ラピスというプレイヤー
シャンフロ内プレイヤー最高峰のアクセサリー職人、そして現時点で唯一の
装備者の移動音を消し去る能力を宿す事により、敵モンスターに
装備一つ毎に装備していない部位の耐久を、他の部位に装備した防具の合計耐久値を上昇させる、護符型のアクセサリー『
手によるアクション補正を超強化及び技量にステータスポイントを振る場合に其の数値を1.2倍にする『
しかしシリーズに属するアクセサリーをプレイヤーは『同時装備出来ない&レベルアップまで外せない』という制約を掛ける事で、運営からの
そんな実用性が有ったり無かったり、プレイヤーによって様々な評価が下されるアクセサリーを作ってきた彼女だが、取り分け『宝石や鉱石を加工してのアクセサリー作り』に関して見れば、彼女は最高峰でもあった。
宝石匠とは宝石や鉱石でアクセサリーを作れる『魔術師』であり、同時に『鍛冶師』という側面を併せ持っている。サイガ-100がペッパーとの一戦にて繰り出した『インペリアルシリーズ』も、彼女………ラピスが作り出した『鍛冶師としての到達点』であり、しかし『アクセサリー職人としての通過点』に過ぎない物だった。
全ては宝石を使ったアクセサリーを作れる職に至り、己が思い描く逸品を創り出す為に。
だが宝石匠としての最後にして最大の関門である『一定以上のレアリティを持つ宝石系アイテム所持』という、水晶巣崖に潜む絢爛なる蠍達に阻まれ足踏みを続けて。想いを馳せども届かなかった其の願いは、つい数日前に何の脈絡も無く突発的にやって来た、
師と仰いだNPCからの卒業試験として、自身が持ち込んだ宝石を用いたアクセサリーを作れと命じられ、己が培った技術と研鑽の粋の全てを以て作り出したアクセサリーにより、彼女は遂に宝石匠を名乗る事が認められたのだった。
彼女はラピス──────愛は何たるかを掲げ、シャンフロで初となる宝石匠へと就職したプレイヤー。
「ちょっと待ってシュキ過ぎる……!ペッパーさん←ペンシルゴンさんのカップリングだけじゃなくて、ノワちゃん→ペッパーさん←ペンシルゴンさんの関係………って事!?エッッッッッッ………もい!最強の狼から感情向けられ、一緒に歩む人からも感情の矢印を向けられ合う、つまりは逆V字型のカップリングからなる関係ッッッッ………………?!」
そんなシャンフロ初の宝石匠プレイヤーとなった彼女は今、エイドルトに在る賃貸建物の中にて、自分に弟子入りした三人のプレイヤーとペッパー、ペンシルゴンにノワと各々が隠したアイトゥイルとゼッタを前にしながら、鼻腔内から出る赤いポリゴンを押さえて悶える姿で、此の場に居る全員に『お前は何を言っているんだ』と、ドン引きと共に共通の感情を抱かせていた。
「ペンシルゴン、此の人が件のプレイヤーでシャンフロ初の宝石匠になったらしい、ラピスさん何だが…………」
「うーん…………。私の想像の三倍は乖離してたなぁ………」
掲示板のコメントを見返したが、愛は何たるかを真剣に説く女性プレイヤーであり、此のシャンフロでは自分と同じ『アバターと中身が同性の女性プレイヤー』である事は、ペンシルゴン自身もスレによる事前調査にて理解しているつもりでいた。
が、実際に会ってハッキリと解ったのは、恋愛やらカップリングやらの話になると人柄が変わった様に、ある意味では『面倒臭いプレイヤー』であった事で。取り敢えず会談までの時間も刻一刻と迫っているので、彼女に頼んだノワのアクセサリーを受け取らんとペッパーが声を掛ける。
「コホン、ラピスさん。頼んでいたアクセサリーを受け取りに来ました」
「ふぅ…………久し振りに良い恋愛の空気を吸えた。此れで一週間は生きていけるわ。…………あぁ、ノワちゃんのアクセサリーね?無論ちゃんと出来上がってるわ」
先程までの雰囲気は何処へやら、真剣な顔付きに戻った彼女がインベントリより取り出したのは、何処にでも在るような小さな小箱。交渉の場にてアタッシュケースから物品を相手に見せるが如く、開き見せた中身には『数多の色彩から成る犬用のベルトと、其の中心にラピステリア星晶体(一等星)を嵌め込んだ物』が入っていた。
「此れが宝石匠に成る最終試練にて、宝石匠の師匠より卒業試験の名目の下に作り出しッ!私が此のシャンフロというゲームで培って来た全技術を総動員!!丹精込めて作り上げた結果、シャンフロプレイで初めて『SSランク』を叩き出した超傑作!其の名を『
見た感じはペット用の首輪にしか見えず、更には億万長者の家庭に飼われているペットが身に着ける様な、悪趣味っぽい気配が漂う其のアクセサリーだが、手に取って感触を確かめれば『ゴム』の様な弾力と、左右に引っ張れば『ぐいーんと伸びて』。
そして自信満々で誇らし気に、胸を張ったラピスの口から出たのは、作り上げられたアクセサリーの恐るべき効果だった。
「フフフフフフフフ!何せ此の首輪は唯の首輪じゃないわ!コレはラピステリア星晶体をセットする事により、装備中のプレイヤーやNPCにバディモンスターの獲得経験値を、等級に応じて『最大半減まで減少出来るようにした』の!其れだけじゃなくッ!レベルアップ時に装備したプレイヤーやNPC、バディモンスターの獲得ステータスポイントもまた、最大で『1.2倍にする能力』を宿しているんだから!」
フフン♪と自慢気にドヤ顔を噛ましたラピスを、ペッパーとペンシルゴンは目を見開き、御互いに横目で顔を見合わせ。そして静かに小さく頷き合った。
「ただしッ!注意点として、此のアクセサリーは一回装備すると『レベルアップまで外せず』、装備中は『レベルダウンアイテムは一切使用不能』効果を持ってるわ。当然レベル99に到達したら、レベルキャップを解放するまで外せない様にしてあるの。当たり前だけど、其れくらいのデメリットが無いと──────」
「あー、ラピスちゃん。ちょっと良いかな?」
彼女の熱弁からなる説明の最中、ペンシルゴンが声を掛ける。其の目は黒幕魔王の物でも無ければ、廃人狩りとしての物でも無い、一人のプレイヤーとしての心からの『御願い』でも有った。
「単刀直入に言うよ、ラピスちゃん。君のアクセサリー職人としての凄まじい腕を買って、私と
そしてペッパーはラピスと弟子入りしたプレイヤー達に、此の件に付いて他者に一切口外しないで欲しいと、厳密で厳格な口止めを御願いしつつ自らは頭を深々と下げ、ペンシルゴンは手短かつ理解り易く『御願いの内容』を伝えた所、ラピスは驚きつつも二人に対して「承ったわ」と言い。
ラピスから件のアクセサリーを受け取ったペッパーは、其れをノワの首に少し余裕が出るように着ければ、案の定というか何と言うかノワはペンシルゴンにドヤ顔し、ペンシルゴンはノワと火花を散らし合い、ラピスは恵比寿顔の更なるカオスが置きた事で、ペッパーはラピスに御礼を述べて彼女達を引き摺って退出し、ライブラリの本拠地へと向かったのだった…………。
愛大好きドラゴンの擬人化