チャットを終えて
「トーワ〜?」
「アハハハハ、ごめ~ん♪」
「此の御時世ふとした所から情報が漏れ出て、パパラッチ達が反応するんだよ?解ってるの?」
「そんなに怒らないでよ、あーくん。良い顔が台無しだよん?」
チャットから退出し、ムスっとした顔で頬を膨らませた梓に永遠がケラケラ笑いながら言う。唯のチャットですら情報飽和の此の時代、ニュースに取り上げられて其処から関係発覚………なんて事態はよく有るのだから。
「ところでさ、あーくん。私此れからシャンフロにログインして、実戦的訓練の『最後のモンスター』と戦いに行こうかなって考えてるんだけど。因みに0ちゃんにカジキ君は十体目に到達して、茜ちゃんは九体目に挑戦中」
「──────詳しい話を聞いても?」
永遠は語り出す。彼女曰く今現在サイガ-0・レーザーカジキ・自分はラビッツのユニークシナリオである『十体の格上のモンスターを
そしてシナリオ挑戦者の一人・秋津茜が現在挑んでいる九体目は『背中から毒液砲撃を行う、列車砲搭載のハイスペック巨大百足のモンスター、トレイノル・センチピード・グスタフ』なる存在なのだとか。
「列車百足かぁ………」
「おやおや、あーくん。何か思い当たる節が有るのかな?」
「甲殻が色鮮やかに彩られ、ホーミングフレキシブルレーザーをブチ噛ましても来る、巨大ヤスデの事を思い出してね」
「え、其れヤバくない?」
思い返せばアレとの戦いは楽しかったが、同時にどっと疲労感にも襲われた強敵でもあった。あの甲殻は地中を掘削して進む内に磨がれ、所謂『天然のインゴット』の様な物になっていたので、次に戦う時は甲殻を小鎚で砕いて入手してみたい。素材的にも、かなり美味しくなるだろう。
「永遠。俺は此れから食器を洗って洗濯物を干したりするから、先にシャンフロにログインしててくれ」
「オッケー、出来るだけ早く来てね?あーくん」
口付けを交わし、永遠は歯磨きの為に浴室へ。梓は雨戸を開けて換気を行いつつ、食器を洗った後、洗濯機で洗った衣服を取り出し運んで、ハンガーや折り畳み式の物干しに付け、次々とカーテンレールに引っ掛けていれば、永遠がヘッドギアを頭に取り付けて布団に寝転がったのを見て。
自分も早く行かなきゃなと思いつつ、窓・カーテン・玄関の鍵も閉め、部屋に備え付けてあるクーラーの設定温度を『28℃』設定。水分補給・トイレを済ませて、ヘッドギアの反応をチェックした梓は、永遠のログインから十分後にシャンフロへとログインしたのであった………。
「ヘイヘイヘ〜イ!ペッパーよーう、ペンシルゴンと一つ屋根の下に居る気分はどーなんだー?んー???」
取り敢えず此の鳥頭、一体どうしてくれようか………。
シャンフロにログインした休憩室にて待機していた、アイトゥイル・ノワに最近フレンド登録した『ラピス』から送られてきた『
ヴォーパルコロッセオに移動すれば、観客席にはペンシルゴンとゼッタ・サンラクとエムル・レーザーカジキとエストマ・サイガ-0とエクシス、そしてシークルゥが居て。バトルフィールドでは秋津茜が単身、機敏に動き回る巨大百足を相手に走り回り、竜威吹を用いて焼いているのが見え、そして此方に気付いたサンラクからは、早速煽りに近い言葉責めを食らう事になった。
「そちらの御想像に御任せしまーす。………で、だ。アレが秋津茜の実戦的訓練の九体目、トレイノル・センチピード・グスタフなのか?」
「はい。とっても大きな百足で、さっきから滅茶苦茶機敏に動き回ってますね」
列車砲と言われているだけあり、コロシアムの壁と地面を利用しての機敏な立ち回りから、身体全体が膨らんで毒液砲撃を行った瞬間に秋津茜が回避を選択したので、一目見ただけでハイスペックモンスターだと解る。
「やぁっ!」
毒液砲撃を行った直後、人間で例えるなら『弛緩』のタイミングを狙い、機動力と巻き付く為の都合で産まれている甲殻と甲殻の間に出来た『隙間』を。毒液砲撃を潜り抜けた秋津茜が握る短剣によって穿たれれば、『ギュイイイイ!?』と巨大な百足が悲鳴を上げる。
「効いてるっぽい?」
「はい………サンラク、さんが………あの大百足が、毒砲撃を放った後、かなり『リラックス』してない?………と、言ってまして。其れを、元に………秋津茜、さんが刺したら、ダメージが入ったので………」
サイガ-0の言葉を聞き、ペッパーは試しに
(あの巨大百足、よりにもよって『自分の身体に毒を注入』して、巨体を支える『筋肉を活性化』させているのか………!)
