VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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約束の地にて




勇者は残骸遺道にて人斬りと刃を交える

「やぁ、待たせたかい?」

 

神代時代に取り残されたゴーレムや、現地で産まれたゴーレム達が稼働する、去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)。正午がゆっくりと迫りつつ有る空の下、其の一角では現在ライブラリの検証班所属のプレイヤー達の手で、出現するゴーレム達をスローターによって一掃した事による、所謂『モンスターが一時的に出現しない不毛地帯』が出来ており。

 

其処にはライブラリやウェポニアと其のリーダーたるSOHO-ZONEを含めた、他のプレイヤー達が円を作ってコロシアムを形成し、其の中心には旅狼(ヴォルフガング)所属のプレイヤー………『京極(キョウアルティメット)』の姿が在った。

 

「来てくれたね、ペッパー」

「あぁ。今日なら大丈夫だって言ったからな。そっちはどう?」

「此方も大丈夫さ」

 

何故こうなっているのかといえば、話は旅狼と黒狼(ヴォルフシュバルツ)の対抗戦終了後の質問会まで遡る。様々な質問に対してペッパーは重要事項以外は答えていき、取り敢えず一段落したタイミングで其れは起きた。

 

「ペッパー、僕は君と『シャンフロでのPVP』を申し込みたい。なので、君の空いている日時を教えて欲しい。決闘の場所は『去栄の残骸遺道』、武器は『剣もしくは刀』のみで『スキル及び魔法の使用禁止』。君と『純粋な力量』で勝負がしたい」

 

プレイヤー達のざわめきの中、ペッパーは何故に京極はPVPを?と疑問を覚えたが、彼女の真っ直ぐに注がれる視線に『決意』が籠もっていたのを、少なからず感じられた。

 

他のプレイヤー達の視線が注がれる中、ペッパーは「解った。7/9の午前十一時半に」と答えた事により、クランリーダーとクランメンバーによる決闘の運びと相成ったのである。

 

「……………ペッパー。重ね重ね()の我儘を聞いてくれて、どうもありがとう」

「……………京極にとって、此れは『必要な事』なんだろう?其れをしなくちゃ先へ進めない、刺さった棘を取り除いて前に向かう為にも」

 

ペッパーから見るに、京極を突き動かす感情は『復讐者』の其れによく似ている。振り切ったマイナスを自分の手でゼロへと戻す為に必要な事だと。自身の中で燻り、籠もり続けている感触を取り払い、清算する為にやらなくてはいけない事なのだと。

 

きっと其れは彼女が『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)の関係者』で有る事も、其の理由の一つなのだろうと彼は密かに確信している。

 

「……………うん、其の通りだよペッパー。勝つにしても、負けるにしても。()は君と戦って、()の中で結論を出したい」

「………………解った」

 

一人称が変わる、彼女が虚空より出力された刀を手に取り、利き手で柄を持ちて刀身を鞘より抜き放つ。其れは黒い刀であり、逆丁子(さかちょうじ)の赤い乱れ刃文が刻まれた『刀』。

 

「此れは私がPVP時に使う得物『貪刀(どんとう)断噛走狗(たてがみそうく)”』。此の刀と共に私はシャンフロでPVPをしてきたし、人斬りの異名が付いたのも此れの御陰な部分が大きい」

「成程、要するに『ガチ武器』か。ならば此方も『ガチ武器』だ」

 

ライブラリや他のプレイヤーが見ていようが、彼女の本気に答えてこそ意味が有るとペッパーは信じている。インベントリから『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』取り出して右手で剣を納める鞘を取れば、右手に刻まれたリュカオーンの愛呪から放たれる『赤黒い靄』が黒い鞘に吸われていき。

 

鞘を左手に持ち替えて右手で柄を握り引き抜けば、七つ空いた穴の内の持ち手に最も近い二箇所の穴に、キラリと光る『蒼と桃色の宝玉』と『中心の黒と虹色の渦を巻いた宝玉』が収められた剣が顕になる。

 

「京極の本気、そして覚悟は伝わった。だから俺も、本気と覚悟で答えよう」

 

互いに武器は抜かれ、そして構えて。

 

最大高度(スカイホルダー)の現保持者・ペッパー。

 

人斬りの異名を持つPKer・京極(キョウアルティメット)

 

 

其の二人が残骸の地にて、プレイヤーが見守る中で武器を構え──────激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開幕、いきなり鍔迫り合うのではと見ていたプレイヤー達だったが、彼等彼女等の期待とは裏腹に御互いが御互いの動きを見るという、静かな立ち上がりから此の戦いは始まる。

 

(………一目見ただけで解る。彼女は『強い』………!)

