VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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謁見を終えて




ヤンキーウサギのおにーちゃん

キャッツェリア現国王・ニャイ十三世との謁見を終え、活動拠点を賜ったペッパー達はメイド姿の猫妖精(ケット・シー)に案内されて、客室に戻って来ていた。

 

「き、緊張して疲れた…………」

「ワイもなのさ………」

『グルゥ………』

「お疲れじゃのぉ、ペッパーよ」

 

十一時付近に城へ到着・国王に詳しい話をして、後少しで日付も変わるといった時間帯。此の後に空家への案内+ゴブリンの国へと赴いて国王と謁見、そしてラビッツまで戻る事を踏まえたならば、ログアウトは深夜帯以上になるのは目に見えて明らかだ。

 

「まぁ、深夜行軍も覚悟の上って事で………よし、切り替え完了っと。ポポンガさん、座標移動門(テレポートゲート)構築にはどれくらい時間が掛かりますか?」

「五分貰えれば、何処へでも行けるぞい」

「ありがとうございます。一先ず空家に行ってからですね、案内役は………」

 

「ソイツは『猫の旦那』から任されたオレがやるゼ」と、聞いただけで解るヤンキー(・・・・)な声色をしていて。客室に入ってきたのは、ニャイ十三世とトレーヴィルを直ぐにでも守れる位置の柱に寄り掛かっていた、暴走族衣装を纏った赤毛のポンパドールの黒体毛のヴォーパルバニーだった。

 

「イー兄さん!」

「フホホ、久しいのイーヴェルよ」

「おぅおぅ、アイトゥイル。彼方此方(あちこち)ブラブラしてたんが、()い奴に巡り会えたみてェじゃねぇか。其れにポポンガの旦那も、相変わらず元気そうだなァ」

 

絵に描いた様な『ヤンキーの兄貴に懐く妹』な空間が構築されている。そんな中、ペッパーは自分の記憶の海からイーの名前をサルベージし、エードワードやヴァイスアッシュが放った言葉に、アイトゥイルの会話を思い出して其の存在に辿り着いた。

 

「イー………もしかして貴方が、先生やエードワードさんが言っていた『イーヴェル』さんですか?」

「ほぉ?ペッパー、オメェどうやらオレん事知ってる『クチ』みてェだな?」

「えぇ………アイトゥイルとの晩酌に付き合っている時や、ゴルドゥニーネからラビッツ防衛戦の説明時に、エードワードさんや先生から貴方の名前を聞きました。アイトゥイルによれば、何でも先生の御家族の中で『単純な戦闘能力に関して最も秀でている』…………とも」

 

そう、ヴァイスアッシュの直系家族の中で、今現在『最も高いレベル』に居るのが、何を隠そう目の前に居る『イーヴェル』其の兎なのだ。即ち何らかの理由によって、レベルアップに制限(ロック)が掛かっているエードワードやビィラック、シークルゥを押さえてのレベル100以上の領域に居るという事を意味している。

 

其の上アイトゥイルはどうにも、イーヴェルの事を『格好良い』と口にしており、今はキャッツェリアで傭兵をして居るから、何時かまた会えたら良いなと言っていたのだ。そんな中でイーヴェルはペッパーをジッ………と、ニャイ十三世が近くに居た時の視線とは『異なる』物で、彼を見詰めて言った。

 

「リュカオーンの分け身への対応、テメェの『覚悟』と『決意』はオレが見届けた。もしテメェの不手際でノワが多種族大同盟に牙ァ剥きやがったら。オレがテメェの()()()()()()()付けさせに飛んで来てやる。無論、アイん事を『泣かせた時も同じく』………な」

 

イーヴェルの視線とガンの飛ばし方が、何故か『サンラク』と重なって見えたペッパー。ペッパーに喧嘩を吹っ掛けたと感じたノワは、ヤンキーウサギに対してグルルッ……!と威嚇をするも、何処吹く風と気にも止めずにペッパーを見詰め続け。

