VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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千紫万紅の樹海窟にて




勇者ペッパーの狩猟実演講座

シャンフロ第3の街・サードレマから行ける三つのエリアの一つ、千紫万紅(せんしばんこう)樹海窟(じゅかいくつ)。今は亡きユニークモンスター・墓守のウェザエモンことウェザエモン・天津気(アマツキ)が居た『反転の花園』へ向かう場所にして、ウェザエモンの妻たる天津気(アマツキ) 刹那(セツナ)の墓が残る『秘匿の花園』が在り。

 

そしてペッパーが(スキル確認や素材ゲットで)御世話になっている、颶風の申し子・ティラネードギラファと雷嵐の申し子・カイゼリオンコーカサス、二体の双皇甲虫達が根城とする『双皇樹』が隠されているエリアでも在る。

 

「もしかしてペッパーさんですか?!」

「はい、ペッパーですよ」

「あれ?男って話じゃなかったっけ?」

「いや女の姿で歩いてるってスクショが有ったよ」

「カッコイイ………!」

「ありがとうございます」

 

以前に兎御殿のティークの元でヴァイスアッシュも好んでいるという酒を卸して貰い、其れを秘匿の花園に在る刹那の墓に祈りと共に、御供え物としてペッパーは捧げ。そして双皇樹に向かっていた最中に、複数人のプレイヤー達と遭遇・彼等彼女等も同じ目的地の、同じモンスターに用が有ると言ったので付いて来たのだ。

 

「ペッパーさんって翡翠色のギラファノコギリクワガタと黄金色のコーカサスオオカブトと、何回か戦っているんですか?」

「そうだね、十回くらいは」

「攻略法とか知ってる感じ?!見学させて貰っても良いですか!?」

「スクショと撮影をしないって条件を了承してくれるなら良いよ」

「やった!」

 

複数人でワイワイとパーティープレイをする事は、ペッパー自身嫌いな訳では無い。問題なのは此方の許可無く撮影やら録画をし、ネットにアップして晒し者にするネチケットがなっていない連中が居る事が、ペッパーは嫌いなのだ。

 

「わぁお…………」

 

目的地の双皇樹の近辺に到着すると、其処にはシャンフロ最大規模の考察クラン:ライブラリに、武器防具の解明に執念を燃やすウェポニアの面々に加えて、他の野次馬らしきプレイヤー達の姿が在る。

 

おそらく会談で話した『風雷皇の擊貫斧(サルダゲイル・イドゥン)』の原材料となったモンスターを、ライブラリがプレイヤー達に開示したからか、双皇甲虫を討伐して素材をゲット。からのハンドメイドガンを作る為に、鍛冶師のプレイヤーに持ち込もうと画策しているのだろうか?

 

「おや、ペッパーさん。会談の時はどうも」

「セートさん、其の節はどうも」

 

ライブラリのサブリーダー、セートが此方に気付いた事で他のプレイヤー達の視線が一気に向けられた。一部のプレイヤーに関しては、其れとはまた異なる何かを含んだ視線みたいな物だったが。

 

「ペッパーさん、もしや双皇甲虫に挑むので?」

「そうですね、ログアウト前に一回戦っておきたいので………。あ、撮影とかスクショをしないって条件を飲んでくれるなら、見学していっても良いですけれど」

「其れは重畳。撮影出来ずとも最大高度(スカイホルダー)の、対モンスター戦を観れるともなれば価値が有りますよ」

 

そう言ったセートはライブラリの面々に指示を出し、ウェポニアも乗じる形で他のプレイヤーの撮影やスクショをしない様に声掛け。ペッパーに道を譲る形で左右に割れて、其の歩みを邪魔しない様にしたのだ。

 

「さて………行きますか」

 

ドーム状のコロシアムの入口に近付けば、彼女()の前に『クエスト【風雷の挑戦状:強者よ、双皇樹に来たれ】』の受注画面が表示されて、其の指は迷う事も無く【Yes】ボタンをタッチした事により、入場を許可された。

 

ペッパーがコロシアムに入った瞬間、背後に風と雷で作られたフェンスが他の者達の侵入を禁止し、同時に空より羽ばたく翅音と共に双皇樹の影から二体の巨大甲虫達が現れ、同時に他のプレイヤー達がざわめいた。

 

「二体同時に出て来た!?」

「え"っ、アレを二体同時に相手すんの!?」

「純魔だとギラファが出て来て、物理一辺倒だとコーカサスじゃないっけ?」

「いや近接持ちでも二体出て来てた。武器の種類や属性、他に考えられるのは距離関係の武器とか?」

 

