VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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あれから十数時間が経って




そして勇者と魔王は兎達と狼と共に征く

「ありがとうございましたー………」

 

某所に在るコンビニにて、レシートは不要と言われたので来客にお釣りを渡し、ペコリと御辞儀をし見送った梓は随分と『細く』なっていた。

 

(まさか夜中の二時を回るまで、二十回もヤる事になろうとは………。最後の五戦はアイツの、トワの『弱点』を見付けたから勝てたみたいな部分だったし)

 

思い出すのは昨夜から朝方に掛けての出来事。一昨日にカリスマモデルの天音(あまね) 永遠(とわ)が、約一ヶ月振りに此方の住まいに突撃して来て。夕食含めて四食分におよそ一日半近くを通して共に過ごし、三十越える交わりを通じて更に恋人の仲を深めたのである。

 

そして朝五時に永遠は仕事場に向かうべく準備をし、玄関で自分と深いキスを交えた後に『また会いに来るからね♪』と耳元で囁き、飾り気の無い笑顔を見せながら向かって行った。

 

文面だけ(・・)見れば邪教徒やファン達から『簒奪者』やら『永遠様を穢したクソ野郎』等々、色々言われそうでは有るものの彼女の本性(・・)を知っているのは極僅か、そして彼女の本質(・・)を知っているのは更に其の中の一握りしかいないのだ。

 

自分はそんな彼女の表も裏も知り、其れを理解したの上で恋人になる選択をした事を、色々思う事は有れども後悔する事は無い──────そう思いたい。

 

此の日の梓は細くなった状態ながらも、随分と晴れやかな表情を取り繕いつつバイトを終えて、ゴムや精力剤を購入してから住まいのアパートへと帰還。そして彼と同じ時間帯にシフトを組んでいたバイトの同僚や店長達からは

 

「梓君、滅茶苦茶痩せてない?」

「多分ダイエットしてるんじゃないの?」

「いや、絶対に何か有りそうだから面談してみるよ」

 

と、心配そうに見られていたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

住まいのアパートに帰宅し、夕食に『刺し身丼御膳』を作って完食。普段はシャワーの所を栓を閉じて御湯を溜め、風呂として湯船に浸かりながら昨夜の激闘によって疲弊した、己の身体を労り。

 

水分補給とトイレを済ませて午後八時半にシャンフロへログイン、ラビッツの兎御殿の休憩室にて覚醒した彼を待っていたのは、自身の付き兎・アイトゥイルとリュカオーンの分け身・ノワが、ペンシルゴンとバチバチバチッと火花を散らし合い、其の横ではアイトゥイルにくっ付いている、彼女の付き兎・ゼッタだった。

 

「あーくんは私のモノだから………!」

『グルルルル………!!!』

「何してんのさノワとペンシルゴンは…………」

「実はペッパーはんの足首に、ノワはんが尻尾を巻き付けていたのが、風の噂でペンシルゴンはんに伝わったらしくて、こうなっちゃったのさ…………」

「アイトゥイルおねーたま、ペンシルゴンおねーたまが怖いでしゅ………」

 

一種の愛情表現ですら、ペンシルゴン的にはノワの行動を許容する事は出来ないらしい。此れはラピスに依頼してノワを強化するアクセサリーを作って貰ったと言ったなら、更に面倒な雰囲気になるのは火を見るより明らかで。

 

「あ、そうそう。あーくん、ラピスちゃんにノワちゃんのアクセサリー製作依頼をしたんだって?ちょっと私に『会わせてくれないかな』?」

 

既にラピスと接触していた事が、ペンシルゴンにバレていた。

 

「何故バレたし!?」

「良いかい、あーくん。今現在の君のネームバリューは、此のシャンフロでも『随一』なのだよ。そんな今の君が動けば、確実に他のプレイヤーも反応する。実際、ラピスちゃんは君が齎した宝石や鉱石で『宝石匠(ジュエラー)』に就職出来たって、掲示板にコメントが載っている。おまけに弟子入りしたプレイヤーも現れてるんだよねぇ…………」

 

