クラウンスパイダーの解体、はーじめーるよー
クライムキックで蹴り飛ばし、クラウンスパイダーを地面に落としたペッパーは、跳躍から螺旋階段状の競り出し部分に着地。其の数秒後に底の方でズズゥ…ンと一際大きな音が、空洞になった巨木を揺らした。
「よっし、引き摺り下ろし成功っと」
「やったさね、ペッパーはん。」
糸を放つ器官も潰した事で、クラウンスパイダーは自力で巣の再生は出来なくなり、脚は有るにしても壁をよじ登ったり、巨体を生かした体当たり以外の攻撃は封じられただろう。
ふとペッパーが上を見上げると、其処にはクラウンスパイダーが糸で絡めて吊り下げた岩や巨木達が。刃物を用いて糸を切れば、落下物でのダメージが狙えそうである。
「お、アレは使えそうさね。ペッパーはん」
「そうだな。まぁ使っても良いんだろうけど………其れじゃ『つまらない』んだよな」
そう言ってペッパーはアイトゥイルを肩に乗せつつ、落下ダメージが入らない間隔の高度から、下へ下へと木の縁部分を伝って降りていく。
「もしかしてペッパーはん…地上に引き摺り下ろした理由って」
「クラウンスパイダーを
ハイビート終了後に発生するスタミナ回復量半減デメリットを抱えつつ、アイトゥイルを肩に乗せてペッパーが最下層まで戻ってくると、クラウンスパイダーが前肢を振り翳して、奇声を挙げている。地上に落とされた事が大層御立腹の様だ。
単純な肉弾戦なら、クラウンスパイダーは此方よりずっと上。まともに戦えば、体格差で押し潰されるのは火を見るより明らか。
しかし、だからこそ……ペッパーは戦うのだ。ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスを超え、夜襲のリュカオーンの尻を引っ叩く為に、
「さぁ、仕上げだ道化蜘蛛…!キッチリ〆てやるから、覚悟しな!」
スキル:アクセルのクールタイムが終了し、ペッパーはハイドレートワークと共に即再点火。爪先に力を込め、地面を蹴り上げて、クラウンスパイダーに接近する。
前肢を振るい、踏み付けんとする道化蜘蛛の目の前でバックステップでフェイクを掛け、着弾に合わせて湖沼の短剣を通常持ちから逆手持ちにスイッチ。ラダースラッシュと水平斬りの併用で、左前肢と奥から二本目の足を切り裂き、左側のバランスを切り崩す。
『ギジイイイイイイイイイイイ!!』
「ペッパーはん!体当たりがくるさ!」
「ありがとう、アイトゥイル!」
四本の右足に力を集め、クラウンスパイダーが巨木と自身の巨体で、ペッパーとアイトゥイルをサンドイッチにしようとしてくる。
しかし既にクールタイムを終え、再使用可能になっていたムーンジャンパーが起動。螺旋状のせり出し部にジャンプで突撃を回避後、左手の湖沼の短剣をリュカオーンの残照が刻まれた
五艘跳びで強化し、真上から脳天目掛けてスピックエッジで突き刺そうとしたペッパーだが、其の殺気に反応が僅かながら勝ったクラウンスパイダーが、傷付いた左足の中で無事な足を動かして、間一髪脳天直撃を回避した。
「機動力を削いだと思ったが…!中々機敏に動く!」
「ペッパーはん!ワイが右足を持ってくさ!キッチリ決めてな!」
「あぁ!任せた、アイトゥイル!」
左腕から跳躍し、右足目掛けて動き出したアイトゥイルにシンクロするように、ペッパーは彼女の後ろに付いた――――と見せ掛け、サンダーターンで左へ直角旋回を行い、右足の無事な一本へスキル:首断ちを使い、関節の隙間から切り裂いて、回避行動不能に陥れた。
「道化蜘蛛、其の足――――貰うさね!」
嵐薙刀・虎吼が闇を斬り、アイトゥイルのスキル:無双閃迅が炸裂。無事だった四本の右足の内、二本が木っ端微塵に斬り散られ、右前肢は皮一枚で繋がっているような、深い裂傷が入った。
クラウンスパイダーがバランスを失い、地面に倒れ込む。
「ペッパーはん!キッチリ決めてな!!」
「応ッッッッッ!!」
現状持ち得る最高の跳躍と、物理エンジンによる落下。全体重を致命の包丁の鋒に乗せて、クラウンスパイダーの脳天に刃を『突き立て』。
「此れで決める!!」
包丁の、延いては刃物を振るう極意たる『押し付けて引く』の動作で、スキル:垂直斬りでクラウンスパイダーの顔面を真っ二つに斬り割る。
其の一撃がクリティカルとなり、クラウンスパイダーの身体を構成するポリゴンが、火山噴火のように爆発して、ドロップアイテムが散乱。ペッパーの目の前に『エリアボス討伐完了』のリザルト画面が映った。
「クラウンスパイダー。暗闇からの奇襲に加え、不利な筈の地上戦でも垣間見た、確かな機動力と巨体を生かしたパワフルな攻撃。エリアボスに相応しい相手だった。
だが今回は、俺とアイトゥイルの勝ちだ」
致命の包丁をアイテムインベントリに仕舞い、入れ替えるように旅人のマントを装着。走り寄るアイトゥイルとタッチし、互いの健闘を称え合う。
そうして1人と1羽はクラウンスパイダーのドロップアイテムを回収。千紫万紅の樹海窟を越えて、シャンフロ第4の街にして、瘴気が蔓延り満ち溢れた死者の峡谷を越えんとする、開拓者達の止まり木こと『フォスフォシエ』へと到着したのであった………。
フォスフォシエに到着したペッパーは、アイトゥイルをマントの中へ隠して人目の合間を縫い、フォスフォシエの武器屋にやって来た。
どうやら此の先のエリアに居る敵モンスターは、何れも此れもが『呪霊系統』や『アンデッドタイプ』が主流らしく、其れを攻略するには『消費アイテム:聖水』を直接、もしくは武器に振り付けて打ち当てるか、聖属性の武器を用いる。または聖職者か魔法職をパーティーに加えた状態で、攻撃を与えるかの三択になっている。
現状ペッパーには聖属性の武器は無く、アイトゥイルの酔息吹か夜叉斬り以外で攻撃手段が無い為、此処で戦力増強を計りに着たのだ。
「こんにちわ~」
「あら、いらっしゃ…もしかしてペッパーさんかしら?」
入店一番、店主らしき恰幅の良い女性がペッパーにそう言ってきた。やはり特殊クエストクリアで、小鎚製作のキーマンになった事が此処にも影響が出ているように思われる。
「はい、ペッパーとは私ですが…」
「あらあらまぁまぁ…セカンディルから遠路遥々お疲れ様です。御師匠様から、此処に立ち寄る事が有ったら、お前の力を貸すようにと言伝てを受けてますの」
セカンディルの白髭鍛冶師の弟子の1人らしい此の女性。もしかすると、あの男性鍛冶師は相当な腕前なのでは?とペッパーは思う。
「ということは、マッドネスブレイカーを強化して貰えると?」
「えぇ」と女性は答え、其の後にペッパーが予想だにしなかった、とんでもない事実を述べたのだ。
「ただ其の為には、サードレマから行ける
もしくは『
ファステイアの鍛冶師が
未知なる鉱物資源を求め、蓄積された大地の恵みを糧に命を得る此の小鎚は、サードレマから行けるエリアの鉱物によって、各々が『異なる姿へと成長する』という――『成長派生形態を内封した』ユニーク武器だったのだ。
ユニーク武器の秘められた可能性