約束の地にて
「やぁ、待たせたかい?」
神代時代に取り残されたゴーレムや、現地で産まれたゴーレム達が稼働する、
其処にはライブラリやウェポニアと其のリーダーたるSOHO-ZONEを含めた、他のプレイヤー達が円を作ってコロシアムを形成し、其の中心には
「来てくれたね、ペッパー」
「あぁ。今日なら大丈夫だって言ったからな。そっちはどう?」
「此方も大丈夫さ」
何故こうなっているのかといえば、話は旅狼と
「ペッパー、僕は君と『シャンフロでのPVP』を申し込みたい。なので、君の空いている日時を教えて欲しい。決闘の場所は『去栄の残骸遺道』、武器は『剣もしくは刀』のみで『スキル及び魔法の使用禁止』。君と『純粋な力量』で勝負がしたい」
プレイヤー達のざわめきの中、ペッパーは何故に京極はPVPを?と疑問を覚えたが、彼女の真っ直ぐに注がれる視線に『決意』が籠もっていたのを、少なからず感じられた。
他のプレイヤー達の視線が注がれる中、ペッパーは「解った。7/9の午前十一時半に」と答えた事により、クランリーダーとクランメンバーによる決闘の運びと相成ったのである。
「……………ペッパー。重ね重ね
「……………京極にとって、此れは『必要な事』なんだろう?其れをしなくちゃ先へ進めない、刺さった棘を取り除いて前に向かう為にも」
ペッパーから見るに、京極を突き動かす感情は『復讐者』の其れによく似ている。振り切ったマイナスを自分の手でゼロへと戻す為に必要な事だと。自身の中で燻り、籠もり続けている感触を取り払い、清算する為にやらなくてはいけない事なのだと。
きっと其れは彼女が『
「……………うん、其の通りだよペッパー。勝つにしても、負けるにしても。
「………………解った」
一人称が変わる、彼女が虚空より出力された刀を手に取り、利き手で柄を持ちて刀身を鞘より抜き放つ。其れは黒い刀であり、
「此れは私がPVP時に使う得物『
「成程、要するに『ガチ武器』か。ならば此方も『ガチ武器』だ」
ライブラリや他のプレイヤーが見ていようが、彼女の本気に答えてこそ意味が有るとペッパーは信じている。インベントリから『
鞘を左手に持ち替えて右手で柄を握り引き抜けば、七つ空いた穴の内の持ち手に最も近い二箇所の穴に、キラリと光る『蒼と桃色の宝玉』と『中心の黒と虹色の渦を巻いた宝玉』が収められた剣が顕になる。
「京極の本気、そして覚悟は伝わった。だから俺も、本気と覚悟で答えよう」
互いに武器は抜かれ、そして構えて。
人斬りの異名を持つPKer・
其の二人が残骸の地にて、プレイヤーが見守る中で武器を構え──────激突した。
開幕、いきなり鍔迫り合うのではと見ていたプレイヤー達だったが、彼等彼女等の期待とは裏腹に御互いが御互いの動きを見るという、静かな立ち上がりから此の戦いは始まる。
(………一目見ただけで解る。彼女は『強い』………!)
VRの剣道教室で幾度も相対し、マネキンや師範相手に見てきた正眼の構えを取る京極に、ペッパーの額から汗が伝う。一切の淀みを構えから感じさせない所作、鋭利で磨き抜かれた視線を見た。
同時にペッパーの脳内では『シャンフロ内で見てきた京極の動きの記憶』が猛スピードで引き出し、掻き集めて精査と此の瞬間の『彼女の動き』の一片すらも逃さず思考に取り入れ、自身の脳内で戦術を構築し始める。
(フォームは雑、剣の持ち方駄目、力みも滅茶苦茶………『だけど』!)
対して京極もまた、ペッパーの所作を見ていた。そして解ったのは彼の行っているフォームは、剣道をやっている人間の動きでは無く、素人も素人な構えであるという事で。
だが同時にアレは剣の道に立つ者を油断させる為の『擬態』であり、彼の剣の──────戦いの本質は戦闘中の相手の挙動を学習し、己の思考に反映して、戦闘で起き得るあらゆる状況を『想定』している事。
故にこそ。
(生半可な一撃は相手に見切られる!)
(長期戦は彼の思う壺!)
(ならば──────!)
(ならば………………!)
残骸遺道に風が吹き、砂塵が巻き上がった其の刹那、二人はほぼ同時に動いていた。刀が剣が、チャキリと鳴る。スキルを使っていないにも関わらず、両者共に自分や周りの動きが随分と遅く感じたのは、集中力が成せた技なのか。
「──────ッ!!!」
「ウォアアッ!!!!!」
己を賭けて、相手を倒す。互いの意思が、此の刹那に重なって。刃が空を裂き、風を割り、光を反射し、敵の命を絶たんと走り──────
ペッパーの持つグランシャリオが、京極の持つ断噛走狗の渾身の一振りを剣身で受け流し、流れる風の様に逆手一閃で突っ込んで来た彼女の胴を、突進の勢いを利用して真っ二つに斬り裂いていた。
「ッ……………──────」
完全にやられた──────胴体を裂かれ、上半身が地面に落ちていく中で京極は、ペッパーが放った先のカウンターによる一撃と動きは、今まで見てきた剣士達の中でも五指に入る程に『美しく』、そして『強かった』と自覚する。
剣の道に居る京極からすれば、ペッパーが繰り出した
体力が全損し、意識を繋げる糸が鋸で削り断たれる様な感覚を味わう中、聞こえたのは「
「数多の死線を潜り抜け、今は亡き阿修羅会で四位にまで上り詰めた、強き剣豪よ。貴女程の相手に、俺は『初撃でカウンターを狙わなくては』、決して勝てないと断じる程に『強かった』。戦ってくれて──────ありがとうございました」
サイガ-100を含め、墓守のウェザエモン・深淵のクターニッドを倒した時と同様の、敵に対する感謝を述べた言葉であり。
「嗚呼…………本当に凄まじいな──────」
其の言葉を呟いた京極は、アバターを構成するポリゴンが崩壊し。其の場には彼女が
一つの決着