 

「イーヴェルさん。俺はノワの手綱を握る者としての責務を。同時にアイトゥイルの相棒として、彼女のゴルドゥニーネへの復讐を果たす為に、俺は己が成すべき事を必ず成します。もし俺が道を間違え………ノワが災害を撒き散らし、アイトゥイルを泣かせたならば──────其の時は貴方に介錯を御願い致します」

 

ペッパーもまたノワを従える者として、アイトゥイルの相棒として、己の覚悟を改めて述べて言葉と共に彼へと示す。暫くの沈黙の果て、イーヴェルはペッパーにクイッと手招きし。

 

彼は身を屈めて視線を合わせれば、ヤンキーウサギは勇者の肩に手を置きながら「アイのこたァ、よろしく頼むゼ」と述べた後、「空家に案内する。付いてきな」と背を向けて一同を案内し始める。

 

当然ながらノワはイーヴェルにグルル……!と低い唸り声で威嚇を掛けつつ、ペッパーの脚に身体を擦り当て。アイトゥイルはペッパーの背に乗りつつも、左肩を掴む手が以前よりも少なからず増し。ポポンガは一羽と一匹の変化に、若き青春を微笑ましく思い。

 

ペッパーはアイトゥイルとノワを落ち着かせるべく、其々の頭を優しく撫でながら、自分に対する感情の矢印がまた重くなったと、非常に困った顔をしながら頭を擡げたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イーヴェルの案内でキャッツェリアの城を出て、やって来たのは国の中でも高い場所に位置する、洞窟住居の一つ。住居内部は広々とした間取りに加え、通気性と日照位置的な観点から見ても、此の国の中でも『最高な場所』だった。

 

「此れはまた凄い所を賜りましたね………」

「そりゃあそうさ。ネコの旦那曰く『ペッパーはラビッツとの繋がりに加えて、夜の帝王の分け身を従えた者であり、与える住居も当然ながら相応の立地と環境が相応しい』ってたからなァ。何時だって為政者(アタマ)って奴ァ『そういうとこ』で決めるってェもんなのさ」

 

家具等は無いものの、エンハンス商会で購入すればコーディネートくらいは出来る。ゲームでもよく有るが、こういう秘密基地や別荘的な物の整地は、プレイヤーの美的感覚やセンスが物を言う。

 

其の場所に『また来たいな』や『此処で過ごせたなら快適だな』と、心から思える様にしなくては幾ら家を与えられようが、其れは宝の持ち腐れになるのだから。

 

「ペッパーにアイ、其れにポポンガの旦那とノワは此れから何処に向かうつもりだい?」

「此の後は『牛上国家ゴブリスタン』に。其処で『騎王ロノ・ドア』と謁見をして、其れからラビッツへと戻る予定ですね。後はまた此処に来れる様に、ランドマークを更新しておきます」

 

ポポンガが座標移動門(テレポートゲート)の準備に取り掛かる中、ペッパーはランドマークを更新してアイトゥイルのゲートで、ラビッツや旧大陸の街に王都、そしてキャッツェリアへの移動を可能にした。

 

そしてポポンガの座標移動門完成を待つ間、リフォームの計画等を立てて五分が過ぎた頃。ラビッツの謁見の間にて見た、極星大賢者(スターラウズ)のファストトラベルの魔法が再び顕現する。

 

「ペッパーよ、座標移動門の準備完了じゃ」

「イーヴェルさん、キャッツェリアに寄る時が来たら挨拶しに行きますね」

「イー兄さんも傭兵として頑張ってなのさ」

『グルル』

「おぅ、気ぃ付けてけよ」

 

イーヴェルに見送られながら、ペッパー達はポポンガの魔法によってキャッツェリアを飛び出した。日付が変わり、次に一行が向かうは、ゴブリン達の王国ゴブリスタン。

 

其処では如何なる出会いが待つのか………。

 

 

 

 






次なる場所はゴブリンの国


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