VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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京極(キョウアルティメット)との一戦後




ヘイト管理は如何なるゲームでも重要

どうしてこうなった。

 

「ペッパーさんって剣道やってるの?」

「『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)全面協力! VR剣道教室・極』って教材を裏ボス(・・・)まで攻略してるよ。剣道は今までやって来た色々なゲームで敵から学んだ動き(モーション)を、自己改良(アレンジ)して戦闘に取り込んでるだけに過ぎないけどね」

 

京極(キョウアルティメット)の要請を受けて、刀と剣オンリーのスキル・魔法の使用禁止で行った一対一(タイマン)の果て、此の一戦はペッパーの勝利に終わった。

 

彼女をPKK………つまりプレイヤーキラーキルをした事で、PKerの烙印たる赤い髑髏マークが付いたのでは?と、不安になりながらステータス画面を開いてみたが、マークは無かったのでホッと胸を撫で下ろし。

 

此方で回収した彼女のアイテムやらを、京極に全部返却してからフィフティシアに在る聖盾輝士団(せいじゅんきしだん)の本拠地に赴き御布施をし、カルマ値を減らす事を考えていた所で、戦いを観ていたプレイヤー達からの質問攻めが待っていた。

 

「胡椒さん、ステ振りはどんな感じなんですか?」

「胡椒…………えっと『筋力敏捷スタミナ』に重きを置いた高機動軽戦士ビルドを意識してる。レベルダウンビルドでスキルを育成しつつ、必要なスキルはwikiを見ながら精査して習得してるよ」

 

ペッパーにとって質問される事は、実は嫌いという訳では無い。自分に答えられる事に対しては、ちゃんと対応しておく事で先々に『同じ質問をされない』様にしているからだ。

 

問題なのは『自分だけが抱えている物』に対しての質問、例えばそう……………『ユニーク』の中でも開示した場合に、間違い無く確実に『戦争』が起きる『ヤバ過ぎる代物』を聞いて来られた時。其の点はペンシルゴンが大々的に宣言したので、避けられる──────と思いたい。

 

「ペッパーさん、水晶巣崖(すいしょうそうがい)を攻略出来るんですか?」

「ん〜………。順に説明していくと、水晶群蠍達は()に反応するから、大前提として蠍達から逃げる『敏捷強化スキル』と『ヘイト切り離し系のスキルかアイテム』が絶対必須。其れが無いと採掘も出来ずにデスポーンさせられる、後は残念だけどタンク職は蠍達相手には『勝てないよ』、一対一(タイマン)なら勝ち目は有るだろうけど、奴等は『集団戦のエキスパート』だからね」

 

水晶巣崖に置いて兎に角必要なのは、蠍に追い付かれない機動力とスタミナで、其れが無いと先ず話にならないのは明確だ。そして同時にアレを相手取るならば、タンク職の様な重装甲は蠍達からすれば『格好の餌』に等しいので、必然的に『軽量高機動タイプのスキルを保持した者』に絞り込まれる。

 

「ペッパーさん。自分職業の忍者で【空蝉】使えるんですけど、行けますかね………?」

「うーん………其れなら『ワンチャン』行けるかも知れないな。ただ死亡するのは避けられないだろうし、蠍は一体が出っ張ると周辺から蠍が出て来るから、空蝉の座標近くで鉢合わせ………というリスクを許容出来るなら」

「そうなんですか!?」

 

水晶群蠍達のフィールド擬態はサンラクや自分が素材や鉱物資源を取りに通っている為、其のクオリティは日々進化している。音の発生源から伝播して数十体は出てくる蠍達は、悠長に身構えていよう物なら漏れ無く圧殺戦法を仕掛け、同胞諸共迅速に処理するプロフェッショナル。

 

故に生き残れる確率を上げるなら、兎に角止まらずに死を恐れず、そして一度の失敗でへこたれないのが大事だ。まぁ此の世の中には『乱数の女神』という、ゲーマー達にとっての『死神』と『救世主』の表裏一体の二面性を宿す、人の不幸を酒の肴に愉悦する『厄介な存在』が居るので、絶対に安定は流石に出来ないが。

 

「ペッパー君!ペッパー君!京極さんとの戦いで使った、あの剣!七つ穴が空いている内の二つが塞がっている、あの奇妙な聖剣の形状をしている剣は!一体何と言う武器なのですか!?!?」

「あー………うん。取り敢えずSOHO-ZONEさんに関しては、明日の7クラン連盟──────七極天星(グランシャリオ)の会談まで待って欲しい」

 

SOHO-ZONEは『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』についてというのは目に見えて明らかであり、此の場には不特定多数のプレイヤーが余りにも多過ぎる。其の上グランシャリオの能力は、公にしようものなら話が色々と抉れて面倒な方向に。例えるなら真っ直ぐ地雷地帯へと一直線に突き進むので、絶対に明かしたくは無いのだ。

 

だがそんな事はどうでもいい、現時点で重要な事では無い。

 

 

 

 

 

「ペッパー、貴方を『兄弟子』…………いや『御兄様』と呼ばせて欲しい!」

 

 

 

 

 

もう一度言おう、どうしてこうなった。

 

リスポーンして貧相な姿に成って戻って来た京極に対し、装備やらを含めて諸々を返却しようとしたのだが、彼女は其れを断ろうとし。だがペッパーは「真正面から正々堂々と宣戦布告をした君は、本当に高潔で強い剣士だ」と言って彼女に返した所、いきなり『兄弟子』やら『御兄様』呼びしてきたのである。

 

「何故に京極は俺をそう呼びたいの?」

「ペッパーは御祖父様の写し身を超えている……………。私にとって其れは、兄弟子。否、御兄様と呼ぶ理由に充分過ぎる理由!」

「成程…………成程?」

 

ペッパーは引き攣った表情をしながら首を擡げる。此処で思いのまま「貴女は何を言っているんだ」と、彼女にツッコミを入れなかった自分を誰か誉めて欲しい。

 

何より何故に御兄様なのか?もしかしてアレか、龍宮院流は『常勝必勝』を掲げる剣の流派で、当主を打ち破った者を家族として取り込んでしまえば、常勝必勝の名に穢れも揺らぎも無い的なアレなのか?

 

疑問は積もるばかりな上に、此のままでは単なる座談会化してしまうと危惧し、Eメールアプリを開けば正午をとっくに過ぎている事に気付く。

 

「まぁ、呼び方を変えたいなら気にはしないけど。自分はそろそろ御昼を食べるので、一旦ログアウトする」

「あ、ちょっと待ってペッパー君!」

「何ですか、SOHO-ZONEさん…………」

 

そんな中、ペッパーに声を掛けたSOHO-ZONEは自身のインベントリから、ある物達を取り出して来る。其れは以前に彼から渡されてた『拳銃』を始め、形状から『散弾銃(ショットガン)』に『大砲』、『アサルトライフル』や『機関銃(マシンガン)』、更には『狙撃長銃(スナイパーライフル)』等々、土錆色の遺機装(レガシーウェポン)の数々で。

 

取り出し小山が出来る程の量を見せたSOHO-ZONEは、とても真剣な眼差しで彼に言ってきたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此れは我々『ウェポニア』と『午後十時軍』からの直々の依頼。ペッパー君──────君が知っている銃を直せる鍛冶師に、此の銃達の修繕依頼を頼みたい。もし此の依頼を受けてくれるなら、此の中で『ダブった銃』を君に………クラン:旅狼(ヴォルフガング)への報酬として渡す所存だ」

 

 

──────と。

 

 






修繕依頼


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