ライブラリとウェポニアのプレイヤー達が、積極的に情報を出し合って答えを導き出そうとしている当たり、既に何度か戦闘を観ていた感じなのだろう。

 

「ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサス。二体の双皇甲虫はクエストの受注プレイヤーが使って来た、武器の種類によっては『二体同時に相手をする事になる』。更には出現する双皇甲虫達のレベルは、常に受注プレイヤーを『上回った状態で出現する』為、下手に手を抜く=痛い目に遭うのは確定している。彼等は自分達を『試しているから』ね」

 

まるで『解説』するかの様にペッパーは後ろのプレイヤー達にも聞こえる声で話しつつ、インベントリアを操作するや武器を取り出し左手に握り締める。

 

其の武器は弩弓剣(アーチブレイド)FM's(フォッシルマイナーズ)クリサリス・金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)泰山巌宝蛇蟲(イミュリティーション.ヴィルワーム)"昂華堅巒(ブリリアント)"の素材を用いてビィラックが作り上げ、クラン対抗戦では修正前剣聖のサイガ-100を仕留める活躍を見せた『金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)』。

 

「お前の力………もとい真髄(・・)を双皇甲虫と他のプレイヤーにも示すとしようか!よし行くぞッ!」

 

ペッパーがバフスキルを全開に、カイゼリオンコーカサスの放った落雷攻撃を回避したのをゴングとし、ティラネードギラファの突撃をスライディングで回避。

 

中央部分を押し込んで剣モードを弓モードに切り替え(スイッチ)、インベントリから仕掛け鏃を右手に持ちつつ跳躍スキルで飛び上がり、カイゼリオンコーカサスに向けて矢を放つのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッパーというプレイヤーは思考深度が異常なプレイヤーである──────シャングリラ・フロンティアをプレイしている者達の記憶に新しい、様々な爆弾情報の大洪水によって観戦者含めて絶大な衝撃を齎したクラン対抗戦こと『双狼戦争(デュアルウルフウォー)』。

 

サイガ-100との死闘を通じて彼女の繰り出したモーションや攻撃を学び、其の中で戦略を思考にて構築し、最終的には殆どノーダメージで討ち果たした、盾の勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)を持つ実力者。

 

彼の真髄は『敵モンスターや相手プレイヤーのモーションや戦闘スタイルを学び、脳内で戦略を構築して一気呵成に攻め立てて倒す。何よりもペッパーに時間を与える事は彼の戦略構築を助長する事に等しいので、奴を倒すならば開幕速攻と超広範囲攻撃をしなければ厳しい』…………というのが、シャンフロ対人スレにてプレイヤー達が導き出した対ペッパーへの答えでもあった。

 

「ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスは、常にコンビプレーで戦ってくる!相方が遠距離攻撃を仕掛けている間、もう片方は空中からの突撃や角に鋏を使って拘束、地上戦では巨体の馬力を用いた格闘戦を行う!

交代ルーティンは大体『十五分毎に一回』!両方同時に倒す事を意識してダメージを与えていかないと、片方を先に倒した場合にもう片方が『超強化された状態』になる!」

 

風と雷の金網で作られたコロシアムを駆け回り、弓モードで矢を放っては剣モードに戻しつつ、肢や胴体の関節を斬り裂いては、武器をギルフィードブレイカーに持ち替えて。

 

空中を高速で走り抜けながらに、ペッパーは角や鋏を殴り叩いて。双皇甲虫達に出来る限り同じダメージを蓄積させつつも、隙を見付けては観戦者達に解説する様に叫ぶ。

 

「片方が空を飛んでいる間、魔法弓の様に物理的要因に左右されない攻撃方法を持っていれば、飛翔中の相手にもダメージを与えられる!近接攻撃は羽ばたいてる時の突風のせいで、近付くのが難しいから地上で『どっちに何回ダメージを与えたかを覚えておく』事!

もし覚えるのに自信が無いなら、予め片方が地上に居る間に『何回与えるか』を決めておくと、思考がゴチャゴチャしないで済むッ!」

 

まるで『空中系統スキルを持っていないプレイヤー』に、どうすれば双皇甲虫達を攻略可能なのか、其れを『理解り易くレクチャー』している彼女()に、皆の視線が注目が注がれている。

 

ペッパーの要請によってスクショや録画が出来ない物の、彼が放った解説をライブラリのサブリーダー・セートや同クランのメンバー達、そしてウェポニアのメンバー達も同様に其の解説の一言一句を羊皮紙に記載していくのだった………。

 

 

 

 






ペッパー、頑張る


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