そう──────ペッパーが二つの視覚強化スキルで見たのは、電気信号が流れる筋肉を流れる
明らかに服毒すればタダでは済まない毒を流し込み、全身を活性化させながらに巨体を走らせる、トレイノル・センチピード・グスタフ。毒も用量と用法を守った上で投じれば薬に、薬も使い方を誤れば忽ち劇毒へと変貌する様に、巨大百足は己の毒を
「やべぇなぁ、あの百足………」
「ペッパー『視覚系のスキル』使ってる様だが、あの巨大百足について何か判ったか?」
「判ったけど、敢えて教えない。クイズみたいな物だ、ヒントは『薬と毒』。頑張って解いてみて」
目にスキルエフェクトが灯っている事から、ペッパーが何かしらのスキルを使ったと睨んだサンラクの問いに、先程の仕返しも踏まえての返答を行うと、彼からジト目で見られたがゲーマーとしては未知を攻略する喜びを、何時までも大事にして欲しいのだ。
そんなやり取りをしていれば、毒液砲撃の砲火を潜り抜けた秋津茜が、致命の短剣を何十回目になろう百足の甲殻の隙間へ突き立てた所、か細い声を──────其れでもメガホンで増大させられた様な奇声を上げた列車砲搭載巨大百足が、遂にヴォーパルコロッセオの大地に倒れ伏し、巨体を構成するポリゴンが崩壊する。
「や、やった………!やりましたー!皆さん観てましたかー!素材が一杯ですー!」
「御見事で御座るよ、秋津茜殿」
百足の巨体に加えて単身での討伐、其れによって齎された大漁のドロップアイテムの山にぴょんぴょんと跳ねては、全身で喜びを現した秋津茜を見ている。
「因みに何回リスポーンしたんだ、秋津茜は………」
「えっと、確か『七十回』でしたっけ?」
「あ、えっと………さっきので『七十三回目』の挑戦、ですね」
「相当の強さを誇ってるんだな、あの列車百足………」
「わぁ!何か『心臓』?が、素材の山の中から『三つ』も出て来ましたよ!紫色で綺麗ですね!」
『!?』
何時の日か何処かで奴と出逢えたなら戦ってみたいと思っていれば、秋津茜がリアルラックか物欲センサーを通り越して、トレイノル・センチピード・グスタフの『最高レアの素材』を三つもドロップした事で、一同の視線は彼女の方に向いた。
「マジかよ、秋津茜………」
「えっと………此処まで戦った、モンスター達の………最高レアの素材か、武器が………秋津茜さんの場合、だと……沢山出て、いまして………」
「秋津茜に対してだけ、物欲センサーが機能してないのか………?」
「ひえぇ…………」
「うわぁ…………」
そして此の場に居た者達は、全員が改めて認識した。
秋津茜はヤバい──────と。
リアルラック最強伝説