VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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今日も今日とて、彼は征く




武器を育てる、己を育てる

七天極星(グランシャリオ)会談から二日の時間が経過した午後八時半過ぎ。

 

本来なら明日はバイトが休みで、大学の講義に集中出来ると思っていた所に、担当の教授が夏風邪を拗らせたとの連絡が、大学の掲示板に貼られていたのを確認。

 

コレにより急遽一日休みの完全フリー状態を手にしたペッパーは現在、パートナーのヴォーパルバニー・アイトゥイルが開いたラビッツとテンバートを結ぶゲートを越えて、ユニークモンスター・天覇のジークヴルムの休息地たる『気宇蒼大(きうそうだい)天聖地(てんせいち)』に在る鉱脈の一つにて、ユニーク小鎚・ギルフィードブレイカーを振るいながら採掘をしていた。

 

「予想はしていたが、やっぱりまだ(・・)成長途中だったとは…………いや、寧ろ喜ばしい事だけども」

 

思い出すのはテンバート内に在る武器屋での一幕。女鍛冶師のNPCが自分の来店に反応してか出て来るや、『他の街の鍛冶師が強化して繋いで来た小鎚達を、アタシに見せてくなんしょ!』なる台詞(フラグ)を放ったのがキッカケであり。

 

ペッパーがギルフィードブレイカー・ヴァンラッシュブレイカー・ライダメイズブレイカーの三種の小鎚達と、ロックオンブレイカーの製造秘伝書・改参式を取り出した事で、ユニーク小鎚に関するイベントが発生した。

 

其の女鍛冶師のNPC曰く──────

 

 

 

「此の小鎚達は更なる進化の為、新しい鉱石を求めてる………。ギルフィードブレイカーは無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)に在る『悠久遺鉄(アーテルメタル)』を。

ヴァンラッシュブレイカーは気宇蒼大(きうそうだい)天聖地(てんせいち)に在る『風土鉱岩(ビュードロック)』を。

そしてライダメイズブレイカーは神話(しんわ)大森林(だいしんりん)に在る『癒傷秘石(プリディストーン)』が必要になるの…………!其れが手に入れば、此の小鎚達は次なるステージに立つ事が出来るんよ!」

 

 

 

──────との事らしい。

 

 

 

「最近は色々有り過ぎたからなぁ………。こうやってソロでの採掘は何時以来だろう」

 

神秘(アルカナム):運命の輪(ホイール·オブ·フォーチュン)をサブ職業(ジョブ)にセットしながらに、トンカラカン♪トンカラカン♪とリズミカルかつコンパクトに鉱脈を叩けば、ゴロゴロゴロと次から次に出て来る鉱石達。

 

此のエリアでしか出て来ないで有ろう、様々な鉱石アイテムに件の風土鉱岩等を叩き出し、レア度の低い鉱物はギルフィードブレイカーの耐久回復に用いて、レア度の高い鉱物はインベントリアへ加えていく。

 

鉱脈に擬態して開拓者(プレイヤー)を丸呑みにするペッパーに馴染み深い『巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)』や、其の雌の成虫個体にして女王たる『泰山巌宝蛇蟲(イミュリティーション.ヴィルワーム)』は付近に居ない。

 

其の上、自身(アバター)に引っ付いている『リュカオーンの愛呪』の紋様と気配のバラ撒きが、自身よりもレベルが上のモンスター以外を軒並み退け続けているので、採掘は順調と言って良い具合に進んでいるのだ。

 

「とは言え、此方の身体に付いている気配にも動じずに来る敵モンスターも居るよ──────ねっ!」

 

採掘の手を止め、感覚強化スキルで敏感になった首筋に走る幕末システムに搭載された、静電気の流れる感覚と共に小鎚を振るって攻撃を弾く。鋼鐵がぶつかり火花が散りて、夜闇と月光が照らす台地に降り立つは、鷲の翼と上半身に獅子の下半身を持った『グリフォン』で。

