したのか、白猫妖精の国王は言葉を紡いだのだ。

 

「………ヴァイスアッシュ殿やポポンガ殿、そしてアラミースから貴方の事は聞いていた、聞いていたニャが………。夜の帝王より寵愛を賜り、其の小さな分け身をも従えた上に、墓守の御人より名を託されていたとはニャ………」

「にわかには信じ難いが………だがアラミースが言い切ったのは事実でもある。そうだな、アラミースよ?」

「長靴騎士団の副団長の名に掛け、偽りの無いと約束致します。団長、そして国王陛下」

 

ウムム………と言わんばかりの表情をする、ニャイ十三世とトレーヴィルはアラミースに問い。アラミースもまた力強く頷いた。

 

「………ではペッパー殿。本題の『リュカオーンの分け身』は、今貴方の下には居るのかニャ?」

 

小さくとも夜の帝王ともなれば、国王として国としての対応を示さなくてはならない。ニャイ十三世の視線と纏うオーラが変わる、其れは一国を背負う者としての責務を果たさんとする者の眼だ。

 

ならば此方も、猫妖精の国に示さなくてはいけない。夜襲のリュカオーンの小さな分け身の、ノワの手綱を己が確りと握る事を。

 

「ノワ。影の擬態を解除して、出て来てくれ」

『ワンッ』

 

そうペッパーが一言述べれば、彼の影が動いて揺らぎ小さなリュカオーンが此の場に顕現。ペッパーはノワを優しく撫でて、自身の右手に刻み付いた赤い刻印を見せながら、説明をし始めた。

 

「ノワは私の右手に刻まれた『呪い』が進化し、其の証が『寵愛』に変化を遂げた『リュカオーンの愛呪』の権能(チカラ)によって、私の下にやって来ました。

其れも深淵の盟主………『深淵のクターニッド』が根城としている海底都市──────『反転都市ルルイアス』にまで。そして私はアイトゥイルと仲間達、そしてノワと共に深淵のクターニッドさんの試練を乗り越えたのです」

 

ペッパーに寄り添いながら、ノワは彼の片方の足首に己の尻尾をクルリと巻き。小さな身体を擦り当てる姿を見せ付けた事で、ニャイ十三世・トレーヴィル・アラミース・ポンパドールのヴォーパルバニーは、一目見て『信じられん』と言った表情で此方を見ている。

 

しかしながらペッパーが話してきた事は全て事実からなる物であり、アラミースから既に事情を聞いていたニャイ十三世とトレーヴィルは、其れが『真実』からなるものであったと信じるに至ったのだ。

 

「ノワについては先生………ヴァイスアッシュさんからも『特例中の特例』として、ラビッツの敷居を跨ぐ事を許可されています。そして先生は『ノワの手綱を私が確り握っておけ』と忠告しました。

もし万が一にも──────ノワがキャッツェリアの方々に被害を与えたならば、其の時は私が自らノワに手を下し、己の命を以て『ケジメ』を付ける所存です」

 

ペッパーの決意と覚悟の視線が、真っ直ぐにニャイ十三世に注がれている。そして彼の決意と覚悟は──────猫妖精の国王の()に『届き』。そして答えを引き出させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………墓守の御人の名を襲名し、深淵の盟主を越え、夜の帝王の寵愛を其の身に受けた、蒼空を舞う勇者のペッパー殿。我等キャッツェリアは『貴方とノワ、アイトゥイル殿を受け入れる』ニャ。此の国に在る空家を一つ、貴方に貸し与えるニャ」

 

 

 

其れ即ち、ペッパー達一同は猫妖精の国の王より、此の国(キャッツェリア)での活動拠点を与えられた事を意味する物であった。

 

「国王陛下の御心遣い、深く感謝致します。そしてダルニャータさんとキャッツェリアへの感謝と致しまして、此方を差し上げます。どうぞ、御心のままに御使い下さい」

 

そう述べてインベントリアを操作し、水晶巣崖(すいしょうそうがい)にて蹴り折って採取した、採掘ポイントの柱…………もっと言うならば『全長30mに迫る宝石塔』を顕現させながら、そう言ったのである。

 

 

 

 






勝ち得た信頼


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