はぁ〜………と深い溜息を付きつつも、何処か誇らしげに言ったペンシルゴンは人差し指で彼を指す。ゲームでの彼は交渉や頼み事に関しても『相手に敬意を払い、必要な物をキッチリと用意して臨む』スタイルであり、実際シミュレーションゲームでも其の精神が功を奏した場面が多かった。

 

「現状NPCの宝石匠は数人いるらしいけど、プレイヤーでは『ラピスちゃん以外に存在していない』。だから彼女の活動を阻害しない様にしつつ、私達の7クラン連盟『七極天星(グランシャリオ)』に協力して貰える様に交渉する」

「………………成程な。つまり『彼女を俺達連盟の保護下に入れつつ囲い込む事で、後々に何か起こった時に力を貸して貰える様にする』──────と。そういう事だな?」

 

彼女がニヤリと笑う。どうやら正解らしい。

 

「サンラク君が右手に、あーくんが左手に着けている其の革手袋、どっちも『同じ宝石匠のNPC』に作って貰ったって疑惑が有るらしいじゃない?つまりはラピスちゃんも何れ、君達が持っている物と『同じ』のを作れる可能性が高い訳だ」

「まぁ其の人には製作依頼の為に、採掘した宝石や鉱石を多めに渡したから、凄まじい性能のアクセサリーを作って貰えたって部分が大きいからね」

 

『アトロフォスの白蒼翼(はくそうよく)』と『封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)』、そして『封雷の撃鉄(レビン・トリガー)(ハザード)』と『兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)(スペリオル)』に『瑠璃天(ラピステラ)星外套(せいがいとう)』………此の五つは共通して『宝石匠』が関わっている。

 

更には此等を作ったキャッツェリア最高の宝石匠・ダルニャータは、水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)の素材を用いて『糸と布』へ…………『スコルスタ・ストリング』と『スコルスタ・ヴェール』に加工出来る技術を保有しているのだ。

 

即ち其れは、宝石や鉱石を糸へと転じ、布へと変えて、衣へと織る事を可能とする事に等しい、匠を名乗る者にのみ許された『極致の技術』と断言しても良いだろう。

 

「過剰な挙動にヘイト撒きの力を齎すアクセサリーともなれば、他のプレイヤーも挙って欲しがるのは目に見えてるもの。何せ私の(・・)あーくんとサンラク君が、黒狼相手に大立ち回りを繰り広げてくれたから、其の『宣伝効果』は抜群の一言に尽きる。しかも其れを作る為の原材料の確保難易度(・・・・・)は、シャンフロの中でも五指に入る超絶危険地帯、需要と供給を此方でコントロール出来れば………フフフフフ──────!!」

「おーいペンシルゴーン、黒幕魔王ムーヴしてないで早く戻ってこーい。ラピスさんの所に行って、ノワのアクセサリーを受け取りに行くぞー」

 

宝石製のアクセサリーでシャンフロ経済でも牛耳るつもりなペンシルゴンに、ペッパーは声を掛けつつ出発を促す。水晶巣崖(すいしょうそうがい)の立ち回りに関しては、京極(キョウアルティメット)との決戦後に聞いてきた忍者のプレイヤーが居たので、何時の日か採掘に成功する時が来るだろう。

 

そんなこんなしている内に、ニヤニヤ顔をしたペンシルゴンはペッパーの右腕に自身の腕を絡めて恋人繋ぎをしながら、ドヤ顔でノワを見下ろし。対するノワはグルルルル!と威嚇して喉を鳴らしたが、ふと何かを閃いたのかペッパーの影に潜行し、彼の左側の襟周りに出来ている影からひょっこりと顔を出すや、頬を舐めつつペンシルゴンにドヤ顔を仕返した。

 

「おーい、二人共。喧嘩とマウントの取り合いしないでくれ、時間もそんなに残ってないから出発するぞ。アイトゥイル、エイドルトへのゲートを頼む」

「解ったのさ」

 

両者を諌めつつ、アイトゥイルに指示を出し。彼女が開いたゲートを潜り、二人と二羽と一匹はエイドルトに在るラピスの賃貸している建物を目指し、旅立ったのである。

 

 

 

 






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