次なる場所へ
牛上国家ゴブリスタン。
其れは自分のゲーマー人生史上、最も巨大にして最も雄大な。月光に照らされた事で判ったのは、全身が毛むくじゃらな体毛に覆われた『超々々々巨大な牛』の上に、自分達は転移したのだと言う事。
そして其の巨大な………文字通り巨大過ぎる背中の上は、巨大サッカースタジアムの観客席まで含めた横幅の、およそ『二倍』は有る程に広く。其の背にて住まいと城を、国を建てているゴブリン達は『外敵から身を守る為』に、高い場所と巨大なモンスターの背という、二つの超難易度の条件を完璧に満たした此の地を選んだのだと思われる。
「うーん…………解ってたけど
「ホホホ………
「まぁ、其れはそうなのさ………」
『グルッ』
小さな夜の帝王の降臨に、其の帝王の気配を纏った者が突如として現れた事で、巨牛の背に生きる国民達は恐慌状態に陥り、赤子や子供達は親によって建物の中へと押し込められ。
代わりに出張って来たのは、重装甲の鎧で全身を武装してハルバードとタワーシールドを構える『ゴブリン・
迷彩色のローブを纏って
「コレ、完全に侵略者として扱われてません?大丈夫ですかね?」
「ホホホ………此処はワシに任せんしゃい。おおぃ、ドッちゃんや!ワシじゃ、ポポンガが来たぞいっ!」
そう言ったポポンガが、自ら前へと躍り出れば大部隊がざわつく様子が目に見え。同時に大部隊を構成する兵士達が左右に分かれれば、一瞬『オーク』と見間違える程に筋骨隆々の巨躯を持つ、兜と甲冑でガチガチに武装して赤いマントを風に靡かせるゴブリンが、ポポンガの居る場所まで歩いて来る。
「オォ、オォ!ポポンガドノ、ヨくぞワがクニにコられた!ミナ、ブキをオろせ!ダイケンジャのゴゼンだ!」
其の一言で武器を構えたゴブリンの大部隊が、己の得物達を下ろしていく。ファンタジーでは『知能が低い御馬鹿な個体が多い』と思われがちなゴブリンだが、ペッパーはポポンガとの交流を通じて『知能に溢れた個体も少なからず存在して居る』と、認識を改めている。
あのゴブリン達の大部隊を統率・役職事に区分け出来、所々硬いものの人語を話せる確かな知性と、其れ等を纏めて従える程の力を持つゴブリンはそうは居ないだろう。
「まさかポポンガドノとカのウワサの『ヨルのテイオウのチョウアイをウけ、ソのワけミをシタガえしソラをマうユウシャ』がキたとなれば、な。ミナ、スクなからずケイカイしてしまう」
「ホホホ、連絡は入れたんじゃがのぉ……やはりこうなってしまったか。驚かせてスマンな、ドッちゃんよ」
「ギギギ、ヨルのテイオウはオソろしきモノ。いざというトキは、オレがデなくてはならんかった」
ポポンガと会話を交わして、ゴブリスタンの国王 ロノ・ドアはペッパーと、リュカオーンの小さな分け身たるノワ、ヴァイスアッシュの娘のアイトゥイルを見、一行へと言った。
「タちバナシもナンだ。ワレラのシロに『キャクジン』としてムカえよう。ツいてクるとイい」
騎王と謳われる偉大なるゴブリン、ロノ・ドア。ゴブリンの精鋭大部隊を率い、真っ直ぐに前を見る其の大きくガッシリとした彼の背中は、ペッパーに漢のなんたるかを語らずに語る、そんな姿を見せていた。
尚大部隊に護衛されながら、ゴブリスタンの城へと向かうペッパー達だったが、やはりというかノワや自分は距離を置かれている状態であった…………。
ゴブリスタンの城、ゴブリンの偉大なる王のロノ・ドアと彼の臣下の大部隊に案内されて入城を許可された其れは、様々なモンスターの骨や木材で支柱を固め、甲殻や石材やらで舗装し、巨牛の毛と植物の繊維を編んで作っただろう所謂『砦』の様な物で在った。
「ゴブリスタンの住居は基本的に、巨牛の背へとやって来たモンスターの毛皮や骨に甲殻等を用いて外郭や壁を形成し、時々地上で恐竜や翼竜が生存競争で砕いた樹木や岩石に、或いは同士討ちになった竜の素材を用いて造るのが一般的じゃな」
「うむ。ポポンガドノのイうトオり、ワレラはコのヨウにイきヌくタメのチエは、スクなくともモっている」
「成程………」
毛を糸にして衣服を織ったり、モンスターの素材と木材で家具を石材で食器を作る技術や、火を用いて暖を取れる様で、ペッパーの印象は『ゴブリスタンのゴブリン達の生活レベルは縄文人程は有る』という物に変わった。
「ゴブリスタンではキャクジンに『ユウコウ』のアカシとして、ワレラがダイダイヒきツいだ『スープ』をフるマうコトになっている。エンリョなくショクしてくれ」
砦の中の客室にて、テーブルを挟んで骨の椅子に座った一同に、ロノ・ドアが数回拍手をすればメスのゴブリン……おそらくは『ゴブリーナ』が、石の皿に盛られた『恐竜の肉と豆を煮詰めたスープ』を運んできて。ペッパーがスープの匂いを嗅げば、良く言えば『独創的』・悪く言うと『酷い臭い』がしたモノだった。
しかしながら御厚意から振る舞われ渡された其れを、口を付けずに返すのは悪手と考えたペッパーは、意を決してグビリッと一気に飲み干せば、形容し難い『えぐ味と酸味に渋味』が三重奏を奏でて、鼻と舌を雪崩の如く侵略される感覚に襲われて。だが脳内では『絶対に吐き出すべからず』と結論が下され、ペッパーは自らを律してイッキ飲みを敢行し飲み干しきった。
アイトゥイルはスープを瓢箪水筒の酒と共に飲んで誤魔化し、ノワはスープから肉だけを噛み上げて食すという大分器用な事をして、ポポンガはニカニカとスープを飲み干している。
「えっと、ロノ・ドア殿。此のスープは中々独創的でしたが、煮た時に出て来る『濁った泡』を取り除くだけでも変わるかと思います」
「ム……そうなのか。では、ソれをやってみよう」
おそらく此のスープが酷い味なのは、加えた豆や肉の灰汁を抜かずに煮込んだ可能性があり、えぐ味の原因でも有る。其れを取り除けば、少しはマシになるだろう。次に此の地を訪ねた開拓者や他種族が、自分と同じ思いをしない様にするに濾した事は無いのだから。
「ソラをマうユウシャよ、ヌシにキきたいコトがある」
スープによる歓迎という習わしを経て、ロノ・ドアがペッパーを見、そして問い掛けた。
「ムこうのタイリクにてオコなわれたという『ブトウカイ』でソラをマうユウシャと、ユウシャのユウジンなるトリのヒト。カタや『ヒイロのホムラ』をマトい、カタや『クロいイカズチ』をマトったとミミにしたが………ヌシラは
カムイなるモノ