 

VRの剣道教室で幾度も相対し、マネキンや師範相手に見てきた正眼の構えを取る京極に、ペッパーの額から汗が伝う。一切の淀みを構えから感じさせない所作、鋭利で磨き抜かれた視線を見た。

 

同時にペッパーの脳内では『シャンフロ内で見てきた京極の動きの記憶』が猛スピードで引き出し、掻き集めて精査と此の瞬間の『彼女の動き』の一片すらも逃さず思考に取り入れ、自身の脳内で戦術を構築し始める。

 

(フォームは雑、剣の持ち方駄目、力みも滅茶苦茶………『だけど』!)

 

対して京極もまた、ペッパーの所作を見ていた。そして解ったのは彼の行っているフォームは、剣道をやっている人間の動きでは無く、素人も素人な構えであるという事で。

 

だが同時にアレは剣の道に立つ者を油断させる為の『擬態』であり、彼の剣の──────戦いの本質は戦闘中の相手の挙動を学習し、己の思考に反映して、戦闘で起き得るあらゆる状況を『想定』している事。

 

故にこそ。

 

(生半可な一撃は相手に見切られる!)

(長期戦は彼の思う壺!)

(ならば──────!)

(ならば………………!)

 

 

 

 

此の一撃に、俺の!

 

此の一撃に、私の!

 

全てを賭ける!

 

 

 

 

残骸遺道に風が吹き、砂塵が巻き上がった其の刹那、二人はほぼ同時に動いていた。刀が剣が、チャキリと鳴る。スキルを使っていないにも関わらず、両者共に自分や周りの動きが随分と遅く感じたのは、集中力が成せた技なのか。

 

「──────ッ!!!」

「ウォアアッ!!!!!」

 

己を賭けて、相手を倒す。互いの意思が、此の刹那に重なって。刃が空を裂き、風を割り、光を反射し、敵の命を絶たんと走り──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッパーの持つグランシャリオが、京極の持つ断噛走狗の渾身の一振りを剣身で受け流し、流れる風の様に逆手一閃で突っ込んで来た彼女の胴を、突進の勢いを利用して真っ二つに斬り裂いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……………──────」

 

完全にやられた──────胴体を裂かれ、上半身が地面に落ちていく中で京極は、ペッパーが放った先のカウンターによる一撃と動きは、今まで見てきた剣士達の中でも五指に入る程に『美しく』、そして『強かった』と自覚する。

 

剣の道に居る京極からすれば、ペッパーが繰り出した()()は彼が積み重ねてきた『努力の結晶』と、そう断じるに迷いは無かった。『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)全面協力! VR剣道教室・極』を攻略し、真のラスボスに到達(・・)攻略(・・)するまでの長い長い道の中で、磨き鍛え抜いてきた彼の『渾身』の一撃であったと。

 

体力が全損し、意識を繋げる糸が鋸で削り断たれる様な感覚を味わう中、聞こえたのは「京極(キョウアルティメット)」と自分の名を呼んだペッパーで。

 

「数多の死線を潜り抜け、今は亡き阿修羅会で四位にまで上り詰めた、強き剣豪よ。貴女程の相手に、俺は『初撃でカウンターを狙わなくては』、決して勝てないと断じる程に『強かった』。戦ってくれて──────ありがとうございました」

 

サイガ-100を含め、墓守のウェザエモン・深淵のクターニッドを倒した時と同様の、敵に対する感謝を述べた言葉であり。

 

「嗚呼…………本当に凄まじいな──────」

 

其の言葉を呟いた京極は、アバターを構成するポリゴンが崩壊し。其の場には彼女がインベントリ(・・・・・・)に入れていたアイテムやマーニ、そして装備していた武器と防具が残されたのであった……………。

 

 

 

 






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