 

鷲の上半身に纏う羽毛達は『帷子』の如く並び、獣体の重要器官を守るが如く。ペッパーの身に刻み付けられている、リュカオーンの愛呪の気配にも怯む様子を見せない其のモンスターは、彼女()に表示された名前には『轟襲鷲獅子(ジェット・グリフォン)』と言う存在らしい。

 

『キュルルル………!』

「轟襲鷲獅子か、成程良い名前だな………!」

 

前足の爪で地面を削り取る猫科の威嚇モーションに、鳥類特有の喉の鳴らし方でペッパーと対峙して来た其のグリフォン。いきなり飛び掛かる───────等と愚直な真似はせずに、ペッパーの周りを歩きつつ様子を伺って来たので、ペッパーもまた敵の動きに追従しつつも反対側に動き続けて。

 

そして夜風が吹き、舞い上がった砂塵が僅かに月光を遮った其の刹那、ペッパーと轟襲鷲獅子はウェディングケーキ状の台地にて…………激闘した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ……!ハアッ………!」

 

楽しい時間というのはあっという間に過ぎる、というのはゲーマーの真理の一つであり、其れは人間が集中状態に没入するという、所謂『FLOW』に入った其れに近い感覚でも有る。

 

一時間に近い激闘の果てに息は絶え絶えの膝が震え、今にも座り込みそうになるペッパーの視線の先には、地面に倒れ伏してポリゴンを崩壊させていく轟襲鷲獅子の姿が在った。

 

「轟襲鷲獅子よ。天を音速で駆け、地を高速で走り、有翼の幻獣に相応しき其の身体能力と強さ………。同じ視点に立ち戦ったからこそ解る、お前は本当に強敵だったぞ………!」

 

ペッパーの言葉をトリガーとして、轟襲鷲獅子を構築していたポリゴンが崩壊。神秘:運命の輪により幸運値が倍増した状態で討伐した事により、ドロップアイテムは通常よりも多く落ちていた。

 

「轟襲鷲獅子の風切羽根に烈風爪、隼動前脚と剛毛獣皮………やっぱり羽根が多い。コイツで『矢』を作れないかな?」

 

インベントリアにドロップアイテムを突っ込みつつ、耐久が削れたギルフィードブレイカーは採掘で出た鉱物アイテムを砕いて回復し、ペッパーは風土鉱岩を大量確保した事を確認。

 

其の脚でテンバートへと戻り、武器屋の女鍛冶師NPCにヴァンラッシュブレイカーと強化素材の風土鉱岩を渡し、彼女は「三日で完成させるから取りに来て!」と述べて。

 

ペッパーは彼女に「よろしく御願い致します」と依頼し、キュルアの所で買った『使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)座標移動門(テレポートゲート)】』を用いて、一路『千紫万紅(せんしばんこう)樹海窟(じゅかいくつ)』に転移して行った。

 

彼の次なる目標は、『颶風の申し子・ティラネードギラファ』と『雷嵐の申し子・カイゼリオンコーカサス』の、双皇甲虫達の討伐。そして其れを成す事によって、ずっと夢見ていた『風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)の二刀流』を成し遂げる為に………………。

 

 

 

 






進化の為に





※轟襲鷲獅子との戦闘はユザパしました。御互い譲らない地上からの空中ドッグファイトになり、最終的には灼骨砕身(シャッコツサイシン)を解禁して斬打二刀流になったペッパーが、パイルバンカーの要領でグリフォンの脳天に刃を突き立てて倒した。



風土鉱岩(ビュードロック)

気宇蒼大(きうそうだい)天聖地(てんせいち)にて採掘される鉱石の一つ。ユニークモンスター・天覇のジークヴルムが休息地とする場所より採れる其の鉱石は、揺らぐ事も風化する事も無く、其の姿を今の時代に指し示す。




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